データエンジニアとデータサイエンティストの役割の違い
データエンジニアはデータを集めて整え、使える状態で届ける基盤を作る職種で、データサイエンティストはそのデータを分析し、統計や機械学習のモデルで事業の判断や機能に結びつける職種です。前者が責任を持つのは基盤の信頼性と使いやすさ、後者が責任を持つのは分析とモデルの成果です。
実際の現場では、両者の間に分析用のテーブルや指標の定義を受け持つアナリティクスエンジニアを置く会社もあります。データエンジニアの将来性を考えるときは、この3つの役割のどこまでを自分が担っているかを押さえておくことが、後で見る求人の条件と照らし合わせるときの出発点です。
データエンジニアの需要を示す統計と企業調査
情報処理推進機構(IPA)の『DX動向2026』で企業が挙げたデータの整備の課題には、データの標準化や管理システムの整備といった、データエンジニアが仕事として引き受ける領域が並びます。
求人の側では、厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年8月分)で、データエンジニアを含めて読める IT の技術職の区分「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率が職業計を上回っています。データエンジニアをこの区分に含めて読んだのは編集部の判断です。
IT技術職の求人倍率は職業計を上回る
情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.48倍、新規求人倍率は3.13倍で、どちらも職業計(1.17倍・2.06倍)を上回りました。有効求人倍率は、仕事を探している人1人に対して求人が何件あるかを表します。
区分 | 有効求人倍率 | 新規求人倍率 |
|---|
情報処理・通信技術者 | 1.48倍 | 3.13倍 |
職業計 | 1.17倍 | 2.06倍 |
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)令和8年8月分」参考統計表(2026年10月2日公表・常用(パートを除く))。
数値の元になっているのはハローワークに出された求人と、ハローワークで仕事を探す人です。情報処理・通信技術者の有効求人倍率は、1年前の同じ月より0.10ポイント低い水準でした。
企業のデータ整備の課題はデータエンジニアの仕事と重なる
IPA の『DX動向2026(データ集)』で、データの整備・管理・流通の課題を尋ねた設問(n=1,781)では、人材の確保(51.2%)が最も多く、データの標準化(36.8%)、管理システムの整備(32.6%)、全社的な方針や文化(28.9%)が続きました。選択肢の「人材」は、データエンジニアを含むデータにかかわる人材全般を指すと編集部は読んでいます。2番目と3番目のデータの標準化と管理システムの整備は、データエンジニアが仕事として引き受ける領域です。
データ整備・管理・流通の課題 | 回答した企業の割合 | 近いデータエンジニアの仕事 |
|---|
人材の確保が難しい | 51.2% | ― |
データの標準化が難しい | 36.8% | データモデリング・項目の定義の統一 |
管理システムが整備されていない | 32.6% | データウェアハウス・データカタログの整備 |
全社的な方針や文化がない | 28.9% | ― |
既存システムが対応できない | 23.3% | 既存システムからのデータ連携 |
データ収集の仕組みがない | 21.2% | データパイプラインの構築 |
データの品質に不安がある | 16.9% | データ品質の監視・テスト |
出所:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2026(データ集)』p.69(2025年度調査・n=1,781)から回答の多い順に一部を抜き出し、右の列は編集部の整理。
表に抜き出した課題のうち、データの標準化、管理システムの整備、データ収集の仕組み、データの品質は、分析の手前にあるデータの置き場と形にかかわるものでした。
AIで効果を出す企業ほど学習データを整備している
