受注生産の意味を知ろう
受注生産と見込み生産について、それぞれの意味を確認しましょう。
受注生産方式とは
受注生産とは、注文を受けてから生産し出荷する生産形態のことです。一般的な言葉に置き換えると、『オーダーメイド』が最も近い意味になるでしょう。
連続生産やロット生産が商品の大量生産方式であるのに対し、受注生産は一般的に少量の生産方式になります。
例えば、造船など購入者のためだけに製造する場合は、必ず受注生産になります。一方で住宅は建売と注文の二通りあるので、受注生産のみ行う業態ではありません。
受注生産は、繰返受注生産と個別受注生産の二つに分けられます。また、対照的な生産方式として見込み生産があります。
受注生産の反対は見込み生産
見込み生産とは、需要に対する予測や販売計画に基づき生産の見込み計画を立て、それに基づき生産をし、注文時に出荷する生産形態のことです。
一つの製品を一定期間連続して生産する連続生産方式や、同じ製品仕様に基づいて繰り返し製造する繰返生産方式では、必然的に見込み生産が必要とされます。
定番品など特定の商品を大量生産する業種や、生産ラインが特定の製品に限定されている業種などに使われる生産手法です。
受注生産のメリット
注文を受けてから商品を作る受注生産方式には、どのようなメリットが考えられるのか確認しましょう。
売る側のメリット
受注生産方式における売る側のメリットは主に三つあります。
まず一つ目のメリットは、個別製品に対応できるという点です。受注生産は汎用製品と違い、基本的には世界でただ一つしかないものを作るための生産方法です。生産過程でもニーズに合わせて手を加えていけるので、最終的に唯一無二の商品が作れます。
二つ目は、在庫を持つ必要がないということです。受注生産方式では注文を受けてから生産を開始するので、原材料などの在庫はともかく、商品としての在庫は原則として発生しません。商売をする上で在庫を抱えなくて済むということは、非常に大きなメリットです。
三つ目のメリットは、商品を売り損なうリスクがないということが挙げられます。注文を受けてから生産を開始するということは、言い換えれば『売った後に商品を用意する』ということです。既に売れているものを作るため、引渡しまでのキャンセルなどがなければ、売り損なうことはありません。
買う側のメリット
受注生産方式には、商品を購入する側にもメリットが考えられます。
受注生産方式の場合、購入者は元々出来上がっている既存のものを買うのではなく、商品を一から作ってもらいます。そのため、購入前や購入直後だけでなく、生産の過程でも色々と打ち合わせを重ねながら、購入者自身が望む形により近づけられます。
受注生産のデメリット
受注生産方式にはデメリットも考えられます。売る側と買う側双方の観点から、どのようなものがあるのか確認しましょう。
売る側のデメリット
受注生産方式における売る側のデメリットは、商品の受け渡しに時間を要することが挙げられます。注文を受けてから商品を作るので、購入者に対してすぐに商品を渡せません。
また、注文を受けてから商品が出来上がるまでの間に、生産に関して購入者から様々な要望を受けることが予想されます。そのため、注文当初に予定していた完成図とは異なった商品になってしまう可能性があり、場合によってはデメリットになるでしょう。
完成までのプロセスで購入者と打ち合わせをすることにより、利用する原材料などを変更せざるを得なくなり、追加費用の請求を余儀なくされる可能性もあります。
買う側のデメリット
受注生産方式における買う側のデメリットは、そのほとんどが売る側のデメリットと関連します。まず、注文してから作成するまでに時間がかかるので、商品をすぐに受け取れません。
また、注文段階では商品が存在しないので、現物を見て買うかどうか決められないのもデメリットといえるでしょう。出来上がるまでの間に色々と口出しができる可能性があるとはいえ、出来上がった状態は基本的に完成時にしか見られません。どんなものができるかわからないリスクがあるともいえます。
さらに、受注生産で作られるものは個別製品であるため、他の類似製品との比較ができず、費用の相場が分かりにくいのもデメリットです。基本的にオーダーメイド品は高価になりやすいので、ほとんどの場合、類似の汎用製品よりコストがかかります。
受注生産について詳しく
受注生産には細かい点においてさまざまな特徴があります。主なポイントについてそれぞれ解説します。
リードタイム
受注生産に関しては、注文から納期までに要するリードタイムについて、買う側と売る側の双方から考える必要があります。
買う側が考えるリードタイムは、注文日から納期予定日までの期間です。対して、売る側のリードタイムは、部品や原材料を仕入れて製造に着手し始めてから完成するまでの期間です。例えばリードタイムについて買う側が30日で売る側が14日なら、受注生産できるということになります。
