海外での仕事に興味を持った理由
初めまして、フリーランスでアーキテクト/デザイナーをしている村井と申します。現在は日本・ヨーロッパを中心に活動しています。
今回は、海外での仕事に興味のある方向けに、上海やロンドン、ドイツなどでエンジニア・デザイナーとして活動してきた経験をご紹介できればと思います。
私自身は、もともと服飾系の専門学校を卒業した後、3年ほどアシスタントデザイナーをしていたのですが、その頃から日本国外で仕事することを念頭においていました。
ファッションの本場といえばやはりパリですし、自分が志向していたハイファッションなスタイルを着こなす場所が日本国内には文化として現在進行形で存在していないためです。また業界関わらずクリエーターの賃金レートが単純に高いことも理由でした。
海外に行く前に準備したこと
渡欧した時点では31歳未満だったので、ドイツのワーキングホリデービザを取りました。取得前はどんなことを聞かれるんだろうと緊張していましたが、
- 準備金数十万円
- 数枚の英語のドキュメント
- 海外でも適用される保険
を用意するだけで、一般的なお役所の手続き程度の手間で肩透かしだった記憶があります。 (最新のビザなどの申請手続きについては、必ずご自身でご確認ください)。
海外でのキャリア
服飾系からキャリアチェンジして国内の企業に数年勤めたのち独立し、その後知人の紹介でロンドンのベンチャー企業の立ち上げに携わることになりました。
元々海外・独立思考だったこともあり、私のキャリア自体のスタートがフリーランスでしたし、勤めさせていただいた会社はいずれも海外に支社のある会社だったので、フリーランスになること(戻ること)にも、ロンドンに拠点を写すことにもさほど抵抗はありませんでした。
ロンドンでのCxO経験
EUでの最初の仕事はCxOとして、新規プロダクトのデザイン・設計開発などを行うことでした。ロンドン大学の学生数人と自分での起業でした。学生と言ってもMBA取得のために企業から援助を受けて来ている学生も多く、とてもに刺激的でした。
自分がジョインした時点では会社はまだシードで、開発デザインはもちろん、資金集めのためにミュンヘンまでピッチをしに行ったり、フィールドワーク、協力会社との交渉など、あらゆることを行いました。
私はもともと英語が流暢なわけではなく、むしろかなり話せない方なので、最初は何をするにしても全く信頼が得られず、話も聞いてもらえないような状態でした。そんな中で最初のアイディアが固まり、プロトタイプを初めて見せた瞬間に、開発に協力してくれていたメンバーの態度が変わったのは印象的でした。
言葉がなくとも、実力を示せば認めてもらえる(逆もまた然り)という価値観は自分にとって生きやすい環境でした。
ベルリンでのフリーランス
会社がピポッドしたタイミングで、自分は会社を離れてベルリンに引っ越しました。その後はリモートで日本の会社の技術顧問をしたり、国内の会社でデザイナーをしたり、友人のビジネスを手伝ったりしていました。
国外の企業やチームとの仕事は以前からしていたこともあり、日本 - EUの移動も東京 - 与那国島ほどの感覚で、特別な感慨があったわけではなかったのですが、ロンドンもベルリンも多国籍な都市だったこと、ロンドンにいた頃から頻繁に様々な国を行き来していたこともあり、この頃には国を超えて仕事をすることに対してまったく抵抗がなくなっていました。
非同期のコミュニケーションに対するナレッジが溜まってリモートでもスムーズに仕事ができるようになり、今はむしろ国内外よりも時差が大きいか小さいかの方が気になります。
フリーランス案件はどこで見つける?
