フリーランスの働く環境、借りる?自宅?
フリーランスで働く場合、事務所がどこにあるのかをはっきりさせる必要があります。とは言っても、必ずしも自宅とは別に事務所を構えなければいけないというわけではありません。
事務所を借りる場合と自宅を事務所にする場合のそれぞれに、一長一短があることを知った上で検討しましょう。
賃貸で事務所を借りる
フリーランスの人が、事務所として自宅とは別に賃貸物件を借りる際のメリットとデメリットをまとめました。
メリットは?
- 打ち合わせがしやすい
- クライアントからの信頼を得やすい
- プライベートを守れる
- オンとオフの切り替えができる
これらのメリットからもわかる通り、事務所を借りるメリットはクライアントからの信頼、仕事と私生活の区分けがしやすくなるといった点でしょう。
クライアントとの打ち合わせはカフェでもできますが、外部に漏らしたくない情報がある場合は別です。自宅でも打ち合わせは可能ですが、生活スペースである自宅にクライアントを呼びづらい人は多いのではないでしょうか。また、女性の場合、男性のクライアントを自宅に呼ぶのは抵抗がありますよね。
自宅とは別に事務所を構えていると、クライアント側に事務所を借りられるくらい安定して仕事を請け負っている実力者であると、認めてもらいやすくなります。
また、名刺に事務所の住所を記載することができ、気持ち的に仕事とプライベートの区別がついてメリハリがでます。自宅から事務所へ出勤して働くスタイルをとることで、頭を切り替えやすくなるという点もメリットです。
デメリットは?
- 賃貸料の支払いが必要
- デスクまわりの備品を整えるお金がかかる
- インターネット料金・電話料金・光熱費などがかかる
事務所を借りる場合、毎月の出費が増える点がデメリットです。
初期投資にお金をかけたり、安定した収入を得られるなら良いですが、そうでなければ事務所を別に構えることは難しいでしょう。また、自宅から離れた場所に事務所を構える場合、交通費やガソリン代なども別途必要になります。
自宅を事務所にする
フリーランスの仕事の場合は、自宅を事務所にすることが多いです。独立して間もない頃は、ほとんどの人が自宅を職場として利用するのではないでしょうか。自宅を事務所にする場合のメリットやデメリットをチェックしましょう。
メリットは?
- 毎月の出費を抑えられる
- 通勤時間を節約できる
- 家事や育児と両立させやすい
自宅で仕事をする場合でも、仕事に利用した光熱費・電話代・プロバイダ料金などは経費として計上できます。
また、通勤に関する悩みを解消できる点は、自宅を事務所として利用するメリットの1つです。満員電車に揺られることもなければ、遅延などで時間のロスが生じることもありません。
さらに、家事や育児をかけもちしながら仕事をする場合、仕事の合間に夕飯の下ごしらえをしたり、子どもの行事に参加したりと、ちょっとした時間の隙間も有効活用できます。
なので、子育てで忙しい方できる限り経費を抑えたい方などにはおすすめです。
デメリットは?
- クライアントを呼びづらい
- オンとオフの切り替えがしづらい
- 仕事だけに集中しづらい
家族と同居している場合、クライアントと打ち合わせがしたくても気軽に呼びにくいという点はデメリットです。特に、部屋をきちんと整頓することが苦手な人は、クライアントを呼びづらいと感じるのではないでしょうか。
そして、フリーランスとして働いていくために重要なことは、オンとオフの切り替えをしてメリハリをつけることです。常に仕事のことで頭がいっぱいになってしまうと、働くこと自体に嫌気がさしてしまいかねません。
また、「家族が家事を頼んでくる」とか「子供の声がうるさい」といった住環境では、仕事だけに没頭するということが難しい状況に陥ることもあります。
自宅をオフィスにすると、私生活と仕事を分けることが難しくなってしまうかもしれません。
自宅兼事務所は節税効果もあり
自宅を事務所として利用すると、思った以上に費用を抑えることにつながり、次のような効果が期待できます。
家賃の一部を経費にできる
フリーランスが自宅で仕事をする場合でも、家賃を経費に計上することが可能です。正しく計上するには、仕事をしている時間や使用しているスペースの割合を導き出す必要があります。
たとえば、ワンルームマンションに暮らしているからといって、1部屋分の家賃すべてを経費にすることはできません。あくまでも仕事として使用している部分だけが経費として認められるため、プライベート用として使用している部分は、経費として認められないことになります。
