元同僚のエンジニアや前の職場の先輩から「うちのチーム、受けてみない?」と声をかけられると、話が早く進みそうな安心感がある一方で、紹介なのに落ちたらどうしよう、落ちたら紹介してくれた人と気まずくならないかと迷う人は少なくありません。紹介で応募して、実際に見送りの連絡を受けた人もいるはずです。

リファラル採用(社員が知人や元同僚を自社に紹介する採用)で変わるのは、主に選考の入口です。面接で何を見られるかは通常の応募と大きく変わらないため、落ちる理由の多くは、紹介者が知っているあなたと募集ポジションが求める条件のずれにあります。エンジニア・デザイナー・PdM(プロダクトマネージャー)の選考の実態をもとに、落ちる理由と、紹介を受ける前に確かめておくこと、落ちたあとの紹介者との関係を整理しました。

紹介があってもリファラル採用で落ちることはある

リファラル採用でも不採用になることはあり、紹介は合格を約束するものではありません。紹介によって書類選考が省かれたり、カジュアル面談から話が始まったりと入口が変わることはあっても、面接でスキルや経験、希望条件を確かめて合否を決める流れは通常の応募と同じとする企業が一般的です。紹介者の推薦は「会ってみる価値がある」という判断材料の1つで、採用を決めるのは面接を担当する社員や人事です。

「リファラル採用の合格率は◯%」「通常の応募の◯倍」といった数字をネットで見かけますが、リファラル採用の合格率を示す公的な統計は見当たりません。出回っている数字は、採用担当者個人の経験や、一部の企業が公表した自社の実績に基づくもので、企業や職種、時期が変われば当てはまらない値です。合格率の数字を目安にするより、紹介されたポジションの条件と自分の経験が合っているかを確かめる方が、結果を左右します。

縁故による入職は入職者全体の約5人に1人

人のつながりを経て仕事に就く人は珍しくなく、厚生労働省の雇用動向調査では、2025年の入職者7,526.8千人のうち、縁故(友人・知人等も含む)を入職経路とした人は1,609.2千人で、21.4%を占めました(厚生労働省「雇用動向調査 第7表 入職経路別入職者数」・2025年・割合は編集部算出)。求人広告やインターネットの求人情報を見て応募した人(32.3%)に次ぐ規模で、職業安定所の紹介(12.2%)や民営の職業紹介所(7.7%)より多い数字です。

入職経路(2025年)

入職者数

入職者全体に占める割合

広告(求人情報誌・インターネット等を含む)

2,428.2千人

32.3%

縁故(友人・知人等を含む)

1,609.2千人

21.4%

職業安定所

915.5千人

12.2%

民営職業紹介所

581.0千人

7.7%

入職者計

7,526.8千人

100%

出所: 厚生労働省「雇用動向調査」第7表 入職経路別入職者数(2025年)・割合は編集部算出。

縁故は、社員紹介制度によるリファラル採用だけを数えた区分ではなく、友人・知人を含む人のつながりによる入職を広く含みます(区分の名称は労働政策研究・研修機構の労働統計用語解説による)。入職者は転職者に限らずパートタイム労働者なども含む数字で、縁故には前の会社のあっせん・援助による入職(定年後の再雇用を含む・330.6千人)も入る点に注意してください。表は主な経路だけを載せ、学校やハローワークインターネットサービス、出向などの経路は省いています。

リファラル採用やIT職に限った数字ではないものの、人の紹介を経由した入社が、求人広告と並ぶ主要な経路の1つだと分かります。

なお、リファラル採用は、紹介者の立場や影響力で採否が決まるイメージのある縁故採用とは区別して語られることが多く、紹介された候補者も通常の応募者と同じ面接で評価されるのが一般的です。

リファラル採用の選考の流れと通常の応募との違い

リファラル採用の選考は、紹介者が社内の制度で候補者を推薦し、人事や配属予定のチームとの面談、面接を経て内定に至るのが一般的な流れです。通常の応募と違いが出やすいのは入口で、書類選考が省かれるかどうか、最初にカジュアル面談の場を設けるかどうかは企業によって異なります。面接に入ってからは、求人ごとに決まった選考ステップに沿って評価が進みます。

