【2024年7月最新】WebAssemblyとは?特徴やできること・できないことを徹底解説

こんにちは。エンジニア、PM、デザイナーの副業・転職採用サービス「Offers(オファーズ)」のOffers Magazine編集部です。

近年、Webアプリケーション開発の世界で注目を集めている技術があります。それが「WebAssembly」です。WebAssemblyは、高速で効率的なWeb開発を可能にする革新的な技術として、多くの開発者から注目を集めています。本記事では、WebAssemblyとは何か、その特徴や活用法について詳しく解説していきます。2024年8月現在の最新情報を踏まえながら、WebAssemblyの可能性と今後の展望についても探っていきましょう。

WebAssemblyとは

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WebAssemblyは、Webブラウザ上で動作する新しい種類のコードです。従来のJavaScriptと比較して、高速で効率的な実行が可能な低レベルの言語として設計されています。この技術は、Webアプリケーションのパフォーマンスを大幅に向上させる可能性を秘めています。

WebAssemblyの概要

WebAssemblyは、略してWasmとも呼ばれ、C++やRustなどの低レベル言語で書かれたコードをWebブラウザ上で実行できるようにする技術です。WebAssemblyは、JavaScriptと共存しながら、高速な処理を必要とする部分を担当します。これにより、Webアプリケーションの性能が飛躍的に向上し、より複雑な処理や計算集約型のタスクをブラウザ上で実行することが可能になります。

WebAssemblyの誕生背景

WebAssemblyの誕生には、Webアプリケーションの複雑化と高度化が背景にあります。従来のJavaScriptだけでは、処理速度や効率性の面で限界が見えてきたのです。そこで、2015年にMozilla、Google、Microsoft、Appleの主要ブラウザベンダーが共同でWebAssemblyの開発を開始しました。2019年12月には、W3C(World Wide Web Consortium)によってWebAssemblyが正式な Web 標準として認められました。

WebAssemblyの技術的特徴

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WebAssemblyは、その技術的特徴によって従来のWeb技術とは一線を画しています。バイナリ形式での実行や、強力な型システム、そしてサンドボックス環境での動作など、WebAssemblyには多くの革新的な要素が含まれています。これらの特徴が、WebAssemblyの高速性と安全性を支えているのです。

WebAssemblyの基本構造

WebAssemblyの基本構造は、スタックベースの仮想マシンを模しています。命令セットはシンプルで効率的に設計されており、高速な実行を可能にしています。また、WebAssemblyのモジュールは、バイナリ形式(.wasm)とテキスト形式(.wat)の2種類で表現することができます。

WASMとWATの違い

WASM(WebAssembly Binary Format)とWAT(WebAssembly Text Format)は、WebAssemblyの2つの表現形式です。WASMはバイナリ形式で、ブラウザで直接実行されます。一方、WATは人間が読み書きしやすいテキスト形式です。開発者はWATで記述し、それをWASMにコンパイルして使用することが一般的です。

バイナリコードによる高速化の原理

WebAssemblyが高速である理由の一つは、バイナリコードを直接実行できる点にあります。JavaScriptがテキストベースで解釈されるのに対し、WebAssemblyはバイナリ形式で提供されるため、解析にかかる時間が大幅に短縮されます。さらに、WebAssemblyは静的型付けを採用しているため、実行時の型チェックが不要となり、パフォーマンスが向上します。

安全性とサンドボックス環境

WebAssemblyは、セキュリティを重視して設計されています。実行環境はブラウザのサンドボックス内に限定されており、システムの直接的な操作は許可されていません。また、メモリアクセスも厳密に制御されているため、バッファオーバーフローなどの脆弱性リスクが大幅に軽減されています。

WebAssemblyの対応ブラウザと言語

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WebAssemblyの普及には、ブラウザのサポートが不可欠です。幸いなことに、主要なブラウザベンダーがWebAssemblyの重要性を認識し、積極的にサポートを進めています。また、WebAssemblyにコンパイル可能な言語も増えており、開発者の選択肢が広がっています。

対応ブラウザ一覧

2024年8月現在、WebAssemblyは主要なデスクトップブラウザおよびモバイルブラウザでサポートされています。具体的には以下のブラウザで利用可能です:

  • Google Chrome(バージョン57以降)
  • Mozilla Firefox(バージョン52以降)
  • Apple Safari(バージョン11以降)
  • Microsoft Edge(バージョン16以降)
  • Opera(バージョン44以降)

モバイル版でも、Android版Chrome、iOS版Safari、Firefox for Androidなどで対応しています。ブラウザの対応状況は、Can I useのWebAssemblyページで最新情報を確認できます。

対応プログラミング言語

WebAssemblyにコンパイル可能な言語は年々増加しています。2024年現在、以下の言語がWebAssemblyへのコンパイルをサポートしています:

  • C/C++
  • Rust
  • Go
  • AssemblyScript(TypeScriptの一種)
  • Kotlin
  • C#/.NET
  • Java
  • Python(実験的)

これらの言語を使用することで、既存のコードベースをWebAssemblyに移植したり、新規プロジェクトでWebAssemblyを活用したりすることが可能です。特に、C++やRustなどの低レベル言語は、WebAssemblyの性能を最大限に引き出すのに適しています。

WebAssemblyのできること

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WebAssemblyの登場により、Webアプリケーションの可能性が大きく広がりました。高速な処理能力と効率的なメモリ管理を活かし、これまでブラウザでは困難だった処理も実現可能になっています。ここでは、WebAssemblyを使って実現できる具体的な応用例を見ていきましょう。

JavaScriptの高速化

WebAssemblyは、JavaScriptと密接に連携して動作します。計算集約型の処理をWebAssemblyで実装し、UIの操作などはJavaScriptで行うというハイブリッドな開発が可能です。例えば、画像処理や暗号化などの重い処理をWebAssemblyで行うことで、アプリケーション全体のパフォーマンスを大幅に向上させることができます。

既存のアプリケーションの移植

WebAssemblyの大きな利点の一つは、既存のデスクトップアプリケーションをWeb上に移植できることです。例えば、C++で書かれた3Dモデリングソフトウェアを、WebAssemblyを使ってブラウザ上で動作させることが可能になります。これにより、インストールの手間なくブラウザだけで高度なアプリケーションを利用できるようになります。

クロスプラットフォーム対応

WebAssemblyを利用することで、一度書いたコードをさまざまなプラットフォームで動作させることができます。デスクトップ、モバイル、さらにはIoTデバイスなど、WebAssemblyがサポートされている環境であれば、同じコードベースで動作します。これにより、開発効率が大幅に向上し、メンテナンスコストも削減できます。

高負荷な計算処理

WebAssemblyは、ゲームエンジンや科学計算、機械学習など、高負荷な計算処理を要するアプリケーションの実装に適しています。例えば、物理シミュレーションや3Dレンダリングなどの処理を、WebAssemblyを使ってブラウザ上で高速に実行することができます。これにより、これまでデスクトップアプリケーションでしか実現できなかった高度な機能を、Webアプリケーションでも提供できるようになりました。

WebAssemblyのできないこと

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WebAssemblyは非常に強力な技術ですが、万能ではありません。セキュリティと安全性を確保するため、いくつかの制限が設けられています。これらの制限を理解することで、WebAssemblyの適切な使用方法と限界を把握することができます。

DOM操作の制限

WebAssemblyは直接DOMを操作することができません。これは、セキュリティ上の理由からブラウザによって制限されているためです。WebAssemblyからDOMを操作する必要がある場合は、JavaScriptを介して行う必要があります。例えば、WebAssemblyで計算した結果をJavaScriptに渡し、JavaScriptがその結果を使ってDOMを更新するという流れになります。

システムのルート権限にアクセスできない

WebAssemblyは、ブラウザのサンドボックス環境内で動作します。そのため、ファイルシステムへの直接アクセスやネットワークソケットの操作など、システムレベルの操作を行うことはできません。これは、セキュリティを確保し、悪意のあるコードからユーザーを保護するための重要な制限です。ただし、この制限により、デスクトップアプリケーションのような自由度の高い操作はWebAssemblyでは実現できないという側面もあります。

WebAssemblyの実際の活用例

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WebAssemblyは、理論上の可能性だけでなく、実際のプロダクトでも活用されています。大手テック企業からスタートアップまで、さまざまな企業がWebAssemblyの力を借りて革新的なWebアプリケーションを開発しています。ここでは、WebAssemblyが実際にどのように活用されているかを見ていきましょう。

Figmaでの活用

デザインツールの「Figma」は、WebAssemblyを活用している代表的な例です。Figmaは、複雑な図形操作や大量のベクターデータの処理をWebAssemblyで実装することで、ブラウザ上でデスクトップアプリケーション並みのパフォーマンスを実現しています。

具体的には、Figmaは以下の部分でWebAssemblyを活用しています:

  • ベクターネットワークの描画処理
  • フォントレンダリング
  • 画像処理や圧縮

これらの処理をWebAssemblyで行うことで、Figmaは複雑なデザインファイルでも高速かつスムーズな操作を可能にしています。Figmaの成功は、WebAssemblyが実用レベルで活用できることを証明した好例と言えるでしょう。

Google Earthでの活用

GoogleはWebAssemblyを活用して、Google Earthをブラウザ上で動作させることに成功しました。従来のGoogle Earthは専用アプリケーションのインストールが必要でしたが、WebAssemblyの採用により、ブラウザさえあれば誰でも高度な3D地図を操作できるようになりました。