しかし、実際にはここに生産計画のサイクルタイムも考慮する必要があります。
計画サイクルタイムが毎週の7日なら、14日のリードタイムと合わせて21日となり、売る側のリードタイムである30日を下回るので受注生産が可能になります。計画サイクルタイムが毎月なら、トータルがオーバーしてしまうので、受注生産は厳しいということになるでしょう。
受注生産を考える際は、リードタイムと生産計画のサイクルタイムを併せて考えることが重要です。
製品種別
受注生産方式の場合、注文を受けてからの生産・出荷となるため、『多品種少量生産』もしくは『世界に一つしかない商品』を作る場合に使われる生産方式です。
例えば船舶や注文住宅は、基本的に受注生産方式でしか作れません。また、世の中には特別仕様のオーダーメイドに対応している業種も多々ありますが、それら個別製品は全て受注生産方式での生産となります。
受注生産方式における最大のメリットと考えることもでき、汎用製品との差別化も図れます。時間やコストがかかっても自分に合ったものが欲しい場合は、受注生産方式で注文し生産してもらうのが一般的です。
コスト
受注生産方式では注文後に部品や原材料の仕入れを行えばよいので、製造原価が高い製品の生産に向いています。
製造原価の高い製品を汎用製品として生産すると、余剰在庫が発生した際に利益を圧迫することになりかねません。大量生産に向く汎用製品の生産においては、製造原価の安い製品を対象に生産すべきだといえます。
見込み生産について詳しく
受注生産の特徴について、主なポイントをそれぞれ解説します。
リードタイム
見込み生産は受注生産と違い、注文してから生産にとりかかる形態ではありません。そのため、基本的には買う側のリードタイムが作る側のリードタイムより短くなります。
注文時には製品が出来上がっていなければならないので、事前に内示情報などを見せてもらう必要もあるでしょう。
製品種別
見込み生産の場合は汎用製品が多いので、何かのジャンルに特化した製品はほとんどありません。一般的には、誰かに売れるだろうという『見込み』で、注文前に生産されます。
例えば注文住宅が受注生産なのに対し、建売住宅は見込み生産です。また、造船は受注生産ですが、自動車製造は一般的に見込み生産となります。
買い手が強気に無理なリードタイムを要求してきても、汎用製品なので他の相手に売れる可能性があります。一方で、基本的には在庫を抱える必要があるので、赤字在庫になるリスクは避けられません。
コスト
見込み生産による製品は一般的に大量生産製品であり、受注生産と違い他社との競争が激しくなる可能性があるため、利益率は低めです。
見込み生産で利益を確保するには,原材料費や機械操作など生産におけるコストダウンが必要になります。しかし、買い手が実物を見て購入を検討できるので、受注生産に比べ売れやすくなります。
受注生産の分類
受注生産は大きく二つのタイプに分けられます。それぞれの特徴を確認しましょう。
個別受注生産
個別受注生産とは受注生産方式の一種で、受注ごとの個別な仕様に基づいて生産する形態のことをいいます。
買い手のニーズに合わせて商品のバリエーションをあらかじめ用意し、必要に応じて少量ずつ生産する『多品種少量生産』で採用されます。試作品を製造するときなどにも利用することがある生産方式です。
製品の仕様は注文ごとに異なるため、その都度資料の提供を依頼したり、自社で資料を作成したりすることになります。また、製品の部品在庫がほどんどない場合が多いことも特徴の一つです。
代表的な製造業種としては、専用機と呼ばれる機械設備メーカーや、その機械設備で使用する金型などを製造するメーカーなどが挙げられます。
製番管理について
個別受注生産における管理方法として、製番管理といわれる手法があります。製番管理とは、それぞれの製品に製番と呼ばれる管理番号を付与し、製番により生産を管理する方法です。
例えば注文住宅を建てる場合、注文ごとに製番が付与されます。一方で住宅の建設には設計作業・部品の準備・施工作業が主に必要な作業となり、これらの作業はそれぞれ『手配』と呼ばれます。つまり、一つの製番で複数の手配を管理できるということです。
このように、個別受注生産は注文ごとに作業内容が異なる場合がほとんどなので、製番管理により一つの業者が複数の個別受注生産を請け負う場合に管理がしやすくなります。
繰返受注生産
個別受注生産が異なる製品仕様に基づいて行う生産形態なのに対し、繰返受注生産は同じ製品仕様に基づいて、文字通り繰り返し製造する生産形態のことをいいます。
製品の仕様は、最初にその製品を注文する際に提供される場合と、請負元自身が準備する場合があります。
自動車・家電・食品・日用品など、規格商品を市場に展開する業界や、その裾野に広がる部品サプライヤーなどの加工業は、ほとんどが繰返受注生産での生産形態です。