段階

リファラル採用

通常の応募

応募のきっかけ

社員が知人を推薦する

候補者が求人を見て応募する、または企業からスカウトが届く

最初の接点

書類選考が省かれ、面談から始まる場合がある

書類選考かカジュアル面談

面接

求人ごとの選考ステップに沿う

求人ごとの選考ステップに沿う

合否を決める人

面接を担当する現場の社員や人事

面接を担当する現場の社員や人事

選考を載せたOffersのIT職求人の約7割は面接2回以上

選考ステップを載せた Offers の正社員 IT職(エンジニア・デザイナー・PdM)求人のうち、面接を2回以上置いている求人は72.1%、3回以上は19.6%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・選考ステップの記載がある正社員IT職求人 n=1,721・2022年3月〜2026年9月公開)。紹介で入口が変わっても、その先には複数回の面接があり、紹介者とは別の担当者が評価に加わると考えられます。

選考ステップ

IT職全体(n=1,721)

エンジニア(n=1,505)

デザイナー(n=121)

面接2回以上

72.1%

70.7%

82.6%

面接3回以上

19.6%

17.7%

27.3%

カジュアル面談

68.0%

66.8%

76.9%

書類選考

44.9%

44.4%

49.6%

コーディングテスト

8.9%

9.9%

0.8%

リファレンスチェック

6.6%

5.9%

9.1%

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・選考ステップの記載がある正社員IT職求人 n=1,721・2022年3月〜2026年9月公開。

集計したのは求人に載せた選考ステップで、紹介経由の候補者が実際に通った選考ではありません。カジュアル面談だけを載せてその後の選考を書いていない求人も含むため、面接の割合は実際より低めに出ている可能性があります。

PdM の求人は表に列を設けず IT職全体に含めていますが、面接を3回以上置く求人がエンジニアやデザイナーより多い傾向があり、職種によって選考の長さが違うこともうかがえます。

リファレンスチェックはリファラル採用とは別の手続き

リファレンスチェックは、主に選考の終盤に企業が候補者の前職の上司や同僚へ働きぶりを確かめる手続きで、知人が候補者を推薦するリファラル採用とは別物です。名前が似ているため混同されがちですが、リファラル採用は選考の入口、リファレンスチェックは選考の出口近くにあたります。選考ステップにリファレンスチェックを置いている求人は、IT職全体で6.6%でした。

紹介者への紹介手当は賃金などとして支払われる

紹介した社員に会社が紹介手当を払う場合、職業安定法第40条により、その報酬は賃金や給料などとして支払う形に限られています(e-Gov 法令検索「職業安定法」)。紹介手当の制度を設けるかどうかは企業ごとに異なり、条文が定めているのは報酬の支払い方で、選考の基準には触れていません。

「紹介者に手当が出るから会社も採用したがるはず」と考えて準備を省くより、通常の応募者と同じ基準で比べられる前提で臨む方が安全だと編集部は考えます。

IT職がリファラル採用で落ちる5つの理由

IT職がリファラル採用で落ちる理由の多くは、紹介者の知っているあなたと、募集ポジションの条件とのずれです。紹介者と一緒に働いたのが数年前なら、そのあいだにポジションが求める技術やレベルが変わっていることもあります。主な理由を5つに分け、選考のどこで表れやすいかと事前にできることを表にまとめました。

