オファー面談で聞くことは7項目に分けると漏れない
オファー面談で確かめる項目は、年収の内訳、等級と評価、株式報酬、入社日、試用期間、働き方、配属と業務の7項目です。内定の通知や労働条件通知書を先に受け取り、書面に書かれている項目と書かれていない項目を分けてから臨めば、限られた面談の時間を書かれていない項目に使えます。
項目 | 聞くこと | 書面での確かめ方 |
|---|
年収の内訳 | 基本給・固定残業代・賞与・手当の内訳、初年度の賞与の扱い | 労働条件通知書の賃金の欄 |
等級と評価 | 入社時の等級、評価の時期と期間、昇給・昇格の基準 | 等級は通知書やオファーレターに書く会社と書かない会社がある |
株式報酬 | ストックオプションや RSU の付与の有無、数量、条件 | 付与の契約書や規程 |
入社日 | 入社日、調整できる幅、内定承諾の回答期限 | 内定の通知・オファーレター |
試用期間 | 期間の長さ、期間中の給与や条件の違い、本採用の基準 | 求人票・労働条件通知書 |
働き方 | 出社頻度、リモートの条件、労働時間の制度、残業の見込み | 労働条件通知書の始業・終業と所定時間外労働の欄 |
配属と業務 | 配属先のチーム、最初に任される業務、将来変わりうる範囲 | 労働条件通知書の就業場所・業務の欄(変更の範囲を含む) |
(編集部の整理)
選考の面接で聞く逆質問とは、目的が違います。面接の逆質問は自分を見てもらう場でもある一方、オファー面談は提示された条件で入社するかを決める場です。
遠慮して聞かずに済ませた条件は、入社後に自分で引き受けることになります。面接での質問の組み立ては、「エンジニア転職で聞くべき逆質問」を参照してください。
労働条件通知書に書かれる項目と2024年4月の変更
会社は労働契約を結ぶとき、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならず、厚生労働省令で定める事項は省令で定める方法で明示する決まりです(労働基準法 第15条)。この明示に使う書面が労働条件通知書で、雇用契約書と1通にまとめる会社もあります。
厚生労働省のパンフレットによると、書面の交付による明示が必要なのは、労働契約の期間、有期契約を更新する場合の基準、就業の場所と従事すべき業務、始業と終業の時刻・休憩時間・休日など、賃金(昇給を除く)、退職に関する事項です。労働者が希望した場合は、電子メールなどでの明示もできます。
昇給も明示が必要な項目ですが、書面でなくてもよい扱いです。退職手当や賞与などの臨時に支払われる賃金、休職などは、会社が定めを設けている場合に明示が必要になります(厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」)。
同じパンフレットは、労働条件を明示する書面の様式は自由だとしています。オファーレターは会社ごとに名前も中身も違い、労働条件通知書と別に出す会社もあれば、1通にまとめる会社もあります。書面の名前で判断せず、上の項目がどの書面に書かれているかで確かめるのが確実です。
労働契約を結ぶときに会社が明示した労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できます(労働基準法 第15条第2項)。労働条件通知書に書かれた条件は、後から食い違いを確かめるときの根拠です。
2024年4月から就業場所と業務の変更の範囲が加わった
2024年4月から、全ての労働契約の締結時に、雇い入れ直後の就業場所と業務に加えて、それらの「変更の範囲」も明示することになりました。変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲のことです(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」)。
リモート中心の働き方を前提に入社する人や、職種を変えずに働き続けたい人にとっては、書面で最も確かめたい欄がここです。厚生労働省のパンフレットは、就業場所・業務に限定がない場合の書き方として「会社の定める○○」と記載する例を挙げています。
変更の範囲がこのように広く書かれていたら、面談で、実際に転勤や出社先の変更が起きた例があるか、職種をまたぐ異動があるかを聞き、答えを記録しておきます。
求人票の段階でも明示の決まりがある
求人の段階にも明示の決まりがあり、2024年4月施行の職業安定法施行規則の改正で、求人票や募集要項に示す労働条件にも業務と就業場所の変更の範囲が加わりました。厚生労働省の求職者向けリーフレットは、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合に条件の一部を別のタイミングで明示することを認めつつ、原則として面接などで最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示することとしています(厚生労働省「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。
