フリーランスのアシスタント雇用って?必要な知識や募集方法を紹介

フリーランスの場合でも、必要に応じてアシスタントを雇うことができます。その際、必須なのが、労働契約書の作成や保険の手続きです。ここでは、正しい手続きの方法や、アシスタント募集の仕方について詳しく解説します。

雇用をする際の注意点

フリーランスでも忙しくなり人手が必要になったときには、アシスタントを雇用することができます。ここでは、フリーランスがアシスタントを雇用するときの注意点を解説します。

労働契約書は必ずかわす

まず注意すべきなのが、労働契約書をかわすということです。労働条件について、必ず書面にしてください。労働契約書に盛り込むべき内容は、下記の通り、労働基準法で定められています。

  • 契約期間
  • 契約更新の基準
  • 勤務地
  • 仕事内容
  • 勤務時間や勤務日数について(始業時間と終業時間・残業の有無・休憩時間・休日休暇・交代制勤務のローテーションなど)
  • 給与について(給与の決定・計算と支払いの方法・締切と支払い日・昇給について)
  • 退職(解雇の事由を含む)について

また、これらの他にも、特別に定める場合には下記も明示してください。

  • 退職手当について(適用される労働者の範囲・計算方法・支払い方法・支払い時期)
  • 臨時に支払われる賃金について
  • 賞与について
  • 最低賃金について
  • 労働者の負担について(食費・作業用品・その他)
  • 安全及び衛生に関すること
  • 職業訓練について
  • 災害補償や業務外の傷病扶助に関すること
  • 表彰制度や制裁について
  • 休職について

提出してもらう書類は漏れのないように

アシスタントを雇用するときには書類の提出をしてもらいます。どの書類も、社会保険や納税などの手続きに必要なものです。下記の一覧を参考に、漏れのないように、受け取ってください。

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 前職の源泉徴収票
  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 給与の振込先の情報
  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳

雇用をするなら保険の知識もしっかりと

就職すると社会保険や厚生年金に加入します。フリーランスに雇われる場合にも同じです。そのため、フリーランスがアシスタントを雇うときには、保険について知っておくことも大切になります。

社会保険について

社会保険には『健康保険』と『厚生年金』の2つがあります。

  • 健康保険:加入すると、健康保険証を受け取ることができます。業務外のケガや病気で病院にかかったときには、健康保険証を提示することで、医療費の補填を受けられる制度です
  • 厚生年金:加入者本人やその家族の経済的な安定のための制度です。老齢や障害・死亡などで所得がなくなった場合に、年金を受け取ることができます

社会保険の加入条件は、フリーランスの雇っている常勤職員が5人未満か以上かで違ってきます。

人数 加入の可否 その他
5人未満 任意 従業員の半数以上の同意が必要です。
5人以上 強制 パートタイマーも、常勤の3/4以上の労働時間もしくは労働日数である場合に、適用されます。

社会保険に加入する場合には、採用から5日以内に『健康保険・厚生年金保険新規適用届』『健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届』を出します。加入者に扶養家族がいる場合には『健康保険扶養者(異動)届』も必要です。

労働保険について

労働保険には『労災保険』と『雇用保険』の2つがあります。

労働保険 労災保険 雇用保険
内容 業務や通勤の際にケガや病気になった場合に、療養費や休養費の補償を行います。 失業時の生活保障のための給付や、育児休業・介護休業中の給付を受けることができます。
加入条件 雇用形態を問わず1名以上雇用したら加入します。 1週間に20時間以上の所定労働時間で、31日以上雇用される見込みの場合。

労働保険の手続きをするには、アシスタントを雇用した日の翌日から10日以内に、必要書類を労働基準監督署または公共職業安定所へ提出します。まずは『保険関係成立届』を、雇用保険へ加入する場合はさらに『雇用保険適用事業所設置届』の提出が必要です。

続いて、アシスタントを雇用した月の翌月10日までに、公共職業安定所へ『雇用保険被保険者資格取得届』を届け出てください。その際には、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿(タイムカード)などの添付書類が必要です。

アシスタントの確定申告のために

アシスタントを雇用したら、雇用主であるフリーランスはアシスタントの源泉徴収をすることになります。毎月の処理に加え、年末にのみ発生する手続きもありますので、手順を把握し手際よく行うことが大切です。

毎月の源泉徴収を忘れずに

アシスタントに給料を支払うときには、所得税を天引きする源泉徴収を忘れずに行います。源泉徴収して納税するためには、アシスタントを雇用して1ヵ月以内に『給与支払事務所等の開設届出書』を税務署に提出してください。

所得税納付用の用紙が送られてきたら、期日までに納付しましょう。原則として、源泉徴収した日の翌月10日が納期です。アシスタントが10人に満たない場合には、『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』を提出することで、源泉所得税の納付を年2回にまとめる特例を受けられます。

