業務委託を請けるときは開業届を出そう。提出方法やメリットを紹介

業務委託を受ける前に開業届を税務署に提出しておきましょう。開業したことを申告しておくことで、個人事業主はさまざまなメリットを得ることができます。この記事では、行政書士の榎本希先生と具体的なメリットの内容や提出方法を紹介します。

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個人事業主が開業届を出すメリット

個人事業主が開業したことを税務署に知らせるための書類が『開業届』です。では、開業届の提出には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

「開業届提出のメリットは

  • 青色申告承認申請書えお提出し、青色申告を行った場合に青色申告特別控除が受けられ節税が出来る
  • 屋号付きの銀行口座を作ることが出来る
  • 赤字を3年まで繰り越すことが出来る
  • 事業主としてのモチベーションが上がる
  • 小規模企業救済の退職金制度を利用出来る

点にあります。

一方、開業届提出のデメリットは、

  • 失業保険を受け取れなくなる可能性がある
  • 確定申告をしないと税務署から注意を受ける事がある

点にあります。

業務委託収入の青色申告ができる

業務委託の収入などを得て、フリーランスとして活動した収入が増えてくると、確定申告をする必要があります。その際に、青色申告ができるというのが、開業することの一つのメリットです。

通常の確定申告は『白色申告』ですが、『青色申告』をするためには開業届の提出が必要です。青色申告では特別控除を所得から差し引くことや、赤字の繰り越しなどが可能で、課税額を抑えることができます。

青色申告をするためには開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。

屋号つきの銀行口座を開設できる

銀行口座の開設は通常、本名でしか行えません。しかし、開業届を提出すると、屋号つきの銀行口座が開設できるようになります。

屋号つきの口座の場合はネットでの受付をしていない場合や、開業届の提出が必須となるなど、通常の口座開設といくつか異なる点があるので、あらかじめ銀行に開設の条件を確認しておきましょう。

屋号のみの銀行口座の開設はゆうちょ銀行(振替口座のみ)になっています。

「屋号+本名」の形での口座開設がほとんどです。

また、個人事業主で口座の開設をする場合には開業届の提出の後に開業届の控えのコピーなどを提出し、審査後に口座開設が出来る場合がほとんどです。そのため、口座の開設はネットバンキング以外は窓口での開設となります。

開業した自覚ができモチベーションに繋がる

正式に開業したことで、事業主としての自覚が生まれ、モチベーションのアップにつながる人は多いようです。

モチベーションのキープも、仕事をする上では重要なことなので、大きなメリットと言えます。

小規模企業共済の退職金制度を利用することが出来るというのも開業届を提出するメリットになります。

小規模企業共済制度は個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。廃業時に共済金の受け取りが可能です。

小規模企業共済の掛け金は全額所得控除されます。

開業届は開業から1カ月以内に提出

開業届は、開業してから1カ月以内に提出する義務があります。開業日は任意に決められるため、切りがいいように月の1日や、大安の日にするといった個人事業者も多いようです。

開業届の提出にはどのような手続きが必要なのでしょうか。

「開業届の提出は下記の通りです。

  1. 開業日を決める
  2. 開業届を入手する(国税庁のHPからダウンロードすることも出来ます)

    青色申告を行う場合には青色申告承認申請書も入手します。

  3. 必要事項を記入する
  4. 税務署に提出する(税務署の窓口で提出することも郵送することも出来ます)

*都道府県税事務所に事業開始当申告所も併せて提出しましょう。」

次により具体的な開業届の提出方法について解説します。

開業届の入手方法と書き方

まずは『個人事業の開業・廃業等届出書』という書類を入手しましょう。入手方法については、最寄りの税務署からもらってくる方法と、国税庁のホームページからPDFファイルをダウンロードし、プリントアウトするという方法があります。

