Webクリエイター能力認定試験の概要
まず、Webクリエイター能力試験とはどのような試験なのかを確認していきましょう。
世界標準に対応した試験
国際的な非営利コンソーシアムであるW3Cは、Webの世界基準とも言える指針を発表しました。
Webクリエイター能力認定試験は、この『世界標準』とも言えるWebの最新技術について問われる初めての資格です。
この試験は、W3Cが発表したガイドラインに従い、Webクリエイターとしての実践的な能力がどれだけ備わっているのかを測ります。
レイアウト指定を重視しHTML5に対応
Internet Explorer、Safari、Chromeなどに代表されるマルチプラウザーは、今や誰もが毎日のように利用しています。Webに関係のない仕事についている人にとっても、何かを調べたり、探したりするときの重要な手段の一つです。
Webサイトのデザインをする上で重要なCSSやHTMLの知識があるかどうかも試験の重要項目となっています。試験は最新のHTMLでもある『HTML5』にも対応しているため、合格者はWebクリエイターとしての実戦的な技術を持っている証明になるでしょう。
受験日程や会場
どの資格でも、受けると決めれば気になるのが受験日程と会場です。Webクリエイター能力認定試験の受験日程、会場について見ていきましょう。
個人の場合は随時試験
Webクリエイター能力認定試験は、他の資格のように受験者が一斉に同じ日時に試験を受けるというタイプのものではない、随時試験です。
そのため、仕事をしていて忙しい人や、家が都心から離れているという人も、日時を調整して試験を都合の良い時間に受けることができます。
試験日時は各会場によって異なり、試験終了後1カ月以内に受験結果が発表されます。この点も、他の試験とは大きく異なると言えるのではないでしょうか。
指定会場で受験
試験は全国にある各試験会場が設定した日程で行われ、試験時間も各会場によって異なります。支払い方法や申し込み期間も、もちろん各試験会場によって異なります。
最寄りの試験会場の検索は、Webクリエイター能力認定試験の公式ホームページにある随時試験時会場検索ページから調べることができるでしょう。
ここで確認を忘れがちなのが、ツールやプラウザなどの実施環境や受験結果の受け取り方法です。これも事前にしっかりとチェックしておくようにしましょう。
受験料について
Webクリエイター能力認定試験は、ふたつのレベルに分かれていて、受験料もそれぞれ異なります。
- エキスパート 7300円(税込)
- スタンダード 5700円(税込)
受験申し込みの際は、自分の受験するレベルを確認したうえで、支払うようにしましょう。
HTML5対応版の試験内容
Webクリエイターに必要なのは、Webサイトを制作する際のデザイン能力と、Webページのコーディング能力です。
その能力が問われるWebクリエイター能力認定試験の内容について詳しく見ていきます。
スタンダードとエキスパートの認定基準
Webクリエイター能力認定試験にはふたつのレベルがあることを先ほど述べましたが、実際には、どのような違いがあるのでしょうか。
まず難易度が比較的低いスタンダードでは、セマンテックWebへの理解が求められます。具体的には、HTML5のマークアップやCSSを使ってHTMLの構造を維持しつつデザインやレイアウトを表現することが基準となります。
一方、難易度の高いエキスパートでは、それ以上のスキルが要求されます。まずWebサイト訪問者の見やすさが重視されます。
また、レイアウトや色彩設計を考慮したWebデザイン能力あるかどうかや、動きのあるWebページを表示させる、Webサイトをマルチデバイスに対応させたりすることができるかどうかといった、高度なWeb制作能力も問われます。
試験時間
試験時間については、まずスタンダードは実技問題のみでテキストエディター使用の場合は70分、Webページ作成ソフト使用の場合は60分です。
エキスパートの場合、実技問題に加えて20分の知識問題もあります。また、実技問題も長くなり、実技問題はテキストエディター使用の場合は110分、Webページ作成ソフト使用の場合は90分となります。
出題形式
スタンダードもエキスパートも、実技問題では、内容、形式、題数が問われます。
まずはスタンダードは以下の通りです。
- 内容 HTML5の変換、HTMLの作成、CSSの読込と作成、画像の表示
- 形式 配布された問題データおよび素材データに基づき、設問文の指示に従って編集を行い、解答データを提出する。
- 題数 1テーマ(4ページ程度のXHTMLファイルとCSSファイル)