生産管理システムについて
生産管理は製造業にとって重要な業務の一つであり、生産管理における様々な業務の全体像を常に把握することは重要です。そこで、システムを導入する場合のメリットやシステムの機能について解説します。
生産管理システムのメリット
生産管理システムを使うことで、主に以下の三つのメリットがあります。
- 在庫のズレや余剰が解消され、検品の手間を減らせる
- 在庫切れを防止でき、販売の機会を逃さない
- 現金を確保でき、資金繰りが安定する
これらのメリットにより、収益性の向上・コストの削減・売上アップなどの効果が期待できます。システムの導入により業務全体におけるムダを削減でき、直接利益につながる業務に集中できることで、結果的に企業の経営改善にもつながります。
生産管理システムの機能
生産管理システムに搭載されている主な機能を以下に紹介します。
需要予測 | 取引履歴や営業予測、傾向、季節ごとの変動を基にして需要の計算が可能です。環境に合わせて様々なパラメータを設定できることが多く、生産計画を柔軟に管理できます。 |
在庫管理 | 流動的な在庫をリアルタイムで把握していくことにより、在庫の過不足を効率的にコントロールできます。 |
仕入先管理 | 調達管理システムや受注管理システムなどから構成され、販売までのトータルフローを効率化できます。また、会計システムとも連動し、売上計上データや購買データが自動共有され、会計システムに反映されます。 |
製造 | 受注から製造指示までのプロセスを効率化できます。生産過程における全てのステージを可視化することで、迅速な意思決定と市場への供給が可能となります。 |
生産管理システム選びのポイント
生産管理を上手に行うためには、生産管理システムの選択で失敗しない、いくつかのポイントを理解しておく必要があります。
導入目的
生産管理とは、製造業における業務全体のプロセスを、ムダのないように管理することです。システムを導入する目的は、生産管理業務をさらに効率化することにほかなりません。
しかし、生産管理システムの導入は大々的なイベントであり、1台のパソコンにビジネスソフトをインストールするような変化とはわけが違います。組織の規模によっては生産部門だけでなく、受注・販売・会計といった部門にまで大きな影響が及びます。
まずは「何のために導入するのか」といった目的を、社内や取引先に対して明確にする必要があるでしょう。
ニーズの明確化
企業の経営者は、顧客のニーズには敏感でも、社内のニーズには鈍感になりがちです。生産管理システムを選ぶ際は、生産現場が抱えている諸問題を前もって明るみにしておくべきでしょう。
現場で顕在化したニーズに対して適切に対応できるシステムこそ、その企業で導入すべきシステムといえます。低コストや機能の豊富さだけを理由にシステムを選んでも、現場で使いにくければ導入の意味はほとんどありません。
現場で喜ばれるシステムの導入は、業務全体の効率化を実現するだけでなく、スタッフのモチベーションを上げることにもつながります。できればシステムに携わる予定の人全員に対し、導入前に使い勝手を確認できる状況を作ることが望ましいでしょう。
クラウドと自社運用どちらが良い?
生産管理システムの運用タイプには、自社運用型とネット上のクラウドを利用する型の二種類があります。
費用に関しては、自社型は基本的に導入時一括で支払いますが、ランニングコストがかかりません。一方、クラウド型は初期費用を安くおさえられますが、一定のランニングコストが発生します。自社型は買い切り、クラウド型はレンタルと考えれば分かりやすいでしょう。
カスタマイズ性の面から比較した場合、自社型は導入時にある程度のカスタマイズに応じてくれますが、その後は基本的に全て自社で行う必要があります。一方、クラウド型は導入時にカスタマイズできない場合も多々ありますが、その後のアップデートや故障などの際は提供側が対応してくれます。
セキュリティ面も慎重に比較しておきたいポイントです。自社型の場合は、自社でしっかりと管理をしておけば安心ですが、逆に考えると完全な自己責任になります。一方でクラウド型の場合は常にネットを介しての運用となるので、安全面の責任はシステム提供側に課されます。
特にセキュリティの問題は、情報漏えいなどの関係で神経質にならざるを得ない部分です。世の中にはセキュリティ対策を専門としたサービスもあるので、自社型の生産管理システムを導入する場合は、併用を検討してみるのもよいでしょう。
まとめ
受注生産とは注文を受けてから生産する形態です。注文前に生産する見込み生産と比べ、様々なメリットやデメリットがあります。
また、生産管理システムを導入することにより、受注生産を含めた生産管理を効率よく行えるようになります。システム導入の際には、目的やメリットなどを考慮して慎重に選択する必要があるでしょう。