開業届の出し方とは
開業届は税務署に提出する書類です。自宅のある住所を所轄(管轄)する税務署に提出します。
税務署へ直接提出
開業届は税務署の窓口で提出することができます。事前に書類を記入して持参するか、税務署で作成することも可能です。
現地で書類作成をするときは、担当者が記入をサポートしてくれるでしょう。
注意が必要なのは受付時間です。地域によって異なる場合もありますが、基本的には8時30分〜17時で、土日祝日は受け付けていません。
平日に出向けないならば、郵送などの手段をとる必要があります。また、年末や確定申告の時期は窓口の混雑が考えられますので、時間や予定に余裕を持って税務署を訪れるようにしましょう。
郵送でもOK
税務署に出向けないなら、郵送での提出も可能です。受理された後に控えが送られてきますので、返信用封筒の同梱や切手の貼付けを追加で行う必要があります。
提出書類が多いと想定していた重さを超えることがありますので、一通り書類を入れて封をした後、郵便局で重さを計ってから切手の貼り付けを行う方が無難です。
e-Taxからも提出できる
e-Taxは確定申告を電子的なやりとり行うことができるツールですが、確定申告だけではなく開業届の提出もe-Taxで行うことができます。e-Taxを使うには以下の事前準備が必要です。
- 電子証明書と電子署名の付与
- マイナンバーカード
- カードリーダ・ライタ
- e-Taxソフトのインストール
少し複雑に思えますが、国税庁が公開しているホームページにて詳細な手順が解説されています。準備や作業が可能であると感じたら、e-Taxでの書類提出も検討してみましょう。
事業の内容によっては許認可が必要な物もあるので、自分の行う事業に許認可が必要かどうか、事前に確認をするようにしましょう。例えばリサイクルショップを開業したい場合には先に古物商の許認可を取得しなければなりません。開業届はすぐに手続ができますが、許認可は開業届よりも時間がかかるので先に許認可を取得しておいた方がスムーズです。
許認可が必要な事業であるのか分からないような場合や許認可手続を代行してもらいたい場合には行政書士に相談しましょう。
榎本希
開業届の提出は税務署の窓口へ行って用紙に記載する方法、あらかじめ記載しておいた用紙を提出する方法、混雑状況にもよりますが税務署が空いている時期であれば30分程度で提出が完了します。
平日に時間がとれないような場合には郵送やe-Taxからも開業届の提出ができます。
用紙に記入する内容は簡単ですが、分からない場合には税務署で教えてもらうことができます。
開業届の記入に必要な物
開業届の提出先とその方法がわかったら、書類を作成する段階です。開業届には『マイナンバー』と『身分証明書』が必要になります。
マイナンバーと身分証明書
マイナンバーが定められてからは開業届も書式が変更となり、マイナンバーが必要になりました。12桁のマイナンバー(個人番号)を開業届に記入する必要がありますので、確認できる書類を必ず用意しましょう。
さらに、提出窓口では運転免許証やパスポートなど、本人確認ができる書類の提示も必要です。提出物だけではなく、本人確認書類も忘れず持参しましょう。
郵送の場合はコピーを作成
開業届を郵送で提出する場合も、『申請者のマイナンバーを確認できる書類』が必要です。マイナンバーが確認できる書類とは、次のいずれかになります。
- マイナンバー通知カード
- マイナンバーが記載されている住民票の写し
- マイナンバーが記載されている住民票記載事項証明書の写し
これらの書類以外に、『本人確認書類』も必要です。運転免許証やパスポートなどのコピーも忘れずに添付しましょう。
顔写真付きの『マイナンバーカード』があれば、それだけでマイナンバーの確認と本人確認の両方の役割を果たします。両面をコピーして、必要書類と一緒に郵送してください。
榎本希
- マイナンバー
- 印鑑
- 身分証明書
の3点があれば開業届の提出は可能です。
身分証明書は窓口の場合には提示を行い、郵送の場合にはコピーを同封します。
また、青色申告をする場合には開業届の提出と一緒に青色申告承認申請書も提出するとよいでしょう。
事業の規模によっては必要書類が異なる
個人事業であっても、従業員を雇う場合は提出する書類が増えます。以下の3つについて把握しておきましょう。
給与支払事務所等の開設届出書
従業員を雇って給与の支払いが発生するときは『給与支払い事務所等の解説届出書』を提出します。あらかじめ所得税を天引きする『源泉徴収』にかかわる書類です。
少額の給与で源泉徴収の必要がない場合や、従業員が家族だけの場合でも書類の提出は必要になります。書類の提出をしないと、税金を多く支払うことになるので、必ず提出しましょう。提出先は開業届と同じで、自宅のある住所を所轄する税務署です。
開業時に従業員を雇う場合には開業届にその旨を記載すれば提出は不要です。
また、家族従業員で青色事業専従者である場合には青色事業専従者給与に関する届出を提出します。
労働保険保険関係成立届
従業員をはじめて雇うときは、『労働保険保険関係成立届』を労働基準監督署に提出します。雇用形態は問わず、従業員を1人でも雇用すれば提出の義務が発生するもので、正社員も短期アルバイトも対象です。
労働保険は、仕事中や通勤途中に病気や怪我が発生した場合に給付されるもので、保険料は事業主の全額負担となります。手続きは従業員を雇うごとに行うものではありませんので、最初の従業員を雇う際に1回手続きをするだけです。
従業員を5人以上雇う場合には社会保険にも加入する必要があります。ただし、青色事業専従者(家族従業員)と本人は除きます。
雇用保険適用事業所設置届
『雇用保険適用事業所設置届』も従業員を1人でも雇えば、提出義務の発生する書類です。ただし、以下の適用条件があります。
- 31日以上雇用見込みあり
- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある労働者
以上の条件を満たす従業員を雇う場合は、書類を提出して雇用保険に加入することになります。ただし、65歳以上で雇用した従業員は制度の対象外です。
雇用保険は従業員が失業したとき、もしくは育児や介護で働けない場合に給付される手当であり、保険料は事業主と従業員が折半して支払います。
注意点として、この書類は労働保険保険関係成立届を提出した後に提出するものです。さらに、従業員を雇用してから10日以内に提出する必要があります。
労働保険保険関係成立届と違い、従業員を雇うごとに提出する書類ですので、忘れないよう注意が必要です。
榎本希
開業と同時に従業員を雇用する場合には開業届にその旨を記載することで給与支払事務所等の開設届出書は不要になります。
青色申告をする場合で家族従業員がいる場合には代わりに青色事業専従者給与に関する届出を提出します。
従業員を本人と青色事業専従者を除いて5人以上雇用する場合には社会保険にも加入する必要があります。
保険関係成立届は雇用の翌日から10日以内、概算保険料申告書は雇用の翌日から50日以内にそれぞれ労働基準監督署へ、雇用保険適用事業所設置届は雇用の翌日から10日以内、雇用保険被保険者資格取得届は雇用日の翌月10日までにそれぞれハローワークへ提出します。
まとめ
開業届は住まいの住所を所轄する税務署に提出します。提出方法は税務署に直接出向くか、郵送やe-Taxでも可能です。マイナンバーカードや身分証明書などの必要書類をそろえて、自身にあった提出方法を選択しましょう。
開業届を提出した後も、さまざまな書類の提出義務がついてまわりますが、それらは自身や従業員にとって大切な手続きです。必要な書類の種類とその役割をしっかりと理解し、提出を忘れないよう注意しましょう。