セキュリティエンジニアの将来性は「需要が高い」と語られることが多い一方で、どの程度足りないのか、年収にどう表れているのかまで数字で示した情報は多くありません。
この記事では、IPA(情報処理推進機構)の企業調査、警察庁のサイバー空間の脅威の統計、厚生労働省の賃金統計という3つの公的データから、需要と年収の今を確かめました。
あわせて、Offers に掲載されたセキュリティ職の正社員求人が提示する年収の下限と上限を数えています。セキュリティの実務を経験してきた人が、この職種を続けるか、どの方向へ広げるかを判断する材料にしてください。
セキュリティ人材が不足していると答えた日本企業は72.7%
IPA『DX動向2025(データ集)』で、DX に取り組む日本企業のうちサイバーセキュリティ人材が「大幅に不足している」と答えた企業は36.5%、「やや不足している」は36.2%で、合わせて72.7%が不足と答えています。2024年度調査で n=1,187、合計は Offers Magazine 編集部が算出しました。
同じ調査で米国の企業は合わせて27.7%、ドイツの企業は45.9%でした。日本ではセキュリティの担い手が足りないと感じている企業の割合が、米国やドイツよりはっきり高い状態です。
国 | 大幅に不足している | やや不足している | 不足の合計 |
|---|---|---|---|
日本(n=1,187) | 36.5% | 36.2% | 72.7% |
米国(n=391) | 9.5% | 18.2% | 27.7% |
ドイツ(n=366) | 18.0% | 27.9% | 45.9% |
出所: 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025(データ集)」人材類型別の「量」の確保状況(2024年度調査)、不足の合計は Offers Magazine 編集部が算出。
この調査でいうサイバーセキュリティ人材は、業務を支えるデジタル環境で、サイバーセキュリティリスクの影響を抑える対策を担う人材と定義されています。
人材類型別に見たサイバーセキュリティの不足
同じ調査の日本企業の回答では、「大幅に不足」と「やや不足」の合計がサイバーセキュリティで72.7%と、DX を推進する5つの人材類型の中で最も高い割合でした(合計は編集部が算出)。
人材類型(日本) | 大幅に不足している | やや不足している | 不足の合計 |
|---|---|---|---|
サイバーセキュリティ | 36.5% | 36.2% | 72.7% |
データサイエンティスト | 50.4% | 18.5% | 68.9% |
ビジネスアーキテクト | 49.8% | 18.2% | 68.0% |
ソフトウェアエンジニア | 35.7% | 26.5% | 62.2% |
デザイナー | 42.5% | 18.5% | 61.0% |
出所: 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025(データ集)」(2024年度調査・n=1,185〜1,187)、不足の合計は Offers Magazine 編集部が算出。
「大幅に不足」だけで比べると、データサイエンティストやビジネスアーキテクトのほうが高い割合です。IPA は同じ図の要約で、日本ではとくにビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティストが不足しているとしており、合計で並べてサイバーセキュリティが最も高いという見方は編集部の集計によるものです。サイバーセキュリティは「やや不足」の割合が大きく、多くの企業が少しずつ足りないと感じている形をしています。
DX に取り組む企業の7割を超える回答が不足を示していることが、この職種の需要の土台です。
需要を押し上げるランサムウェア被害の高止まり
警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、令和7年(2025年)に警察へ報告されたランサムウェアの被害は226件で、警察庁は依然として高水準で推移していると評価しています。
同じ資料では、被害に遭った企業・団体へのアンケートで、復旧に総額1,000万円以上を要した組織が全体の5割を超えていました。
出所: 警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」。
被害の1件ごとの損失が大きいほど、企業は侵入を防ぐ設計、異常を早く見つける監視、被害を広げない初動の体制に投資する理由を持ちます。セキュリティエンジニアの仕事はこの3つのどこかに当たるため、被害の高止まりはそのまま需要の高止まりにつながります。
AI の活用でも情報セキュリティ対策への期待が最も高い
IPA『DX動向2026』では、官民による投資を期待する AI の分野として「情報セキュリティ対策」を挙げた企業が58.4%で、選択肢の中で最も高い割合でした。2026年4月中旬から6月中旬に行われた調査の結果です。
出所: 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2026年7月30日公表)。
企業が AI を業務に取り入れるほど、データの扱いやアクセスの管理といった守るべき範囲は広がります。AI を使う側の仕組みを安全に設計できるセキュリティエンジニアは、これから求められる場面が増える立場にあります。
セキュリティ職が入る2つの統計区分と年収換算
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」で、情報セキュリティ技術者が含まれる「その他の情報処理・通信技術者」の年収換算は約609.8万円、システムコンサルタントやシステムアナリストが入る「システムコンサルタント・設計者」は約889.0万円です(企業規模計・男女計を Offers Magazine 編集部が年収換算)。
区分に含まれる職種は厚生労働省「職種一覧と解説」によります。