落ちる理由

表れやすい場面

事前にできること

求めるレベル・技術と経験がずれている

書類・技術面接

求人の必須条件と自分の経験を突き合わせる

技術面接や課題の準備が足りない

技術面接・コーディングテスト

通常の応募と同じ準備をする

志望動機が「誘われたから」で止まっている

1次面接・最終面接

自分の言葉で入社したい理由を作る

年収や働き方の希望が合わない

最終面接・条件のすり合わせ

求人の年収帯を先に確かめる

募集の枠やタイミングが合わない

どの段階でも

ほかの企業の選考も並行する

求めるレベルや技術スタックと経験がずれている

よくあるのは、ポジションが求めるレベルや技術スタックと、あなたの経験がずれているケースです。紹介者は「一緒に働いて信頼できる人」としてあなたを推薦しますが、募集しているのがテックリードや特定の言語・クラウドの経験者なら、人柄の評価だけで条件に届くのは難しいはずです。紹介者がバックエンドのエンジニアで、募集がデザイナーや PdM のように別の職種なら、紹介者自身も条件の細部までは把握していないことがあります。

技術面接やコーディングテストの準備が足りない

紹介だからと準備を軽くすると、技術面接やコーディングテストで差が出ます。Offers のエンジニア求人では、選考ステップにコーディングテストを置いている求人が9.9%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・選考ステップの記載がある正社員エンジニア求人 n=1,505・2022年3月〜2026年9月公開)。

テストを置かない求人でも、技術面接で設計の判断やこれまでの技術選定の理由を深く聞かれることは珍しくありません。聞かれやすい質問と答え方は「エンジニア面接の技術質問攻略法」にまとめています。

志望動機が「誘われたから」で止まっている

志望動機が「知人に誘われたから」で止まったままだと、面接で入社後の姿が伝わらず、見送りの理由になりがちです。リファラル採用は応募のきっかけが自分の意思ではないぶん、なぜこの会社なのか、入社して何をしたいのかを考え抜かないまま面接に進んでしまう人もいます。紹介者から聞いたチームの課題と自分の経験を結びつけ、そこで何ができるかを話せれば、自分の言葉の志望動機になります。転職理由の伝え方は「エンジニアの転職理由ランキング」が参考になるはずです。

年収や働き方の希望が条件と合わない

スキルや人柄の評価が高くても、希望年収や働き方がポジションの条件と合わなければ見送りになります。紹介者の待遇や社内の評判を前提に希望を組み立てると、募集ポジションの年収帯とずれることがあるためです。リモートワークの頻度や勤務地、入社時期の希望も、面接の終盤で条件がかみ合わずに見送られる理由になりやすい項目といえます。

提示される年収帯が妥当かどうかは、ほかの企業の求人と並べてみると判断しやすいものです。Offers では、エンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人の条件や年収を見比べられるほか、経歴とスキルを登録しておくと企業からスカウトが届きます。

募集の枠やタイミングが合わない

あなたの評価とは関係なく、募集の枠がほかの候補者で埋まった、採用計画の見直しで募集が止まったといったタイミングの理由で見送られることもあります。紹介者が「近いうちに人を増やすらしい」という段階で声をかけている場合、紹介の時点で募集が正式に開いているとは限りません。そのポジションの募集がいま開いているかを紹介の時点で確かめておくのが、空振りを避ける近道です。

紹介を受ける前に紹介者へ確かめる4つのこと

紹介を受ける前に、求人の条件、チームと技術スタック、選考の流れ、年収帯と働き方の4つを紹介者に確かめておくと、上で挙げた落ちる理由の多くを前もって潰せます。紹介者は社内の事情を知る立場にいるので、通常の応募では得にくい情報を聞けるのがリファラル採用の利点です。

確かめること

紹介者への聞き方の例

分かること

求人の条件

「求人票か、必須と歓迎の条件を見せてもらえますか」

経験のずれがないか

チームと技術スタック

「チームの人数と、使っている言語やインフラを教えてください」

入社後の仕事と準備の範囲

選考の流れ

「面接は何回で、技術面接や課題はありますか」

準備する内容

年収帯と働き方

「このポジションの年収帯とリモートの頻度は」

条件のずれがないか

書類選考が省かれる場合でも、職務経歴書を用意しておけば面接官の手元に経歴がそろうので、面接で話す内容の土台として役立つはずです。採用担当者が職務経歴書のどこを読んでいるかは「採用担当者が重視する職務経歴書の要点」が参考になります。

