校了とはどんな意味?用語や校正、校了のポイントまとめ

校正・校閲・校了など、いまいち意味が分からない印刷用語はたくさんあります。出版物編集の現場をイメージしやすいよう、言葉の意義やワークフローを踏まえて解説しています。あまり語られないWeb系媒体における校正についても触れました。

印刷用語とそれぞれの違い

印刷業界には、日常生活のなかでは耳慣れない用語が数多くあり、似た言葉でも全く意味が異なるケースもあります。

正しく理解しておくことは『円滑に業務を進める』上でのコミュニケーションに欠かせません。

校正

『校正』とは、原稿を印刷・出版に進める前に『誤字・脱字や表現の揺れ・デザイン上の不備などをチェックする』工程・作業のことです。

間違えやすい単語に『推敲』があります。これは作家やライターなど執筆者が文章を書きながら手直しすることを指し、意味が大きく異なります。

推敲を重ねた本文が編集社に納品され、編集チームが原稿を作り『印刷前の最終チェック』として校正を行うことが一般的です。

校正でいう『原稿』は、ページレイアウト上に文章や図版などを配置したもので『印刷すれば本の1ページ』という状態のものを指します。

文章・図版・写真のカラーなど出版物の全要素を精査・修正し『誤りのない作品として印刷に送り出すプロセス』が校正です。

校閲

校正は、原稿の文章やレイアウトの体裁を整えることを目的としてる一方、文章や図版などの『意味内容の誤りをチェックすること』は『校閲』といいます。

文章や画像などの素材を組み上げて原稿が作られていますが『製作過程に一つのミスも不備もないという例はごくまれ』です。校正にあたっては、原稿の仮刷りを行い、これと照らし合わせてチェック・修正作業を行います。

あらかじめ「です・ます」などの文末表現や、漢数字か英数字か、使用するカラーなどの『統一表記やルール』を決めておき、その後『ガイドラインに従って誤りをチェック』あるいは『原稿通りに印刷されているかチェック』するのです。

その上で、書かれている内容は事実か・使われている図版のデータは正確か、といった意味内容をチェック・修正する工程を校閲といいます。原典や信頼できるソースを参照する必要が出てきますので『調べ校正』とも呼ばれます。

校了

ひととおりチェック・修正作業が終わり、これで印刷して問題ないという段階で『校正が完了した』という意味で『校了』という表現を使います。

校了後の修正は原則ありませんので、校了したならいよいよ印刷・出版となります。

校了紙

校正にあたって『ゲラ(校正刷り)』と呼ばれる試し刷りを参照することが一般に行われます。校正に用いられる出力紙を『校正紙』といい、校正が完了した校正紙を『校了紙』と呼びます。

校了紙には、余白に「校了」と書くのが一般的です。この校了紙と最終稿の原稿データをもとに、印刷所の現場で『刷版(さっぱん)』が行われます。

流れから用語を理解しよう

校正の基礎用語を理解したら、次に校正から印刷までの流れを見てみましょう。

入校から初校

文章や図版・画像を紙面内に配置して『カンプ(印刷の仕上がり見本)』を出力したら、これを校正紙として印刷前に最終チェックを行います。

この、校正に入る段階を『入校』と呼ぶことがあります。原稿を編集社などに送付することは『入稿』といい、意味は大きく異なりますので注意しましょう。よく比較される語ですので、ここではあえて呼び分けておきます。

また、1度目の校正作業のことを『初校』と呼びます。

再校と責了

校正には、さまざまな方法やテクニックがありますが、『チェックするのは人の目』です。1回の校正で全ての誤りが修正できるとは限りません。

初校後に、やはり修正箇所が見付かったという場合には、再校正という意味の『再校』を行います。2度目の校正では『二校』次は『三校』となります。

再校するということは、編集サイドが印刷に待ったをかけていることになります。「コスト面を考えても四校以降は現実的ではない」という判断はあっても続くことはあるでしょう。

そういった事情もあり、校了とは違い『責了(責任校了)』と呼ばれる形で印刷に進めることがあります。校正紙を出し直すのではなく、修正点だけを指示して「印刷サイドの責任で修正し、校了としてください」という形です。

この場合、校了紙とは異なり、修正要求が書かれた『責了紙』をもって校了とします。

念校から下版

責了を受けた後に、印刷サイドが念のため校正を行う場合があり、これを『念校』と言います。

編集サイドが要求する再校とは違い、印刷サイドの自発的な校正です。念校を行う段階で校了とされていますので、製版工程は原則ここまでとなります。

校了紙あるいは責了紙を、次の刷版(さっぱん)工程に渡すことを『下版(げはん)』と呼びます。

校正の主な方法

再校や念校という用語が定着するくらい、校正は慎重に行われます。

軽微なミスも見落とさず、よりクオリティーの高い印刷物を出版するために、校正のさまざまな方法が考案され、実施されています。そのうち、主な3種を紹介しましょう。

素読み

『素読み』は、原稿を見ず、校正紙だけを見て校正する方法です。比較対象がないため、フラットな意識で、明らかな違和感に気付きやすい形です。

原稿を見ることがない一般読者の視点に近い校正方法とも言えるでしょう。

なお、誤りを発見した場合には、赤ボールペンを使い、余白に修正内容を表記します。ここで『校正記号』と呼ばれる『JIS(日本工業規格)』で定められた表記方法を使うことがあります。

