副業解禁の動きが進んでいる
2018年は『副業元年』と呼ばれる年になり、それまで副業を禁止していた企業が続々と副業解禁を始めました。副業という働き方を選択する人もいるのではないでしょうか。副業解禁に至った背景と、副業が社会に求められる理由を概観してみましょう。
働き方改革による変化
日本は超高齢化社会で、高齢人口に対し若年人口が極端に少ない歪な人口ピラミッドを形成しています。
しかし終身雇用制や定年退職などの固定化された制度が根付いていることもあり、働き手の総数を表す『労働力人口』は対策を打たねば減少の一途を辿るという予測が示されていました。
ここで政府が打ち出した『働き方改革』では、副業を容認しフリーランスとしての働き方も推奨するなど、出産や育児を迎える女性や定年退職を迎える高齢者が働きやすい社会を形成します。
また1社に依存しない収入源を誰もが得られる環境を整えようとしているのです。
実際にこの取り組みは奏功し、いままで非労働力人口層であった女性や高齢者の労働市場参加が促進され、労働力人口は微増しているという統計が得られています。
副業を気軽に始められる時代に
働き方改革が推進される中で企業は『副業解禁』の動きを始め、大企業から中小企業まで、またさまざまな業界で副業を容認し、それぞれの業界で副業求人が増えています。
1社に依存して長時間労働をして収入と生活を保証するという働き方ではなく、本業で伸び伸びと働きながら異業種で副業をして多様なスキルを磨き本業にフィードバックすること、イノベーションを創出するということが見込まれています。
副業における人材流動はポジティブにとらえられる社会に変容しつつあると言える出そう。
秘密漏洩などの社内コンプライアンス違反を恐れて同業他社での副業を認めない例なども多いですが、そもそも国民が等しく持つ『職業選択の自由』という権利を行使しやすい社会になってきていると言えます。
終身雇用や年金への不安もある
働き方改革以前の日本では経済不況や大手企業の倒産、あるいは大量リストラのニュースが飛び交い、65才まで働けたとしてもその後の賃金・生活保証を企業が行えるのかという不安を持っている人もいるのではないでしょうか。
さらに年金システムは今までの水準では維持困難であることが示されており、1社で働き続けることに疑問が呈されるのは自然の成り行きとも言えます。
長時間労働の規制も厳しくなっており、収入を維持するためにも副業は現実解となりつつあります。
また副業解禁で人材流動が激しくなるということは、企業が抱える人材が多様化し、固定的な人的資源に依存しなくて良いということにもつながります。
こういった状況を総合的に判断して、自らの行動で自分の収入・生活保証を行う「副業」を選択したいと希望している人が増えていっているのではないでしょうか。
本業の仕事と副業を両立するポイント
副業は、本業と上手にバランスを取っていくことが重要です。本業・副業を両立する3つのポイントを見てみましょう。
好きなことや得意なことを生かす
副業をするなら、メインの収入源である本業では選択できなかった趣味や本来の得意分野を生かす仕事を選択できます。
副業は収入のためだけに行うのではなく、好きなことや得意なことを生かすことによって、より充実したワークライフを見つけることができるのではないでしょうか。
仕事を小さな案件単位で受注できる『クラウドソーシング』サイトや副業に特化した求人サイトなどで、自分が「したいこと」を探してみましょう。
仲間を集う
副業をするなら仲間と楽しみを共有できればさらに良いでしょう。
自分の周りに副業をしている人がいないという孤立した状況では副業が次第に負担として感じられるようになっていくかもしれません。
知り合いで副業をしている人と情報交換しても良いですし、副業をする中で自分と似た境遇で副業をすることになった人と出会うこともあるでしょう。
副業は自分のキャリアパスを複線的に進めるという意味合いも持ちます。将来的に起業することにもなるかもしれません。気の合う仲間を見つけて将来について語り合ってみるのも良いのではないでしょうか。
副業する時間を確保する
副業は本業の就業時間外に行なって、本業に支障を来さないというのが原則です。
残業することがしばしばある会社に勤めているなら、アルバイトのような『雇用契約』を結ぶ稼働時間を固定化された仕事は不向きでしょう。週末に行うのであれば良いかもしれません。
しかし、プライベートの時間も確保したいとなれば『請負契約』で、1案件をリモートワークで仕上げて報酬を得るスタイルを考えてみましょう。
クラウドソーシングサイトなどでは請負契約の単発案件が無数に情報開示されています。
これを例えば『朝活』として朝の誰にも邪魔されない出勤時間前にこなしていくことが考えられるでしょう。
副業した場合の税金は?