同じリーフレットは、面接などの過程で当初の条件が変わる場合、会社がその変更内容を明示する必要があるとしています。求人票と通知書を並べて違いがあれば、オファー面談はその理由を聞く最後の機会です。
Offers の求人票に記載がある条件の割合
Offers に掲載された IT のプロダクト職(エンジニア・デザイナー・PdM)の正社員求人を集計すると、年収の下限と上限は99.4%の求人に書かれていました。試用期間・賞与・固定残業代・昇給・株式報酬に触れる求人の割合は12.6〜43.6%です。
求人票は募集の段階の情報で、厚生労働省の求職者向けリーフレットも、やむを得ない場合は条件の一部を面談などの別のタイミングで明示できるとしています。求人票で触れていない条件は、オファー面談で確かめる候補になります。
求人票の項目 | 記載がある求人の割合 |
|---|
年収の下限と上限 | 99.4% |
試用期間 | 43.6% |
賞与 | 35.8% |
固定残業代(みなし残業) | 34.6% |
昇給 | 30.6% |
株式報酬(ストックオプション・RSU など) | 12.6% |
(Offers(株式会社overflow)調べ・題名にエンジニア・デザイナー・PdM を掲げる正社員求人 n=1,727・2022年3月〜2026年10月公開)
出社頻度の項目では、「相談の上決定する」が36.4%、「フルタイム出社」が25.2%、「フルリモート」が20.7%でした。3件に1件以上は、出社の頻度を相談して決める形です。
記載があっても、期間や金額まで書いているとは限りません。自分の場合の条件は、求人票に書かれた項目も含めてオファー面談で確かめておくと安心です。
Offers では、エンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人を提示される年収の幅とあわせて探せるので、応募の前に条件を見ておくと、オファー面談で聞く項目を絞り込めます。
Offers でエンジニア・デザイナー・PdM の求人を探す
年収の内訳で確かめること
年収で確かめるのは総額よりも内訳です。基本給、固定残業代、賞与、手当がそれぞれいくらかを聞きます。同じ年収でも、賞与の比率が高いほど業績や評価で受け取る額が振れやすく、固定残業代を含む場合は、その分だけ基本給が低い組み立てになります。
厚生労働省の求職者向けリーフレットは、時間外労働の有無に関わらず一定の手当を払う固定残業代(みなし残業)を採用する場合、固定残業代を除いた基本給の額、何時間分の時間外手当としていくら払うか、その時間を超えた分の割増賃金を追加で払うことの3点の記載が必要だとしています(厚生労働省「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。求人票や書面にこの3点がそろっていなければ、面談で聞いて書面に残してもらいましょう。
賞与は、算定の基準(会社の業績・個人の評価)、支給の時期、入社した年の扱いを聞きます。提示年収に賞与を含めている会社では、入社1年目は評価の期間が足りず、満額にならないことがあるためです。
提示額が求人の年収帯のどこにあるかと、その理由も確かめておきたい点です。選考前の段階での年収の確かめ方は「カジュアル面談の年収の聞き方」に、提示額への希望の伝え方は「エンジニアの転職の給与交渉」にまとめています。
等級と評価で確かめること
等級と評価で確かめるのは、入社時にどの等級に置かれるか、次の評価がいつで、何を基準に昇給・昇格が決まるかです。提示年収が等級に結びついている会社では、入社時の等級の位置が、入社後数年の年収の伸びを左右します。
聞き方の例は次のとおりです。
- 入社時の等級と、その等級の年収の幅
- 評価の時期と期間、入社した期の評価の扱い
- 1つ上の等級に上がるときの基準と、エンジニアの場合は技術の評価とマネジメントの評価がどう分かれるか
- 昇給の時期と、過去の昇給の幅の目安
等級の名前や評価の仕組みは会社の規程に書かれていて、労働条件通知書には載らないことがあります。資料の共有を頼むか、面談で聞いた内容をメールで送り返して確認しておけば、後から食い違いを確かめられます。等級を含めた交渉の進め方は、「スタートアップの年収交渉」を参照してください。
ストックオプションと RSU で確かめること
株式報酬で確かめるのは、付与の有無、付与の時期と数量、権利が確定する条件、退職したときの扱いの4点です。ストックオプション(SO)は決められた価格で株を買う権利、RSU は条件を満たすと株を受け取れる権利で、どちらも付与の数量や条件は、労働条件通知書とは別の契約書や規程で確かめることになります。
