メニューデザインとは
店舗が提供できる料理やサービスを、リスト化したものがメニューです。顧客のオーダー選択に大きな役割を果たすため、どのようなメニューを用意するかで店舗の売り上げも変化します。
より良いメニューを作成するために、まずはメニューデザインの概要や果たすべき役割について考えてみましょう。
店舗で提供されるメニューのデザイン
メニューデザインとは、店舗に設置されたメニューをデザインする仕事です。メニューには料理名や料金、サービスなどが記されますが、これらを羅列するだけでは良いメニューとは言えません。
競合が激しい飲食店業界では、メニューで他店との差別化を図ろうとする店舗が増加しています。
こうした店舗の多くはプロのスキルに期待してデザインを依頼するため、センスと実用性を兼ねた、クオリティの高いデザインが求められるのです。
エディトリアルデザインに分類される
料金や献立から時には素材までと、扱う情報が多いメニューデザインは、エディトリアルデザインに分類されます。
エディトリアルデザインとは、新聞や雑誌など、文章が多い編集記事のデザインを担当する仕事です。見た目の美しさやインパクトだけではなく『読みやすさ』も重視されるため、画像やテキストをいかに効果的にレイアウトできるかがデザインのポイントとなります。
店にとっては一番の販促ツールになる
優れたデザインのメニューは、店舗にとって売上アップに貢献する有益な販促ツールです。
まず、近年はスマホの普及から、日常的にSNSを利用する人が増加しました。見た目にこだわったデザインのメニューはTwitterやInstagramを使って拡散されることも多く、高い広告料無しに大きな宣伝効果を得ることが可能です。一旦メニュー画像やデザインがインターネット上に拡散されれば、対象者は限定されず、不特定多数の人の目にとまる可能性があるでしょう。
また、メニューに美味しそうな写真や有益な情報を載せれば、それをきっかけにした注文も期待できます。『本場○○から直送された』などの文言や、インパクトのある実物画像は、販促効果抜群です。お店が推したいメニューを前面に出すなどの工夫もできるため、メニューを上手に活用することは、営業戦略上、とても重要なのです。
メニューデザインのポイント
店舗の売り上げにも影響を与えるメニューデザインは、きれいでセンスがよいというだけでは不十分です。
クライアントの多くは、高いデザイン性に加えて、売上への貢献も期待してメニュー制作を依頼しています。デザイナーは顧客のオーダーに影響を与えられるような、顧客目線に立ったデザインを生み出すことを求められます。
店舗を訪れる客に好印象を与えるデザインとは、どのようなものなのでしょうか。
わかりやすいか
メニューデザインにおいて、わかりやすさ、見やすさは最も重要なポイントの一つです。
そのためにはまず、メニューを見た顧客がどんな料理があるのか把握できるよう、画像や写真を多く取り入れる必要があります。おすすめ料理は大きく、通常メニューは小さくのせるなどして画面にメリハリを付けると、より見やすいレイアウトになるでしょう。
加えて、おすすめポイントや味についてのキャプションなどを写真の横に付けておくと、顧客がオーダーする際の助けとなります。ただし、記載する文章は平易で短めの文を心がけ、読み手に負担をかけない配慮も必要です。
サービスや商品の魅力を感じるか
メニューデザインの重要な狙いの一つが、店舗で提供するサービスや料理に好印象を持ってもらうことです。
例えば、料理の写真を掲載するなら「食べたい」と思わせる美味しそうな写真が必要ですし、『誕生日の人にはケーキプレゼント』というサービスがあるなら、どんなケーキなのかわかる写真を添付する必要があるでしょう。
強調したい料理やサービスについては、レイアウトを工夫したりフォントを変えるなどして、目につきやすくしておくことが重要です。また、顧客のテンションが上がるような魅力的なコピーも添えてくと、より効果的でしょう。
イメージとマッチしているか
メニューデザインを考案する際は、店舗のイメージや雰囲気、客層等を考慮することも重要です。
まずメニューデザインでは、選ぶ文字の大きさやフォントが見た人の印象を左右します。スイーツ専門店や女性客が多い店舗のメニューなら、デザインは華やかでかわいらしい方が好まれやすい印象です。他方で、和食専門店や高級レストランといったフォーマルな店舗なら、かわいらしさよりも上品さや落ち着きのあるイメージがよいでしょう。
メニューを見た顧客が違和感を覚えないよう、メニューには店舗のトーンと揃ったメデザインが必要です。
メニューデザインに必要なスキル
魅力あるメニューデザインを作るには、基礎的なデザインスキルはもちろん、コミュニケーション力や顧客を理解する洞察力も必要です。
メニューデザイナーに求められるスキルとはどんなものなのでしょうか。
デザイン力
