契約書とその必要性
『契約書』とは、両者の間で交わす契約内容を明確にするための書類のことを言います。
『契約書』は必ず交わさないといけないものではありませんが、取り交わしておかないと「報酬が支払われなかった」「途中で大幅な契約内容の変更があった」というトラブルが起こったときに困ることになります。
『フリーランス』は自分のことは自分で守るという意識が大切なため、『契約書』をしっかり交わしておく必要があると言えるでしょう。
合意と契約とは
まず、『契約書』のことを考える上で『合意』と『契約』の意味を理解しましょう。
『合意』とは、両者が交わした約束のことを言います。原則として守ることが前提となっていますが、仮に約束違反が行われたとしても法的に罰せられることは稀(まれ)です。
一方、『契約』は、両者で交わした約束が守られなかったとき、その履行(りこう)を強制したり、損害賠償を請求したり、一定の法的拘束力を有するものになります。
つまり、『契約』は『合意』以上のものだと言えます。
契約書の必要性
『フリーランス』によっては、電話やメールで契約内容に触れるだけで『契約書』を交わさないケースがあります。しかし、そういった場合、のちのち困ることになりかねません。『契約書』の必要性としては五つ挙げられます。
- トラブルを防止する
- 契約内容を明確に見える化する
- 経理や税務的業務を行う証拠になる
- ビジネス戦略を立てられる
- 民事裁判で有効な証拠になる
とりわけ『フリーランス』は仕事を請け負う側ですので、クライアントより弱い立場になりがちです。契約内容に関して口頭で交わしただけになると、「言った」「言わない」の水掛け論的なやりとりになったときに押し切られる可能性があります。
そのときに『契約書』を交わしていると、根拠として提示することができます。また、記録として残しておくと、何かトラブルがあったときに役立つでしょう。
契約書なしで仕事をするリスク
『契約書』を交わしていなければ、トラブルが発生したときは法律の定めによることになります。法の解釈に左右されるため、自分にとって不利益な判断が下されることがあります。
事前に両者間で取り決めておけば、より穏便に解決が図られるでしょう。さらに、トラブルを未然に防ぐ『予防法務』という役割も担います。
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契約書作成の注意点
『契約書』は重要な書類であることを紹介しましたが、記載されている文面がやや複雑でとっつきにくい印象を与えるかもしれません。
とりわけ『契約書』を作成するときはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
テンプレートだけでは不足する可能性
『フリーランス』によっては『契約書』のテンプレートがあり、どの契約でもそのまま利用しているというケースがあります。
しかし、テンプレートはあくまでも必要事項のみの記載に留まるので、それぞれの契約に合わせた形にしなければいけません。
『契約書』の作成は、両者間の協議の上、合意した事項を確認する意味を持ちます。その協議をする過程でリスク分析を行うことができ、トラブルを未然に防ぐことができるというわけです。
取り決めがない事項の場合
『契約書』の取り決めがない事項に関して何かトラブルが発生したときは裁判所の判断に従うことになります。法律に従って、適切に裁かれるというわけです。
『契約書』の作成は少し手間に感じるかもしれませんが、トラブルを起こさないために、トラブルが起こったときのために、必要な書類だと認識しましょう。
契約書の主な項目と書き方
続いて、『契約書』の主な項目と書き方を理解しましょう。
住所や屋号などの基本情報と印鑑
『契約書』に必要な項目は以下の通りです。
- タイトル
- 契約内容
- 契約する日付
- 両者の住所・屋号・署名・印鑑
- 収入印紙の貼り付け
『収入印紙』が必要な書類は印紙法によって定められており、必ず必要というわけではありません。『契約書』を作成するときは、『収入印紙』が必要なのか、事前に調べておくことをおすすめします。『収入印紙』に関しては後ほど詳しく説明します。
業務範囲やお金に関わること
業務範囲に関しては、細かいことは別途仕様書やレギュレーションを参照することになりますが、どこまで担当するのか明確に定めておく必要があります。
そうでないと、後付けで業務が追加されていき、仕事を請け負う『フリーランス』にとって苦しい状況になります。
お金に関しては、とても重要なポイントですので、特に注意が必要です。例えば、以下のことを明確にしましょう。
- 消費税込みの金額なのかどうか
- 報酬の銀行口座振り込み手数料はどちらが負担するのか
- 報酬の支払い期限はいつなのか
また、仕事を開始する前にクライアントから報酬の一部を『着手金』として受け取ることもできます。報酬未払いというトラブルが起こりにくくなるので、クライアントと相談の上、対応してくれそうなら、依頼するとよいでしょう。
責任や権利に関わること
責任や権利に関しては、以下のようなことが挙げられます。
- 納品確認および修正対応の期限を定める
- 瑕疵(かし)担保責任をどうするか
- キャンセル料金はいくらなのか
- 著作権を放棄するか
- 秘密保持を締結するか
責任の範囲や度合い、権利をどうするか、両者間で相談する必要があります。
契約書と収入印紙について
『収入印紙』とは『課税文書』と呼ばれる特定の書類に対して課せられる『印紙税』を納めるためのものです。コンビニや郵便局、法務局などで購入することができます。
『収入印紙』を貼ることで税金を納めたことになります。『契約書』にも関わることですので、『収入印紙』について紹介します。
収入印紙は必要か
結論から言うと、必ずしも『契約書』に『収入印紙』が必要とは限りません。しかし、『収入印紙』を貼る、つまり、税金を納めることによってメリットが生じます。
仮に取引に法的問題があれば、トラブル解決のために国が責任を持って対処することを約束してくれるというわけです。
とりわけ『業務委託契約書』は目にする機会が多いのではないでしょうか。契約金額がいくらであっても一律4,000円が必要になります。
印紙代を負担するのは
さて、気になるのが『収入印紙』の料金をどちらが負担するか、ということではないでしょうか。『収入印紙』の負担については明確には定められておらず、慣習としては契約する両者が折半するケースが多いです。
何らかの法律で定められているわけではないので、ケースバイケースだと言えます。このことも含めて、両者で話し合いを行う必要があるでしょう。
まとめ
『フリーランス』にとってきちんと『契約書』を交わすことはとても重要なことです。契約内容を明確化して、トラブルを未然に防ぐというメリットがあります。
とはいえ、テンプレートの契約書では行き届かないことがいくつかあるので、契約を締結する両者でしっかり協議した上で、細かいことも記載しておくことをおすすめします。
あまり考えたくないことですが、報酬の未払いに出くわすことがあるかもしれません。そういったときにも『契約書』は役立ちます。自分の身は自分で守るためにも『契約書』を締結しておきましょう。