【ヘルステック最前線】FiNC Technologies執行役員が考えるこれからの未来、そして働き方

ヘルステック・健康ソリューション関連の市場規模は、2022年には3,083億円まで拡大すると予測されている(富士経済調べ)。この領域は社会的課題を解決して価値を生むだけでなく、周辺領域を取り込むことで商機としての注目度はさらに増すことだろう。だが、これほどの市場規模にも関わらず「日本のみならず、グローバルにおいても覇者がいない」と語るのは、国内No.1のDL数(※1)を誇るダイエットアプリ「FiNC®︎」(※2)を運営する株式会社FiNC  Technologies 執行役員の小出氏と清水氏だ。今回、その未踏の領域における同社の戦略と、それを実現するために必要な人材像や働き方について両氏に話を伺った。

※1 日本国内App Store1年間(2018年10月〜2019年9月)のダウンロード数の合算です。/出展:App
※2 App Store「ヘルスケア/フィットネス」カテゴリおよびGoogle Play「健康&フィットネス」カテゴリでのアプリを「ダイエットアプリ」としています。

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「FiNC®︎」アプリは、700万ダウンロードを突破

まずは貴社サービスの概要から教えてください。

小出誠也氏(以下、小出氏):当社は最先端のテクノロジーを駆使してココロとカラダの健康に関する課題を解決する、世界を代表するようなウェルネスカンパニーを目指しています。

なかでも、我々のサービス母体となる「FiNC®︎アプリ」は700万DL(2019年10月時点)を突破し、ダイエットアプリでは国内No.1の地位を確立しています。今年3月にはリブランディングを行っており、今後もプロダクトのアップデートや、マーケティング・プロモーションに力を入れていきたいと考えています。

執行役員 CCO (Chief Creative Officer)開発本部 クリエイティブ部 部長
小出誠也氏

「FiNC®︎」アプリにはどのような特徴があるのでしょうか?

小出氏:基本的な機能として、日々の歩数、体重、睡眠、食事(カロリー)などの行動ログを管理することができます。

「FiNC®︎」アプリでは特許を取得したパーソナルトレーナーAI(人工知能)を内蔵しており、当社の保有する約3万強のコンテンツの中から、ユーザーの悩みに合った美容・健康メニューをAIがレコメンドするなど、個々に寄り添った健康的な生活をサポートしています。

他にも「FiNC®︎」アプリには独自のポイント機能があります。アプリ内では健康活動に関するさまざまなミッションがあるのですが、ユーザーはそれらをクリアすることでポイントを獲得でき、ポイントを使ってアプリ内の「FiNCモール」でさまざまな商品を購入することもできます。

このポイントは現在、「FiNCモール」でしか使えないのですが、今後はドラッグストアをはじめとしたリアル店舗でも利用できるようにしたいと考えています。

つまり、ヘルスケア市場全体をターゲットにしていくと?

清水隆之氏(以下、清水氏):そうですね、単純にヘルスケアにおけるアプリ市場だけでなく、物販やフィットネスなども含め、ヘルスケア市場全般で「FiNC」の存在感を発揮していきたいですね。

ヘルスケアの市場規模は、2025年には約33兆円になると言われています(経済産業省推計)。現在は「FiNCダイエット家庭教師」「FiNC Fit」「 FiNCパーソナルサプリメント」など、健康をベースにさまざまなサービスを展開していますが、リアル店舗やデジタル上で完結できるものなど、今後さらに幅広くチャレンジしていきたいと考えています。

執行役員 VPoE 開発本部 技術開発部 部長
清水隆之氏

今まで培った経験で、社会的課題を解決したい

ゲーム・エンタメ領域でキャリアを築いたお二人が、なぜヘルスケア領域であるFiNC Technologiesにご入社されたのでしょうか?

※編集部注
清水氏はDeNAにて複数の海外向けソーシャルゲームの開発・運用を経験、小出氏はKLabにて最年少執行役員・クリエイティブ部長として活躍した経歴を持つ。

清水氏:理由は二つあります。先程も市場規模についてお話しましたが、まずは「マーケットの大きさ」ですね。ヘルスケア関連のサービスはこれからの社会に必ず必要とされますし、日本やグローバルにおいても、この領域でGAFAのような覇者はいません。そこに大きなチャンスがあると思いました。

もう一つは「経営陣の魅力」です。会社として掲げるビジョン/ミッションは壮大ですが、それを必ず実現できると思わせてくれる経営ボードやメンバー、そしてカルチャーがあることです。やっぱり、一緒に働く人やカルチャーは大事ですね。

小出さんはなぜFiNC Technologiesにご入社されたのでしょうか?

