カジュアル面談で年収の話を切り出すかどうかは、多くの人が迷うところです。選考ではない場で条件の話をすると、仕事より待遇を見ている人と受け取られないかが気になるからでしょう。それでも転職を決めるには年収の見通しが欠かせず、求人に書かれた年収の幅を見ただけでは、自分がその幅のどこで迎えられるのかは分かりません。

Offers の正社員求人に書かれた年収の幅と、厚生労働省の転職者実態調査が示す企業側の賃金の決め方を手がかりにすると、面談で年収について確かめることは、求人の年収帯の中での位置・決まり方・内訳・提示の時期の4つに絞れます。現年収や希望年収を聞かれたときの答え方とあわせて、面談の前に準備しておくことを並べました。

カジュアル面談で年収を聞くのは役割を確かめた後

カジュアル面談で年収について聞くことは失礼に当たらず、仕事内容と入社後に期待される役割を確かめた後なら、応募するかを判断するための自然な確認です。職業安定法第5条の3は、労働者の募集を行う者に対し、応募しようとする人へ業務の内容と賃金・労働時間などの労働条件を明示するよう求めています。賃金は、企業が募集の段階で示す前提の情報といえます。

厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」でも、自己都合で前の勤め先を辞めた転職者の離職理由(3つまでの複数回答)は「賃金が低かったから」が25.5%で最多でした。年収は、転職を考える人にとって判断の中心にある条件です。

気をつけたいのは聞く順番です。面談の冒頭から年収や残業時間だけを続けて聞くと、仕事の中身より条件に関心がある人という印象を残しやすくなります。事業と仕事内容、入社後に期待される役割を先に聞き、その役割に対して年収帯のどのあたりを想定しているかを続けて聞けば、役割と年収を結びつけた質問になるはずです。面談が実質的に選考を兼ねている場合の備え方は「カジュアル面談が実質面接だったときの備え方」で扱っています。

IT職求人の年収の幅は中央値360万円

Offers に公開中の正社員 IT職求人のうち、年収の下限・上限を記載した600件では、年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が900万円で、上限と下限の幅の中央値は360万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月7日集計)。幅が300万円以上の求人は66.0%を占めます。求人に書かれた年収だけでは、自分がその幅のどこで迎えられるかは決まりません。

求人の年収の幅(上限−下限)

求人数

割合

200万円未満

88件

14.7%

200〜300万円未満

116件

19.3%

300〜500万円未満

240件

40.0%

500万円以上

156件

26.0%

出所:Offers(株式会社overflow)公開中の正社員 IT職求人のうち年収の下限・上限を記載した求人(n=600・2026年10月7日集計)。

集計の対象は、Offers Jobs に表示中の正社員求人のうち、タイトルがエンジニア・デザイナー・PdM の求人です。他社の求人を代わりに載せる人材紹介会社のアカウントの掲載は除きました。掲載件数が最も多い1社(60件)を除いた540件でも幅の中央値は400万円で、企業ごとに幅の中央値を取った188社の中央値も400万円でした。幅の広さは、一部の企業の掲載に引っ張られた結果ではありません。

幅が広い求人は、同じポジションでも迎える人の経験や担う役割によって提示額が変わる余地を残しています。カジュアル面談で年収を聞く目的は、金額を約束してもらうことではなく、この幅の中で自分の経験がどこに当たりそうかの見通しを持つことです。求人に年収例(モデル年収)が書かれている場合の読み方は「モデル年収と求人の年収例の読み方」にまとめました。

面談を申し込む前に、Offers Jobs の公開求人の一覧で同じ職種の求人の年収の下限と上限を並べておくと、面談で聞いた水準が高いか低いかを判断する物差しになります。一覧は会員登録なしで見られ、求人の詳細(必須条件など)は会員登録後に読めます。

情報通信業の事業所が転職者の年収を決めるときに見る要素

厚生労働省「令和7年転職者実態調査」で、情報通信業の事業所が転職者の賃金を決める際に考慮した要素は「これまでの経験・能力・知識」が81.3%と最も多く、「年齢」50.8%、「前職の賃金」50.7%が続きました(転職者がいる事業所を100とした割合・複数回答)。産業計の「前職の賃金」は27.0%で、情報通信業は前職の賃金を考慮する事業所の割合が産業計を大きく上回ります。

転職者の賃金決定の際に考慮した要素

産業計

情報通信業

これまでの経験・能力・知識

59.2%

81.3%

年齢

35.3%

50.8%

前職の賃金

27.0%

50.7%

賃金の世間相場

34.2%

28.4%

免許・資格

30.6%

15.1%

学歴

12.0%

10.9%

出所:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」表5(2026年9月25日公表・事業所調査 n=9,154)。

考慮した要素のうち最も重視した要素も、産業計で「これまでの経験・能力・知識」が38.4%と最多でした(同調査)。情報通信業は業種の区分で、エンジニアなどの職種に限った値ではありません。それでも、情報通信業の事業所の多くは転職者の経験を見て年収を決め、約半数は前職の賃金も参考にしていると読めます。

