フリーランスになるデザイナーが増えている?
近年は働き方改革が推進されている背景を受け、柔軟な仕事のスタイルが浸透し始めています。もともと在宅で仕事をする人が多かったデザイン業界にでも、より時間や場所にとらわれず働けるフリーランスを目指す人が増えている状況です。
まずは、フリーランスデザイナーの現状を知っておきましょう。
フリーランスデザイナーの現状
クラウドソーシングサービスの調査によると、日本のフリーランス人口は2020〜2021年にかけて急増しました。2020年の1062万人から、2021年には1500万人以上まで増えている状況です。
背景としては明確に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響があります。在宅勤務やテレワークを導入する企業が増える中で、フリーランスの道を選ぶ人が増えたと考えられるでしょう。勤めていた企業が不況のあおりを受け、独立した人も少なくありません。
IT系のデザイナーは、フリーランスとして働く人が多い職種です。Webデザインやイラスト・ロゴデザインなど、在宅で従事できる仕事が多くなっています。
オンラインスクールを運営するデイトラ社の調査からは、同じフリーランスのWebデザイナーでも働き方は幅広いと分かります。完全に独立している人と、副業としてフリーランスの仕事を請けている人の割合はほぼ半々です。
出典:
【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
【フリーランスデザイナーの現状と実態】職歴は関係なし!?WEBデザイナーに必要なスキルと学習方法とは|株式会社デイトラのプレスリリース
フリーランスデザイナーになるには?
フリーランスのデザイナーとして活躍する方法は、一つではありません。企業勤めからの独立か未経験からの挑戦かで、取るべき行動は変わってきます。それぞれのメリットを確認しておきましょう。
企業で経験を積んで独立する
企業に勤めながらデザイナーとして必要な知識やスキルを身に付け、独立後に生かせる人脈を広げてからフリーランスになる方法があります。
デザイナーは未経験から仕事を得るのが難しいので、企業のインハウスデザイナーとして経験を積んでから独立する人が多いでしょう。
デザインの仕事をこなすには、基礎的なデザイン知識に加えてツールの使い方も覚えなければなりません。例えば、DTPデザイナーならPhotoshopやIllustratorのほかに、InDesignのスキルが必要です。入稿や印刷に関わる知識も求められます。
独学でスキルを身に付けることも可能ですが、勤めながら覚えた方が効率的でしょう。会社で働いていると、先輩のデザイナーから教えてもらいやすいというメリットもあります。
また、デザイナーはプロジェクトの一部分を担うケースも多い仕事です。会社勤めを通じてチームとしての協働態勢にも慣れておけば、独立後もほかのフリーランスと仕事がしやすいでしょう。
未経験から実績を積む
完全なデザイナー未経験者が、最初から高単価のデザイン案件を得るのは難しいでしょう。しかし独学でデザイナーに必要な知識やスキルを身に付け、簡単な仕事を請けながら実績を積むことはできます。
クラウドソーシングには、実務未経験から応募できる簡単なデザイン案件も豊富です。簡単な仕事からスタートして、徐々に単価を上げているフリーランスデザイナーは少なくありません。
ただし、未経験者が請けられる案件の単価は低いので、最初は別の収入源も確保しておいた方がよいでしょう。他業界からフリーランスデザイナーを目指すなら、まずは副業として実績を積むのも一つの方法です。
Webデザインなら自分で作ったWebサイト・DTPデザインなら学習の成果物をまとめたファイルなど、ポートフォリオを作っておくのがおすすめです。実務経験がなくても、習得したスキルをクライアントにアピールできます。
デザイナーがフリーランスとして働くメリット
フリーランスデザイナーは多くいるものの、いざ独立するとなると迷う人も多いでしょう。会社員からフリーランスに転身した場合のメリットを具体的に知れば、働き方を決めるヒントになるはずです。
自分で仕事時間をコントロールできる
会社員のデザイナーからフリーランスに転身すれば、時間や場所にとらわれずに柔軟な働き方ができるようになります。納期があるので完全に自由にはなりませんが、仕事をする時間帯は基本的に自ら決められるケースが大半です。
好きな時間に仕事をしたい人はもちろん、子育てや介護の時間を確保したい人にもメリットが大きいでしょう。在宅で仕事をする場合には、通勤時間を考える必要もなくなります。
スキルアップやキャリアアップにつながる
企業にデザイナーとして所属していると、どうしても同じような案件ばかり手掛けることになってしまいます。その分野のスキルアップを図りたい人には好都合ですが、違った分野の仕事をしたい人にとっては、目指す領域のスキルを伸ばしづらいデメリットがあります。
フリーランスとして独立すれば、仕事は自分で獲得しなければならないものの、案件を自由に選べるようになるでしょう。結果的に、伸ばしたいスキルを伸ばせるようになります。
目指すキャリアにマッチした仕事を優先して請ければ、理想のキャリアにもスムーズに近づけるでしょう。
スキル次第で大幅な年収アップを目指せる
デザイナーとして十分な経験やスキルがあれば、独立によって大幅な年収アップを実現できる人は多くいます。
会社員だと仕事で大きな成果を挙げても、昇進や昇給を認められなければ基本的に収入アップは見込めません。一方、フリーランスになれば、請ける仕事の単価を選べるようになります。
スキルを磨いて高単価の案件を多く獲得すれば、それだけ収入を上げることが可能です。会社員として働いていてスキルに収入が見合わないと感じるなら、独立も視野に入ってくるでしょう。
フリーランスデザイナーの年収は?
