デザイナーからWebディレクターになるまでの経緯
はじめまして、フリーランスでWebディレクターをしている東後(@tetsurotogo)です。私は、デザイナー、マーケター、Webディレクターとキャリアを歩んできて、Webディレクターとしては5年目になります。
デザイナーを経験しているWebディレクターは数こそ多くないですが、役立つ経験は多いと思います。そこで、今回は、デザイナー/マーケターとしてキャリアを歩んできたWebディレクターのキャリアと案件を進める上で意識していることについて紹介したいと思います。
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制作会社・フリーランスでデザイナー
もともと高校生のときからWeb制作に関心があり、デザイン専門学校に進学・卒業しました。デザイナーの役割は、ユーザーの課題を明確にしてビジュアル面で解決手法を提案することです。そのため、デザイナーとして出来るだけ上流企画から入り、ユーザーの課題解決の手助けをすることを意識していました。
国内で制作会社、海外でフリーランスデザイナーとしてデザイン経験を積んできましたが、5年ほどで自身のデザイナーとしてのキャリアに限界を感じ始めます。デザインの効果を最大化するためにマーケティングの視点を取り入れたいと考え、ECサイトのマーケターとして転職します。
デザイナーからマーケターになって経験したこと
マーケターになって実感したのは、デザインの合意形成が圧倒的に進行しやすくなったことです。デザインの見た目の美しさだけではなく、いわゆる3Cフレームワーク(自社、競合、顧客)に当て込み、バリューポジションを狙ったデザインにしていく事で、競合との差別化を明確にし、デザイン価値が最大化される理由を説明できるようになりました。
適切なターゲティングを元にメルマガとLPを調整することで、翌日に売上が通常より10倍になったこともあります。マーケティング的なフレームワークにもとづいたデザインでPDCAを回していくことの効果の大きさを実感しました。
一方で、Webディレクターは、多い時には10名程度のデザイナーと連携しながら方針を決める必要性があります。自分がデザイナーだった実体験を生かして、デザインガイドライン・共通認識を作り出せるなど、Webディレクターとしてはデザイナーの経験が活きる場面が多くあります。
デザイナーとマーケターの2つのバックグラウンドが、今の私のWebディレクションを支えています。
デザインが強みのWebディレクターとしてフリーランスに転向
マーケターを3年勤めた後、Webディレクターとして独立しました。
フリーランスになった理由
独立したのは、身の回りの課題を解決する新規事業を作るため、柔軟に働きたいと思ったからです。週4日はWebディレクターとしての仕事をして、残りの3日は自分の仕事をするなど、働き方が柔軟な点が、フリーランスの1番の利点だと感じています。
▲独立後に始めた、個人の物語を絵本に出来るサービス:YOUR TIMES
デザイナー出身のフリーランスとしての強み
私はWebディレクターとして、Webサイトのフルリニューアル・グロースハックの経験が豊富なことを強みとしています。特に上流設計の部分では、デザイナーとしての経験とマーケティングのフレームワークを用いてデザイン方針の合意形成を行っています。
クライアントにデザインの意図を説明するときに、デザイナーとしてのこだわりをマーケティングのフレームワーク・考え方に落とし込めると、合意形成をしやすくなります。
デザイナーの頃に、手戻りが凄く多かった。理由ですが、なぜそのデザインがいいかを説明できなかったから。今はマーケのフレームワークにデザインを当て込んで、理論だてて説明が出来るので急激に手戻りが減った。デザイナーこそ、決裁者にロジカルな説明・説得をする為に、マーケのスキルが必要です。
— TetsuroTogo / Webディレクター (@tetsurotogo) August 15, 2019
一方で、デザイン方針の説明の際に感性に頼ってしまうと、効果が不明瞭で予算をもらえない、修正の戻りが頻発しスピードが遅くなる、などの問題が生じます。マーケティング×デザインのキャリアを強みとして、数値を最大化出来るデザイン提案を意識しています。
フリーランスWebディレクターの案件と進め方
▲YOUR TIMESの展示会
案件内容と進める時に意識していることについて紹介します。
フリーランスWebディレクターの案件内容
