地図デザインに必要なスキルとは。情報の可視化がポイント

会場案内などに添付する地図のデザインには一定数に需要が見込めます。地図デザインを作成するには、他のデザインとは異なるスキルが必要です。地図デザインに具体的にどんなスキルが必要か、またスキルを身につけるための方法などをご紹介します。

地図の需要は高い

スマホアプリなどで現在地がわかる地図を利用する人も多いので、一見すると需要がないように見えてしまいますが、実はたくさんの場所で地図は利用されています。

まずは、地図の需要について確認してみましょう。

店舗サイト用のオリジナルマップ

店舗のチラシなどには、必ずと言っていいほど地図は付いています。

スマートフォンのアプリなどの地図は地図を起動し、住所を入力するという手間が発生しますが、広告に載っていればその手間はありませんし通信費もかかりません。土地勘のある人なら一目見ただけで「ああ、あの辺りか」とわかるのではないでしょうか。

レジャー施設やホテルなどの案内やイベント会場など、オリジナルマップを掲載した広告やWebサイトは少なくありません。

インフォグラフィックスに利用

また、地図はインフォグラフィックスに利用させることも多くあります。

インフォグラフィックスとは、情報伝達を目的としたグラフィックのことです。全国の天気予報を記載した日本地図や、地域別データの乗っているマップなどがインフォグラフィックと呼ばれます。

インフォグラフィックスにおける地図は企業がプレゼンや説明会で使うことも多く、高い需要が見込めるのです。

地図デザイン専門の会社やソフトもある

地図デザインの作成を専門としている会社や、地図デザイン専門のツールもたくさんあります。

少し前に、Googleと契約を終了した『ZENRIN』は、創業50年以上にもなる地図の専門の会社で、従業員は2000人近くいます。今後も、地図デザインに関しては高い需要が予想されているのです。

地図デザインの制作ソフトも、3D地図を作成するものルートマップを作成するものなどさまざまな種類があり、用途によって選ぶ必要があります。

ルートマップの作り方

地図デザインの仕事の中で特に多いのが、会場や施設案内のための『ルートマップ』です。ルートマップは、通常のグラフィックデザインとは違う制作工程をたどらなければなりません。

ルートマップをどうやって作っていくのか、作り方の手順をご紹介します。

出発点を決める

ルートマップの作成ではゴールとなっている場所は決まっていることが前提なので、まずはそこまでの出発点を決めましょう。

出発点を決める際に重要なのは、訪れる人がどのような交通機関を使ってやって来るかということです。電車であれば最寄り駅か、あるいは近くにある大きな駅、車で来ることを想定しているのであれば国道などの大きな道路を起点にします。

出発点を同じ地図上に複数作ることも可能ですが、あまり多くの出発点を設けると地図がごちゃごちゃして見ずらくなってしまいますので、多くても2か3に抑えるのが好ましいでしょう。

ルートを決める

出発点と目的地が決まっているのであれば、それを結ぶルートを決めましょう。ルートを決める際のポイントは、曲がり角を少なくすることです。

曲がる回数が多いと、最短ルートであってもわかりにくくなってしまうため、大きな道路で曲がるようにして、回数も少なくするようにしましょう。

加えて、通れるルートなのかも確認しましょう。時間帯によっては一方通行になるような通行制限のあるルートは避けるべきです。歩道がないような危険な道路をルートに指定したり、開かずの踏切があるようなルートも避けた方が良いでしょう。

それらを確認するために、実際にルートに沿って歩いてみることもおすすめします。

目印を決める

ルートが決まったら、ルート上にある目印を決めていきます。銀行や郵便局など、あまり立て替えの起こる心配のない目立つ建物が記載されていれば、現在地がわかりやすくなります。

夜にも地図を利用する可能性があるのなら、コンビニやスーパーなど、夜間に灯りがつく建物を目印として設定しておくのも良いかもしれません。

あまり目印を多く描いてしまうと情報過多になってしまいます。理想は曲がり角付近と、目的地を行きすぎた少し先に目印を置いておくと良いでしょう。曲がり角は目印になりますし、目的地の先の目印は、万が一通り過ぎた際にそれを確認できます。

情報の取捨選択が重要

地図デザイン制作においては、どんな情報を強調するか、削除するかの取捨選択をせねばなりません。どのような判断基準で記載する情報を選択するのか、ポイントを押さえておきましょう。

情報を整理し、シンプルでわかりやすく

特にルートマップを作成する場合は、通常のマップとは違って地理の細部に至るまでの細かい情報を掲載したいのではなく、要所がわかりやすく記載されていることが重要になります。

建物一つひとつに至るまでの情報を記載する必要はありません。目印となる建物や道路のみを記載して全体的にシンプルになるように心がけます。

また、建物の名前も全て記入すると文字数が多くなり、マップの他の場所に被ってしまうことも考えられます。表示する端末によっては細かすぎて文字が見えないこともあるでしょう。

