今までリモートワークが普及しなかった理由
リモートワークという働き方はコロナよりずっと前から存在していましたが、日本でリモートワークは普及してきませんでした。
世界ではリモートワークがかなり普及している国もある中で、どうして日本ではリモートワークの導入が進まなかったのでしょうか。
世界と日本の普及率の差
まずは、世界の先進国と日本のリモートワーク普及率を比較します。今回はアメリカ・イギリス・韓国・日本の4カ国について見ていきましょう。
国 | リモートワーク導入企業率 | リモートワーク人口比率 |
アメリカ | 85%(フルリモートは34%) | 全就業者の20% |
イギリス | 38.2% | 24%(在宅勤務者の割合、頻度に差あり) |
韓国 | 1.0%未満 | 賃金労働者の5.1% |
日本 | 11.5% | 全就業者の3.9% |
これは、総務省が発表した2014年のデータです。
アメリカやイギリスでは労働時間管理の制約が無く、特にアメリカでは地理的制約があるために、リモートワークを導入しやすく、リモートワーク導入企業割合も人口比率も高くなっています。
それに比べると、伝統的に長時間労働をする韓国や、労働時間管理の制約が厳しい日本ではリモートワークがほとんど普及していなかったことがわかります。
日本の労働に関する考え方
日本では働く際にチームワークや対面を重視する傾向があるため、この二つが疎外されかねないとしてリモートワークを敬遠していた事も、普及が進まない原因として考えられます。
確かに、リモートワークではコミュニケーション不足に陥ってしまうと、チームワークを損なってしまう可能性はあります。
しかし、チャットツールやWEB会議ツールといった情報通信技術がをうまく活用する事で、チームワークや対面を尊重しながらリモーワークを導入する事も可能なのではないでしょうか。
導入準備が多いという課題
リモートワークの導入が進まない背景には、導入準備が多いことが挙げられます。具体的に必要な準備をあげると、少なくとも下記の5つは出てきます。
- セキュリティ対策
- コミュニケーション不足の防止
- 新しい勤怠管理方法の導入
- 人事評価方法の見直し
- 就業規則の見直し
これだけの準備が必要となると、生産性の向上に繋がると分かっていても、多くのなかなか導入に踏み切れない事も理解できます。
コロナの影響でリモートワークが普及
人と人との接触を避ける必要があるため、リモートワークを導入する企業が急速に増えています。
普及率にどれくらいの変化がでいるのでしょうか。また、急にリモートワークの導入を強いられた企業は、どうすればいいのでしょうか。
リモートワークを導入せざるを得ない
「3密」を避けるように言われている現時点で、社員を出勤させて通常通りの業務を行うことは極めて難しいのが現状です。
そこで、少しでも業務が停滞しないようにするためにリモートワークを導入せざるを得ないと判断する企業が増えています。
実際、今回の新型コロナウイルス対策でリモートワーク初めて経験した人が47.8%に上るという調査結果も報告されています。
出典:コロナ対応のテレワークに「格差」が生じている | コロナショックの大波紋 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
準備を怠ると失敗の可能性大
コロナによる影響で、リモートワークを導入する企業が増えたことは、働き方の多様性という視点から見ると、良いことだと言えます。
しかし、導入に追い込まれたからといって必要な準備もせずに実施するのは避けるべきです。
なぜなら、生産性が上がらない理由が準備不足なのにも関わらず、社員にはリモートワークそのものが良くないという誤認を与えてしまうことになるからです。
結果として、働き方の選択肢を減らしてしまっては、企業側にも社員にも良いことはありません。
導入前にすべきこと
では、導入前の準備とは具体的に何をすれば良いのかについて、前述の導入準備を掘り下げて解説します。
必要な導入準備 | 具体的な準備方法 |
セキュリティ対策 | クラウドサービスへの移行、セキュリティに関するルールの見直しや、社員に対するセキュリティ教育 |
コミュニケーション不足の防止 | チャットツール(Slackなど)、WEB会議ツール(Wherbyなど)の活用 |
新しい勤怠管理方法の導入 | 勤怠管理ツール(ジョブカン勤怠管理など)の導入や、毎日の日報報告義務化 |
人事評価の見直し | 業務成果などの可視化できる指標による人事評価への移行や、評価非基準の比重の見直し |
就業規則の見直し | 労働時間規定、服務規定、賃金規定など、改正必要項目の見直しまたは、新しくリモートワーク勤務規定の制定 |
今後リモートワークは普及するのか
コロナの影響でリモートワークを導入せざるを得ないために、普及率は一時的に上がっていますが、この普及率の上昇は果たして本当に一時的なのでしょうか。
必ずしも従来の雇用形態に戻る必要がない
コロナの影響とは言え、一度リモートワークを導入して生産性が向上することを経験した企業が、コロナの収束後に元の勤務形態に完全に戻るということは考えづらいのではないでしょうか。
コロナによる変化は必ずしも悪いものばかりではありません。今まで非効率であった業務などを、強制的に効率化することが求められるため、その名残が今後も続き、程度の差こそあれ勤務形態が変わることは自然なことです。
企業間格差が生まれる
コロナによる変化に上手く適応した企業は、三つの点で一歩リードすることになります。
- 人材採用力の向上
- 企業ブランドの向上
- 生産性の向上
リモートワーク導入に成功した企業は、遠方での採用を実施することで人材採用の幅が広がり、働き方の多様性により世間からの企業評価が高まる上に、さらに生産性まで向上が見込めます。
逆に、導入が上手くいかなかった企業は、働き方を変えられなかっただけで、必然的に成功した企業に大きなディスアドバンテージを負うことになってしまいます。
将来を見据えると、リモートワークの導入に成功することが大事なポイントとなるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、リモートワークの普及をコロナ以前から、現在、そして収束後の未来に分けて解説していきました。
今後は、リモートワーク導入による成果を出せるかどうかが、企業にとって一つ大切なポイントになるのではないでしょうか。
必要に迫られた今だからこそ、しっかり準備をした上でリモートワークを導入することが大切です。