メニューをただの文字の羅列にしないためには、基礎的なデザイン力は不可欠です。メニューではまず見やすさが求められるため、料理名・料金・画像等をバランス良く配置する必要があります。
加えて、クライアントに具体的な希望やイメージがある際は、それらをすべて含めたうえでデザインを考えねばなりません。メニューとして載せておかねばならない情報と、クライアントの求めるイメージをいかにバランスよくレイアウトするかが、メニューデザイナーとしての腕の見せどころとなるでしょう。
情報をまとめ表現する
メニューデザインでは、提供する情報を適切にまとめて掲載することが求められます。
例えば、店舗によっておすすめ料理や人気料理は様々です。メニューではそれらの料理について適切な情報を与え、顧客に興味を持ってもらわねばなりません。料理名や料金以外の情報の伝え方によって、オーダー率は大きく変わってくるでしょう。
ただし、必要な情報を羅列しただけでは、顧客は読んでくれません。インパクトのある言葉や平易な言葉をうまく組み合わせた上で、目に入りやすくまとめて表現しましょう。
消費者心理の理解
メニューには、読み手を意識した仕様が必要です。
まず、料理をカテゴリごとに分類して記載しておけば、顧客はあちこちのページに飛ぶ必要がありません。同じジャンルの料理を比較しながら検討できるため、食べたい料理を選びやすいでしょう。
また、おすすめ料理は前面に配置する、人気のある料理は大きく記載する等の工夫も必要です。店舗のイチオシメニューが一目で分かれば、顧客は迷わずにオーダーできます。
コミュニケーション力
クライアントの希望どおりのメニューデザインに仕上げるには、クライアントや同僚と意思疎通できるコミュニケーション力が必須です。
メニューデザインでは、デザインそのものに取りかかる前に、クライアントと打ち合わせやミーティングを行います。ここで、クライアントとデザイナーがイメージのすりあわせを行うことになりますが、コミュニケーションができなければ、デザインに必要な情報を得られません。
また、メニューデザインでは、イラストレーターやカメラマン、コピーライターへのディレクションも必要になります。多くの人とイメージを共有しなければならないため、自身の考えや思いをきちんと他の人に伝えられるスキルも重要です。
エディトリアルデザインを学ぶ方法
エディトリアルデザインには、デザインの基礎知識から編集スキル、DTPソフトを扱うスキルが必須です。エディトリアルデザインに必要なスキルを得るには、どうすればよいのでしょうか。
学校に通う
エディトリアルデザインを学ぶ上で最も有益なのは、デザインを専門的に教えてくれる学校に通うことです。
デザイン学校に通えば、デザイン学の基礎をはじめ、エディトリアルデザインに必要な、印刷やDTPの知識、紙面デザイン、レイアウトワークを効率的に学べます。講師は現役デザイナーが務めるケースも多いため、最新の技術や情報を入手できるでしょう。
独学
自己管理やスケジュール管理ができる人なら、独学も不可能ではありません。学校に通う資金をツールやソフトの購入費に充てられるため、すぐに実践にとりかかりたい人には有益でしょう。
エディトリアルデザインには、配色やレイアウト、タイポグラフィなどの知識が求められます。学ぶべきことは多いため、日々細かいスケジューリングを行い、適切に学習を進めていくことが重要です。
また、IllustratorやPhotoshop、InDesignといったソフトは、PCでのデザインに欠かせません。教本だけでも習得はできますが、オンライン講座などを受講して実際の操作を見た方が、スキルの習得には有益でしょう。
メニューデザインの仕事獲得方法
メニューのデザインで仕事を獲得する場合、『企業デザイナーになる』『フリーランスで働く』という方法があります。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
デザイン会社、制作会社で働く
デザイン会社や制作会社に就職すれば、メニューのデザインに携わるチャンスは多いでしょう。
ただし、業界全体がデジタル化が進んでおり、紙媒体のデザインは全体的に縮小傾向にあります。その流れでエディトリアルデザイナーの募集も減っており、スキルや実績がなければ、就職は困難な印象です。
デザイン会社への就職を目指すなら、エディトリアルデザイン一本ではなく、プラスアルファのスキルがある方が有利に働きます。Web関連の知識やスキルを習得したり、アピールできる資格を得たりなどして、手がけられるデザインの幅を広げておきましょう。
クラウドソーシングで受注する
メニューのデザインを求める案件は、クラウドソーシングでも見つかります。
クラウドソーシングとは、企業がWeb上で不特定多数の人に案件の募集を呼びかける、新しい外注の形です。様々な条件・難易度の案件があるため、実績が少ないデザイナーにも案件を手がけるチャンスはあります。
比較的低単価にはなりますが、「実績を作る」と割り切って働く場合には、有益な働き方でしょう。
報酬の相場は?