企業勤めを行なっている人なら、個人の『所得税』は企業が『源泉徴収』を行なって給与から天引きする形で納税しています。
これは毎月行われますが、実際に支払うべき所得税額は年間給与から計算されますので、過払い金の還付や不足金の徴収を行うために『年末調整』が行われます。
副業を行う場合の税金はどうなるのか見てみましょう。
アルバイトした場合
副業でアルバイトをする場合、年間の副業収入に係る『所得』が20万円以下なら確定申告を行う必要はありません。
給与の場合の所得は『給与所得』という区分になり「給与収入 - 給与所得控除」という関係があります。
ここに税率を掛けて所得税が計算されますが、給与収入が65万円未満なら全額控除され課税金額は0円となっています。
業務委託の場合
副業をする企業と雇用契約を結ばず、クラウドソーシングなどで『業務委託契約』を結ぶ場合、所得の区分は『事業所得』か『雑所得』です。これらは「収入 - 必要経費」で計算されます。
独立・継続・反復した事業を行っているとみなされるなら、その収入は事業所得に区分されるでしょう。単発案件をたまに受注するくらいである場合や、アフィリエイト収入や講演料であれば雑所得に区分されます。
この事業所得と雑所得を足し合わせて20万円以下なら確定申告の必要はありません。
もし20万円を超えるなら開業届を出して『青色申告』を行えば、特別控除が受けられるなど税制上のさまざまな優遇措置が与えられますので検討すると良いでしょう。
仕事で副業が禁止されている場合
副業を行う上で最も気を付けたいのは、会社が副業を認めているかどうかです。
最悪の場合、懲戒解雇になるケースもありますので、副業を安心して行うための注意点を見ていきましょう。
法的拘束力はない
公務員の副業は法規的に原則禁止ですが、一般企業における副業は商慣習的に禁止されてきたもので、法的拘束力はありません。
だからと言って好き勝手に副業をして良いわけでもありません。企業には守秘義務があったり、社員が運用している特許技術の漏洩に関してなど就業規則が設けられている場合もあります。
また会社の就業時間後にアルバイトを行う際は、これが法規上残業扱いになりトラブルに発展するケースもあります。副業を行う際は、事前に必ず会社の許可を取ってから行いましょう。
副業をして懲戒になるケースもある
過去の判例において、本業に明らかな悪影響があるほどの長時間の副業を行った社員が、就業規則を根拠として懲戒解雇され、これが適法とされたケースがあります。
副業は本業に支障をきたさない範囲で行うことが原則ですので注意しましょう。
また、本業の同業他社で副業を行う場合に、競合の利益に貢献することによって本業の会社に間接的な損害を与えたとされたケースや、本業に関する事業を副業として営んでいた者が背信行為として懲戒解雇されたケースもあります。
副業をすることが会社の利益に反すると判断される場合もありますので注意しましょう。
まとめ
これからの日本や自分の老後はどうなってしまうのかと不安を抱えていた人も多いのではないでしょうか。
政府主導で働き方改革が推進されていく中で、将来の自分の生活を守るためにも、副業という選択肢を考えていくことは今後ますます重要になっていくでしょう。
副業をすることで得られるやりがい・生きがいや、新しい人脈とその後の発展も期待できます。本業に認められる範囲で、自分なりのキャリアパスを描いていくのも良いのではないでしょうか。