AI で効果を出している企業ほど、AI に渡すデータを整備しています。IPA の『DX動向2026(データ集)』で、AI 向けの学習データを「整備しておりAIに活用している」企業は、AI の導入で期待と同等かそれ以上の効果が出ている企業(n=330)で19.4%、効果が出ていない企業(n=127)で0.8%でした(p.51)。
全体(n=1,192)では7.0%にとどまり、「整備しているが十分ではない」が28.4%を占めます。IPA はこの結果を「AI導入効果が高い企業ほど学習データを整備しAIに活用している割合が高い」とまとめました。
同じデータ集は、AI の導入・運用上の課題について「人材不足、リテラシー不足・ガバナンス整備の遅れが三大課題となっている」と書いています(p.52)。データの権限や扱いのルールを決めるガバナンスも、データエンジニアが基盤の側から支える領域です。
Offers に掲載されたデータエンジニア系の正社員求人45件でも、本文に生成AI・LLM(大規模言語モデル)・RAG(検索で集めた資料を生成AI に渡す仕組み)の語がある求人は7件ありました(Offers(株式会社overflow)調べ・データエンジニア系の正社員求人 n=45・2022年11月〜2026年9月公開)。生成AI 事業を支える分析基盤、RAG の検証、AI と組み合わせた分析といった仕事が、データエンジニアの求人の本文に書かれています。
生成AI はパイプラインのコードを書く手間を減らす一方で、どのデータをどの粒度で持ち、誰に何を見せるかを決める部分はコード補完では置き換えにくい、というのが編集部の見方です。
データエンジニアの求人が本文に挙げる技術と仕事
Offers のデータエンジニア系の正社員求人45件の本文には、SQL(データベースを操作する言語)やクラウドといった技術名に加えて、ガバナンス・データカタログ・メタデータ(18件)、データ品質(11件)、データモデリング(9件)など、基盤の運用ルールと設計にかかわる語が挙がります。技術名の件数と並びは「データエンジニアの年収|統計と求人で見る相場」で扱いました。
本文に挙がる語 | 求人の件数(45件中) |
|---|
ガバナンス・データカタログ・メタデータ | 18件 |
機械学習 | 15件 |
データ品質 | 11件 |
データモデリング | 9件 |
生成AI・LLM・RAG | 7件 |
出所:Offers(株式会社overflow)調べ・データエンジニア系の正社員求人 n=45・2022年11月〜2026年9月公開。
技術名では、dbt(データウェアハウスの中の変換処理を SQL で管理するツール)と Terraform(クラウドの構成をコードで管理するツール)も本文に挙がります。
求人の提示年収は、下限の中央値が600万円、上限の中央値が1,000万円です。職種区分ごとの統計と、年収800万円以上の求人を狙う進め方は「データエンジニアの年収|統計と求人で見る相場」で詳しく扱いました。
求人がどの技術を求めているかを自分の目で確かめるなら、Offers Jobs のデータエンジニアの求人一覧が手がかりになります。会員登録なしでデータエンジニアの正社員求人を検索でき、一覧のカードに年収・雇用形態・勤務地が出る作りです。求人詳細の業務内容・必須スキル/経験・歓迎スキル/経験も登録なしで読めます。
自分の経験にどの年収帯の声かけが届くかは、Offers に職務経歴とスキルを登録して確かめる方法もあります。登録しておくと、IT プロダクト職の正社員採用を進める企業からスカウトを受け取れる仕組みです。
資格は実務の経験を補う材料
データエンジニアの求人の条件の中心は、実務の経験と技術名です。必須・歓迎条件の欄で資格や認定の語に触れる求人は、45件中4件でした。
資格は、触れたことの少ない領域の知識を体系立てて押さえる材料として使えます。Amazon Web Services(AWS)の「AWS Certified Data Engineer - Associate」、Google Cloud の「Professional Data Engineer」、IPA の「データベーススペシャリスト試験」が、データエンジニアの仕事に近い資格です。