建物の説明には地図アイコンを使うなどして、できるだけ文字表記は少なくするようにします。

イラストや色は効果を考えて使う

地図デザインは、地図としての機能に重点を置きがちですが、広告やWebサイトに掲載するインフォグラフィックスの1種であり、デザイン性に優れていることも重要と言えます。

広告の雰囲気を損なわない色の使い方や、イラストの種類を考える必要があるでしょう。機能性とデザイン面を両立させることが、地図デザインに求められているポイントです。

地図デザインに必要なスキル

地図デザインを作成するにあたって必要なスキルをご紹介します。地図デザイナーを目指すのであれば、次に紹介するスキルを中心に習得を試みましょう。

制作ソフトを使う技術

地図を作成するための制作ソフトを使う技術を習得しましょう。中でも重要なソフトはAdobe社の『Illustrator』と『Photoshop』です。特に作成は基本的にIllustratorを使っていくことになります。

Illustratorでは、作成した画像を『ベクター』という形式で保存できるのがその理由です。ベクター形式の画像はサイズを変更しても画像が潰れにくいという性質があるので、拡大縮小の処理を行う機会の多い地図には最適な保存形式になります。

Photoshopは画像の切り貼りや加工が得意なソフトで、デザイナーの間でも使用率が高いため、データの受け渡しにもよく利用されます。また、Photoshopの保存形式である『psd』はベクター形式とそれ以外のラスター形式のどちらにも対応している複合フォーマットであることが理由です。

デザインの基本知識

本物の精度の高い地図を作るのではなく、地図デザインはグラフィックデザインの一環です。色の使い方や文字フォントの選び方、ルートの作成や配色など、デザイン面の知識が重要です。

また広告デザインをできる知識があれば、地図だけではなく地図を使うWebサイトや広告全般の発注を受けることも可能になるでしょう。地図以外の仕事を引き受けるためにも、基本的なデザインの技術や知識が必要になります。

情報を可視化する技術

地図デザイナーが他のグラフィックデザインと異なる点は『情報をわかりやすく伝えなければならない』ということです。

出発点から目的までの情報を、地図を見ただけで理解できるようにしなければなりません。重要な情報を選択し、それをわかりやすい形にしてアウトプットする技術が求められます。

この技術は、プレゼンで使うグラフやフローチャートの作成など、使われる場面が多い技術です。地図デザインはもちろん、他のデザインの仕事でも技術があると色々なことができるようになります。

著作権などの問題はある?

マッピングをいちから作るのはかなり手間のかかる作業です。インターネット上を巡回すれば自分が欲しい地図データがすぐに見つかり、それを使うことを思いつくかもしれません。

しかしその場合、著作権の問題が発生する可能性がありますので、注意が必要です。

地図は図形の著作物に該当する

地形に著作権はありませんが、地図は記号を使って地形を表現したものとして、著作権法10条に記載されている『図形の著作権』であると考えられます。

また、ビジュアル的に洗練された美しい地図は『美術の著作権』として扱われるケースもあるのです。

そのため、そのまま利用すれば著作権の侵害になり訴えられる可能性があるので気を付けなければなりません。広告掲載の地図だけではなく、Yahoo!やGoogleのような大手検索エンジンに記載されているマップも同様です。

国の機関である『国土地理院』の地図なら、著作権がある程度緩和されていますので、参考にする場合はこちらを利用しましょう。

トレースは厳禁

地図のコピーは当然ですが、トレースも基本的に厳禁です。判明した時点で回収を余儀なくされたり、著作権法違反で訴えられる可能性もあります。

ただ、地図は実際に存在する地形をトレースしているものなので、どうしても似通ってしまい、裁判所としても判断が難しいようです。

しかしながら、後々トラブルに発生しないためにも、トレースはしないに越したことはないでしょう。

自分でデザインした地図は著作権の対象

一方で、自分が作成した地図デザインについては著作物として扱われ、著作権保護の対象となります。第三者に利用されていたら訴えることもできますし、そもそも利用されないようにガイドラインを設けておくことも重要です。

地図を提出した企業が、契約外の用途で自分が作成したマップを利用する可能性もあります。クライアントとのトラブルにならないように、デザインに取りかかる前に著作権についてはっきりとさせておくことも大切です。

まとめ

地図デザインは、店舗や会場案内などのガイドマップや、企業が説明に使う頒布図など、色々なシーンで利用されます。これからも、一定以上の需要があることが期待できる仕事です。

地図デザインは、地図としての機能と、見やすさをはじめとしたデザインの要素をうまく掛け合わせる必要があります。そのためにはデザインの技術だけではなく、情報可視化技術、ツールを使いこなす技術なども必要になるでしょう。

作成された地図は著作物として扱われ、自分の地図に利用するのは基本的に厳禁です。同じ場所を描いた地図だとしても、自分でいちから作成していく必要があります。また、自分が制作した地図も著作物になりますので、クライアントがいる場合は利用契約などについてあらかじめしっかりと結んでおきましょう。

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