〈 デザイナーからデザイン顧問へ 〉副業という越境で拓かれた新たなキャリア

副業によって「デザイン顧問」というキャリアを実現させている、株式会社メルペイのデザイナー白鳥友里恵さん。今回、白鳥さんと彼女の副業先である株式会社スヴェンソンスポーツマーケティング取締役の駒井亮さんに、Offers Magazine編集部がインタビューしました。「副業」というカタチを通じ、両者がどのような関係性を築き、どのようにして副業を成功させているのかを紐解いていきます。

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副業という越境で拓かれた新たなキャリア

白鳥さんは副業のスヴェンソンスポーツマーケティングでは、どのようなお仕事をしているのですか?

白鳥さん:デザイン顧問として、企業ミッションやビジョン、バリューづくり、採用フォロー、ブランディング補助など幅広く携わらせてもらっています。今は主に役員の方々と接する機会が多く、デザインや顧客体験の視点で、全体的な組織開発に取り組んでいます。

オフィスに行くのは月に2回くらいで、その時にワークショップをしています。それ以外はSlackで日常的に会話したりハングアウトでミーティングしたりと、基本はリモートです。

白鳥さんとスヴェンソンスポーツマーケティングはどのような経緯で出会われたのですか?

駒井さん:去年の秋、僕から「卓球会社の者ですが...…」とTwitterのDMをお送りました。白鳥さんが、noteに組織の話やデザイナーの育成について書かれていたのを拝見して、うちの課題にフィットしそうな方という印象を受けて、お声がけさせていただきました。

白鳥さん:今まではプレイヤーとしての案件が多かったのですが、ちょうどその時、徐々に副業のプレイヤー案件を減らして、別の領域にシフトしていこうと思っていた時期でした。今回はモノづくりだけでなく、組織づくりまで含めて関わらせていただくというお話だったので興味が湧き、お会いしてみることにしました。卓球をやったことがないので、いきなり「卓球会社の者ですが...…」とDMが来た時は驚きましたけどね(笑)

でも実際にお話してみると、この人たちは本気で卓球業界を何とかしたいと思っているというのが伝わってきました。純粋に面白いと思いましたし、組織づくりという面で関わるなら、絶対にこういうマインドを持っている人たちと一緒にやれたら面白いなと思ったんです。

最初から白鳥さんにデザイン顧問をお願いするつもりではなかったのですか?

駒井さん:そうですね、まずは一緒に何かできそうだなと思ったのがきっかけで、実際に話していくうちに「あっ、この人にデザイン顧問をお願いしよう!」と思って(笑)

白鳥さん:あ、そうだったんですね!  いま初めて聞きました(笑)

以前の会社で新規サービスを立ち上げた際、組織の立ち上げ経験とかコミュニケーションの方法をnoteに書いていたんですよ。それがキッカケで「デザイン顧問」というネクストキャリアにつながったので、やはり個人が発信し続けることって想像以上に大事だなと思います。note書いててよかったなーと(笑)

では、副業を開始した昨年12月の段階では、駒井さんから白鳥さんにどのようなオーダーがあったんですか?

白鳥さん:明確なオーダーはありませんでした。組織に課題があるけれど、言語化できていないのでヒアリングしてほしいみたいな感じでしたね。話を全部聞いているうちに、スヴェンソンスポーツマーケティング単体ではなく、グループ2社共通のミッションを決めたほうが早いと気がつきました。

そこで、これまで独自に動いていたグループ会社の役員の方から、今まで言語化していなかった組織の目指す方向をヒアリングして、ワークショップを行い、ミッションやビジョンなどの言葉に落とし込みました。今はそれを基に、デザインに関わらず、PRや採用をどうしていくかなど、言葉の浸透も含め組織づくりのお手伝いさせていただいています。

駒井さん:当社は、卓球に関わる事業をグループ会社がそれぞれ展開しており、渋谷にあるレストラン・ショップ・スクールの複合型卓球施設「T4 TOKYO」をはじめとする店舗運営や卓球愛好者の熱をつなぐWebサービス、さらに卓球スクール、卓球用品の販売、オリンピックメダリストを含むトップ卓球選手のマネジメントなどを行っています。

最初は関係者も多くて、白鳥さんもまずは皆さんの顔と名前を覚えるのに苦労されたと思います。

白鳥さん:そうですね! 最初はそこが苦労したところです(笑)

白鳥さんのワークショップを通じて、ミッションは決まりましたか?

