働き方改革で会社員の副業はどうなる?
政府が提唱する『働き方改革』により、会社員の副業容認の動きが本格化しています。なぜ今、政府は副業を後押しし、働き方改革を行おうとしているのでしょうか。
副業解禁の背景
政府の副業容認の背景には、『働き方改革』があります。
働き方改革とは、労働者が個々の事情に即して自由に働ける社会を目指すための改革です。
日本は『少子高齢化』に直面しており、想定以上に速いペースで生産年齢人口が減少しています。政府は働き方改革を推進することで生産年齢人口の減少を食い止め、50年後も必要な労働力を確保できるようにしておこうと対策を講じているのです。
副業容認による効果として期待できるのは、『労働生産性』の向上です。労働生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果の指標を指します。
現在の日本の労働生産性は低く、先進七カ国の中では最低クラスです。労働生産性は労働環境を改善することで向上できると考えられており、副業解禁はその対応策の一つとして推進されています。
副業を容認している会社の割合
2018年10月にリクルートキャリアが行った調査によると、副業を容認あるいは推進している企業の割合は28.8%であることがわかりました。
およそ7割の企業が副業を禁止しているわけですが、禁止の理由としては、副業による長時間労働の助長、労働時間の管理が困難になること、情報漏洩リスクなどが挙げられています。
とはいえ、政府が主導で副業容認を推す限り、副業を容認する会社は増加していくことが予想できるのです。
出典:リクルートキャリア『兼業・副業に対する企業の意識調査』
企業が副業を容認する理由
一方、副業を容認する企業は『特に禁止する理由が無い』『社員の収入増につながる』などの理由から、副業を認めています。
加えて、『社員が他の会社で経験や知識を積むことで自社への貢献度が上がる』という予想も、企業が副業を容認する理由の一つです。
副業禁止の強制力は?
先述したアンケート結果を踏まえると、会社員の副業解禁が当たり前となるのは、もう少し時間がかかりそうです。「副業したい」と考える会社員の中には、「就業規則で禁じられているからできない」という人も多いでしょう。
会社で副業禁止と言われている場合、どの程度の強制力があるのでしょうか。
法的な根拠はない
『副業禁止』というのはあくまでも会社内のことであり、法的な根拠はありません。憲法では『職業選択の自由』が保障されており、副業をしたからといって、法律に違反したことにはならないのです。
ただし、就業規則に『副業禁止』と明記されていることを承知のうえで副業すると、会社からペナルティを受けるおそれがあります。無断で副業した結果、会社の信用に傷を付けたりダメージを与えたりすると、最悪『懲戒解雇』もあり得るでしょう。
どうしても副業したい場合は、会社に理由を説明し、理解を求めることをおすすめします。
国家公務員は兼業が禁止されている
国家公務員は、国家公務員法で副業・兼業が禁止されています。
国民の公僕たる国家公務員には、『信用失墜行為の禁止』『秘密を守る義務』『職務に専念する義務』が課せられており、営利企業への接近は制限されているのです。
ただし、国家公務員でも、人事院が認めれば副業可能となるケースもあります。『特別な利害関係が発生しない』『職務遂行に影響しない』などの場合は、副業が認められるかもしれません。
国家公務員でもできる副業としては、以下のようなものがあります。
- 投資
- 社会貢献活動
- 執筆・講演活動
- 実家の手伝い
もちろん、上記の仕事でも、国家公務員法に抵触する副業は認められません。
副業選びには注意が必要
副業が容認されている会社でも、安易に副業を選ぶとトラブルに発展する可能性があります。会社員が副業を選ぶ場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
本業に支障がないか検討
副業を選ぶ際は、本業に与える影響をよく検討しましょう。
本業の合間に簡単にできる副業ならよいですが、拘束時間が長かったり手間がかかったりする副業だと、本業にかける集中力や時間が奪われます。副業のために本業がおろそかになっては本末転倒です。
過去の判例では、本業に支障をきたす副業を行った会社員への懲戒解雇処分は『有効』と認められたケースがあります。
本業に悪影響を与えれば、解雇される可能性があることは承知しておきましょう。
競合他社や会社の信用を損ねる仕事は避ける
競合他社で副業したり、副業先で本業の情報をもらしたりするのは、信用問題にかかわります。副業OKの会社でも就業規則に抵触するおそれがあるため、十分に注意しましょう。
副業でも本業の知識や経験が活かせれば有利と考えるのは当然です。しかし、本業の知識をそのまま副業先で使うのは、情報漏洩や守秘義務違反と取られかねません。
本業の会社の信用を損ねないよう、副業先は係わりのない業界を選ぶのがベターです。
損害賠償のリスクもある
競合他社で副業するなどして『競業避止義務』に反した場合、損害賠償を請求されるおそれがあります。
競業避止義務とは、従業員が競合他社に雇用されるなどして、会社の利益を不当に侵害することを禁止するものです。万が一、競業避止義務違反とみなされれば、会社が本来得られたであろう利益分の賠償を求められることがあります。
本業がある限り、あくまでもメインは本業であることを忘れてはいけません。
まとめ
政府が推進する働き方改革によって、現在、多くの企業で副業解禁の動きが見られます。ただし、公に副業容認を謳っている企業はまだ少ないのが現状です。実際に副業を始める際は、自身の会社の就業規則をきちんと確認してから行うようにしましょう。