そしてエキスパート。
- 内容 HTMLの作成、CSSの読込と作成、画像の表示、JavaScriptの読込
- 形式 配布された問題データおよび素材データに基づき、設問文の指示に従って編集を行い、解答データを提出する。
- 題数 1テーマ(基本ページ1ページと5ページ程度のHTMLとCSSの作成、画像ファイル)
エキスパートはこの実技問題に加え、知識問題もあります。
- 内容 Webサイトに関する知識
- 形式 多肢選択形式(4択)
- 題数 20問(デザインカンプによる設問15問、文書による設問5問)
以上がスタンダードの実技問題、エキスパートの実技問題、知識問題の出題形式です。
HTML5対応版の主な出題範囲
HTML5対応版の出題範囲は非常に広く、他のHTMLのバージョンとの違いについてもしっかりと確認しておかなければなりません。
Webサイトの構成と設計
Webサイトの構成と設計に関しては『ページ構成』『レイアウト/パーツ設計』『ユーザビリティ/アクセシビリティ』という3テーマで出題されます。スタンダードとエキスパートでは、範囲が少々異なる点に注意です。
エキスパートではスタンダードの範囲に加えて、より難易度の高い項目が出題されます。例えばページ構成では、サムネイルのページやレスポンシブWebデザインの対応といった内容が出題されます。
HTML
出題範囲のひとつであるHTMLにおいて重要なのは、やはりHTML5の概念と基本構造をしっかりと理解していることです。
スタンダード、エキスパート共にそういった問題は出題され、エキスパートではフローコンテンツや指定のある入力フォームなど、Webサイトをより便利に利用する上で欠かせない技術を扱えるかも問われます。
CSS
CSSという機能は、Webサイトのデザインやレイアウトを司る機能です。試験範囲は文字のエンコードやコメント機能といった必須なもの、テーブル、背景、レイアウトの取り方などのデザインに関連する部分など、CSSの扱いに関して一通り出題されます。
エキスパートの場合、CSSスプライトといったさらに高度なものへの理解が求められます。
試験の実施形態
Webクリエイター能力認定試験では、試験会場の環境にあわせて、実施形態を選ぶことができます。その実施形態は、『WBT』と『CBT』の二つに分かれます。これはどういったもので、どんな違いがあるのでしょうか。
WBT
本来、WBTは、ホームページを利用して行う試験という意味があります。Webクリエイター認定能力試験では、受験者は『CERTIFYONLINE』から試験をダウンロードし、試験終了後『CERTIFYONLINE』に解答をアップロードします。
資材を返す際の費用がかからず、また、USBメモリを使用しないためデータが破損する心配もありません。クレジットカードやコンビニ決済であれば、当日まで申し込みできます。
CBT
WBTとの違いは「USBメモリで受験プログラムが配布され、解答データもUSBメモリで提出する」という点です。試験会場にネットワーク環境が整っていなかったり、セキュリティの観点からインターネットの接続が制限されている場合は、実施形態がCBTとなります。
CBTは試験の2週間前までに申し込みが必要で、USBメモリの返送料は受験者が負担します。
試験勉強と難易度
受験前には勉強できる時間を確保し、備えておくことがもちろん必要です。そのためにはどのような勉強方法で、どのくらいの時間勉強すればいいのでしょうか。また、合格率はどのくらいなのでしょうか。
独学や民間スクールでの学習
まず、お金をかけずに勉強したいなら、やはり独学がおすすめです。公式問題集や公式テキストも販売されています。
独学では、どうしてもモチベーションが上がらないという人は、お金はかかりますが、民間スクールで勉強する必要があるでしょう。
サーティファイのホームページに、試験対策講座実施校を検索できるページがあります。ここに住んでいる都道府県の項目を選び、検索してみてください。
試験対策を実施している民間スクールが表示されるので、そこからいくつか選び、見学や説明会に行ってみましょう。学費を払い、共に合格を目指す仲間と勉強すれば、モチベーションも上がります。
目安となる学習時間
次に気になるのは、どのくらいの時間勉強すればいいのか、ということです。
ガイドラインによれば、スタンダードの標準学習時間は24時間、エキスパートは38時間とされています。もちろん勉強法によっても大きく変わってくるでしょう。
勉強にどのくらい時間が取れるのかを自分自身で逆算し、受ける日時を決める、ということもできます。
