業務委託と契約社員はどう違う?雇用形態や保障の違いを紹介

業務委託と契約社員は、契約書が違うだけでなく、適用される法律や保険も違います。両者の違いを知り、適切な働き方ができるようにしましょう。業務委託の場合に必要な確定申告についても知り、適切な申告ができるようにします。

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業務委託や契約社員の違いを比較

業務委託と契約社員では契約の内容や働き方に違いがあります。具体的にどのように違うのでしょうか? それぞれの特徴を解説します。

業務委託の概要

業務委託契約書で定められた内容をもとに仕事を遂行するのが『業務委託』です。契約書では、締め切りや成果物の仕様・報酬金額などが定められています。

事前に取り決めされた通りの品質で、成果物が期日通りにきちんと納品できれば、業務上の他の点に関しては自由です。

1日3時間労働にすることも、1週間に2日間のみ働いて他は休日にすることも、自由にできます。自分の責任において、きちんと仕事が完成すればよいのです。

自由度の高い働き方ですが、期日までに成果物の納品ができなかった場合に、訴訟に発展する可能性もあることに注意しましょう。

契約社員の概要

『契約社員』は、働く企業と直接雇用契約を結ぶ働き方です。ただし、契約期間の定めがある点が、正社員と違います。そして、その期間は上限が3年までと決まっているのです。

ただし、契約を更新すれば、3年以上働き続けられます。また、同じ企業で5年以上契約社員として働いた場合、契約社員側から、期間の定めのない雇用契約に移行することを求められるのです。

派遣社員の概要

派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社が派遣契約を取り交わしている派遣先企業で働く形態を、『派遣社員』といいます。

派遣社員の特徴は、雇用主と実際働く職場が違うという点です。

雇用主は派遣会社なので、給与の支払いや各種保険への加入といったことは、全て派遣会社が行います。一方、業務を行う上で必要な指示は、派遣先企業が実施するのです。

派遣社員も契約社員と同じように、期間の定めのある契約です。そのため、期間を超えて働く場合には、契約の更新をします。

ただし、同じ業務を継続して3年以上同じ派遣社員に任せる場合には、派遣先企業が派遣社員を直接雇用しなければいけなくなります。

岩井和幸

業務委託とは個人事業主(フリーランス)として特定の仕事を請け負う働き方です。業務委託では、仕事の内容や報酬、納期などについて企業と結んだ契約を元に働くことになります。

一方、契約社員は採用する企業と直接有期雇用契約を結び、その企業の指揮命令のもとで業務を行う働き方のことです。労働基準法や労働契約法などの労働法が適用され、社会保険の加入、年末調整なども企業の負担となります。

業務委託について知ろう

自分の責任において自由な働き方ができる業務委託ですが、具体的にどのような契約の仕方があるのでしょうか? また、注意すべき偽装請負についても解説します。

請負契約と委任契約

業務委託の契約には2種類あります。

一つ目は『請負契約』です。業務委託といってイメージする内容に近い契約形態で、成果物を完成し納品することで報酬を受け取れるのです。

成果物と報酬を交換する形なので、不備や締め切りの遅れがあった場合には、責任が生じます。また、納期が過ぎた後であっても、必要があれば修正に対応しなければいけません。

二つ目は『委任(準委任)契約』です。定められた労働時間に対して報酬が支払われる契約のため、成果物を完成させられなくても、定めた期日に達したら報酬を受け取れます。

修正などが必要な場合、期日を過ぎていると有償での対応となることがほとんどです。

出典:委任契約と請負契約の具体的な違い | コラム・レポート | 社会保険労務士法人アイプラス

偽装請負に注意

業務委託契約を結ぶときには『偽装請負』に注意しましょう。偽装請負は、業務委託という名目で、実際の働き方が派遣社員のようになっていることです。

業務委託と派遣契約の1番の違いは、指揮命令関係があるかどうかという点です。

例えば、休日や労働時間・仕事の進め方について、逐一細かな指示がクライアントから行われる、という場合には、指揮命令関係があると考えられます。こうした直接的な指示が想定されている場合、契約は派遣契約が適切です。