修正指示を受けて作業をする担当者との間で認識の食い違いを減らすためですが、実施する場合には双方に校正記号の確かな知識が必要です。

突き合わせ

『突き合わせ(引き合わせ)』では、原稿と校正紙の両方を見合わせて、1カ所ずつ原稿通りに印刷できているかチェックしていきます。

再校の段階であれば、赤ボールペンで修正指示の入った校正紙と、新しい校正紙を突き合わせることもあります。

読み合わせ

『読み合わせ』は2人1組で行います。1人が原稿を読み、もう1人は校正紙を読みます。2人で行う突き合わせのような形なので、文章のチェックに向いているでしょう。

スムーズな校了までのポイント

校正を行う際には『統一表記などのルールを決めておくことが大切』です。1人でもチームでも、正解の形をあらかじめ持っておくと、効率よく全体のバランスを整えて行けます。

漢字の閉じ開きを決める

漢字で書かれた言葉をひらがなにすることを『開く』といい、逆にひらがなを漢字にすることを『閉じる』といいます。

日本語には、漢字で書いてもひらがなで書いてもよい表現がたくさんあります。たとえば「お願い致します」と「お願いいたします」や、「この様に」と「このように」の関係です。

『どちらも間違いでないからこそ判断に迷う』ので、決まりを持っておくことが大事になります。

常用漢字を使う

ターゲット読者層にもよりますが、出版物で使われる漢字は『固有名詞を除いて常用漢字が基本』と考えておくのがベターです。

『漢字の読みや意味がわからなくて読み進められない』という問題を避ける意図があります。

また、『常用漢字でなければデータ処理できない』という印刷会社もあります。刷版までの原稿データ変換の過程で『文字化け』したり『白抜き』にならないよう、使われる漢字には注意しましょう。

差別表現などを避ける

『読んでもらうための出版物』ですから『読者を不快にさせない表現を選ぶ』ことが大事です。

よく使われていると思われる言葉でも、公共の場でのモラルとマナーを守り、清い作品作りに努めましょう。

言葉は使用者によって時代の変遷とともに少しずつ変えられていきますので『生き物』と言われることがあります。

差別表現に関しても、数年前なら普通に使われていた言葉が、今では好ましくないと判断されるということがあります。

そのため、これに関しては絶対のルールはなく『時事情報や公衆の言語感覚』を調べ、今スタンダードな表現は何か・差別表現だという認識の高まりがある語か、などを精査することになるでしょう。

二つの表現でどちらか判断がつかないなら、クリーンで優しいイメージのある方を選ぶのがベターです。

校了前のチェックポイント

こうした方がよい、というルール作りがある一方で、これだけは間違ってはならないという項目があります。

『読者の混乱を招くだけでなく、賠償問題に発展しかねない』ところですので、特に注意しましょう。

数字

原稿に『数字』が含まれているなら必ず、一つの間違いもなく校正紙に反映されているかチェックする必要があります。

たとえば、新作の格安スマホ月々480円~のところが月々4800円~となっていた、マンション2980万円が298万円になっていた、というような『桁の間違い』です。

他にも、電話番号の数字を一つ間違えるだけで電話が繋がらず、連絡先の個人や団体の信用をおとしめることになりかねません。

住所の番地を間違えて、地図検索しても全く辿り着けない、ということもあり得ますので注意しましょう。

日付や曜日

『出版物の情報は正確でなければならない』という前提があります。商品の発売日やイベントの開催日時が間違ったままだと、クレーム対応だけの騒ぎではなくなります。

締め切りや試験日の情報は『個人の人生を左右する』可能性もあるので、時間に関する情報にも細心の注意を払いましょう。

固有名詞

個人名や社名、商品名やブランド名、病名や薬剤名など『固有名詞は正規表記で書かれているかチェックする』必要があります。

他の情報間違いなら、修正内容の『正誤表』を印刷物に挟み込んだり、Web上で修正情報をアップしたりするなどの方法がとられることもありますが、固有名詞に関してはよりシビアです。

もし○○○という会社を紹介する記事で○○△と書いてしまったら、あるいは社長の名前を1文字間違えてしまったら、印刷完了後でも『一発NGで刷り直し』となる可能性があります。