小出氏:僕はシンプルです。ずっとエンタメ業界で働いてきましたが、20代前半は自分の能力をどう伸ばしていくか、そして20代後半は組織のために何ができるのかをずっと考えてきました。そしてこれらのことは、前職のKLabでクリアできたと思っています。

そんなときに、もっと社会的に意義のあることをやりたいと考えるようになったんです。30歳を機に意義のある分野で、自分が今まで培ってきた能力を活かせる環境を探していたときに、たまたまFiNC Technologiesと出会いました。

健康という社会的課題を解決できるのは、非常にやりがいが大きいことだと感じましたし、「ここでなら過去の経験を活かせる」と思ったのがきっかけです。

採用の軸は、カルチャーフィットするかどうか

それでは現在の開発体制について教えてください。

清水氏:開発はいわゆるアジャイルのスクラム方式で進めており、サービス構成はマイクロサービスアーキテクチャを初期から採用しています。

もともと、僕が入社した頃から複数のサービスを展開していたのですが、大人数で1個のものを作るのではなく、サービスを機能別などに分散し、複数の少人数チームでそれぞれ開発を進める体制にしています。

そのため、各チームではスピーディーに開発してリリースし、ユーザーの反応を見て素早く改善していくことを実践しています。必然的に個々の裁量も大きくなりますので、そこに各エンジニアは面白さを感じているのではないでしょうか。

クリエイティブ部門はいかがですか?

小出氏:クリエイティブ部門は横断部署として各サービスに関与していますが、先程清水が話したように、デザイナーもエンジニアと一緒になって開発・改善に臨んでいます。そこはエンジニアと違いはないですね。

清水氏:ちなみに各チームには、エンジニアやデザイナーのほか、データ分析を担当するアナリストなど、各プロフェッショナルがいます。そんな彼らが自身の知見を出し合いながら、担当するプロダクトに向き合っているイメージです。

サービスが増えていけば、今後は必然的に開発チームが増えていくと思います。今後は採用も大きな課題になりそうですね。

清水氏:そうですね。開発はチームプレーなので、マネージャーの指揮次第でチームのアウトプットが変わります。そういう部分をしっかりコミットしてくれるリーダーが今の我々には必要です。もちろん、コードを書く人が開発の主役でもあるので、そこにちゃんとコミットしてくれる方も積極的に迎え入れたいと考えています。

「FiNC®︎」アプリもさらに改善していきたいと考えていますし、レコメンドエンジンやモールも展開しています。プラットフォームに根ざしているサービスは複数あるので、そのバックエンドをどんどん作って、かつサービスの中身も考えながら改善していけるタイプの人とも一緒に働きたいですね。このあたりは話すとキリがありませんが......(苦笑)

クリエイティブ部門もやはり今後はさらに拡大を?

小出氏:そうですね。僕らは面白いことをやりたいなと考えています。抽象的な表現になりますが、世の中から見たときに我々のサービスは「面白い」「かっこいい」「キレイだ」という感覚を、アプリを使っているユーザーに感じてもらい、長く継続してもらえるようにしたいです。そのような感覚的なことを、カタチにして発信する事でファンになっていただける方を増やしていきたいと思っています。

そのため、特にアートディレクターやブランディングに精通しているメンバーでチームを編成し、まずは実験的に取り組んでいきたいですね。

ちなみに現在の各メンバーは、正社員だけでしょうか?

清水氏:そんなことはありませんよ。エンジニアは正社員が過半数ですが、業務委託や副業の方もいます。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが多いことも、当社ならではなのかもしれません。

業務委託や副業の方が、貴社を志望される傾向はありますか?

小出氏:僕らのミッションやビジョンに共感してくれる方が多いと思います。

さっき、清水から「人やカルチャーが大事」って話がありましたが、まさにその思想で当社にジョインしてくれている方ばかりですので、互いの価値観にブレはありませんし、コミュニケーションが取りやすいと感じています。

清水氏:単純にお金とかのために来る人はいないですね。社会が問題を抱えてる中、自分の力で解決していきたいという方が多いと感じます。

小出氏:僕らは本当にカルチャーを大事にしている会社なので、カルチャーにフィットするかどうかを重視しています。

カルチャーとはどのようなものでしょうか?

小出氏:「FiNC SPIRIT」という行動指針(※4)を大事にしています。行動指針は評価軸にもなっていますし、社内ではこれをベースにコミュニケーションを取ってます。

※4「FiNC Family」「Integrity」「Non-Defeatist」「Communication」「Speedy」「Professional」「Intensive」「Rational」「Improvement」「Team-Work」 の頭文字をとっており、これらの行動指針はオフィスの至るところに掲示してある。

ちなみに各会議室の名前も「Speedy」や「Professional」など、行動指針の言葉が付けられています。

ちなみに今回のインタビューは「Speedy」で実施しました

メンバーの働きやすさを実現するために、組織として取り組んでいることはありますか?