求人票の割合の節と同じ Offers の求人の集計では、株式報酬に触れる求人は12.6%でした。「SO付与あり」「SO制度有(設計中)」のように有無を書く求人もあり、数量や条件は面談で聞いて確かめる項目です。
面談では、次の項目を聞いておきます。
- 付与の有無と、付与の時期(入社時か、入社後の評価に応じてか)
- 付与の数量と、会社の発行済み株式に対する割合の目安
- ストックオプションの場合は行使価格、RSU の場合は受け取れる時期(権利が確定していく期間)
- 退職したときに、権利が確定していない分や行使していない分がどうなるか
- 付与の契約書や規程を、内定承諾の前に見られるか
制度の設計や税の扱いは付与の契約によって変わるため、聞いた数量や条件は書面で受け取ってから判断してください。
入社日と試用期間で確かめること
入社日で確かめるのは、会社が希望する入社日、調整できる幅、内定承諾の回答期限の3つです。現職の退職の手続きや引き継ぎにかかる期間を伝え、無理のない日付を書面に残してもらいます。
試用期間で確かめるのは、期間の長さ、期間中の給与や条件の違い、本採用にあたって何を見るかです。厚生労働省の求人票の記載例には「試用期間あり(3か月)」「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」とあり、試用期間中に給与が変わる形も書き方として示されています(厚生労働省「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。
同じ Offers の求人の集計で、試用期間に触れる求人は43.6%でした。求人票に書かれていなければ、面談で次のように聞くと答えが具体的になります。
- 試用期間は何か月で、延長されることはあるか
- 試用期間中に給与・手当・リモートの条件で違いはあるか
- 本採用の判断で、どんな点を見るか
働き方で確かめること
働き方で確かめるのは、出社の頻度とリモートの条件、労働時間の制度と残業の見込み、就業場所と業務の変更の範囲です。出社頻度を相談して決める求人もあり、口頭で基本はリモートと聞いただけでは、入社後に方針が変わったときの根拠になりません。
確かめる点 | 聞き方の例 |
|---|
出社の頻度 | 配属先のチームは週に何日出社しているか、出社日は決まっているか |
リモートの条件 | 試用期間中もリモートで働けるか、居住地の条件はあるか |
労働時間の制度 | フレックスや裁量労働制か、コアタイムはあるか |
残業の見込み | 配属先の月の残業時間の目安、リリース前や障害対応の当番の頻度 |
変更の範囲 | 就業場所・業務の変更の範囲に何と書かれ、実際に異動や転勤の例はあるか |
(編集部の整理)
Offers に掲載されたエンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人では、働き方の項目が裁量労働制の求人が13.7%でした。裁量労働制の場合は、みなし労働時間が何時間か、深夜や休日に働いた分の扱いを聞いておきます。
配属と業務で確かめること
配属と業務で確かめるのは、どのチームに入り、入社後3か月ほどで何を任されるか、誰に評価されるかです。エンジニア・デザイナー・PdM は、職種の名前が同じでも、担う範囲が会社ごとに違います。
聞き方の例は次のとおりです。
- 配属先のチームの人数と役割の分担、直属の上司は誰か
- 入社後最初に担当するプロダクトや機能、最初の3か月で期待される成果
- 使っている技術や開発の進め方で、選考の段階から変わった点はあるか
- 将来、別のチームや職種へ移る可能性がある場合、その決まり方
可能であれば、配属先の上司やメンバーと話す時間を面談の中に設けてもらうと、書面に書けない仕事の進め方まで確かめられます。
オファー面談の聞き方と順番
オファー面談は、書面に書かれている条件の確認、書かれていない条件の質問、希望の伝え方の順に進めると、話がそれずに済みます。最初に条件を確かめておくのは、希望を伝える段階で何を根拠にするかをはっきりさせるためです。
- 面談の前に、内定の通知と労働条件通知書(またはオファーレター)を受け取り、7項目のうち書かれていないものに印を付ける
- 面談の冒頭で、書面の内容を自分の理解として読み上げ、違いがないかを確かめる
- 書かれていない項目を、冒頭の表の順に聞く
- 希望がある場合は、確かめた条件を根拠に伝える
- 面談の後、聞いた内容をメールで送り、口頭の説明を書面に残してもらう
聞きにくい質問は、入社後の働き方を具体的に思い描きたいという目的を添えて切り出すと、条件を確かめるための質問だと相手に伝わりやすくなります。
条件を確かめてもなお迷うなら、迷いの理由を書き出して、条件の問題か気持ちの問題かを分けるのが先です。内定の後に迷う理由と整理のしかたは「内定ブルー」で扱っています。
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