2045年問題について知っておこう
2045年問題とは、簡単に言うと人工知能(Artificial Intelligence=AI)が人間の知能を超えてしまうタイミングを指しています。そのタイミングのことを『シンギュラリティ(Singularity=技術的特異点)』と呼んでいます。
それでは2045年問題、そしてシンギュラリティについて解説していきましょう。
コンピュータが人類を越える日
あくまでも予測の話にはなってきますが、2045年には人工知能が人間の能力を超えてしまいます。もちろん、人工物である人工知能が人間の知能を超えると、さまざまな問題が起こることは容易に想像できます。
その問題とは、一つに人工知能が自らを作動させているプログラムを自分で改良できることになると、永遠に進化し続けることになります。この進化が永続的になると、いつの間にか人間の知能を超えてしまうというわけです。
人間の知能を超えるということは、ある時から人間の代わりに人工知能がさまざまな新発明を行うことになり、人間の知恵では想像し得ない世界になるのです。
レイ・カーツワイルの予言
レイ・カーツワイルというアメリカ出身の発明家にして未来学者がいます。彼は自身の著書『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』において、人工知能は2045年に人間の知能を超えると予言しました。
ちなみに、マイクロソフトの創設者であるビル・ゲイツは、人工知能の未来を予言するのに最適な人物であるとカーツワイルのことを評価しています。
カーツワイルは『ムーアの法則』という、集積回路の密度が1年半から2年で倍増するという法則をベースにして2045年というタイミングを導き出しました。
カーツワイルによると、ムーアの法則を拡張した『収穫加速の法則』により、宇宙のあらゆる現象は進化を遂げ、人工知能が2045年に人間の知能を超えると予測しています。
シンギュラリティによるパラダイムシフト
その人工知能が人間の知能を超えることをシンギュラリティ(技術的特異点)と呼んでいますが、シンギュラリティを迎えると世界はさまざまな変化を遂げます。では、実際にシンギュラリティが起こると、どのような世界になってしまうのでしょうか。
まず、テクノロジーはこれまで以上のスピードで進化していきますので、そのスピードについていけるように人間は常にスキルをアップデートすることが求められます。今まで以上に、努力が必要な時代となるでしょう。
また、世界の在り方自体も変化します。ベーシックインカムのような自動的な収入により、人間が労働をすることがなくなると予測する研究結果も出ているほどです。
そして、究極的には人間は肉体を捨て、意識だけをアップロードする時代が来るとも言われています。ここまで来ると、『生死』や『命』という概念そのものが変化してしまう可能性があります。
人工知能の特徴について知ろう
それでは、2045年に人間の知能を超えると言われている人工知能とは一体何なのでしょうか。ここからは、人工知能の特徴を解説していきましょう。
人工知能とはなにか
人工知能を辞書で引いてみると、「学習や推論・判断など人間特有の知能を備えたコンピュータシステム」といったような定義づけをしています。つまり、人間の知能と同じように学習し、推論し、判断するのが人工知能というわけです。
これまでの機械といえば飛行機・自動車やショベルカーのように人間の手足になるものがほとんどでした。
しかし、人工知能は人間の知能の代わりになるものです。例えば、スマートフォンのガイドが代表例です。人間が質問したことに、ネットワーク上で答えを集めるなどの手段で正解を導きます。
その他にも、将棋やチェスなどの知能ゲームや、コールセンターに導入されるシステムなどに人工知能が使われています。有名なのは2009年にIBM社によって開発された意思決定支援システム『ワトソン』です。
メリット
人工知能を導入することのメリットはどのようなものでしょうか。
まずは、労働力不足の解消です。現代は特に若い労働力不足が社会問題化していますので、その課題を解消することが期待されています。しかも賃金がかからないので、人件費の圧縮にもつながるでしょう。
そして、人工知能ができる仕事は人工知能に任せて、社員をもっと高いレベルの判断が必要な業務に集中させることができます。そのため、社内の生産性が高まることも期待できるのです。
人工知能は一瞬でさまざまな計算ができますので、マーケティングシステムにも活用できます。マーケティングが強化できれば、ユーザーのニーズにもすぐ対応できるようになります。
デメリット
逆に、人工知能により人間が行わなくて良い業務が増えるため、社員のモチベーションが低下してしまいます。また、人工知能を管理するために能力の高い管理職を雇用することは必須条件になるのではないでしょうか。