駒井さん:はい。「卓球で社会をつなぐ」というのが、一緒にワークショップをしていただいて、できたキーワードです。

他の役員も含めて、すごくしっくりきています。白鳥さんが持ち込んだカルチャーで化学反応というのか、これまでにないパーツが入ったことで皆が変わり始めていて、それもすごくいいなと思っています。

具体例に言うと、スクール事業では現場から上がってくる声が少なかったのですが、付箋を使ったワークショップをやったら、意見がたくさん出てきたということもありました。

白鳥さん:付箋を使いながら皆さんの思考を言語化していくワークショップは、本業でもよくやるので、そういう経験が生きているなと思います。デザイナーにとっては当たり前の付箋を使ったワークショップが、外の世界にでると新鮮に受け止められたりするんです。

駒井さん:そうなんです! おかげで社内に付箋文化が生まれました(笑)。

何のために副業をするのか。目的をしっかり決める

過去に遡ってお話を伺いたいのですが、白鳥さんが副業を始めたきっかけを教えてください。

白鳥さん:サイバーエージェントで2年目の終わりごろ、新規事業の立ち上げが終わって何かもう一歩新しいことに踏み出したいなと漠然と思っていた時に、起業していた学生時代の友人から「デザイナーがいないから手伝ってほしい」と頼まれたんです。

その友人もデザイナーでしたが、CPO(Chief Product Officer)っぽい動きをしていたので、手を動かす人が欲しいということで、WebViewでつくったアプリをフルネイティブにするという案件でした。

当時、サイバーエージェントは副業OKだったんですか?

白鳥さん:きちんと事前申請すればOKでした。当時入社2年目の自分は、まだ一人でリードデザインを任せてもらえる立場になかったので、1人でアプリを作れるという機会に飛びつきました。

副業の就業先はこれまでどのように探してきたのですか?

白鳥さん:最初は友人知人からの紹介でしたが、今はTwitterのDMをいただくことが多いです。これまでに5社で経験し、現在は2社と副業をしています。

副業を始めた頃に苦労した点はありますか?またそれをどう乗り越えてきましたか?

白鳥さん:当初は、フィーの相場もわからないし、見積書や契約書、請求書の書き方も知りませんでした。事前の相手とのコミュニケーションが不十分で、納品したデザインが私の意図しない使われ方をされたこともありました。

そしてきちんと契約書を確認しないと大変な目にあうとわかって、本やネットで調べて、自分を最低限守れるように必死で法律や書類の書き方なども勉強しました。

本業と副業で、カオスにならないためのコツはありますか?

白鳥さん:スケジュール管理はめちゃくちゃ気を付けています。仕事もプライベートの予定も全部Googleカレンダーに入れて、抜けや漏れがないようにしています。それでも前職の時、お恥ずかしながらどうしても間に合わなくなったことも何度かありましたけど(笑)。

以前は、自分のスピード感を把握できていなくて、とりあえず案件を受けてしまって、あとで納期に追われて困る、ということがたくさんありました。今はギリギリのところで止められるようになりましたが、タスクの管理・棚卸しは徹底します。

大変なこともいろいろありましたが、私の場合は「キャリアに生かしたい!」という明確な目標があったので、それに向かってモチベーションは維持できました。逆に「なんとなく副業しようかなー」とか思っている人ですと、安易に案件を受けすぎたり、やりがいが感じられなかったりと、痛い目に合うかもしれません。

副業の就労先に求めるものがあれば教えてください。

白鳥さん:副業では、さらに組織づくりや育成などの比率を増やしていきたいと思っています。本業と副業がプレイヤーだとタイムマネジメントも難しいですし、本業を含め、これからの自分にとって目指したいキャリアの方向性につなげていきたいと思っています。