職務経歴書では、資格名より先に、どの規模のデータをどの構成で扱い、何が改善したかを書くほうが、求人の条件と照らし合わせてもらいやすくなります。
自動化で置き換わりやすいデータエンジニアの仕事
編集部の見立てでは、決まった取り込み元から決まった形でデータを移すだけのジョブの作成は、データ連携のマネージドサービスや生成AI のコード補完で手間が減りやすい仕事です。依頼された連携を1本ずつ作ることが仕事の大半なら、担う範囲を広げる準備を早めに始められます。
置き換わりやすいかどうかを分けるのは使っている技術よりも、仕事の中で自分が決めている部分の大きさだというのが編集部の見方です。同じパイプラインの構築でも、データの持ち方や更新の頻度、品質の基準を自分で決めているなら、それは基盤の設計の仕事です。
いまの仕事を棚卸しするときは、次の3つを書き出すと、どこを伸ばすかが見えてきます。
- 自分が決めているデータの持ち方。テーブルの粒度、項目の定義、更新の頻度を誰が決めているか
- データの品質と権限を守る仕組み。テスト、監視、アクセス権の設計にどこまでかかわっているか
- データを使う側との接点。分析担当や事業部門、機械学習のチームと、要件を詰める場に出ているか
データエンジニアのキャリアパスは4つの方向に分かれる
データエンジニアのキャリアパスは、データ基盤の設計を深める方向、データを使う側に寄る方向、機械学習の基盤に寄る方向、チームと方針を率いる方向の4つです(編集部の整理)。表の主な仕事は、Offers のデータエンジニア系の求人の本文に挙がる語(ガバナンス・データ品質・データモデリング・機械学習・生成AI)を手がかりに、編集部が4つに分けたものです。
方向 | 主な仕事 | 伸ばす経験 |
|---|
データ基盤の設計を深める | データ基盤の全体構成の設計、技術選定、コストと性能の設計 | Terraform などでの構成管理、データウェアハウスの設計 |
データを使う側に寄る(アナリティクスエンジニア) | 分析に使うテーブルの設計、指標の定義、変換処理の管理 | dbt での変換処理、データモデリング、事業部門との要件定義 |
機械学習の基盤に寄る | 学習データの整備、特徴量や推論の基盤の構築、生成AI 向けのデータ連携 | 機械学習チームとの協業、RAG などの検証 |
チームと方針を率いる | データチームのリード、データガバナンスの方針づくり、採用 | 権限と品質のルールづくり、ほかの部門との調整 |
4つのほかに、データサイエンティストへ進む道もあり、統計やモデリングの知識が要る仕事の中身と年収は「データサイエンティストの年収|統計の知識と求人の年収帯」で扱いました。
4つの方向のどれに近い求人が多いかは、Offers Jobs のデータエンジニアの求人一覧で業務内容と必須スキル/経験を読み比べると確かめられます。
データエンジニアの将来性を自分のキャリアに当てはめる進め方
データエンジニアの将来性を自分のキャリアに当てはめる手順は、棚卸しの結果から4つの方向のどれに近いかを決め、同じ方向の正社員求人の必須・歓迎条件と並べて、足りない経験をいまの職場で担える仕事から引き受けることです。データ品質のテストの導入、変換処理の dbt への移行、構成のコード化、権限設計の見直しなどが入口です。
職務経歴書には、扱ったデータの規模、基盤の構成、自分が決めたこと、改善した指標(処理時間・コスト・障害の件数など)を書くと、求人の条件と照らし合わせてもらいやすくなります。
データアナリストやデータサイエンティストを含むデータ分析の仕事の将来性は「データ分析の将来性|需要の統計と求人が求めるスキル」で、隣の職種の需要は「データアナリストの将来性」で扱っています。この記事は、データエンジニアとして働く人が自分の仕事の方向と求人の条件を照らし合わせることに絞りました。
情報処理・通信技術者の有効求人倍率は職業計を上回り、IPA の調査ではデータ整備の人材の確保を課題に挙げる企業が半数を超えていました。AI で効果を出している企業ほど学習データを整備していることも、IPA の調査に表れています。自分が決めている範囲を一歩ずつ広げていくことが、データエンジニアとしての次の選択肢を増やします。