エンベデッドシステムスペシャリストとは?概要と合格するための対策

エンベデッドシステムスペシャリストは知名度は低いですが、技術が急速に進歩している今日において、需要の高まりが期待できます。有資格者であれば、様々な面で有利になっていくでしょう。そこで、試験の概要や勉強方法を解説します。

エンベデッドシステムスペシャリストとは

はじめに、エンベデッドシステムスペシャリストとはどのような資格なのか、資格の取得をした場合の年収の目安についても取り上げています。

高度な専門知識が問われる国家資格

エンベデッドシステムスペシャリストは、システムエンジニアの一種で『ES』と略称で呼ばれることが多いです。

システムエンジニアのなかでもエンベデッドシステムスペシャリストは、広範な専門知識と発想力が求められます。また、それらを実現する技術力や開発チーム内で主導的な役割を果たすことも必要です。チームを管理する能力も求められるでしょう。

エンベデッドシステムスペシャリストは国家資格であり、専門知識が備わっているかどうかを試験により客観的に判断されます。合格率の低い難関試験です。

そもそもエンベデッドシステムとは

エンベデッドシステムとは、自動車や家電などあらゆる機器に組み込まれているコンピュータシステムのことです。私たちの周りにはエンベデッドシステムが組まれた製品が多数存在しています。

また、エンベデッドシステムはパソコンのような汎用的なコンピュータではなく、それぞれの機器専用のコンピュータシステムです。

普段使う家電製品がストレスなく使えるのは、エンベデッドシステムと、それを開発したエンジニアのエンベデッドシステムスペシャリストの存在があるからです。

しかし、エンベデッドシステムという言葉については、まだまだ認知度は低いといえるでしょう。

ESの資格を持った場合の年収

エンベデッドシステムスペシャリストは高度な知識や技術力が求められますが、資格を保有しているだけでは高収入に結びつかず、年収は30代半ばで約450~750万円前後です。

携わる製品の市場規模が小さかったり、その製品に収益力がなかったりすれば大きな収入につながる可能性は低いでしょう。担当する製品により、収入に違いがあります。

ただし、管理職やコンサルタントのような重要ポジションを任されれば年収1000万以上を超える場合もあります。高収入を目指すならば、資格取得以外でも常にスキルアップを目指しましょう。

ES資格を取得するメリット

ここからは、エンベデッドシステムスペシャリスト資格を取得するメリットを解説します。

将来性が高い

エンベデッドシステムスペシャリストは将来性が高い資格です。

昨今、モノとインターネットがつながる『IoT化』が進んでいます。様々な電化製品や自動車などにもIT関連機器が取り入れられ、今後はさらにIoT化が進むでしょう。

そのような状況で、システムを組み込むエンジニアが多く必要とされています。特に、エンベデッドシステムスペシャリストのように専門知識を身につけているエンジニアは重宝されるのです。

世間を取り巻く環境と業界の現状を考えると、エンベデッドシステムスペシャリストの将来性は期待できるでしょう。

転職、案件確保で優遇されやすい

エンベデッドシステムスペシャリストはハードウェアにソフトウェアを組み込む専門家です。自動車や家電などのものづくりメーカーやそれらに関連するシステムインテグレーター(SI)、産業機械メーカーなど、幅広い分野で活躍できる可能性があります。

また、近年はAI(人工知能)が各分野へ展開されています。AIロボットを制御するにはソフトウェアとハードウェアにまたがる知識が要求されます。

活躍できる範囲が広いエンベデッドスペシャリストは転職にも有利です。フリーランスとして活動するにしても、有資格者は知識と技術を証明できるため、案件の確保がしやすくなるでしょう。

仕事の質を上げることにもつながる

エンベデッドシステムスペシャリスト資格の取得は、仕事の質を上げることにもつながります。

もともとエンジニアとして活躍していても、試験勉強をこなすことで知識が増え、ハードウェアを意識した開発の幅が広がるでしょう。

最近はPCの性能が向上し、クラウドシステムが積極的に導入されています。ソフトウェア系の技術者でも、今後はハードウェアにアウトプットするための仕様が要求される可能性もあります。

試験の合否も重要ですが、試験勉強をすることで領域を超えた知識を習得することで、結果的に仕事の質の向上につながると言えるでしょう。

ESの難易度と合格点は?