フリーランスデザイナーの年収は、働き方だけでなく分野によっても変わります。Webデザイナー・グラフィックデザイナー・UI/UXデザイナーに分けて、大まかな年収目安を見てみましょう。
Webデザイナーのケース
フリーランスとして活動しているWebデザイナーの収入は、獲得できる案件の単価によって大きく変わってきます。年収の平均は300万〜400万円の間ですが、スキルが高く平均の倍を超える年収を得ているデザイナーもいるのが実態です。
高単価の案件を取れるデザイナーであれば、会社員の平均的な収入よりも多くの報酬を得られるでしょう。一方、駆け出しのデザイナーの場合、会社員よりも低い収入しか得られないケースが珍しくありません。
特に初心者でもこなせるような案件だと、単価は低いのが通常です。一定のスキルレベルに至るまでは、スキルアップの期間と割り切る意識も必要でしょう。
出典:Webデザイナーのフリーランス求人・案件の単価相場と市場動向【フリーランスで活躍しているWebデザイナー必見】
グラフィックデザイナーのケース
フリーランスのグラフィックデザイナーの場合も、担当している仕事の内容と単価によって年収額がかなり変わってきます。
例えば雑誌の広告をデザインする場合、1ページで6万円程度が相場です。仮に週2件を担当するならば、単純計算で月の報酬は48万円ほどになります。年収に換算すると550万円以上です。
一方、簡単なリーフレットのデザインは1件2万5000円程度なので、同じく週2件こなしても月20万円程度にしかなりません。年収にして240万円です。
Webデザイナー以上に獲得する案件で収入が変わってくるため、高単価の案件を請けられるようになるまでは会社員としてスキルアップに励むのもよいでしょう。
UI/UXデザイナーのケース
UI/UXデザイナーは、近年注目されているデザイン職種です。Webサイトのユーザーが触れる部分を担当するので、広義にはWebデザイナーの一種といえます。
優れたUIやUXはユーザー満足度を高め、成約率の向上に貢献する貴重な要素です。スキルレベルの高いデザイナーは、Web制作の場でも重宝されます。
UI/UXデザインにおいても、デザイナー自身の経験やスキルで収入は大きく変わるのが特徴です。豊富な経験と実績があるUI/UXデザイナーの中には、年収が800万円を超える人も珍しくありません。
出典:フリーランスデザイナーになるには?年収や注意点、案件獲得方法も解説 - アトオシ
フリーランスデザイナーが仕事を得る方法
フリーランスのデザイナーが仕事を得るには、どのような手段があるのでしょうか?個人の価値観や特性によって、マッチする方法は変わります。代表的な案件獲得の方法について、メリットを押さえておきましょう。
フリーランスのエージェントを利用する
フリーランス専門のエージェントを使って案件を探す方法があります。一定のスキルレベルを持ったデザイナーならば、専任のコーディネーターが一人一人のレベルに合った仕事を紹介してくれるのが魅力です。
契約周りや法的な手続きに関してもエージェントが代行するサービスなら、仕事探しに手間がかかりません。ただし、クライアントとの間にエージェントを挟むことになるので、先方との意思疎通が難しい可能性は考えましょう。
一方、Offersのように、クライアントと直接やり取りできるマッチングサイトもあります。エージェントを介さず企業と直接契約したい人におすすめです。
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知人から紹介を受ける
インハウスデザイナーとして活動していた頃の人脈を使って、仕事の紹介を受けるのも一つの方法です。以前の仕事のつてを利用すれば、自分の経験やスキルに合った仕事に出会える可能性が高いでしょう。
実際、かつてのクライアントから独立後も仕事を依頼されている人は珍しくありません。独立を考えているなら日頃から人とのつながりを大事にして、良好な関係を築いておきましょう。独立後に仕事を回してもらえる可能性があります。
