TABIPPOの清水直哉が新卒時代に学んだフラットな組織の在り方

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トップダウンの体育会系から個を尊重する自由な会社へ

今日は、しみなおさんがフレッシュマンだった頃の経験が今にどう活きているのか、ぜひ聞きたいと思います。

TABIPPOを立ち上げて今年でちょうど10周年の節目を迎えるのですが、創業時から“役職や上下関係を作らず、管理がないフラットな組織であること”を意識しています。これは、オプトに在籍していた頃から考えていたことで。

オプトでは、個を尊重した働き方を実現するために、創業者の鉢嶺(登)さんを筆頭に「一人ひとりが社長である」と掲げていて。それで、もし自分が会社を経営することになったら、より個を尊重する組織を作ろうと考えていました。

実際、TABIPPOでは副業をやっているメンバーもいますし、会社としても個をコントロールするのではなく、エンパワメントすることを目指しています。

それっていわゆる「ティール組織」に近いものだと思うんですけど、オペレーションが難しいという側面もあるというじゃないですか。

そうですね。実際に難しい面もあると思います。

トップダウン型の組織にしなかったのには、何か理由があるんですか?

創業者としての僕が、20代に経験したいくつかの失敗が影響しています。

一つは、学生時代は体育会系のめちゃくちゃトップダウンな組織の中にいたことです。ヒエラルキーの合理性についても理解しているつもりです。ただ、短期的な成果は出ても、中期的には違うんじゃないかと感じていました。

当時、僕はサッカー部の副部長兼3軍のキャプテンを務めていたんですけど、基本的には1軍の勝利のためにトップダウンで動く組織だったので、3軍や1年生とかのメンバーは言われるがままにやるしかなく。その状態でみんなが幸せになれるかというと、絶対にそうではない気がして。

確かに。

そして二つ目は、やはり新卒で入社した会社での経験。オプトでは、2年目にOJT(企業内研修)で部下を8人持ったんです。そのうえ、最年少でマネージャーも任せてもらえたんですけど、トップダウンだとそんなことありえないじゃないですか。

その後、ソーシャルメディアを扱う部署に移ったこともあり、なおさら個に任せることの重要性がわかりました。

少し話は逸れますが、しみなおさんって「会社員時代はダメダメだった」みたいな発言をよくインタビューでされるじゃないですか。でも、それなら最年少でマネージャーになれないと思うのですが、何がそんなに自分の中で納得できていないんですか?

すごくシンプルな話で、マネージャーになれたのは自分で手を上げたからなんですよ。

オプトには誰もが役職に立候補できる制度があって、当時の自分には不相応だったけど、まずやってみようと思ったんですよね。

でも、本当は最初は部長に立候補していました(笑)。それはさすがにダメで、マネージャーっていう。

部下を放置しまくったマネージャー時代

マネージャー職を経験して、どうでした?

何にもできなくて、1年くらいはずっとへこんでました。OJTも普通だったら1人ずつ担当するのが普通なんです。8人もいたら絶対に対応できないんですよね。だから、ほとんど放置状態。頑張って自分で働いてねって。

それで責任は自分が取ればいいと?

いや、当時は僕にも上司がいて「責任は俺がとるから、お前らは好きにやれ」と。それで僕も「僕らは失敗してもいいんだぞ」と下の子たちに言って(笑)。

結果的に、オプトにいた3年間で、僕はほとんど成果を出していないんです。仕事は器用にやるんで、評価されやすいし、あんまり怒られた経験もないんですけど、2年目に新規事業を始めてとんでもない赤字を出したり、それでチームを解散させてしまったこともあります。

それでようやくツイッター広告の運用で成果が見え始めた頃にスパッと辞めてしまったので、会社にとっては本当に迷惑な話だと思います(笑)。活躍してた感だけ出してますが、実績としては何も残していないので。本当に会社に育ててもらっただけでした。

でも、そのときの経験が今の経営に生かされているわけですよね。

そうですね。僕がオプトに入社したのは2011年なんですけど、まだTwitterがあまり一般的には流行っていない頃なのにフォロワーが数千人いたんですよ。それを社長が評価してくれて、新規事業やソーシャルメディア関連の事業なんかにチャレンジさせてもらえました。

それに僕以外にもオプトには良い意味で変な人がたくさんいて、それが仕事に生かされていたんですよね。当時の上司はパソコンに弱くて、エクセルとかパワポとかが全く使えなく、仕事中もずっとTwitterをしていました(笑)。でも、営業はプロフェッショナルで、SNSは誰よりも詳しい。そんな人にエクセルを覚えてもらおうとは思わないじゃないですか。

そうですね。

苦手なものを任せても成果を出すのって難しいと思うんですよね。だから、TABIPPOではメンバーの管理やマイクロマネジメントをしてないんです。そもそも人をコントロールすることが無理があるし、おこがましいなと。

合理的に考えても、管理するメリットが全然ない

でも、冒頭でも少し話ましたが、個を尊重する組織ってオペレーションが難しくないですか?

