フリーランスエンジニアの年収事情
働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、在宅で仕事をするエンジニアが増えています。さらに柔軟な働き方を求めて、フリーランスになる人も増えている状況です。
独立する主な目的には、年収アップやキャリアアップも多いといわれています。フリーランスエンジニアは、どの程度の年収を得られるのでしょうか?
フリーランスエンジニア全体の目安
フリーランスエンジニアの年収は週5日で1日8時間フルタイムで稼働する場合、480万~960万円が目安です。年収額にはかなり幅があります。
これはエンジニアの求人マッチングサービス『Offers』のエンジニア案件から算出した金額です。特に報酬が高いとされるデータサイエンティストや機械学習エンジニアでは、年収1000万円を超えるケースもあります。
また『IT人材白書』によれば、同じ業務内容ならフリーランスの方が会社員より報酬が高くなりやすいのが特徴です。例えば30代以下で年収1000万円を超えるIT技術者は、企業に勤める人では1.2%しかいませんが、フリーランスでは8.8%と多くなっています。
フリーランスエンジニアは人によって報酬額に差が出る働き方です。十分な経験とスキルがあれば、会社員以上に高い報酬を得られるでしょう。
出典:IT人材白書 2016|独立行政法人 情報処理推進機構
年代別の平均年収
フリーランスエンジニアの年代別の平均年収を見てみると、会社員ほど年代による収入差はないのが実態です。報酬がエンジニア個人のスキルによる部分が大きいためと考えられます。
例えば『IT人材白書』によると、年収が700万円以上のフリーランスは30代以下で17.6%です。40代では20.2%・50代では19.3%であり、年代による差はさほど大きくはありません。むしろ40代の方が50代よりも高い報酬を得ている層が多くなっています。
一方、会社員の場合、30代で年収700万円以上の人は全体の6.7%しかいませんが、40代では29.7%・50代では44.3%です。年収を得る人が年代が上がるにつれて明らかに増えています。勤続年数が長くなるほど、年功序列で支払われる給与や賞与が増えるためです。
フリーランスには会社員と違って年功序列の仕組みがなく、若い世代でもスキル次第で高い報酬を得られる可能性が高いといえるでしょう。
職種ごとの平均年収
一言でエンジニアといっても多くの職種があり、平均の年収額も仕事内容によって変わってきます。業務の系統別に年収の目安を見ていきましょう。
開発系エンジニア
求人サービスのデータによると、主にソフトウェアの開発を担うエンジニアの平均年収は792万円です。業務用のソフトウェアやスマートフォンのアプリ開発・ゲームプログラマーなどが、ソフトウェア開発がメイン業務のエンジニアに該当します。
一方、政府の統計によれば、雇われて働くプログラマーの平均年収は約426万円です。同じプログラマーでも、フリーランスの方が平均年収が高いといえるでしょう。フリーランスとして活躍しているエンジニアはスキルが高く、さまざまな言語に対応できる人材が多い点が理由として挙げられます。
出典:フリーランスエンジニアの平均年収はどのくらい?必要なスキルも紹介|ITフリーランスエンジニアの案件・求人はPE-BANK
インフラ系エンジニア
インフラ系エンジニアとは、サーバーエンジニアやネットワークエンジニア・データベースの設計や運用を担当するエンジニアなどです。求人サービスのデータによると、平均年収が700万円台のエンジニアが多くなっています。
インフラ系のエンジニアはクライアント企業に常駐して業務をこなす場合が多くあり、長期にわたる案件やプロジェクトに関わるケースも少なくありません。短いプロジェクトごとに仕事を請ける分野に比べて、収入が安定しやすい側面もあります。
出典:フリーランスの種類別・職種別平均年収|年収1000万円を目指す方法も解説
マネジメント系エンジニア
マネジメントを主な業務とするエンジニアには、プロジェクトマネージャーや上流工程を担うシステムエンジニアが該当します。開発プロジェクトを統括する業務が多く、フリーランスでもプロジェクトのかじ取りを任せられるケースが珍しくありません。
マネジメントにはエンジニアとしての十分な知識と経験が求められるため、現場で手を動かすだけの仕事に比べて難易度は高めです。
職種としての平均年収は550万~650万円とさほど高くありませんが、スキルの高いプロジェクトマネージャーの中には年収1000万円を超えている人も少なくありません。フリーランスとしてマネジメントに携われるスキルがあれば、高年収を目指せるでしょう。
出典:【職種別】「ITフリーランス」の年収とは|魅力や特徴など
コンサル系エンジニア