エンベデッドシステムスペシャリストになるには、試験に合格する必要があります。ここからは、試験難易度と合格点を解説します。

トップクラスの難易度

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は難易度が高く、数ある情報処理技術者試験でも最難関となる『スキルレベル4』です。高度情報処理技術者にも該当します。

スキルレベルは1〜4まであり、その最上位がレベル4です。難易度が高いため、試験合格に向けた綿密な学習計画が必要になるでしょう。

合格点と合格率

エンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格率は約17%です。他のスキルレベル4の試験と同様で合格率は低くなります。また、合格点は4つの試験区分において100点中60点以上です。

採点は試験区分ごとに順に行われますが、60点に満たない区分があると、採点はその場で打ち切られます。全ての教科で60点以上の得点が必要となるなど、採点方法にも厳しいシステムが採用されているのです。

ESに受かるための効率的な勉強法

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は合格率が低いため、試験勉強も計画的に行う必要があります。ここからは、試験区分に合わせた効果的な学習方法の解説です。

試験の概要は以下のようになります。

午前I 午前II
試験時間 9:30〜10:20(50分) 10:50〜11:30(40分)
出題形式 多肢選択式 多肢選択式
出題数 30問 25問
午後I 午後II
試験時間 12:30〜14:00(90分) 14:30〜16:30(120分)
出題形式 記述式 記述式
出題数 3問(2問を選択して解答) 2問(1問を選択して解答)

午前の対策

午前の試験は多肢選択式(マーク式)の解答方法です。午前I試験、午前II試験ともに限られた時間内で多くの問題を解く必要があります。

1問あたり100秒程度で解くことが求められるため、反復練習し、試験で素早く解けるようにしましょう。問題集や過去問を繰り返し解いて、問題の傾向をつかむことが重要です。

試験内容は基礎知識が多くなります。繰り返しの学習で身につくでしょう。問題集の解説は間違い選択肢も読み込んで知識の習得に役立てると効果的です。

また、過去問では80点以上の得点を目指してください。練習の段階で余裕を持った得点設定は試験当日に有効です。

午後の対策

午後の試験は記述式問題です。午後I試験は90分で3問中2問を選択して解答し、午後II試験は120分で2問中1問を選択しての解答です。

試験対策のポイントとしては、事前にソフトウェア設計かハードウェア設計のどちらの内容で回答するか決めておくことが必要になります。自分がどちらの問題が得意かを把握し、選択しましょう。

勉強方法は午前の試験と同様で、問題集や過去問を繰り返し解いて対策をとります。また、話題の技術などから出題されることもありますので、最新の技術動向を追っておくことも重要です。

ポイントは過去問

午前・午後を問わず、エンベデッドシステムスペシャリスト試験をクリアする上でポイントとなるのが、過去問への取り組みです。

特に午前I・午前IIの多肢選択式では、問題や選択肢ともに過去問からそのまま再出題されることも少なくありません。ですから、過去問に取り組むことが一番の受験対策といえます。

過去問のなかから、10年以内のものを集中的に学習することが重要です。また、午前、午後ともに、試験は時間との勝負になります。

過去問を本番さながらに時間を計って解き、時間配分のペースをつかんでおくのは有効です。

記述式に慣れる

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は手書きで行うことになりますので、記述式問題の対策として、『手書きに慣れる』ということも大切です。

特に情報処理技術者試験を受ける方は常にパソコンを利用しているでしょう。そのため、手書きする機会が少なく、午後の試験で苦戦する可能性があります。午後の試験は90分や120分と長時間に渡りますので大きな問題です。

少しでも手書きに慣れるために、日常生活の中にも手書きができる場面を積極的に取り入れてください。

ESに独学で合格するためのポイント

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は難易度が高く、独学で対策するにはポイントをおさえる必要があります。勉強時間や効果的なポイントを解説します。

勉強期間

エンベデッドシステムスペシャリスト試験に合格するには、1日数時間の学習時間の確保ならば、半年程度の期間が必要です。

実務経験や土台となる知識の有無で勉強期間は異なりますが、初回受験であればある程度の時間を確保しましょう。

午前の試験は知識が問われるため、隙間時間を使った勉強も可能です。通勤時間などを効果的に使い、休日は平日よりもまとまった時間を確保して学習にあてましょう。

曜日や時間帯で学習する分野と学習時間を決めて行動するのも効果的な方法です。しっかりと勉強時間を確保して継続すれば、独学でも合格は十分可能です。

他試験を先に受けるのもおすすめ

エンベデッドシステムスペシャリスト試験に挑戦する前に、他の情報処理技術者試験を受験するのもおすすめです。

初めて情報処理技術者試験を受けるのであれば、応用情報技術者試験の受験を検討してみましょう。合格すると、エンベデッドシステムスペシャリスト試験において、午前Iの試験が免除対象となります。