年末調整は計画をもって早めにスタート

源泉徴収は、月ごとの給料から所得税額を計算し、雇用主が従業員にかわって、事前に納付する制度です。この制度のおかげで従業員は確定申告をする手間が省けます。

しかし、月ごとに計算される所得税の合計額と、実際の1年間の所得に対する所得税額とに差が出てしまうことがあります。その差を還付や徴収で調整するのが、年末調整です。

年末調整で必要になる書類は下記の通りです。漏れなく回収できるよう、アシスタントへ案内してください。

必要書類 提出が必要な方
給与所得者の扶養控除等申告書 全員
給与所得者の保険料控除申告書 保険料控除を受ける方
配偶者特別控除申告書 配偶者のパート収入が201万円以下の方
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローンを支払っている方(税務署の証明書と借入金の残高証明書が必要)※初回は確定申告が必要です。
各種控除証明書 国民健康保険や国民年金・保険料の控除などを受ける方
前職の源泉徴収票 1年の途中で入社した方

また、年末調整は下記のようにタイトなスケジュールの中、行わなければいけません。早めの準備が大切です。

  • 10月:必要書類の準備・アシスタントへアナウンス
  • 11月:記入済み書類の回収
  • 12月:所得税の年税額の計算・源泉徴収分より年税額が少ない場合には還付を、多い場合には徴収
  • 1月:所得税の納付(10日まで、納期の特例を受けている場合には20日まで)・源泉徴収票の交付・税務署に法定調書合計表の提出・市区町村に給与支払報告書の提出

フリーランス雇用の流れになっている職種

職種によっては、フリーランスとして働くケースが増えてきているものがあります。中でも代表的なのは美容師と番組制作ディレクターです。

美容師

美容院勤務が多い美容師ですが、最近ではフリーランスで活躍する方々が増えています。例えば、老人ホームや介護施設を定期的に訪れて施術をしたり、繁忙期だけスポットで入ったりと、フリーランスで活動するのです。

今後、より増えていくと考えられるのは、面貸しの美容師です。面貸しというのは、施術は美容院で行うけれど美容院勤務ではなく、間借りしている形態のことを指します。

お客様がある程度ついている、キャリアのある方向けの働き方です。施術の最初から最後まで一貫して担当できる・美容院内の人間関係に左右されない、といったメリットがあります。

番組制作ディレクター

番組制作ディレクターは、制作現場の監督です。テレビはもちろん、インターネット番組など、様々な媒体の番組制作の仕事が増加している中、柔軟な仕事ができるフリーランスの番組制作ディレクターが増えています。

フリーランスで活動する番組制作ディレクターは、スケジュール管理次第で、どのように働くことも可能です。企業に所属している場合には難しい、複数の番組制作にも携わることができるのです。また、テレビ局など番組制作をする企業と直接契約するので、収入の大幅アップも見込めます。

安定して案件を手にすることができるほどのスキルがあり、管理能力が高い人にはおすすめです。

ディレクターの仕事を紹介してくれるエージェントもありますので、そうした企業に登録して活動している方もいます。

アシスタントの募集方法は?

フリーランスがアシスタントを募集するときのやり方について解説します。

始めに、欲しい人材像は明確にしよう

まず大切なことは、アシスタントに求めていることを明確にすることです。スキルや経験といった業務に直接関わることはもちろん、年齢・性別・性格などの属性についてもイメージします。

また、採用したい人材像はずっと同じではありません。変わらない部分もありますが、状況によって変化する部分もあります。どんなときでも重視したいポイントと、今大切にしたいポイントを分け、その2つを総合して、採用する人材像を決定することが重要です。

募集方法を決めよう

アシスタントに求めることが明確になったら、次はどこで募集するかです。募集方法で代表的な、ハローワークと求人媒体について解説します。

ハローワークを活用

ハローワークで『事業所登録シート』『求人申込書』を記載し申し込むと『求人票』に反映されます。すると、ハローワーク内に設置された求人端末や、ハローワークインターネットサービスで、求人情報が表示され、求職者が閲覧できるようになります。

ハローワークの最大のメリットは無料で利用できるという点です。更に、条件によっては助成金が出る場合もありますので、採用に予算を割けない場合に有利になります。

ただし、掲載できる情報が少ない・手続きに手間がかかる、といったデメリットもあります。

求人媒体を活用

求人媒体には主に『Web媒体』と『紙媒体』の2種類があります。求人媒体のメリットは、採用したい人材像にマッチした層にアピールしやすいということです。有料のサービスなのである程度の予算は必要ですが、うまく活用することで、求める人材を採用できます。

特に、意欲的な若い方を採用したい場合には『Web媒体』が有効です。インターネットで情報収集を積極的に行っている求職者からの応募が期待できますし、画像や動画で職場の雰囲気をダイレクトに伝えることができます。24時間応募の受付ができるという点も利点です。

地域を特定して採用したい場合には『紙媒体』が有効です。配布エリアにマッチした人材にアピールすることで、エリアを限定した採用活動ができます。

まとめ

フリーランスでも必要に応じてアシスタントを雇用できます。その際必要になるのが、労働契約書の作成・保険への加入・源泉徴収の手続きです。必要書類・手続き・採用を確実にこなし、仕事のパートナーとなる人材を雇用しましょう。

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