自分で営業する
営業スキルを持っている人なら、自ら企業にアプローチしてデザイナーの案件をもらうのもよいでしょう。求人サイトやクラウドソーシングなどを利用するよりも、自ら営業した方が高単価の案件を請けられる可能性があります。
なお、自分で営業をする場合は、事前にポートフォリオを作成しておきましょう。
これまで手がけたデザインや成果物をまとめてポートフォリオ化しておけば、クライアントに経験や実績を効果的にアピールできます。Webデザイナーの場合は、自身のWebサイトを制作しポートフォリオとして掲載する方法がおすすめです。
SNS、ブログで経験や実績をアピールする
SNSやブログを通じてデザイナーとしての実績や強みなど発信し、企業にアピールする方法も考えられます。事実、TwitterやInstagramなどでデザインを発表した際、企業から高い報酬額で案件のオファーがあったデザイナーはいます。
SNSでデザイン担当を募集している企業に、自分からアプローチしてみるのもよいでしょう。双方の条件が合えば、外注してもらえる可能性があります。
ほかにもイラスト投稿サイトのpixivや個人ブログなどに、ポートフォリオをアップする方法があります。経歴や連絡先・オファーを受け付ける旨を併記しておけば、効果的なアピールとなるでしょう。
フリーランスとして収入を安定させるポイント
フリーランスのデザイナーとして独立するなら、収入を安定させたいと思う人が多いはずです。継続してある程度の収入を得るために、何ができるのでしょうか?特に大切なポイントを三つ紹介します。
必要なスキルを磨いて実績を積む
フリーランスデザイナーとして収入を安定させたいなら、できる限り高単価の案件を獲得できるようにスキルを磨き、実績を積む努力が欠かせません。
特にデザイナーとしての経験が浅い場合、単価は安くても実績を積める仕事を請ければ、徐々に高単価の仕事を得られるようになっていくでしょう。
会社員時代に比べて一時的に収入が下がったとしても、確実に実績を積んでスキルを伸ばせるなら長い目で見てプラスになります。スキルを磨いて実績を積みクライアントからの信頼を得ることが、フリーランスデザイナーが継続的に仕事を獲得するためのポイントです。
できるだけ高単価の案件を受ける
デザイナーとしてある程度の経験と実績がある人は、請ける仕事の単価に注目しましょう。いくら時間をかけて案件をこなしても、単価が低い案件ばかりなら収入は上がりません。
もちろん求める報酬額を意識するあまり、仕事が全く見つからないのは問題です。しかし無料で奉仕したりクライアントの言いなりになったりして、自分を安売りしないようにしましょう。
自らの市場価値を正しく認識し、それに見合った報酬を得られる仕事を探す意識が大事です。
人脈づくりに注力する
フリーランスデザイナーとして独立する前に人脈ができていれば、仕事の紹介を受けられる可能性が高まります。知人や友人から積極的に仕事を回してもらえると、自ら営業しなくても安定した収入を得られるでしょう。
職場以外でも、デザイナー向けの交流会や勉強会に積極的に参加すると、互いに案件を紹介し合える仲間ができるでしょう。スキルや実績を伸ばす合間に人間関係も築いておけば、独立したときに有利です。
まとめ
近年はフリーランスとして活動し始めるデザイナーが増えています。会社員からフリーランスになるメリットは、時間が比較的自由に使えるようになったり工夫次第で収入アップやキャリアアップにつながったりする点です。
仕事の案件を得るには、エージェントやマッチングサービスの利用・人脈の活用など複数の方法があります。営業スキルに自信がある人は、積極的に企業にアプローチをかけるのもよいでしょう。
実績を伸ばしたい場合は、安い案件でも数を請けて経験を積むのがおすすめです。ある程度の経験やスキルを持つデザイナーなら、高単価の案件を選ぶことで収入が安定します。案件の幅が広がるよう、人脈づくりにも注力しましょう。