報酬の支払調書について理解しよう。フリーランスが理解すべき点とは

フリーランスの報酬に対し発行される支払調書は、会社員に発行される源泉徴収票と同じような役割を持ちます。しかし、支払調書と源泉徴収票にはいくつか異なるポイントがあります。支払調書と源泉徴収票の持つ意味や二つの文書の違いについて理解を深めましょう。

支払調書について理解しよう

支払調書とはどんなものでしょうか?法定調書の定義や源泉徴収票の概要もあわせて解説します。

法定調書と支払調書、源泉徴収票

税務署は、事業者において何らかの支払があった場合に、支払いの事実を文書にして提出させることでお金の動きを把握する必要があります。その際に提出させる書類が『法定調書』です。

法定調書は、所得税法や相続税法によって、税務署への提出が必要とされています。支払調書や源泉徴収票は、60種類ある『法定調書』の中に含まれる書類です。

『支払調書』とは、特定の支払を行った事業者が、支払いに関する細かな内訳を書いて税務署に出す書類です。支払いを受けた側がきちんと申告しているかどうかを、税務署が照らし合わせるために利用します。

『源泉徴収票』とは、事業者から従業員に対し、給料の支払額や源泉徴収した所得税額を証明するために発行される書類のことです。

源泉徴収義務者とは

源泉徴収義務者の対象となる条件や支払調書の提出範囲について解説します。

法人と個人事業主で当てはまる人

『源泉徴収』とは、従業員への給与や税理士などへの報酬にかかる所得税を、事業者が給与や報酬からあらかじめ差し引くことをいいます。『源泉徴収義務者』とは、源泉徴収の義務がある事業者のことです。

法人の場合は自動的に源泉徴収義務者となります。個人事業主の場合は、従業員や青色専従者に給与を払っていれば源泉徴収義務者に当てはまります。青色専従者とは、青色申告者と生計を共有している人や、事業を手伝っている家族などを指します。

一人で仕事をしている個人事業主は源泉徴収義務者とみなされず、外注で報酬を支払う場合であっても、源泉徴収は不要です。

支払調書の提出範囲

源泉徴収義務者が支払調書を提出する際の主な提出範囲は以下の通りです。

  • 外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサーなどの報酬・料金・広告宣伝のための賞金(年間支払額が50万円を超える場合)
  • 馬主に支払う競馬の賞金(1回の賞金額が75万円を超えた馬主の、当該年中の全ての支払金額)
  • プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金(年間支払額が5万円を超える場合)
  • 弁護士や税理士への報酬、ライターの原稿料など(年間支払額が5万円を超える場合)

源泉徴収義務者は、上記の範囲内で報酬を支払う場合に、税務署へ支払調書を提出する義務があります。

No.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

支払調書の内容

支払調書に記載すべき項目や源泉徴収額の計算方法について解説します。

氏名や区分、事業者名など

支払調書には、いくつか記載すべき項目があります。

支払を受ける者 支払先の氏名や法人名、住所、マイナンバーや法人番号
区分 報酬や料金の名称(税理士報酬、原稿料、講演料など)
細目 区分の具体的内容(印税の場合は書籍名、弁護士報酬の場合は事件名など)
支払金額 当該年度で確定している支払額
源泉徴収税額 当該年度中に源泉徴収すべき所得税と復興特別所得税の合計額
支払者 報酬や料金などを支払った事業者の住所と、会社名などの名称または氏名、電話番号、法人番号または個人番号

マイナンバーの記載にあたっては、マイナンバーが正しい番号であることの確認と、番号の正しい持ち主であることの確認が必要です。

報酬からの源泉徴収額の計算

報酬からの源泉徴収額は、対象となる報酬額により異なります。

  • 報酬額が100万円以下のケース : 報酬×10.21%
  • 報酬額が100万円を超えるケース: (報酬-100万円)×20.42% + 10万2000円

端数の『0.21%』と『0.42%』は復興特別所得税分です。復興特別所得税の徴収は2037年まで予定されています。

源泉徴収額の計算に関しては、支払調書の発行が楽になる各種会計ソフトを利用してみるのもよいでしょう。必要な数値を入力するだけで源泉徴収額を自動計算してくれるので便利です。

消費税について

法定調書に記入する金額は、原則として消費税込みの金額を記入します。報酬や料金の金額と消費税額が明確に区分されている場合は、消費税抜きの金額で記入できますが、消費税の額を『摘要』欄に記載しなくてはなりません。

支払調書提出や交付の義務

支払調書の提出や交付には、義務づけられている場合とそうでない場合があります。それぞれ確認しましょう。

事業者は税務署に提出する義務がある

報酬や料金をフリーランスなどに支払う事業者には、支払調書を税務署に出す義務があります。例えば、『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』については、原稿料やデザイン料、印税など、所得税法に規定されている報酬が一定額以上だった場合に、提出する義務が発生します。

『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲や提出枚数、提出時期については、国税庁のホームページで確認できます。

No.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

受け取る個人などに交付する義務はない

源泉徴収票は、給与を支払った人に対して必ず発行しなければいけません。しかし、支払調書は、フリーランスや個人事業主のような報酬を受け取った人に対して、交付する法的な義務がありません。

報酬を受け取っている事業所から個人事業主に送られてくる支払調書は、事業所のルールにより発行されているものです。

事業所から支払調書を発行してもらう予定がなく、確定申告の参考にするため支払調書の交付を受けたい場合は、事業所に対し事前にお願いしておく必要があるでしょう。

確定申告について

フリーランスが確定申告をする必要性や申告の種類に関して解説します。

フリーランスの確定申告の基本

フリーランスの場合、事業によって得た収入に対する所得が38万円を超える場合に、確定申告をする必要があります。この場合の所得とは、総収入から経費を差し引いた金額のことです。

確定申告をしなかった場合は無申告加算税が課されます。無申告加算税は、納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額が課せられます。

現在は、取引先の申告内容に記載されたマイナンバーにより、確定申告をしていないことが発覚する可能性もあるため、忘れずに申告する必要があります。

フリーランスの確定申告には青色申告と白色申告の選択肢があります。青色申告とは、税務署にあらかじめ届出をしておけば、税金面で様々なメリットを受けられる申告方法です。申告をしなかったり、期限に間に合わなかったりした場合は、自動的に白色申告の扱いになります。

支払調書の添付義務はない

確定申告をする際に、支払調書を確定申告書に添付することは義務ではありません。添付しても問題はありませんが、添付しなくても違反とされることはありません。

正確な収入額と源泉徴収額が判明していたら確定申告の書類は作れるため、支払調書を受け取ること・保管することは必須ではありません。

まとめ

一定の条件を満たした事業者は、支払調書を税務署へ提出する義務がありますが、報酬を受け取る個人などに発行する義務はありません。また、フリーランスの確定申告書に支払い調書を添付する義務もありません。支払い調書と源泉徴収票は混同しやすいため、二つの違いをしっかりと頭に入れておきましょう。

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