年収換算は、毎月の給与(きまって支給する現金給与額)の12か月分に年間賞与などを足した概算です。
監視や運用を中心に担うと前者の水準に、対策の方針を設計して提案する比重が高いと後者の水準に近づくと読めます。どちらの区分に近い仕事をしているかで、将来の年収の見通しは変わります。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」の年齢階級別の値を編集部が年収換算すると、その他の情報処理・通信技術者は25〜29歳の約452.7万円から55〜59歳の約777.8万円まで、年齢が上がるほど高い値でした。2つの区分の年齢別・企業規模別の表は「セキュリティエンジニアの年収」で比べています。
Offers の正社員求人に見るセキュリティ職の年収帯
題名にセキュリティなどの語を含む Offers の正社員求人28件の提示年収は、下限の中央値が650万円、上限の中央値が1,000万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・題名にセキュリティなどの語を含む、年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=28・2022年11月〜2026年8月公開)。
上限が800万円以上の求人は28件中26件、1,000万円以上の求人は20件です。
比較として、他社の求人をまとめて載せる2アカウントを除いた Offers の正社員求人で年収を記載した2,441件では、下限の中央値が530万円、上限の中央値が900万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・他社の求人をまとめて載せる2アカウントを除いた、年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=2,441・2022年3月〜2026年10月公開)。
セキュリティ職の求人は、下限・上限ともこの2,441件より高い水準です。上限の中央値1,000万円は、統計の55〜59歳の年収換算(約777.8万円)も上回っています。ただし求人の上限は提示額の幅の上端で、統計は実際に支払われた賃金の平均なので、性質の違う値として見比べてください。
Offers Jobs のエンジニアの求人一覧では、エンジニアの正社員求人の年収帯を見比べられます。求人一覧のカードには各求人の年収・雇用形態・勤務地が出ます。
年収の内訳や上げ方は「セキュリティエンジニアの年収」にまとめました。
経験者が年収を伸ばすキャリアの方向
統計と求人の数字から見ると、セキュリティエンジニアが年収を伸ばす方向は、設計と提案へ担う範囲を広げること、セキュリティの責任者を目指すこと、規模の大きい企業で専任の役割を持つことの3つです。
設計と提案へ担う範囲を広げる
統計では、その他の情報処理・通信技術者とシステムコンサルタント・設計者の年収換算に279.2万円の差がありました。監視や運用で得た知見を、システムの設計段階での対策や、経営層・事業部への提案につなげる経験は、後者の水準へ近づく材料になります。
クラウドの設定、認証と権限の設計、開発工程への脆弱性診断の組み込みなど、作る側と一緒に仕組みを決める仕事は、守る範囲が広がるほど求められる場面が増える仕事です。
最高情報セキュリティ責任者(CISO)を目指す
経済産業省と IPA の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」は、経営者から指示を受けてサイバーセキュリティ対策の実践に責任を負う者を「CISO(Chief Information Security Officer)等」と呼び、ガイドラインの第一義的な読者に置いています。
同じガイドラインでは、CISO 等は経営者の指示に基づいてセキュリティ担当者に具体的な指示を出し、経営者に状況を報告する役割です。
出所: 経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」。
技術の判断と経営への説明の両方を担う立場で、チームの指揮や予算の配分を経験するほど近づける役割です。
規模の大きい企業で専任の役割を持つ
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」を編集部が企業規模別に年収換算すると、その他の情報処理・通信技術者は1,000人以上の企業のほうが10〜99人の企業より高い値でした。規模別の値は「セキュリティエンジニアの年収」で比べています。
セキュリティの専任チームを置ける規模の企業では、監視・診断・設計といった役割を分けて置きやすく、1つの領域を深める経験を積みやすい環境です。
資格で専門性を示したいときは、国家資格の「情報処理安全確保支援士」が代表的な選択肢になります。仕事の負荷や向き不向きは「セキュリティエンジニアは「やめとけ」と言われる理由」で整理しました。
将来性を自分の転職判断に生かす手順
セキュリティエンジニアの将来性を自分の判断に生かすには、今の仕事が統計のどの区分に近いかを決め、年齢の近い統計の値と求人の年収帯の両方に自分の年収を当てて、伸ばす方向を1つ選ぶと進めやすくなります。
- 今の仕事が監視・運用寄りか、設計・提案寄りかを決める
- 源泉徴収票の支払金額か、毎月の給与の12か月分に賞与を足した額を出す
- 「セキュリティエンジニアの年収」の年齢別の表で、自分の年齢階級の年収換算と比べる
- 求人の年収帯(下限の中央値650万円・上限の中央値1,000万円)のどこに自分の年収が入るかを見る
- 設計と提案・責任者・専任の役割のうち、次に伸ばす方向を1つ選ぶ
統計の平均を上回り、求人の下限の中央値も超えているなら、年収帯の上の側の求人の業務内容と自分の経験を見比べてみてください。統計の平均を下回るなら、担う範囲や企業規模を変えることで提示額が変わる余地があります。
比べた結果を実際の求人で確かめたいときは、Offers Jobs のエンジニアの求人一覧から、自分の経験に近い求人の年収帯と業務内容を見比べてください。