ワークスペース以外も経費に計上可能
仕事として使用している部分は、デスクの上だけというわけではありません。たとえば、仕事に必要な資料を収めておく本棚や収納ボックスを置くスペースも、事務所スペースとして利用していることになります。
パソコン1台で仕事が可能な人もいれば、たくさんの資料や物品を保存するスペースが必要な人もいるため、一概に何%なら経費に認められるとは言い切れません。もし、割合について不安な場合は、税理士さんに相談することも視野に入れましょう。
青色申告である事が前提なので注意
注意すべき点は白色申告の場合、仕事で使用しているスペースであるとはっきり認められないと、経費に計上することが難しいということです。
開業届けを出して青色申告をしている人と、届けを出していない白色申告者の場合、後者の方が事業に使用している割合について厳しい目で見られる傾向があります。
所得税法第45条に経費に含めることができるものについて、以下のような記載があります。
令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
引用:国税庁|法令解釈通達
仕事を遂行する上で、必要な部分が『支出の50%を超えているかどうか』という点が1つの目安となるため、あてはまっているか確認しましょう。
ただし、50%以下であっても割合が妥当であると判断されれば問題ありません。『割合が適正かどうか』、『割合を明確に説明できるかどうか』という点に気を配れば、経費として認めてもらえるでしょう。
コワーキングオフィスという働き方も
デスク単位でスペースをレンタルするコワーキングオフィスは、フリーランスやノマドワーカーにとって利用価値が高い場所です。メリットやデメリットについてチェックしましょう。
メリットは?
- 事務所を借りるよりも費用を抑えることができる
- 設備を整える必要がない
- コワーカー同士のつながりが期待できる
コワーキングスペースは、1ヵ月1~3万円程度で利用できる場合が多く、事務所を借りる費用に比べれば、微々たるものではないでしょうか。仕事をするためのデスク・チェア・プリンターといったものを用意する必要もありません。
また、コワーキングオフィスを利用すると、同じような立場の人たちとの交流が深まります。アイデアを交換しあったり、新しいビジネスに手をつけたりと、孤立しやすい環境にあるフリーランスにとってプラスとなる要素も増えます。
なのでコワーキングオフィスでは、事務所よりも費用を抑えることができながらも、私生活と仕事を切り替えることができ、人脈を広げることも可能です。
デメリットは?
- オープンスペースなので話声がうるさいことがある
- 自分の仕事だけに没頭しづらい
コワーキングオフィスは、自分だけの作業スペースを確保する場所ではありません。自宅で仕事に集中できないからといって利用しても、かえって仕事がはかどらない状態を招いてしまう場合もあります。
ざわついた空間での仕事が苦手な人や、他者との交流が苦手な人にとってはデメリットに感じる要素もあるという点を頭に入れておきましょう。
事務所を借りるタイミングって?
初期費用が必要になるだけでなく、毎月固定で出ていく額が増えるため、事務所を借りるタイミングは慎重に見極めなければいけません。フリーランスの人が事務所を借りるタイミングは、次の2つの時期を目安にすると良いでしょう。
事業として大きくしたい時が借り時
フリーランスとして毎月安定した収入を得られるようになった時や、事業を大きくしたいと感じた時は事務所を借りるチャンスです。
たとえば、仕事が順調ならば繁忙期に人手が欲しいこともあるでしょう。そうなると、自宅ではスペース不足ということが予想されます。前年、前々年に比べて仕事が忙しくなってきた時も、事務所を借りるタイミングだと言えるのではないでしょうか。
事務代行で賃貸開始期を見直すのもあり
必ずしもスタッフが同じスペースにいなければ仕事ができないかというと、そうでもありません。仕事内容次第では、在宅のスタッフを採用する方法もあります。
スタッフが出社しなくても仕事ができる環境なら、事務代行サービスを利用して事務所を借りる時期を見直すことも可能です。
まとめ
働き方や家族構成によっては、自宅を事務所として利用する方がメリットが大きい人もいますし、オンとオフを切り替えやすい環境を作った方が、仕事がはかどり収入が増える人もいるでしょう。
フリーランスという呼び名は一緒でも、働き方や理想が同じというわけではありません。自分の住環境やライフスタイルを客観的に見て判断することが重要です。