エンジニアとしての働き方に、企業に対して技術的な面のアドバイスをする『ITコンサルタント』もあります。
コンサルタントは知識とスキル次第で大きく稼げる職種です。経済産業省の調査によれば、IT系のコンサルタントは会社員として働く人を含めても、平均928万円と年収が非常に高くなっています。独立すればスキル次第で、年収1000万円超も狙えるでしょう。
ただし、コンサルタント業務には、クライアントからアドバイスを求められるような実績や経験が必要です、経験が足りないと感じる人は、まずエンジニアとしてしっかりと実績を積み上げましょう。
Web系エンジニア
Web系エンジニアには、フロントエンジニアやWebデザイナー・コーダーなどの職種が挙げられます。Webデザイナーは名前の通りデザインを担う仕事ですが、フリーランスの案件ではWebサイト制作としてコーディングも任されるケースが少なくありません。
ただ、Webデザインやコーディングだけでは、なかなか高単価の案件を獲得しにくいのが現状です。プログラミング技術を磨いてフロントエンド・サーバーサイドまで担当できるようになれば、高額の報酬が期待できるでしょう。
求人サービスのデータによると、フロントエンドエンジニアの平均年収は800万~900万円となっており、かなり高めです。ただし、エンジニア自身のスキルや経験によるところが大きく、同じWeb系のエンジニアでも年収にはかなりの差があります。
出典:フリーランスの種類別・職種別平均年収|年収1000万円を目指す方法も解説
言語による単価の違い
フリーランスエンジニアは、業務で使用する言語によっても収入に差が出てきます。数あるプログラミング言語の中でも、近年の需要が高いものから4言語の平均年収を見ていきましょう。
Python
PythonはAI(人工知能)の開発にも使用されている、非常に人気の高い言語です。文法がシンプルで学習しやすいため、初めて学ぶ言語がPythonという人も増えており、さまざまなWebサービスの開発でも積極的に活用されています。
求人検索エンジン『スタンバイ』によると、Pythonを用いるフリーランスエンジニアの年収はおよそ600万円が中央値です。案件数の増加に伴って報酬も上がってきており、十分なスキルを持ったエンジニアであれば年収1000万円を超える場合も珍しくありません。
出典:フリーランスのPythonエンジニアの仕事や収入、将来性を解説|Offers Magazine
Go(Golang)
『Go言語(Golang)』はGoogle社によって開発されたオープンソースのプログラミング言語で、近年特に案件数を伸ばしています。スピーディーにソフトウェアの開発ができるほか、初心者でも学びやすいのが特徴です。
Go言語を使用するエンジニアの平均年収は、求人サービスのデータによれば年収は600万円が中央値です。年収1600万円を超える熟練のエンジニアもいます。Go言語によるプロジェクト自体が高単価になりやすいため、今後さらに収入を伸ばすフリーランスが増えるでしょう。
出典:フリーランスエンジニアの年収って、どれくらい?|ITフリーランス向け求人・案件情報サイト【フリーランスプラス】
Scala
関数型とオブジェクト指向型どちらにも対応したScalaは、アプリやゲーム・Webサービスの開発に使用されています。Twitter社をはじめ大手企業でも利用されており、既存のアプリをScalaで開発し直すケースも珍しくありません。
求人サービスのデータでは、Scalaを使用するエンジニアの年収は中央値が600万円程度となっています。高いスキルを持つエンジニアならば、1300万円になる場合もあります。Go言語と並んで今後も需要の高まりが期待される言語です。
出典:フリーランスエンジニアの年収って、どれくらい?|ITフリーランス向け求人・案件情報サイト【フリーランスプラス】
Kotlin
KotlinはJavaとの互換性を持っており、主にAndroidアプリの公式開発言語として知られています。アプリ需要の伸びに伴って言語のニーズも増えているほか、Googleの支援もあって採用する企業が増えている言語です。
Kotlinを使用するエンジニアの平均年収は575万円ですが、スキル次第で1200万円に上るケースもあります。汎用性の高い言語なので、C言語などで開発をしてきたエンジニアであればスムーズに対応できるでしょう。
出典:フリーランスエンジニアの年収って、どれくらい? | ITフリーランス向け求人・案件情報サイト【フリーランスプラス】
フリーランスが年収をアップさせるポイント
フリーランスは会社員よりも自身の経験やスキルが収入に直結しやすいので、年収を上げたいならまずは自分の開発実績や開発技術を伸ばしましょう。年収アップのためにできる工夫として、ほかには何があるのでしょうか?