海外と日本国内での案件の探し方ですが、さして違いはありません。日本国内であればエージェントやスカウトサービスでもリモートワークの案件は少なからずありますし、Twitterなどでも興味のある事業者の方をフォローしてカジュアルにお手伝いさせていただいたりしていました。
海外でも日本の案件を受けることはできるので、リモート案件が豊富な媒体に登録しておくと安心だと思います。
海外だと、各クラスタに特化したFacebookのビジネスコミュニティが多くあり、私もアジア人やベルリナー(ベルリンに住む人)向けのコミュニティにいくつか参加しています。LinkedInも積極的に使われている印象です。
私はベルリンにいた頃はフリーランスの人が多く集まるカフェで仕事をしていたので、そこで席が隣り合わせになった人から仕事の話を受けたり、シェアハウスのフラットメイトから仕事を紹介してもらったりすることもありました。
必要となる語学力・コミュニケーション力
私は英語はそれほど堪能ではありませんでしたが、それを理解してもらった上で仕事を依頼いただけていたので、技術力さえあれば語学は必ずしも重要ではないかとは思います。
しかし、「自分の言いたいことを伝えるコミュニケーション力・語学力」はとても大切だと思います。厳密な文法知識などは重要ではないですが、自分が思っていることを臆せず伝えられる程度の流暢さや積極性は必要かと思います。
ちなみに冗談のような話ですが、日本人には目を見て笑顔で挨拶をしたり会釈をしたりする習慣がないことでかなり第一印象で損をしている気がします。ぜひ習慣化をお勧めします。
起業や技術顧問を経て感じる、海外で「楽しめる」エンジニアの条件
仕事に対する姿勢や感覚はほとんど障壁にならない
これは私の主観ですが、海外のエンジニア、デザイナーなどと実際に一緒に働いていて、思った以上に仕事に対する姿勢や感覚が近いことに驚きました。少なくともシニアのメンバーと仕事をしていて違和感を感じることはほとんどありません。
むしろデザインプロセスやアーキテクチャなどに関して最新の情報に触れている分、勉強させられることのほうが多かったです。そのため、仕事上文化的な違いが元で困ったことになったことはほとんどありません。
日本などの時差の大きな国との仕事の工夫
やはり母国語が日本語なので、要件定義やUXリサーチなどの上流工程を担当する場合は日本語でのやりとりがもっともパフォーマンスよく、ベルリンにいる間も日本の求人サイトなど経由で日本企業からご依頼をいただくことが多々ありました。
日本とは時差が大きい分、ミーティングの時間を合わせることだけが少し難しいですが、開発プロセスや社内の意思決定に問題がない限りはランダムにミーティングが発生してしまうような状況はそう多くないので、例えばコアタイムを半日ずらしたり、積極的にチャットの議論で質問したり、開発プロセスに明確なフレームワークを導入するなど、個人レベルであれば少しの工夫で意外とスムーズに仕事を進めることができました。
ちょっとしたハプニングが楽しめるか
とはいえ普段の生活では、40万円超のiMacが配達の途中で行方不明になったとか、空いているはずの店が暑いという理由で閉まっているとか、役所の手続きが人によって受理されたりされなかったりなどということは、少なくとも私が見たり聞いたりした範囲では日本以外のほとんどの地域でよくあることのようです。
そういったことを当たり前のこととして受け入れ対応できるかどうかで普段の生活の過ごしやすさは変わってくると思います。逆にそういった違いをストレスに感じてしまうような人にとっては、もしかすると仕事の面でも違和感を強く感じたりするのかもしれません。
自分にマッチする環境で働くための「海外」という選択肢
日本で生まれ育った人の中には海外で働くことに憧れをもっている人は少なからずいると思いますが、私が大切だと思うのは場所ではなく、あくまでもどういう働き方、生き方をしたいかだと思っています。
日本は他の国の人から言わせれば「遠くて豊かな国」で、おそらく日本に住むほとんどの人にはEUやUSなどで働かなくてはいけないひっ迫した理由はないでしょうし、またリモートで日本から他国の仕事をすることももちろん可能でしょう。
少なくともIT系の仕事をしている人たちにとっては「どこ」に住むかということはすでに問題ではなくなっていて、能力さえあれば誇張なしに明日からでも国外の企業で働き始めることができます。
「海外」は思っているより遠くはありません。憧れをいい意味で捨てて、現実的なキャリアプランのひとつとして真剣に考えてみてもいいのかもしれません。