試験免除科目があると、余裕ある試験対策が可能です。他の情報処理技術者試験を受験することで、中間目標の設定にもなるでしょう。

試験を複数回経験することは、試験慣れにもつながります。本命である、ES試験を見据えて他の試験にも挑戦しましょう。

おすすめ参考書、過去問

エンベデッドシステムスペシャリスト試験に向けて勉強するときに、良質な参考書は不可欠です。ここでは4つの参考書や過去問を紹介します。

エンベデッド技術 改訂

エンベデッド技術の基本的な知識を身につけるには『エンベデッド技術 改訂』はおすすめの参考書です。

10年前の発行となっていますが、エンベデッドシステムの基本知識は急に変化するものではないため、長い期間にわたり販売されています。

合計で7つの章から構成され、様々な技術についての解説が掲載されているのが特徴です。テスト用の問題集ではありませんが、巻末に演習問題が付属されていますので、基礎的な勉強のための問題集としても効果的に利用できるでしょう。

  • 商品名:エンベデッド技術 改訂
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情報処理教科書

試験対策の問題集としては『情報処理教科書』シリーズがおすすめです。

執筆陣に組込みソフトウェアのプロフェッショナル2人をそろえ、合格に必要なポイントをおさえた学習が可能となっています。

特に午前II試験対策に適した問題集で、新旧の過去問から100問を掲載しています。午後問題に関しても、解答に必要な考え方を中心に解説があるので、テスト対策に有効です。

  • 商品名:情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2019~2020年版
  • 価格:4190円
  • Amazon:商品ページ

2019徹底解説 本試験問題

『徹底解説 エンベデッドシステムスペシャリスト 本試験問題』は過去3期分の本試験の問題と解答解説が充実しています。正答の解説だけではなく、間違い解答についても詳しい解説があるため、幅を広げた学習に最適です。

また、過去問だけではなく、翌年実施の本試験の分析予想が掲載されているため、試験直前の総まとめにも使用できます。

試験本番で配られるものと同様の解答シートのダウンロードサービスもありますので、本番形式の演習も可能です。時間を計りながら何度も解いてみましょう。

  • 商品名:2019徹底解説 エンベデッドシステムスペシャリスト 本試験問題
  • 価格:4104円
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公式HPの過去問

情報処理技術者試験を主催、実施している情報処理推進機構の公式HPには、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の過去問題と解答例、配点割合が掲載されています。

先述のとおり、午前試験では問題文や選択肢が過去問からそのまま出題される場合もあるため、過去問の演習は非常に有効です。15年分程度の過去問がダウンロードできるので、試験対策に活用するには十分な量をこなせるでしょう。

何度もプリントアウトして使えますから、繰り返しの学習にも便利です。

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:過去問題

ES受験の詳細

試験対策において、勉強の計画を立てるためにも試験詳細を知る必要があります。受験日程や受験費用、有効活用したい免除制度を解説します。

受検日程と費用

エンベデッドシステムスペシャリスト試験が実施されるのは年に1回で、春期日程にあたる『4月の第3日曜日』の実施です。年に1回しか受験機会がないので、計画的に勉強を進めましょう。

願書の受付は1月上旬〜2月上旬で、合格発表は6月下旬に行われるのが毎年の通例です。

また、受験費用は5700円です。郵送申込みの場合、願書裏面の払込用紙を使用して郵便局窓口にて払い込みます。ATMでの支払いはできませんので、注意してください。

インターネット申込みの場合は、クレジットカード決済、ペイジー(Pay-easy)、コンビニ利用による払込みの3とおりの支払い方法があります。支払期限は、申込日を含めて3日以内です。

免除制度

以下のいずれかの条件を満たしている場合、受験申込み時に申請しておくと午前I試験(共通知識)の科目免除が受けられます。免除の条件は3つあり、いずれかに該当すれば免除可能です。

  1. 応用情報技術者試験(AP)に合格
  2. 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
  3. 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をとる

出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:高度試験等の一部(午前I試験)免除制度

上記の条件を満たす場合は、願書の『一部免除申請番号』に番号を記入し、申請してください。番号の記入がないと、条件を満たしていても免除を受けられませんので、忘れずに記入しましょう。

まとめ

エンベデッドシステムスペシャリストは、ソフトウェアとハードウェアの両方に関する高度な知識が求められます。

ES試験を受けて、合格することで知識やスキルの証明が可能です。有資格者となれば、転職や案件獲得にも有利になります。試験は毎年1回、4月の第3日曜に実施されます。年に1度の機会になるので、試験勉強は計画的に行いましょう。

午後I試験には免除制度があります。先に他の情報処理技術者試験を受けて合格をするのも中間目標として有効です。各種参考書や公式HPの過去問を活用して、試験に向けて対策しましょう。

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