めっちゃ大変ですよ。管理をしないということは、サボろうと思えばサボれるわけじゃないですか。だから、信頼関係が大切ですし、何か起こったときの責任も個人に紐づきます。だから、自律して働けない人はヒエラルキー型の方が楽じゃないですかね。

それでも、その組織を続けるのはなぜですか?

一つは、その方が組織として中長期的に成果が出せると思うから。あらゆる変化に対応できるし、チャレンジしやすいし、スピード感も出しやすい。

もう一つは、結果として現在の組織の方が機能しているからです。世の中には、自律や主体性、責任を求める人と、できるだけ言われたことだけをやりたい人がいると思うんですけど、TABIPPOには前者しかいなくて。

「旅を広めたい」という強い想いで集まった人たちなので、主体性を発揮できる仕事場の方が合っている。総合的に考えても、管理するメリットがないんです。

TABIPPOでは副業も認められていますよね。

そうですね。僕はサイボウズの青野(慶久)さんを尊敬しているのですが、書籍やインタビューなどで「「人間は理想に向かって行動する」とおっしゃっていたんです。

それをうちの会社に当てはめてみると、副業したい人に「ダメですよ」と拘束することで、

その人は理想に向かえなくなってしまうじゃないですか。そうすると、最悪の場合、TABIPPOを離れる必要が発生するかもしれない。

それなら、自分のやりたいこともやりつつ、TABIPPOで働いてもらうほうがいい。副業を許す方が組織として健康的なわけです。もちろん、全員が副業をしているわけではなくて、やりたい人がやっている感じですよ。

みなさん、どんな副業をしているんですか?

本当にいろいろなんですけど、編集経験を活かして雑誌などで記事を書いていたり、ファッション関係の仕事に就いたり。あと、学生スタッフのマネジメントを担当しているメンバーは、動画クリエイターとして活動しています。

副業による相乗効果は感じますか?

そうですね。外でやりたいことをやっているから、本業に対して言い訳をしないんですよね。

「自由そうに見えて、実はめちゃくちゃ働いてますよ」

現在は理想に近い組織が作れていますか?

方向性は間違っていないと思います。でも、まだまだ課題だらけです。ただ、TABIPPOでは一人ひとりがそれを解決しようと動いているのが良いなと思っていて。

うちの組織ポリシーの一つは「無駄なストレスなく働けること」なんですね。組織ってとにかく無駄なことが多いじゃないですか。上下関係とか承認とか無駄な通勤とか。そういうのをなくすためにみんなで話して、じゃあリモートOKにしようとか、承認フローなくしちゃおうとか、毎年そうやってよくしていこうと頑張っているんです。

https://tabippo.net/company/culture/

(フリーランスが集まる)ギルド組織のような形もあると思いますが、どうですか?

もちろん、すごく意識はしています。でも、少し違うと思います。ギルドはフリーランス目線の言葉なのかなと。

うちはフリーランスでやりたいと考えている人はほとんどいなくて。どちらかというと、真ん中にミッションがあって、それに向かってチームでやりたいという人たちが集まっている感じなんですよね。みんな寂しがりだから(笑)。

これからの組織のあるべき理想像は明確に見えてきましたか?

旅人って世間的には自由奔放なイメージが先行して、少しネガティブに思われることがあるじゃないですか。だから、旅の価値を上げることで、イメージをかっこいいものにしたいと思っています。旅の経験は人を成長させてくれますし、必ず人生を豊かにします。

ただ、一つ問題があって。「旅をしながら働きたいです!」みたいな緩い感じの人からの応募がすごく多いんですよ。僕らは旅をすることが目的じゃなくて、旅を広めることが目的でで働いています。もちろん、大前提として旅をするのが大好きですが。実際には仕事はめちゃくちゃ大変だし、みんな真剣に働いていますから。

それは一番外に伝えた方がいい事実ですね(笑)。

「自由に働けるなんていいね」とか言われるんですけど、ビジネスとビジョンの両立も難しいですし、メンバーはみんなめちゃくちゃタフですよ(笑)。もっともっとやるべきことをこなして、TABIPPOの目指す旅の在り方を実現させたいですね。

インタビュー:村上広大
執筆:角田貴広
編集:村上広大
撮影:北村 渉

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