副業先に具体的に求めることとしては 、いかにも“外注”というような一方的なコミュニケーションではなく、正社員と同じようにコミットメントできること、チーム全体とコミュニケーションがとれること、情報をオープンにしてもらえること、実績はフローも含めて公開してよいことを希望しています。あと細かいところでは、Slackでやりとりできることですかね。

駒井さんはそんな私の希望を最初に聞いてくれて、今はその希望通りに副業ができているので助かっています。

副業の受け入れで重視するのは、カルチャーフィットと専門性

駒井さんにお伺いします。白鳥さんのほかにも、御社では副業のクリエイターが多くいらっしゃるのでしょうか?

駒井さん:はい。現在、当社では10人の副業やフリーランスの方に関わっていただいています。

職種は、デザイン顧問の白鳥さんのほか、コミュニティマネージャーや業務プロセスコンサル、マーケターなど。これまでも何人か副業の方がいらっしゃいましたが、ここまで上流から入っていただくのは、白鳥さんが初めてです。

ちなみに現在、プロダクト組織が立ち上がったばかりで、エンジニアやデザイナーを採用しているところです。

10人の方の採用のきっかけは?

駒井さん:元々の知り合いもいますし、以前、一緒に働いていた学生インターンが成長して帰ってきたパターンもあります。他にも求人媒体で募集したり、白鳥さんのようにTwitterで直接コンタクトするケースもあります。

副業クリエイターを積極的に採用している背景、目的について教えてください。

駒井さん:まず、自分が過去にフリーランスや副業で働いていたということがあり、副業を活用することに抵抗がないんです。

ちょっと個人的な経歴をお話させていただくと、私は新卒で人材会社に入社して、主に事業開発をしていました。それからスタートアップのIT企業で事業開発やマーケティングを経験した後、Chatwork株式会社に入社し、週4日正社員として働きながら、フリーランスとしてクライアントの支援もしていました。

実は、起業の1年前に「卓球でビジネスをする」というリリースに興味をひかれて、株式会社タクティブ(スヴェンソングループ会社の卓球スクール)の社長にFacebookでメッセージを送って、会いに行っているんです。

その時は、お会いしただけでしたが、1年後に誘っていただき、当社には副業としてスタートしたという経緯があるんです。

なるほど! 駒井さんも働く側としての副業を経験されているんですね。

駒井さん:そうですね! そして副業社員を受け入れている目的としては、業界に新しい視点や価値観を持ち込みたいという想いがあります。

いろいろな分野の高いスキルや専門知識を持つ方に入っていただき、組織にデザインを活用したアプローチを浸透させたいということですね。

御社が副業クリエイターに求めるコトとは何でしょう?

駒井さん:まず、社員か副業かは心の底から関係ないという前提があって、ミッションやカルチャーにフィットすること、当社が求める専門性をお持ちであること、しっかりコミットメントしてくれることは求めたいです。

稼働後は、細かいタイムマネジメントは性善説に基づいて一切行っていないので、事前に決められた期限にきちんとアウトプットをいただければと思っています。

副業のクリエイターを受け入れ始めた頃に、苦労したエピソードなどがあればお聞かせください。

駒井さん:特にないですね。これまで知り合いに依頼していたことも多かったので、その人がどのように活躍してくれるのかも最初からわかっていました。また、今回の白鳥さんのように初対面の方に対しては、最初にきちんと「当社からクリエイターに期待したいこと」と、逆に「クリエイターの方が当社に求めること」をすり合わせるようにしています。

あとは場合によって、本格稼働していただく前に「お試し」としてスポットのお仕事を依頼させていただくこともあります。見切り発車で副業を進めてしまっては、お互いにメリットはありませんし、入り口は丁寧なコミュニケーションを心がけていますね。

その他、副業のクリエイターを受け入れるにあたって心掛けていることがあればお願いします。

駒井さん:対等なコミュニケーションを大事にしています。目的の共有はマストで行っていますし、OKRも担ってもらっています。あと、Slackのチャンネルにほぼ全て参加していただき、事業計画もオープンにしているんですよ。