推薦で伝えてもらう内容を紹介者とすり合わせる

紹介者が社内で推薦するときに何を伝えるかを、前もって紹介者とすり合わせておくと、面接で話す内容との食い違いを防げます。推薦の際に、紹介者が候補者の経歴や推薦の理由を社内に伝える企業もあり、紹介者の記憶にあるあなたの姿が数年前のままだと、面接官が抱く期待と実際の経験がずれてしまうためです。直近の担当業務と使っている技術、次に挑戦したいことを紹介者に一度共有し、推薦で強調してもらう点と、面接で自分が話す点をそろえておくとよいでしょう。

紹介を断るなら推薦の手続きが進む前に伝える

話を聞いたうえで応募を見送るなら、紹介者が社内で推薦の手続きを進める前に伝えるのが、お互いの負担が最も小さい方法です。推薦が進んでから辞退すると、紹介者が社内の担当者に事情を説明する手間がかかります。「話を聞いて、今の自分の経験とは方向が違うと感じた」のように、理由を短く添えれば十分です。

リファラル採用で落ちたあとの紹介者との関係と次の動き

リファラル採用で落ちても、結果とお礼を自分から紹介者に伝えれば、関係を保ちやすくなります。紹介者は社内で推薦した立場上、結果を気にしていることが多く、あなたから連絡がないと声をかけにくいものです。不採用の詳しい理由を紹介者経由で聞き出そうとせず、次の動きに目を向けるのが現実的といえます。

紹介者には結果とお礼を自分から伝える

不採用の連絡を受けたら、なるべく早く紹介者に結果とお礼を伝えます。たとえば「紹介してもらった件、今回は見送りになりました。時間を割いて推薦してくれてありがとう。チームの話を聞けたのは自分にとってもいい機会でした」のように、結果・お礼・得たものを短くまとめれば十分です。紹介者を責める言い方や、選考への不満を伝えるのは避けてください。

不採用の詳しい理由は聞けないことが多い

企業が不採用の詳しい理由を伝えないことは多く、紹介経由でも事情は同じです。紹介者が社内で事情を聞ける立場にあっても、選考の評価を外部に伝えることは社内の決まりで制限されている場合があり、無理に聞き出すのは紹介者を困らせるだけです。面接で答えに詰まった質問や、求人の条件と自分の経験のずれを自分で振り返る方が、次の選考に生かせます。カジュアル面談の段階で見送られた場合の振り返り方は「カジュアル面談でお祈りされる理由と対策」が参考になるはずです。

同じ会社に再び応募するなら時期と経験を変える

同じ会社に再び応募できるかどうか、どのくらい期間を空ければよいかは企業ごとに異なります。再応募するなら、前回の選考から経験やスキルがどう変わったかを示せる時期を選ぶのが前提です。ポジションが変われば求められる条件も変わるので、紹介者や採用担当者に、いま募集しているポジションと時期の目安を確かめてから動いてください。

紹介された1社の結果だけで転職活動を止める必要はなく、紹介の選考と並行してほかの企業の求人も見ておけば、1社の結果に左右されずに比べられます。Offers にプロフィールを登録しておくと、あなたの経験を見た企業からスカウトが届き、選考を並行しやすくなります。

リファラル採用で落ちないための要点

リファラル採用で落ちないための要点は、紹介を「選考の入口が変わる仕組み」と捉え、面接には通常の応募と同じ準備で臨むことです。紹介者が持つ社内の情報は、準備の精度を上げるために使います。

  • 紹介で変わるのは選考の入口で、面接で見られる基準は通常の応募と同じと考える
  • 紹介を受ける前に、求人の条件・チームと技術スタック・選考の流れ・年収帯と働き方を紹介者に確かめる
  • 技術面接やコーディングテスト、志望動機は、紹介がない場合と同じ水準で準備する
  • 落ちたら結果とお礼を自分から紹介者に伝え、理由を聞き出そうとしない
  • 紹介された1社に絞らず、ほかの企業の選考も並行する