「やめとけ」と言われる5つの理由と職場で変わる範囲
Webエンジニアが敬遠される理由をまとめると、技術の移り変わりの速さ、納期と残業、年収の伸び方、AI への不安、会社ごとに違う業務範囲の5つです。どれも Web 開発の仕事に付いてくる面がある一方、学習を支える制度、開発の進め方、任される工程によって重さが変わるので、転職先を選ぶ段階で見極められます。
ここで使う求人のデータは、Offers に掲載された Web 開発系の正社員求人を数えたものです(Offers(株式会社overflow)調べ・Web 開発系の正社員求人 n=743・2022年6月〜2026年10月公開)。
技術の移り変わりが速く、学び続ける負担が大きい
Web 開発は言語やフレームワークの入れ替わりが速く、数年前の主流がそのまま通用し続けるとは限りません。業務の外でも勉強を続けないと置いていかれる、という感覚が「きつい」と言われる理由になっています。
求人の本文で使われる技術を数えると、TypeScript の語を書く求人は51.5%、React や Next.js の語を書く求人は53.4%でした。フロントエンドもバックエンドも TypeScript でそろえる開発が広がり、求人の半数が同じ言語に触れている計算です。
学び続ける負担を個人で抱えるか、会社が支えるかは、職場によって大きく違う点です。勤務条件や福利厚生の欄に、書籍の購入、勉強会やカンファレンスへの参加、資格取得の補助や支援を書く求人は45.1%ありました。
書いている求人の例は、技術書の購入費を月額の上限つきで会社が持つもの、国内外のカンファレンスへの参加費を負担するもの、社内で勉強会を開くものです。学ぶ時間と費用を会社がどこまで持つかは、求人票と面接で確かめておきたいところです。
掲載中の求人がどの言語・フレームワークを求めているかは、Offers Jobs のエンジニアの求人一覧から求人の詳細を開くと、業務内容・必須スキル・歓迎スキルで読み比べられます。
納期と残業で働き方が重くなりやすい
リリースの日付が先に決まり、仕様の変更が後から重なると、残業で吸収するしかない状況が生まれがちです。ただ、公的統計で見るかぎり、Web エンジニアが入る区分の残業時間は平均で月12時間です。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月公表)では、Web サービス開発のシステムエンジニアが入る「ソフトウェア作成者」の超過実労働時間数は月12時間、所定内実労働時間数は月159時間でした。
超過実労働時間数は残業や休日出勤など、所定の時間を超えて働いた時間の平均です。納期前の忙しさの波や職場ごとの差は、平均の数字からは読み取れません。
重さを左右するのは、スケジュールを誰が決めるかです。Offers の求人では、業務の欄に「要件定義」を書く求人が29.9%ありました。
「指示が下りてくるのではなく、エンジニアも要件定義から参加するため、無理のないスケジュールも交渉できます」と書く求人もありました。仕様を決める場にエンジニアが入る職場では、無理な納期を前もって調整できます。
働く時間の裁量も職場しだいです。勤務条件の欄にフレックスタイム制を書く求人は44.3%ありました。始業と終業の時刻を自分で決められる職場では、納期前の忙しさを日ごとの働き方で調整することが可能です。
年収が上がりにくく、40代以降の道が見えにくい
Web 開発は若い人が多い職種という印象があり、経験を重ねても年収が伸びない、40代以降の働き方が見えない、という不安も「やめとけ」の理由に挙がります。統計を見ると、年収は年齢とともに上がっており、40代後半まで伸びが続いています。
年齢ごとの年収と、求人の提示年収で年収に差が出る条件は、次の章で表にまとめました。年収を伸ばす道は、開発の深さを追う専門職の道と、チームを率いるリードやマネジメントの道の2つです。
AI に仕事を置き換えられるという不安
生成AIがコードを書けるようになり、Web エンジニアの仕事が減るのではないか、という不安もよく聞かれます。求人を見るかぎり、AI は開発を進める道具として要件や開発環境に組み込まれつつあり、AI を使いこなす経験が求められる側に回っています。