人工知能の増加によって、実際に仕事に就けない人が出てきてしまう可能性があることも、大きなデメリットと言えるでしょう。
人工知能の種類
では、人工知能にはどのような種類があるのでしょうか。機能や使用目的によって、人工知能は分類できます。
AIの意味と使用例
人工知能とAIは同義語ですが、人間の知能をコンピュータで代替するという考え方が前提となります。プログラミング言語ではなく、人間の使う言語を理解することはもちろん、その言葉から論理的な推測を行い、学習し経験値を上げていきます。
このような進化を遂げるため、人工知能は人間の行動を学習し次の行動を起こすような場所に使われます。例えば、カーナビゲーションシステムや家電関係などです。人間の生活に密着した場所で活用され始めています。
IoT(モノのインターネット)
現代社会には様々な情報があふれています。それらの情報を必要なものだけ収集して可視化することで、世の中の問題を解決しようという考え方を、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)と呼んでいます。
モノ同士がインターネットのようにつながることで、情報交換し相互に制御し合う仕組みです。IoTはさまざまなモノにつながるため、個人情報が蓄積されている端末にもアクセスできます。しかしここで課題となるのがプライバシーの保護です。
機械学習と深層学習
次に人工知能の特徴である学習の分類です。
まずは『機械学習』です。これは、大量の情報を処理すると同時に、その分類の仕方を自動的に習得する学習方法のことです。簡単にいうと、機械がYESかNOかを判断するということです。その判断軸は人工的に取り付けられます。
もう一つは『深層学習(=ディープラーニング)』です。これは、機械学習における人工的に取り付けられる判断軸をも、人工知能が学習していくという学習方法です。
例えば、機械学習しかできない時代はある動物を『犬か犬以外か』を分類するためには、人間が人工知能に犬とはどのようなものかを教えなければなりませんでした。
しかし深層学習ができる人工知能は、犬とはどのようなものかという犬の特徴を自分で学んでしまうため、人間が教える必要がなくなるのです。
人工知能の活用例
では、人工知能が具体的にどのように活用されているのでしょうか。
チェスや将棋
チェスや将棋のような、人間が知能を競うゲームで人工知能は人間を超え始めました。
このような『人間対人工知能』で世界に衝撃が走った事件といえば、1997年にIBMが開発した『Deep Blue』がチェスの世界チャンピオンに勝利したことです。
実は、人工知能によるチェスの研究がスタートしたのは1950年頃といわれているので、人間に勝つまでに50年近い年月がかかったことになります。
また、人工知能に囲碁の研究は1960年代に入ってから始まりました。チェスよりもルールが複雑なことから、人間に勝つことは至難の業といわれていましたが、2017年についに人間に勝利しました。
最後に、人工知能による将棋の研究は1970年代方スタートし、国産の将棋ソフトである『Ponanza』は現役のタイトルホルダーに勝利するだけでなく、すでに人間には勝ち目がないレベルに達しました。
自動車の自動運転
最近は自動車の自動運転の研究が進んでいます。最初は、運転の支援レベルからスタートし、特定の条件で自動運転機能を持つレベルへ進化しました。
その後は、条件付きの自動運転から完全な自動運転への進化を遂げることになります。完全な自動運転においてはドライバーがいない(車の中で運転せず何をしていても良い状態)を想定していますが、『その日』は意外に早くやってくる可能性があります。
2045年問題でなくなる仕事
このように、人工知能がどんどん進化していき人間の知能を超えてしまうと、人間の仕事は人工知能に取って代わられてしまう可能性があります。ではシンギュラリティが起こるとどのような仕事がなくなってしまうのでしょうか。
製造業
製造業の工場や倉庫には、多くの労働者が従事しています。
しかし、人工知能が進化し機械のオートメーション化が進むと、今まで人間がやっていた仕事は機械ができるようになってしまいます。そのため、製造業に関わる仕事は大きな打撃を受けることになるでしょう。
製造業は大手企業の下に多くの中小企業がぶら下がっているという組織的な問題も抱えています。大手企業のIT化についていけない中小企業は、倒産のリスクも高くなることを考慮する必要があります。
コンビニやスーパーのレジ
もう既に一部の小売店では、レジの自動化が導入され始めています。このレジの自動化が広い範囲で導入されれば、レジの仕事は人間が行う必要がなくなってしまうのです。