毎週金曜日の夜に、時間のある人は正社員も副業の方も集まってもらって、「ウィンセッション」という成果発表とポジティブなフィードバックをする場を設けています。そのままみんなで飲みはじめることもあります(笑)。

これまでを振り返って感じる、副業のメリット・デメリット

改めて副業をする側、受け入れる側のメリット・デメリットをお願いします。

白鳥さん:純粋にプレイヤーとしての経験値が、年数に対して2倍にも3倍になるというメリットがあります。新卒の時から思っていたことですが、普通に働いていたら早々に先輩は抜かせないんですよね。

同じように1日8時間働いていて、10年キャリアの差があったら何万時間もの差があるわけで。デザイナーは経験を積まないと、スキルとしてすぐには伸びない面もある職種なので、どれだけ自分で機会を作ってバッターボックスに立てるかが重要なんです。普通に働ければ十分という人もいると思いますが、私はそれでは物足りないんですよ。

あと、キャリアが柔軟にカスタムできるのは、会社員1本だったときと比較になりません。会社の事業や方向性と自分のキャリアは、すり合わせて落としどころを探すものだと思いますが、それを1社で叶えようとするからひずみが起きると思っていて。

たとえば、会社の中で自分よりすごい人しかいないのに、「マネージャーやりたい!」って言ったらおかしいじゃないですか。でも、マネージャーの経験を積みたいという希望が心の中にあって。それを外でも経験を積み、また本業に持ち帰るというサイクルは双方にとってすごく健全だなと思っています。

デメリットはあまりないですが、しいていえばマルチタスクになることですね。先程も触れましたが、ここは自己管理能力が問われるところだと思います。

駒井さんはいかがですか?

駒井さん:受け入れる側のメリットは、今の組織にはない専門的な考え方や知識を入れられること、事業や組織への客観的なフィードバックをもらえることです。人材確保の面でも、副業で働く方の存在は大きいですね。

うちは設立5年以内で、まだまだ成長途中の会社なので、従来の「組織の在り方」というものを壊していくしかないのかな、と思います。

デメリットは、副業の方々をマネジメントするフレームワークはないので、そこは模索しながらになることでしょうか。

ディレクション工数は相当かかっていますか?

駒井さん:いえ、当社で活躍してくれている副業の方々は、自発的に動いていただけるので、特に負荷がかかっているわけではありません。今後も多くの副業クリエイターを受け入れる際、組織としてどのようなカタチが最適なのかを考えていきたいですね。

あと、一度に何人も副業の方に関わっていただくのは、受け入れ側のディレクションのスキルに依存するところがあります。とはいえ、人が増えるとディレクションが大変になるというのは、普通に社員でも発生する問題なので一緒ですね。

本業と副業の境目がなくなっていく

今後、クリエイターの働き方はどのように変わっていくと思いますか?

白鳥さん:ITの世界の傾向として、以前よりも一つ一つが大きなプロジェクトをバンバン開発していく流れが増えているので、若手が限られた環境でバッターボックスに入る機会を作るのは、自分から行動しないと、タイミングや運がかなり必要なことも珍しくないと思います。

これから若い人を中心に、ダブル正社員とか副業2.0といったカタチが増えていって、本業と副業の境目が段々なくなりそうだな、と思っています。私も今後、限りなくフリーに近い会社員(ダブル正社員)のようなカタチになっていくと思っています。

駒井さん:ほかの役員ともよく話すんですが、副業クリエイターの活用がうまく回っているのを肌で感じているので、今後は実験的に、どんどん組織をオープンにしていきたいですね。世の中の働き方が変わる中、先んじて新しい働き方をしている人を受け入れる環境をつくりたいという想いもあります。

また、社会性を大事にして事業展開しているので、オープンにした方が応援してくれる人が増えるという考えもあります。卓球大好きな方って世の中にたくさんいて、ミッションに共感していただければ、場所やライフスタイル、ワークスタイルを問わず、なるべく多くの方に関わっていただきたいです。

ありがとうございました。

インタビュー:佐藤剛史
執筆:菅眞理子
編集:佐藤剛史/新留一輝
撮影:新留一輝


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