この時、控えも必ずもらうようにしてください。口座の開設などで後々使うことになります。

書き方については、『個人事業の開業・廃業等届出書』のファイルのすぐ下に『書き方』というガイドラインがあるので、そちらもダウンロードしましょう。

個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

税務署へ持参または郵送で提出

書類が作成できたら、税務署へ持参するか、郵送によって提出しましょう。

この時、マイナンバーカードなどの本人確認書類が必要になりますので忘れないようにしてください。郵送の場合は、本人確認書類のコピーの添付が必要です。

出典:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁

青色申告承認申請書も一緒に出そう

確定申告で青色申告をするために、開業届と一緒に『青色申告承認申請書』も一緒に提出してしまいましょう。別々に提出するよりも手間がかかりません。

青色申告承認申請書の提出は『開業日から2カ月以内』に行うのが原則です。それを過ぎてしまうと、その年に青色申告ができなくなる可能性があります。

事業を開始した場合には税務署に提出する開業届の他、都道府県に事業開始等申告書を提出する必要があります。提出期限は都道府県により異なります。提出先は都道府県税事務所です。

提出期限の例としては例えば東京都では事業開始から15日以内、神奈川県では事業開始から1ヶ月以内となっております。

開業届に関する疑問

最後に、開業に関する疑問点について触れていきましょう。提出を忘れた場合や、届出前の経費について、具体的に解説していきます。

提出し忘れたらどうなる?

前述しましたが、開業届は開業から1カ月以内に提出しなければなりません。提出し忘れた場合、もう提出できないのかと不安に思う個人事業主もいるのではないでしょうか?

開業届を提出し忘れると罰則等あるのでしょうか。

「特に罰則等はありません。

しかし、開業日から2ヶ月以内に青色申告を提出しなければその年の確定申告は白色申告となり、青色申告の特別控除は受けられません。

そのためその年の赤字があった場合に繰り越すことが出来ません。」

開業届の提出を忘れたからといって、法的に罰せられたり、開業できなくなったりといった、ペナルティはありません。

ただし、開業届を提出していないと、事業として税務署には認められません。そのため、青色申告で確定申告を行うことができないのです。

開業1年目は設備投資等などで多くの出費が出るでしょう。それが原因で赤字になった場合の繰り越しや、特別控除が受けられないというデメリットがあります。

白色申告であれば確定申告は出来ます。

開業日から2ヶ月を経過してしまってから開業届を提出した場合その年の確定申告は白色申告で行い、青色申告をする前年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば次回の確定申告からは青色申告で確定申告が行えます。

白色申告では赤字を繰り越すことは出来ませんが、開業費としてであれば繰り越すことが出来ます。

届出前の業務委託の売上や経費は計上できる?

開業前に、既に仕事をしていて得た収益や、開業届を出す以前に開業のための設備投資などを行った場合、その費用は計上できるのでしょうか?

「開業届の提出前の売上については雑所得または事業所得として計上することになるかと思います。税理士によっては開業前の収入についても事業収入と扱うようなので、税理士に意見や考えを聞いた上で雑所得とするか事業所得とするか考えた方が良いでしょう。

また、開業届に記載された開業日前の費用については開業費として一括計上します。」

実は、開業費は『いつから』という具体的な規定はありません。開業のための準備費用や準備期間中の収入として、遡って計上することは可能です。

とはいえ、あまりに過去に遡って計上すると『開業との関連性が薄い』と見なされて、税務署から指摘が入るでしょう。数カ月から1年前程度の期間が、一般的に妥当なラインとされています。

開業費は開業届に記載した開業日の前に発生した費用となります。こちらは開業費としてまとめて計上することになります。

個人事業主の開業費については会社や法人の場合のような「特別に支出した費用」に限定されず、時間的な範囲についても限定されません。

そのため理論上では例えば開業の準備に何年もかかる場合があっても開業日前の開業準備費用を一括して開業費として処理することが出来ますが、一般的には数ヶ月前から半年前くらいのものが妥当な範囲であると思われます。

まとめ

個人事業主として業務委託契約を結んで仕事に従事する場合、なるべく早く開業届を提出することをおすすめします。開業届の提出によって、青色申告ができるようになるなどのメリットがあるからです。

開業届は開業日から1カ月、青色申告承認申請書は開業日から2カ月以内に提出しなければならないため、期間を過ぎないように気をつけましょう。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。


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