また、自動車のように遠距離への移動を自動化しようとしているスキームに到達している時代ですので、裏の倉庫から商品を運ぶといった超近距離の移動は簡単に自動化されるでしょう。
プログラマー
意外なところでは、プログラマーの仕事がなくなる可能性があります。
後述しますが、クリエイティブな仕事は人工知能では完全にこなせないと言われているのですが、プログラマーに関していうと、すでに一部では自動でプログラミングを行うレベルになっています。
このプログラムを自動で生成することをジェネレーターと呼んでいますが、数年前から簡単なプログラミングの自動化はスタートしています。
2045年問題でもなくならない仕事
では、シンギュラリティを乗り越え人間が継続して行う仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。2045年問題でもなくならない仕事には、どのようなものがあるのかを探ってみましょう。
クリエイティブな仕事
まずは、クリエイティブ関係の仕事です。アート・デザイン・ファッション・音楽といった明確にクリエイティブと呼ばれる分野がこれに当たります。
その他にも、新商品のアイディアを出したり、新たな販売チャネルを開拓したりするなど、経営企画やマーケティングのような分野も、人工知能にとって代わられるような仕事ではないと考えられます。
医療分野
人間の知識・記憶には限界がありますが、人工知能の情報量は無限大です。そこで、医療分野に人工知能を採り入れ、これまでの患者の疾病や症状の臨床のデータを人工知能に覚えさせるという研究が進んでいます。
この人工知能による情報の整理を行うことで、これまでよりも早く正確に患者の病気を発見できるようになることが期待されています。
しかし、実際に診察したり手術を行うのは人間です。あくまで人工知能は医療行為の補佐をすることになります。
AIエンジニア
人工知能が普及すればするほど、その人工知能を管理・制御できるAIエンジニアの活躍の場は広がります。人工知能を扱うということは、そのエンジニアもかなりの技術を持っていることになります。
ただでさえ人材不足といわれているエンジニアですので、今後はさらに希少性が高くなることから給与水準もアップすると予測されています。
2045年問題でも生き残るには
今後、人工知能は人間の仕事や活躍の場で活躍していきます。しかし、人間の行為全てを人工知能が行うことになるわけではありません。
人工知能であっても人間の仕事や日常生活には変わることができないこともたくさんあり、その分野は多岐に渡ります。
人間ならではの能力と、人工知能の持つ高度な情報処理能力を融合させていく世界の中で、どのように人物が生き残っていけるのでしょうか。
キャリアとスキルの向上
人工知能が導入されることで、多くの仕事が人間から奪われます。しかし、人間が行わなければいけない仕事はあるわけですから、会社に残ってほしいと思われるような高度な想像力・判断力が必要な仕事ができる人間にならなければなりません。
そのためには、現状に満足している人は取り残される可能性が高くなります。常にスキルを高め、よりハイレベルのキャリアを積むために、日々努力している人が生き残っていきます。
今のうちから、今後どのようなスキルが必要なのかを研究し、会社にどうしても残ってほしいと思われるようなスキルを持つ人間に成長していくことが必要です。
生き残れる仕事に転職する
このタイミングで思い切って転職するというのも選択肢です。ただし、人工知能に取って代わられない職種を選ぶのが前提となります。
今後は、どんなそんな職種についているかということよりも、どんなスキルを持っているかが重要視される時代になるでしょう。想像力や洞察力、コミュニケーション力など、人間ならではの能力を持っていれば、どのような職場でも活躍できるのではないでしょうか。
英語は必修
日本にも多くの外国人が流入し、さまざまなビジネスを行っています。その逆に、海外進出をして外貨を稼いでいる日本企業もたくさんあります。
これからは世界は一つという発想のもと、英語ができることは特別なスキルではなく必須項目になりつつあります。外国人と日常的にコミュニケーションを取り、英語の契約書もすらすら読める必要がありますので、英語を使用する機会は多くなると思われます。
まとめ
このように、2045年問題により人工知能が人間の能力を超えると、世界は大きく変わることになります。一部では、2045年よりも早くシンギュラリティが起こるのではとも言われています。
しかし、しっかり準備をしておけば2045年を乗り越えることができます。人工知能を活用し、共存しながら、自分自身のキャリアやスキルを高めていきましょう。