営業力と提案力を伸ばす
エンジニアにも営業力や提案力が必要です。特にフリーランスの場合は、自ら案件を獲得して収入を伸ばさなければなりません。クライアント候補に営業できるようになれば、案件を得やすいでしょう。スムーズな案件獲得は年収アップにつながります。
また、既存の案件をさらに発展させる提案ができるようになれば、継続して仕事をもらいやすくなるので有利です。クライアントにとってメリットの多い提案をすれば、単価アップの交渉が通る確率も上がるでしょう。
高単価の案件を請ける
収入を安定させるには、できるだけ高単価の案件を請けることが大事です。たしかに経験が足りない・初めてフリーランスとして活動するという場合は、単価にこだわらず実績を積まなければならないでしょう。
しかし単価が安い案件ばかり請け続けていると、いくら数をこなしても収入アップにはつながりません。年収を上げたいなら、高単価の案件を安定して獲得できるようになる必要があります。
すでにフリーランスとして活動していて収入が上がらないと感じている人は、より高単価の案件を請けられないか検討しましょう。単価アップの交渉をするのも一つの方法です。しっかりとクライアントから信頼を得ていれば、交渉に応じてもらえる可能性が出てきます。
年収アップに役立つスキルは?
フリーランスエンジニアが年収を上げるためには、営業力や高単価の案件を獲得する工夫が必要です。高い収入を得るために身に付けておきたいスキルも押さえ、『稼げるフリーランスエンジニア』を目指して行動しましょう。
コミュニケーションスキル
収入アップのための単価交渉をする際、相手の意図をくんで適切な提案ができるコミュニケーションスキルが欠かせません。コミュニケーションが得意なエンジニアの方が、クライアントからの信頼も得やすくなります。
また、1人で活動しているフリーランスエンジニアでも、チームで仕事をこなす場合が多くあります。ほかのフリーランスと協働する機会は少なくないため、円滑に仕事を進めるコミュニケーションスキルは必須です。
マネジメントスキル
開発プロジェクトを管理するスキルを身に付けると、単価が高い案件を得やすくなり収入アップにつながります。外部のプロジェクトマネージャーを欲している企業は多く、マネジメントに携われないフリーランスエンジニアより好待遇で迎えられる機会が増えるでしょう。
案件によって単価は変わってくるものの、月の報酬が100万円を超える案件も少なくありません。エンジニアとしてプロジェクト管理の経験がある人は、それを生かして案件を探してみるとよいでしょう。
マネジメント未経験のエンジニアであれば、本業でマネジメント経験を積んで、フリーランスとしての価値を高めていくのも選択肢です。
フリーランスとして活動する際の注意点
フリーランスエンジニアとしての活動には、年収以外にも考えておきたいことがあります。会社員のときよりも重視される注意点を二つ押さえておきましょう。
十分な経験と実績が必要
安定して仕事の案件を請け続けるには、その分野において相応の経験と実績が求められます。すでに十分な知識やスキルを有する分野であれば問題ありませんが、新たな分野に挑戦したいなら、しっかり経験を積んでからチャレンジした方がよいでしょう。
経験が足りないと感じたときは、チャレンジしたい分野の中で難易度が低い案件を選ぶのが賢明です。経験を積んでから、徐々に案件のレベルを上げていくことをおすすめします。
徹底した自己管理も大切
フリーランスとして働く人は、エンジニアに限らず体調管理やスケジュール管理を徹底しなければいけません。
仕事が忙しくなると体調管理がおろそかになり、体を壊してしまう人が多くいます。体調不良で働けないと暮らしていけなくなるため、フリーランスのみで生計を立てる人は特に体をいたわりましょう。
自分のキャパシティーを把握した上で、無理のない範囲で案件を請ける必要があります。独立したエンジニアとしてこなせる仕事量が分からない人は、まずは副業からスタートしてみるのがおすすめです。
副業として問題なく案件をこなせるようになってから独立すれば、スケジュール管理で失敗しづらくなるだけでなく、収入も安定させやすくなります。
まとめ
フリーランスエンジニアの年収は職種や経験、働き方によって変わってきます。使用する言語によっても単価が違うため、独立する前に自らの市場価値をしっかりと確認しておきましょう。営業力を磨いて高単価の案件を請けられるようになれば、年収アップを実現しやすくなります。
現在の市場価値が分からない・独立してうまくやっていけるか不安という人は、まずは副業からスタートして案件をこなしてみるとよいでしょう。副業で安定して仕事が取れるようになってから独立すれば、収入が大きく減って生活が立ち行かなくなるリスクも減らせます。