本文に生成AI・LLM(大規模言語モデル)・AI 開発ツール(GitHub Copilot・Cursor・Claude Code など)の語を書く求人は19.1%でした。書き方は大きく2つで、AI 開発ツールを開発環境や必須・歓迎の要件に挙げるものと、LLM を API(ほかのプログラムから機能を呼び出す仕組み)経由で組み込む機能やサービスの開発を、業務に挙げるものです。
必須の要件には「Claude CodeなどのAIエージェントを日常の開発に使っていること」、歓迎の要件には「生成AI・LLM APIを活用した開発経験」と書く求人がありました。AI に任せる作業が増えるほど比重が上がるのは、何を作るかを決め、AI の出したコードを読んで直し、品質に責任を持つ役割です。
AI の語を書く求人は、提示年収の上限も高い傾向がありました。詳しい数字は次の章の表にまとめています。
会社ごとに業務範囲が違い、入ってみるまで分からない
同じ「Web エンジニア」でも、受託開発で決まった仕様を実装する職場と、自社サービスの企画から運用までを担う職場では、任される範囲がまったくの別物です。入社してから思っていた仕事と違うと感じることが、「やめとけ」につながります。
Offers の求人では、業務の欄に「設計」を書く求人が75.9%、「要件定義」を書く求人が29.9%でした。実装だけを切り出して任せる募集より、設計から担う募集が中心です。
業務範囲のずれは、求人票の業務内容と開発体制の欄を読み、面接で「1つの機能について、どの工程から自分が担うか」を聞くと前もって防げます。SES(システムエンジニアリングサービス・技術者が客先で開発に加わる契約の形)や受託開発の構造については、「SESはやめとけと言われる理由と実態・転職先の要件」で詳しく扱いました。
Webエンジニアの年収は年齢と任される役割で伸びる
Webエンジニアの年収は、公的統計では年齢とともに上がり、45〜49歳で729.2万円です。求人の提示年収では、生成AIや TypeScript を扱う求人、リードの役割を任せる求人ほど上限が高い傾向があります。
公的統計では40代まで年収が伸び続ける
Web サービス開発のシステムエンジニアが入る区分は「ソフトウェア作成者」で、年収換算は25〜29歳の484.7万円から45〜49歳の729.2万円まで上がります。区分の当てはめは、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の職業分類対応表によるものです。
区分(ソフトウェア作成者) | 年収換算 |
|---|
25〜29歳 | 484.7万円 |
30〜34歳 | 559.5万円 |
35〜39歳 | 636.0万円 |
40〜44歳 | 686.3万円 |
45〜49歳 | 729.2万円 |
企業規模1,000人以上(全年齢) | 640.9万円 |
企業規模10〜99人(全年齢) | 518.2万円 |
企業規模計(全年齢) | 578.5万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表・第5表」(2026年3月公表)をもとに編集部が年収換算。
この区分には受託開発のシステムエンジニアやプログラマー、スマホアプリの開発者も入るため、Web エンジニアだけの平均ではありません。それでも、40代で年収の伸びが止まる職種ではないことは読み取れます。
求人の提示年収は AI・TypeScript・リードの語がある求人で高い
Offers の求人で提示年収を見ると、Web 開発系の正社員求人の上限の中央値は900万円で、上限を800万円以上とする求人が69.0%でした。語の有無で分けると、上限の中央値は生成AI・AI 開発ツールの語がある求人で1,000万円、無い求人で900万円です。
求人の区分 | 母数 | 下限の中央値 | 上限の中央値 | 上限1,000万円以上の割合 |
|---|
全体 | n=729 | 500万円 | 900万円 | 39.9% |
生成AI・LLM・AI 開発ツールの語がある | n=142 | 600万円 | 1,000万円 | 57.7% |
生成AI・LLM・AI 開発ツールの語が無い | n=587 | 500万円 | 900万円 | 35.6% |
TypeScript の語がある | n=378 | 529.5万円 | 950万円 | 46.3% |