また、モデルカリキュラムについては、Webクリエイター能力検定試験のモデルカリキュラムのページに参考となるカリキュラムが掲載されています。
合格率について
2018年3月時点での累計受験者数13,302名、2017年度の平均合格率は88.4%でした。他の資格試験と比べても、努力して能力を身につければ、それが結果に繋がる試験だということがこの結果からわかります。
Webクリエイターのその他の資格
Webクリエイターといっても、それぞれ専門分野は様々です。ここでは、Webデザインに焦点を当て、Webクリエイター能力認定試験以外にどのような資格があるのか見ていきます。
ウェブデザイン技能検定
ウェブデザイン技能検定は、国家検定です。レベルは1級から3級まであり、2級と3級は年四回、1級は年1回実施され、全て学科試験と実技試験があります。
1級は実技試験と学科試験でそれぞれ日が分けられ、学科試験に合格しなければ実技試験を受けることができません。このふたつに加えてペーパー実技試験も受けます。
この検定に合格したときの大きなメリットは、合格者にはウェブデザイン技能士の合格証書が発行されるということです。この検定を受けなければ、ウェブデザイン技能士として名乗ることができない、ということでもあります。
就職・転職だけでなく、Web関係の仕事をする際に信頼を得るためにも、ぜひともとっておきたい資格です。
Webデザイナー検定
コンセプトを作る準備段階から、Webサイトのデザイン、評価、運用まで、現場に直結する能力を習得したいなら、この検定の勉強をしておくと非常に役に立ちます。
自分のWebデザインに関する基礎知識を試したいならベーシック、専門知識をどれほど理解しているかと、知識をどれだけ応用できるかを確認したいならエキスパートを受けるのがベストです。
Webデザイナーが仕事をしていく上で必要となる共通のスキルが網羅されていることが評価され、デザインの専門誌『MdN』からも公認を受けています。
また、最近では、NPO実務能力認定機構からも認定を受け、信頼性の高い検定として注目を集めています。
Webデザイナー試験
Webデザイナーの実務に着目した資格としてできたのがWebデザイナー試験です。2013年に試験が改訂され、試験の内容も、公式テキスト『ウェブの仕事力が上がる 標準ガイドブック2 Webデザイン 第2版』を中心に出題されます。
試験問題の約2割は、『ウェブの仕事力が上がる 標準ガイドブック1 Webリテラシー 第3版』から出題されるため、対策のたてやすい試験だと思われます。
しかし、これまでの累計の合格率49.79%と、難易度は少々高めです。それだけに社会的にも評価される資格だということがわかります。
Web関連のその他の資格
Webクリエイター能力認定試験と、Webデザイン関係の資格について見てきましたが、Web関連では、他にどのような資格があるのでしょうか。
ホームページ制作能力認定試験
Webサイトの作成ソフトを使い、わかりやすくて印象に残るホームページを作れるかどうかを問う試験です。
また、Web業界では、納期を守り、効率よくWebサイトを制作するということが不可欠ですが、ホームページ制作能力認定試験では、短い時間で効率的にクオリティの高いWebサイトを作る能力があるかどうかについても重視されています。
Web業界に入りたいと思ったら、まずは目指しておきたい資格です。
ネットマーケティング検定
近年の技術革新に伴い、会社と顧客とをつなげるインターネット・マーケティングに関するニーズは、ますます高まっています。
とはいえ、もっとも効果的なネットマーケティングは何かと聞かれて、すぐに答えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。
この検定は、最適なネットマーケティングの手法を選ぶための問題が出題されています。
目的となっているのは、Webサイトを活用して会社の認知度を向上させることや、市場調査・SEO・SEM対策・会員向けサイトの構築・商品の販売など、多岐に及んでいます。
まとめ
Webクリエイター能力検定試験は、すでにWeb業界で働いている人たちがブラッシュアップできるのはもちろん、WebクリエイターやWebデザイナーになりたい人たちも、合格すればその能力を証明することができます。
Webクリエイター能力認定試験で、世界基準のWeb能力を備えていることを証明し、自分は日本だけでなく世界にも目を向けたWebクリエイターであるということをアピールしてみましょう。
Web分野での活躍の場がもっと広がるはずです。