清水氏:まずハード面ですが、エンジニアが働きやすいようにハイスペックなPCやディスプレイ、机、イスなど、日々の仕事でストレスを感じず集中できる環境を整えています。

健康を提供する会社ですから、仕事で心身ともに不健康になるのは本末転倒ですからね。それに会社として「モノづくりは大事」だという姿勢も示せているのではと思っています。

小出氏:クリエイターの場合は、デザイナーだけでなく、動画チームも所属しています。動画だとどうしても機材が多くなってしまいますが、なるべく本人たちがチャレンジしたいものに関しては積極的に購入して、仕事のバリューを発揮してもらっています。

ソフト面ではいかがでしょうか?

清水氏:より意欲のある人を支援するような制度を作っています。例えばエンジニアの場合ですと、カンファレンスに登壇するメンバーを支援したり、勉強会や書籍購入など、金銭的なサポートにも力を入れてます。このあたりは人事とも連携し、常にアップデートを続けていければと思います。

あと、これは個人的な考えですが、エンジニアってパソコンとWi-Fiさえあればどこでも働ける時代なので、所属している意味を作りたいです。FiNC Technologiesだから、1人で働いているよりも成長できるとか、いろんなことが学べる環境を作りたいなと思っています。

意欲のある人はどんどん成長すると思いますし、そういう人が脚光を浴びて、成果を出しやすいような環境を整え支援をしていくのが理想です。

「言われたモノを作る」だけのメンバーはいない

御社で働く醍醐味には、どのようなものがありますか?

清水氏:誰も正解を出していない課題に挑んでいくことでしょうか。

エンジニアの仕事は、自分の技術力で課題を解決し、いかに成果を出すかが面白いところでもあり、難しいところでもあります。「ソフトウェアの力で人を健康にする」というテーマに挑む楽しさはすごくあると思います。

もう一つ挙げると、課題を解決する手段(技術)が高度になっていきます。最適化するため、あらゆる技術をキャッチアップする必要があります。最近ではユーザーの行動履歴や生体情報の管理、健康状態の指標などをブロックチェーンの技術を使って開発することなどにも取り組んでいます。

自ら考え、ときに高度な技術を使いながら市場を切り拓くと?

清水氏:そうです。FiNCには「言われたモノを作る」というスタンスのメンバーはいないんです。

「なぜやるのか?」「インパクトはあるのか?」を常に自分たちに問いかけています。チーム内でメンバー同士が終日ディスカッションすることも珍しくはありません。もちろん、そこに正社員や業務委託、副業社員などの垣根はありません。

小出氏:クリエイターも2点に絞ると、エンジニアと被りますが、僕らは「デザインをお願いします」だったり「動画を作ってください」と言われて、ただ作るだけのクリエイターはいません。自分たちが最初の体験設計から検討していくことを重要視しています。

一般的にヘルスケアサービスは、継続して利用いただくのはとても難易度が高いので、ユーザーの一連の体験を入念に設計し、デザインに落とし込んでいくプロセスが非常に重要になります。それをゼロベースから設計できることは良い経験だと思いますし、その経験自体に価値があると思っています。

二つ目は、僕らのサービスは幅広いことです。Webや店舗デザイン、パッケージのデザイン、さらに店舗自体の体験デザインなど、とにかく手掛ける媒体が多いんですよ。リアルやWebなど関われる範囲が広いので、そこは当社独自かなと思います。

だからこそ、メンバーがFiNC Technologiesの中で「こういったキャリアを築きたい」「こういうデザインをやってみたい」と思ったときに、それらを実現できる場所や環境があります。

変化に流されず、賢く選択できるかどうか

最後の質問です。これからのクリエイターの働き方は、今後どのように変わっていくと考えていますか?

清水氏:働き方に対するリテラシーを上げて、賢く選択すべきかなと思います。

組織に所属することで得られる経験もありますし、逆にフリーでしか得られないこともあると思います。面接ではフリーランスの方をはじめ、いろんな方とお会いする機会がありますが、個人で選択できる「働き方の自由度」は年々増していると感じています。

小出氏:ただ、自社のプロダクトを触るからこその面白さって、やっぱりあるんですよ。

会社にコミットしてやってると、「数値が上がった」とか、「新しい経験値を得た」とか、自分たちが事業を育てていることをリアルタイムで感じられます。これはフリーランスで複数の仕事を請けているだけだと得難いのかなと。

メンバーとレスポンスの早いコミュニケーションを求めたり、生の温度感を分かち合いながら一緒にモノを作っていくことは、古臭い考え方かもしれないですけど、そこに魂が宿っている場合もあります。ですので、清水の言うように「働き方の選択」をしていくことは、今後のクリエイターにとって大きな課題なのかもしれませんね。

ありがとうございました!

インタビュー:佐藤剛史
執筆:讃岐勇哉
編集:佐藤剛史/新留一輝
撮影:齋藤暁経

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