WebAssemblyの採用により、Google Earthは以下のような恩恵を受けています:

  • 複雑な3Dレンダリングの高速化
  • 大量の地理データの効率的な処理
  • クロスプラットフォーム対応の実現

Google Earthの例は、WebAssemblyが大規模かつ複雑なアプリケーションの移植にも有効であることを示しています。

Unityでの活用

ゲームエンジンの「Unity」もWebAssemblyを積極的に活用しています。UnityはWebGLをターゲットにしたゲーム開発をサポートしており、その際にWebAssemblyを利用しています。

Unityでのアプリケーション案としては、以下のようなものが挙げられます:

  • ブラウザゲーム
  • インタラクティブな3D製品カタログ
  • 建築・内装シミュレーター

これらのアプリケーションは、WebAssemblyの高速な実行能力を活かし、複雑な3D描画や物理演算をブラウザ上でスムーズに行うことができます。

その他のユースケース

WebAssemblyの活用は上記の例に限りません。以下のような分野でも積極的に利用されています:

  • 暗号通貨のウォレットアプリケーション
  • ビデオ・音声処理アプリケーション
  • 科学計算や統計解析ツール
  • 機械学習モデルの推論エンジン

例えば、TensorFlow.jsはWebAssemblyを利用して機械学習モデルの推論を高速化しています。これにより、ブラウザ上で複雑な機械学習タスクを実行することが可能になりました。

WebAssemblyの今後の課題と展望

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WebAssemblyは大きな可能性を秘めた技術ですが、まだ発展途上の段階にあります。今後の更なる普及と発展に向けて、いくつかの課題が存在します。同時に、これらの課題を克服することで、WebAssemblyの応用範囲はさらに広がっていくでしょう。

標準化の進展

WebAssemblyの標準化は着実に進んでいますが、まだ発展の余地があります。特に、以下の分野での標準化が期待されています:

  • スレッディング機能の強化
  • ガベージコレクションのサポート
  • 例外処理のサポート

これらの機能が標準化されることで、より複雑で高度なアプリケーションの開発が可能になるでしょう。例えば、マルチスレッディングのサポートが強化されれば、並列処理を必要とするアプリケーションのパフォーマンスが大幅に向上する可能性があります。

2024年8月現在、WebAssembly System Interface(WASI)の標準化も進められています。WASIは、WebAssemblyをブラウザ外でも利用可能にするための標準インターフェースです。これが実現すれば、サーバーサイドやエッジコンピューティングなど、WebAssemblyの活用範囲がさらに広がることが期待されています。

開発環境の整備

WebAssemblyの普及には、開発環境の整備が不可欠です。現状では、WebAssemblyの開発には一定の専門知識が必要とされており、これが普及の障壁となっています。今後は以下のような改善が期待されます:

  • より使いやすいツールチェーンの開発
  • デバッグツールの強化
  • IDEのサポート向上

例えば、Microsoft社が開発中の「WebAssembly Studio」は、ブラウザ上でWebAssemblyの開発が行える統合開発環境です。このようなツールが充実することで、より多くの開発者がWebAssemblyを活用できるようになるでしょう。

マーケティングと普及活動

WebAssemblyの技術的な進化に加えて、その価値を広く認知してもらうためのマーケティングと普及活動も重要です。現状では、WebAssemblyの利点や活用方法がまだ十分に理解されていない面があります。

今後は以下のような取り組みが必要になるでしょう:

  • 成功事例の積極的な共有
  • 教育コンテンツの充実
  • コミュニティの活性化

例えば、WebAssembly.orgでは、WebAssemblyに関する情報や最新のニュースが共有されています。また、各地で開催されるtech conferencesでもWebAssemblyのセッションが増えつつあります。これらの活動を通じて、WebAssemblyの認知度と理解度が向上していくことが期待されます。

WebAssemblyは、Webアプリケーション開発の未来を切り開く可能性を秘めた技術です。その高速性と効率性は、ブラウザベースのアプリケーションに新たな可能性をもたらしています。今後、標準化の進展や開発環境の整備が進むにつれて、WebAssemblyの利用範囲はさらに広がっていくでしょう。Web開発者にとって、WebAssemblyは今後ますます重要なスキルセットの一部となっていくと考えられます。

まとめ

WebAssemblyは、Web開発に革命をもたらす可能性を持つ技術です。その高速性、効率性、そして多言語対応の特性により、これまでブラウザでは難しかった高度な処理を実現することが可能になりました。Google EarthやFigmaなどの実例が示すように、WebAssemblyはすでに実用段階に入っています。今後、標準化の進展や開発環境の整備が進むにつれて、その応用範囲はさらに広がっていくでしょう。Web開発者にとって、WebAssemblyは今や必須のスキルの一つとなりつつあります。

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