メニューデザインは依頼内容やサイズ、仕様によって報酬金額が異なります。デザイナーとしてデザインを手がけた場合、相場はどのくらいになるのでしょうか。
1ページあたり1〜2万円
メニューデザインといっても色々ありますが、あえて相場を述べるなら、1ページあたり1~2万円ほどです。ただし、デザインにかかる工程が多かったり仕様に凝ったりした場合は、これよりもさらに高額になるでしょう。
業務範囲で変動する
通常、デザイン関係の報酬には次のような要素が含まれます。
- 企画制作費
- デザイン制作費
- DTPデザイン費
- 素材購入費
- 撮影費
- コピーライティング費
- 交通費
実際のデザインでは、各工程にかかる時間や費用によって、トータル金額が決まります。
例えば、クライアント側がコンセプトや資料写真を揃えている場合は、デザイナーの負担はそれほどありません。しかし一方で、企画提案から任されている場合は、デザイナーにかかる負担は大きくなります。デザイン料にはコンサルティング料も含めるため、請求金額は高額になるでしょう。
印刷代込みで見積りを出すケースもある
クライアントによっては、上記の工程にプラスして、印刷までを求めるケースもあります。この場合は、デザイン+印刷代を含めた見積りが必要です。
印刷を含めた場合、部数や紙に加える加工費などが金額を上下させます。たとえば、料金が安いのは無加工の紙に印刷したものですが、耐久性では劣ります。飲食店に設置することを考えるとラミネート加工やカバー加工を施したほうが安心ですが、料金はより高額です。
印刷が含まれる場合は、『どんな紙や素材を使うのか』『加工はどうするか』をクライアントに確認した上で、適切な見積りを作成します。
良いデザインのコツ
メニューデザインは、見た目の美しさだけではなく、顧客にとって有益であることが重要です。良いメニューをデザインするには、見栄えだけではなく人を惹きつける写真や印象に残るキャッチコピー等が必要となるでしょう。
クライアントを満足させるメニューデザインに仕上げるには、どうすればよいのでしょうか。
効果測定をする
デザインの善し悪しを判断する方法の一つが、効果測定です。
効果測定とは、メニューを見た顧客にどのような効果があったのかを調べることを指します。マーケティング戦略では欠かせないものですが、数値化が容易なWeb媒体と比較して、紙媒体の効果測定は難しいのが現状です。デザインによってどんな反響や効果があったのかは、自身で確認するしかありません。
メニューの効果測定には、『注文増加率』『SNSでの拡散件数』などが具体的な指標となるでしょう。
良い事例を見て研究する
自身のスキルを上げるには、先輩デザイナーの優れたメニューデザインを見て、テクニックやスキルを学ぶことも必要です。人気店を訪れてメニューをチェックしたり、メニューデザインを手がける会社のWebサイトを訪れたりなどして、なるべく多くのデザインに触れましょう。
気になるデザインは細部まで詳細にチェックします。レイアウト、写真やキャッチコピーの選び方などを自身のデザインと比較するとわかりやすいです。
他人のデザインを流用することは厳禁ですが、使われているテクニックやパターンを自身のデザインに活かすのは、スキルのブラッシュアップに有益な方法です。
写真やコピーライティングの勉強をする
写真やコピーライティングの基礎知識があると、メニューをデザインする際にイメージを働かせやすくなります。
写真の知識があると、カメラマンに細かいディレクションができます。アングルや光の調整等についても細かく指示できれば、自身のイメージにより近いメニューデザインとなるでしょう。
また、メニュー情報記載の必要がある場合は、コピーライティングで文章の基礎を学んでおくと有益です。自身に文章の基礎が備わっていれば、コピーライターからの提案を受けた際も、デザインにふさわしいコピーを選びやすくなります。
写真や文言にデザイナーのセンスや視点をダイレクトに反映できるため、よりオリジナリティの高いデザインに仕上がるのです。
まとめ
メニューデザインとはエディトリアルデザインの一つで、店舗に設置されるメニューをデザインする仕事です。よいデザインのメニューには高い販促効果が見込めるため、多くの店舗がデザインにはこだわっています。
メニューデザインを作成する際のポイントは、みやすさ・わかりやすさです。店舗の雰囲気や客層、種類などを踏まえたうえでのデザインが求められるため、必要な情報を収集しまとめる能力が求められます。
また、メニューデザインの質を上げるには、日々の研鑽が重要です。有能なデザイナーになるには、デザインスキルだけではなくコミュニケーションスキるや写真等のスキルも身につけ、引き出しの多いデザイナーになることが必要でしょう。