TypeScript の語が無い | n=351 | 500万円 | 800万円 | 33.0% |
リードの役割(テックリード・チームリード・メンバーの育成など)の語がある | n=146 | 600万円 | 1,000万円 | 60.3% |
リードの役割の語が無い | n=583 | 500万円 | 850万円 | 34.8% |
(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した Web 開発系の正社員求人 n=729・2022年6月〜2026年10月公開)
語の有無は求人の書き方で分けた比較で、その語を職務経歴書に書けば年収が上がるという関係までは示していません。
それでも、AI を使う開発や LLM を組み込む開発、TypeScript での開発、チームを率いる役割を任せる求人ほど、上限の高い募集が多いことが分かります。年収の不安を減らす近道は、いまの開発経験にこうした経験を重ね、任される範囲を広げることです。
年代や企業規模による違いを含めた年収の水準は「Webエンジニアの年収|統計と求人の年収帯」で詳しく取り上げました。自分の経験がどの年収帯の求人に届くかは、Offers に職務経歴とスキルを登録すると、関心を持った企業から届くスカウトの提示年収で確かめられます。
経験を活かせる進路はバックエンドからリードまで4つ
Web 開発の経験を活かした進路は、サーバーとデータの設計を深めるバックエンド、画面と使い心地を突き詰めるフロントエンド、両方を担うフルスタック、チームを率いるテックリードやエンジニアリングマネージャーの4つです。どの進路でも、設計を任される経験と、AI を開発に取り入れる経験が評価の対象になります。
バックエンドは、API やデータベースの設計、性能や障害への備えを担います。扱うデータが増えるほど設計の判断が重くなり、経験の差が年収に表れやすい進路です。求人が求めるスキルと年収は「バックエンドエンジニアの転職|求人で見るスキルと年収」にまとめています。
フロントエンドは、TypeScript と React を中心に、画面の設計や表示の速さ、使いやすさの改善を担います。フロントエンドに絞った「やめとけ」の理由と実態は「フロントエンドエンジニアはやめとけと言われる理由と実態」で扱いました。
フルスタックは、少人数のチームで機能を企画から運用まで通して担う役割で、新しいサービスを立ち上げる職場で求められます。テックリードやエンジニアリングマネージャーは、技術の選定やメンバーの育成、開発の進め方の改善を担い、40代以降の年収を伸ばす道の1つです。
長く働ける Web 開発の職場を見分ける5つの点
Webエンジニアとして長く働ける職場かどうかは、学習を支える制度、スケジュールの決め方、任される工程、AI 開発ツールの扱い、評価と役割の広がり方の5つで見分けられます。「やめとけ」と言われる理由の多くは職種そのものより職場の側にあり、この5つの答え次第で重さが変わる、というのが求人から見える実情です。
確かめる点 | 求人票で見る箇所 | 面接で聞くこと |
|---|
学習を支える制度 | 福利厚生・制度 | 書籍やカンファレンスの費用をどこまで持つか、業務時間内に学ぶ時間を取れるか |
スケジュールの決め方 | 業務内容・開発体制 | リリースの日付を誰が決めるか、エンジニアが要件定義に加わるか |
任される工程 | 業務内容 | 1つの機能について、どの工程から担うか、設計の判断を任されるか |
AI 開発ツールの扱い | 開発環境・必須スキル・歓迎スキル | どのツールを使えるか、費用を会社が持つか、AI の出したコードをどうレビューするか |
評価と役割の広がり方 | 業務内容・募集の背景 | 専門職とマネジメントのどちらの道があるか、リードの役割を任される条件 |
(編集部の整理)
求人の要件から見えるのは、決まった仕様を実装するだけの人より、設計から担い、新しい道具を取り入れて開発の進め方を変えられる人を求める職場が多い、という傾向でした。Offers では、職務経歴とスキルを登録しておくと、その経験に関心を持った企業からスカウトが届きます。Offers に登録し、届いた求人の業務内容や面談の場で上の5つを確かめながら、「やめとけ」の理由に当てはまらない職場を選んでください。