出典:あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ? | 東京労働局

実態によって判断される

業務委託・契約社員・派遣社員などの契約は、契約書の名目ではなく、実際にどのような働き方がされているかで判断されます。

そのため、契約書が『業務委託契約書』となっていたとしても、実際の働き方が雇用されている労働者と変わらないようであれば、雇用契約を結んだ労働者とみなされるのです。

労働者であれば、業務委託で働く場合と違い、労働法が適用されます。すると、仕事中のケガが補償対象になったり、社会保険への加入も可能です。

岩井和幸

業務委託は、「請負契約」「委任(準委任)契約」の2つの契約形態があります。

「請負契約」は・・・仕事を完成することを約束して、発注側はその仕事に対して報酬を支払う契約

「委任契約」は・・・仕事を行うことを約束した契約で、仕事の完成に限らず業務を行えば報酬を受けとれる契約

知っておきたいポイント

業務委託として働くなら、法律や社会保険について知っておきましょう。正しい知識を身につけた上で働くことで、トラブルを事前に回避できます。

法的な関係について

企業と雇用契約を結んで働く労働者は『労働基準法』によって守られています。例えば、労働時間の規制・適正な残業代の支払い・休憩・有給休暇などについて、法律で定められているのです。

一方、業務委託契約を結ぶと、個人事業主として働くことになります。労働者ではありませんので、労働基準法の適用はありません。

そのため、休憩や休暇は自己責任で取らなければいけませんし、残業代も発生しないのです。

社会保険について

社会保険の加入も、業務委託契約の場合には、自己責任で全て行う必要があります。健康保険や年金は『全額自己負担』で加入しなければいけないのです。

雇用契約を結んでいる労働者の場合、条件に合致した場合は、企業が社会保険に加入してくれます。保険料も半分は企業が負担するので、負担感はぐっと少なくなるでしょう。

また、個人事業主は、原則として雇用保険や労災保険に加入できません。そのため、仕事中にケガをしても健康保険でまかなわなければいけませんし、仕事が途絶えたとしても失業保険はないのです。

岩井和幸

業務委託契約では、雇用主と労働者という雇用関係が結ばれず、委託側、受託側という関係性となります。よって依頼主から直接指揮命令を受けることはありません。個人の裁量で働くことができます。

業務委託契約と確定申告

業務委託契約を結んで働く個人事業主は、税額を決定するために確定申告をしなければいけません。確定申告について知り、申告漏れのないよう、正しく手続きしましょう。

確定申告の必要性

労働者の場合、所得税は源泉徴収され、年末調整で最終的に調整されています。そのため、自分で改めて申告する必要はありません。

一方、業務委託として働く個人事業主には、年末調整がありません。確定申告で税額を申告する必要があるのです。

確定申告のためには、日ごろから売上や経費を把握する必要があります。会計ソフトといったツールを使用し、記帳するのです。

その記録をもとに、確定申告書を作成し、毎年2~3月の定められた期間中に税務署に提出します。

課税所得があるのに確定申告をしないのは犯罪です。無申告加算税や延滞税が課されることもあります。悪質とみなされた場合には10年以上の懲役や1000万円以下の罰金が課されることもあるのです。

副業の確定申告について

副業として業務委託で仕事をうけおっているケースでも、確定申告は必要です。ただし、全ての人が確定申告をしなければいけないわけではありません。

確定申告しなければいけないのは、業務委託で『所得20万円を超えた』場合です。所得は受け取った報酬全額のことではありません。そこから必要経費を差し引いた金額です。

例えば、報酬として100万円受け取った場合でも、材料費や資料代として85万円かかったとき、所得は15万円になります。このケースでは所得が20万円以下なので、確定申告する必要はありません。

ただし、所得が20万円以下のケースでも、医療費控除や住宅ローン控除のために確定申告をするときは、一緒に申告する必要があることに注意しましょう。

出典:確定申告が必要な方|国税庁

岩井和幸

依頼主から直接、業務遂行に関する指示等を行うことが想定されている場合、労働者派遣契約を締結しなければなりませんが、それを回避するために業務委託契約を締結すること、これが「偽装請負」です。

また、故意ではなく業務遂行の実態として、労働者派遣に該当していると判断されるような場合にも、「偽装請負」になります。具体的には依頼主が請負者に対し業務の細かい指示を出していたり、勤退管理を行ったりすることです。

まとめ

業務委託と契約社員では、働き方はもちろん適用される法律にも違いがあります。どのように違うのか把握して、自分に合った働き方を選びましょう。

また、契約上は業務委託となっていても、実際の働き方は契約社員や派遣社員と同じ、というケースもあります。働き方の実態に即した契約を結び、適切に法律や保険が適用されるようにすることが大切です。

 

岩井和幸 [監修]

某大手損保会社のサービスセンターに8年間勤務、在職中に行政書士の資格を取得。損害保険金の支払い調査などの業務を担当。その後、地元の不動産会社に転職。在職中に宅地建物取引士の資格を取得。賃貸物件の仲介、管理、リフォーム工事などを担当し10年間勤務する。昨年8月に行政書士として独立・開業する。現在は相続関係の相談や土地売買に関する許可申請など多岐にわたる業務を取り扱う。

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