フリーランスのWebディレクターの案件ですが、私が受けている案件について次のような案件があります。
- スタートアップ系の0からのフルリニューアルと事業をグロースさせる案件
- 金融系会社の100ページ以上のフルリニューアル案件
- 東京・福岡・沖縄・北海道・海外チームの制作チームをマネジメントしながら推進するPM案件
- プラットフォーム事業のグロース部分の、PM・開発ディレクション案件
分業制になっておらず1人で複数の専門スキルを発揮でき、意思決定のスピードが早いスタートアップ系の現場を選ぶようにしています。デザイナー/マーケターと経験していることで、自分のカバー範囲が広げることができています。
案件を進める前に行う調査
デザインをロジカルに決裁者に説明するために、まずは次の2つの調査・整理を行います。
- 競合とデザインで差別化をすため、徹底的な競合調査・自社調査で最適なポジションを探す。
- 顧客のターゲットの解像度を高くするため、ペルソナ・カスタマージャーニーを作成する。曖昧なユーザーに響く訳がない。
これを元にクライアントに提案をしていくことになります。
案件を進めていく中での工夫
提案の際に意識することは次の3つです。
- ①合意形成を取るためのフレームワークの有用性
- ②ドキュメント・ルール・方針のドキュメント化をして再現性・共通認識を高める
- ③会議のアジェンダ・MTGのゴール・議事録・決定事項等はその場で共有
①については既に説明したとおりですが、②、③の言語化のスキルもとても大切です。
Webディレクターに必要な最重要スキルは、言語化のスキルとドキュメントにまとめるスキルだと言っても過言ではないと思っています。
Webディレクターは時にクライアントの不明瞭な要望を要件にまとめ、プロジェクトを推進していくことが求められます。ドキュメントにまとめておくことで、自分の説明工数を減らしつつ、共通認識を作り、短時間での合意形成を図ることができます。
細かいですが、クライアントとの共有用にGoogleドライブの命名規則を作り、フォルダ構造を整理するなど、できるだけコミュニケーションコストが低くなるような設計も大切です。
Webディレクターの求人は減っていく?
今は、Webディレクターから開発ディレクターへのアップデートが必要な時代だと感じています。
周りのフリーランス仲間でも、Webディレクターではなくて、開発ディレクターという肩書きで活動している人が多くなっていますし、クライアントもフロント部分のWebディレクションだけではなくて、サーバーサイドの開発周りの強み・知見がある方を積極的に探されている傾向があると感じています。
KWは開発ディレクション・自動化・データドリブン
これから求められるスキルとしては、生産性を高めるオートメーションのスキル(マーケティング・オートメーション&BIツール)やデータドリブンな設計、開発ディレクションの知見があると思っています。
ただワイヤーを引いて、納品して効果が出るか分からないだけだと、今後Webディレクターとしては厳しい時代になると思います。
リリース後に成果を出すためにどのようなデータ設計をして、どのようなオペレーションに落とし込むのか、まで説明できるようなスキルが求められています。
Webディレクターに必要なのはスキルの引き出し
Webの世界だと多種多様なスキルを掛け合わせる事が出来ます。そういったスキルの掛け算は自分の市場価値を高めるためにとても役立ちます。
色々な会社を転々としていると"WebデザイナーからWebディレクターの道"は意外にガラ空きのポジション。
全体のデザイン設計とかデザインコントロールを設計・指示出来ると、Webディレクターの市場価値は上がります。デザイナーからのキャリアの選択肢でWebディレクターを選ぶのもひとつの選択です。
— TetsuroTogo / Webディレクター (@tetsurotogo) September 12, 2020
私はデザイナーとしてのキャリアに行き詰まっていると感じた時、マーケティングやWebディレクターのスキルを掛け算してネクストキャリアを作りましたが、周りのWebディレクターの方を見ていると、「WebデザイナーからWebディレクターのスキル」は意外にガラ空きのポジションです。
私はキャリアの中でこういった越境をしてきましたが、異分野のスキルの吸収をいかに早く対応できるか、が今後Webディレクターとして活躍できるかどうかにおいて、ますます重要になってくると考えています。