カジュアル面談で年収を聞くなら、自分のどの経験がどう評価されて年収帯のどこに置かれるのかを聞くのが、企業が実際に使う決め方に沿った質問です。前職の賃金を考慮する企業もあるため、現年収を聞かれる前提で答え方を準備しておくと慌てずに済みます。

カジュアル面談で年収について確かめる4つの質問

カジュアル面談で年収について確かめるのは、求人の年収帯の中での位置、年収を決める等級と評価の仕組み、年収に含まれる内訳、選考に進んだ場合の提示の時期の4つです。いずれも金額の約束を求める質問ではなく、選考に進むかを判断するための情報として聞けます。年収以外の質問の組み立て方は「カジュアル面談の準備と当日の流れ・質問の仕方」が参考になるでしょう。

年収帯のどの位置に、どんな経験の人が入っているか

最初に確かめたいのは、求人の年収の幅の中で、どのような経験の人がどの位置に入っているかです。下限に近い水準と上限に近い水準で、担う範囲や求める経験がどう違うかを聞くと、自分の経験がどこに当たりそうかの見通しが立ちます。入社した人の例を聞く場合も、個人の金額ではなく役割と年収帯の対応を聞く形なら、相手も答えやすい質問です。

年収を決める等級と評価の仕組み

等級や評価の仕組みで年収を決める企業では、入社時の等級が年収帯の中の位置に結びつきます。等級がいくつあり、入社時の等級がどう決まるのか、評価の頻度と昇給の時期はいつかを聞けば、入社時の金額だけでなく入社後の伸び方も比べられます。昇給の時期や頻度は労働契約を結ぶときに交付される書面に書かれるとは限らないので、面談や選考の中で聞いておくと安心です。

年収に含まれる賞与・残業代・手当の内訳

求人の年収が、賞与・固定残業代・各種手当を含んだ額かどうかは、企業ごとに書き方が違います。賞与が業績や評価で変わる場合は、年収のうちどの程度が賞与で、どう決まるかも確かめておきたいところです。労働基準法施行規則第5条が労働契約を結ぶときに書面等での明示を求める事項に、賞与と昇給は入っていません。月々の給与と賞与の割合は、書面を受け取る前に聞いておくと比べやすいはずです。

選考に進んだ場合の年収の提示の時期と方法

選考に進んだ場合、年収がいつ、どの形で示されるかも聞いておきます。最終面接の後に条件を提示する面談を設ける企業もあれば、内定の通知と同時に書面で示す企業もあるからです。提示の時期が分かれば、ほかの企業の選考と並べて判断するときの段取りが組めます。

面談で使える聞き方の例を挙げます。

・入社後に期待される役割だと、求人の年収帯のどのあたりを想定されていますか。
・年収帯の下限と上限で、担う範囲や求める経験はどう違うのでしょうか。
・等級と評価の仕組み、昇給の時期を教えていただけますか。
・賞与や固定残業代は、求人の年収に含まれる額でしょうか。
・選考に進んだ場合、条件はどの段階で、どのような形で提示されますか。

現年収と希望年収は総額・内訳・優先条件で答える

カジュアル面談で現年収を聞かれたら、賞与を含む年間の総額と、基本給・賞与・残業代などの内訳を分けて伝えるのが基本です。総額だけを伝えると、残業の多い月の給与や業績で変わった賞与まで含めた額として受け取られ、比べる前提がずれることがあります。

希望年収は、求人の年収帯と担う役割を確かめる前であれば、下限の目安と優先する条件を伝え、具体的な金額は選考の中で相談したいと添える答え方があります。年収と役割の広さ、働き方のどれを優先するかが伝われば、企業は年収帯のどの位置で話を進めるかを考えやすくなるでしょう。

前の節のとおり、情報通信業では約半数の事業所が前職の賃金を考慮しています。現年収を低く伝えたり高く伝えたりすると、後から確かめられたときに食い違うおそれがあるため、事実のとおりに伝えるのが基本です。現年収より上を望むなら、その根拠になる経験と、入社後に担いたい役割を同じ場で伝えるのが筋です。

年収の最終的な金額は、内定時に示される労働条件で確かめる

カジュアル面談で聞いた年収は見通しで、最終的な金額は内定の段階で企業が示す労働条件で確かめます。職業安定法第5条の3第3項は、募集の段階で示した賃金などの労働条件を変更する場合に、契約を結ぼうとする相手へ変更の内容を明示するよう企業に求めています。

求人の年収帯や面談で聞いた見通しと、内定時に示された金額が違うときは、どの経験がどう評価されてその金額になったかを聞き、必要なら条件を相談するのが順当です。給与交渉のタイミングと進め方は「エンジニアの転職での給与交渉」で詳しく扱っています。

示された金額が妥当かを判断するには、同じ職種で年収の下限と上限がどう分布しているかを手元に置いておくことが役立つでしょう。Offers Jobs の公開求人で職種ごとの年収帯を見比べておけば、提示を受けたときに、自分の経験で届く求人の水準と並べて考えられるはずです。