この場合、NGの出た版の印刷物は全廃棄となり、時間もお金も大きくロスし、クライアントの信用を失うことも考えられます。

また、医療情報など生命に関する言葉や、事件の当事者名などに関しては『一つ間違えれば訴訟に発展しかねない』ケースもあるので、特に注意が必要です。

校了の伝え方

編集サイドから印刷サイドに校了を伝える、という時には『この校正紙は修正箇所が一切ない』この状態で、印刷に進めてよいという状況です。

そのため、校了を宣言する際にはまだ修正する可能性があるというニュアンスを含ませるべきではありません。

「ここだけ修正してもらえれば」という状態なら『責了で』と言います。『校了でと言うときは事実上、校正作業の終了を双方が了承した』という認識を持ちましょう。

校了の例文

校了を宣言するのは原稿を入稿する側ですので、編集サイドが社内向けに、あるいは印刷会社向けに伝える例文を挙げます。

  • 問題ありません。校了です。四校までお付き合いいただきありがとうございました。
  • ここで校了と考えておりましたが、クライアントからの要望が入り、原稿の修正が必要になりました。
  • 月末の校了を予定しております。

関連する副業は?

校正に少しでも魅力を感じられたなら、関連職種の副業を考えてみるのはいかがでしょうか。フルタイム勤務でなく、働く時間を自由に選べる『テレワーク』も豊富にあります。

校正者の仕事内容

本記事の内容は主に、紙媒体での校正についてお伝えしてきました。出版社や印刷会社の『校正部(校閲部)』や『校正プロダクション』などで印刷物の校正に携わるなら、基礎知識としてそのまま生かせるでしょう。

校正刷りを持ち帰って在宅で校正作業をする『持ち帰り校正』という働き方もあります。また『原稿をPDF化したものをプリンター出力』して校正刷りとして利用する、という方法をとっている会社もあるようです。

校正は紙媒体で培われてきた工程ですが、Web系媒体での校正を担う『Web校正者』の求人も増えています。Web上のメディアだと、記事の執筆や画像編集、原稿の発信まで『全て卓上で済ませる』ことができます。

しかしここが落とし穴で、簡単に発信できるせいでチェックが甘く『クライアントの要求を満たせない』記事が多いのです。そこで、原稿のクオリティーを高めるWeb校正者が求められています。

Web系媒体では『紙媒体の印刷・出版がない』というところでプロセスの違いが出てきます。校了までのプロセスは編集チームで完結させられますので、完全に在宅で、データのチェックをしてチャットツールなどでやり取りをするという形もあるでしょう。

Web編集の仕事内容

Web系媒体の編集者を『Web編集』といいます。社内でメディアを持っている会社であれば、その編集に携わり、外部クライアントからの企画持ち込みを担当するケースもあります。

『社内メディア』を担当する場合の例を挙げます。まず、コンテンツの企画をし、ページデザインの概要を決め、Webライターや画像編集者(カメラマンと取材同行もあり得ます)、Web校正者の手配をします。

文章や画像といった素材が揃えばWebデザイナーに渡して、チェックが終わればアップロード・公開、という一連の流れを担当します。

外部クライアントからの企画持ち込みを担当する場合は、企画を立案する工程がありません。そのかわりに、ターゲット読者層や求められるクオリティー、文章量やキーワードなどを分析することが必要になります。

いずれにしてもWeb編集には『コミュニケーション能力が必須』と言えるでしょう。

Webライターの仕事内容

『Webライター』はWeb系媒体の記事を書くことになります。ニュースサイトでの仕事もありますが、企業や個人がWeb経由で集客するための『SEO記事』も書くことが多いといえるでしょう。『SEO』とは、検索エンジン最適化を指すWeb用語です。

日本国内の大半のユーザーが『Google検索』を使って情報検索を行っています。

情報を検索する機能やプログラムを『検索エンジン』と呼び、Googleの持つ検索エンジンとしての機能を、インターネットユーザーが直感的に利用するために『検索窓』のある『検索サイト』があります。

ユーザーは『検索結果の上位に表示されたページにジャンプしやすい』ものです。こういったページはSEOを意識して書かれている場合が多くあります。

Web系ライターには文章力はもちろん必須ですが、執筆記事を検索結果の上位に表示させるため『Googleに対するSEOを踏まえた記事を書く』ということが重要になります。

また、自己主張の強い独りよがりな文章作りをするのではなく、Web編集を通して伝えられる『クライアントの要求を満たした魅力ある記事を書くこと』が大切です。

さらに、校正の知識を生かし、Web校正者に二校、三校とプロセスを間延びさせず、編集スケジュールを圧迫させない配慮ができればなおよいでしょう。

まとめ

出版物といえば文章や写真の被写体などコンテンツの目玉が際立ちますが、執筆者は編集者や校正者の尽力があって文章の完成度を高めています。

校正者の認知度はまだ高くはありませんが、作品がベストセラーになるのも、大人気のWeb記事を送り出せるのも、校正者が読者を離さないための努力を惜しまないところが大きく影響しています。

クリエイティブ職での転職や副業を考えているなら、校正者を候補として検討してみるのはいかがでしょうか。特に『Web系媒体は副業やフリーランスで始められる』こともメリットといえます。

未経験可の仕事もあるなかで、基礎知識を持っているだけでもスタートラインに立てているといってよいでしょう。

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