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「技術広報のゴールはアウトプットの文化を作ること」アスクルのEMが語る、エンジニア組織の立ち上げ時に意識したい広報のコツ

オフィス向けECサイトなどを運営するアスクル社は、2014年に社内エンジニア組織を立ち上げました。当時のアスクル社は、サービスの知名度はあってもエンジニア組織としての知名度は皆無だったそうです。優秀なエンジニアを採用していく上で苦労したのが、エンジニアに対しての認知を獲得すること。今回はアスクル社の小谷さんに、エンジニア組織を作っていく過程で注力した『技術広報』の考え方について伺いました。

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リクルーティングサービスだけではエンジニア採用に限界あり

どうも、アスクルでエンジニアリングマネージャーをしているこたにん (@Kotanin0) と申します。

わたしが会社で担っている職責の一つに「エンジニア採用」があります。会社でエンジニア組織を作り上げる上では、エンジニア採用は欠かせません。

ただ、エージェントや採用媒体、リクルーティングサービスを使うだけではなかなかエンジニア採用は進みません。それは一体なぜでしょうか?

答えの一つに「技術広報」があるのではないかと、わたしは考えています。

ここで言う「技術広報」は、顧客に向けた自社技術についての広報ではありません。エンジニア採用を進めていく上での、エンジニアたちに向けた技術広報です。

「技術広報」というキーワードで語られる、エンジニア向けの技術広報。(「ブランディング」とも言われます)

今回は、アスクルで行った技術広報の事例をもとに

  • 技術広報の必要性
  • 社内の巻き込み方
  • 技術広報の効果

について、お話します!

エンジニア採用のために技術広報は不可欠

アスクル社 技術ブログ 

冒頭でも軽く触れましたが、エンジニア組織を立ち上げるためにはエンジニア採用が欠かせません。エンジニア採用する上で何をするかというと、まずは「募集要項」を定めるところからはじまります。

募集要項を定めて、求人サイトをオープンし、エージェントに求人票を提出し、採用が始まります。

しかし、募集要項を定めて求人票を作ったとしても、そう簡単にはエンジニアは集まりません。

何よりも大事なのは「技術広報」です。転職者目線で言うと「この会社に入ったら、どういう人がいて、どういうサービスがあって、どういう環境で働けて、どういうスキルが身に付くか」です。

それらを伝えることができなければ、なかなか求めるエンジニアと出会うのは難しいです。

アスクルの求めるエンジニア要件

アスクルを例に話を進めます。アスクルでは、自社ECサイトの開発を行う「WEBアプリケーションエンジニア」の採用を進めようとしていました。

キーワードとしては「自社開発」「ECサイト」「WEB」あたりです。これらに当てはまる転職者は少なくはないですが、これらに当てはまる企業も少なくないです。

なので、他社に負けず劣らず、これらに魅力を感じてもらえるような技術広報のためのアウトプットが必要です。

アスクルの良さをいかに打ち出すか

「自社開発」「ECサイト」「WEB」というキーワードで、求めるエンジニアといかにして出会うのか。どのように会社の良さを打ち出して、魅力を感じてもらうのか。

それを伝えるためには、会社の環境や風土などをアウトプットする必要があります。

社内で扱っている技術、一緒に働く社員、福利厚生...…。

伝えることができる要素はいくつかありそうです。その中で、会社としてどういうアウトプットをしていけばいいのでしょうか。

いかに技術広報のために社内を巻き込むか

技術広報のためには何らかのアウトプットが必要です。アウトプットをするには、社内で働くエンジニアの協力が必須です。

エンジニア業務を行っている方が採用に携わっていれば多少進めやすいですが、ましてや人事担当の方の場合、エンジニアの協力をどれだけ引き出すかが重要になります。

いかにして社内を巻き込んでいけばよいでしょうか。

まずは、広報を始める前の準備から見てみましょう。

他社のアウトプットを分析

サービスを作る上で欠かせない「市場調査」は、エンジニア技術広報においても有用です。国内外問わず、エンジニア採用を推し進めている会社が、どのようにアウトプットをしているのか、まずはそれらを調査して分析していきましょう。

昨今のエンジニア界隈では、主に以下のようなアウトプットが多いかと思います。

  • テックブログ
  • 技術イベント登壇
  • SNS活動

それぞれのアウトプットをさらに深堀りします。

テックブログ

会社で開設したテックブログに記事を投稿します。社内システムで利用している技術、イベント参加レポート、社員インタビューなど、ネタはさまざまです。会社の魅力を社員の声で直接伝えることができる手段です。

メリット:

  • 社内で利用している技術を共有できる
  • どんなエンジニアが働いているかわかる

デメリット:

  • 記事執筆に工数がかかる
  • ブログを立ててメンテナンスをする必要がある

ASKUL Engineering BLOG

技術イベント登壇

エンジニア界隈では、全国各地で毎日様々なイベントが開催されています。特定の言語・技術に絞った大型カンファレンスや、connpassというイベントサービスで有志が立ち上げる小規模イベントなど、さまざまです。

そういった技術イベントへ登壇し、社外へ向けて技術発信ができる手段です。

メリット:

  • 特定の技術にアンテナを張っているところに広報できる
  • イベント参加者と直接的なつながりができる

デメリット:

  • 登壇準備に工数がかかる
  • 発表することへのハードルが高いと感じる

 

SNS活動

TwitterやFacebookなど、ソーシャルメディアでの活動を指します。エンジニアは情報収集の一環として、Twitterを活用することが多いです。

技術アンテナを張っているエンジニアたちに、アウトプットを拾ってもらえる手段です。

メリット:

  • 自由度が高くアウトプットできる
  • 個人同士でリプライでのやりとりができる

デメリット:

  • 社内でSNS運用に関するルールを定義する必要がある(炎上防止)
  • 社用・私用の区別が個人に判断されるリスクがある

KPIの設計はどうすれば良い?

今回、「テックブログ」「技術イベント登壇」「SNS活動」の3つのアウトプットを取り上げました。これらのアウトプットをしていくアクションを進める上で、KPIの設定が必要です。

なぜこれらを実施するのか、これらを実施したときの効果やゴールはなにか、そういった面を定量的に設定しておくということです。しかし、ここでは一言だけ、これに尽きます。

「KPIはいらない。とにかく全部やる。」

採用を進める上でもちろん目標設定は必要です。ただ、エンジニアに対する技術広報という目線では、数値目標を設定することに大きな意味はありません。

何よりも大事なのは、アウトプットをしていくアクションをとにかく全部やること。

全部やった結果、社内エンジニアとして「アウトプットすることが文化になること」がゴールです。

人事担当としては、技術広報に注力することは本質的ではないです。技術広報を行った結果として興味を持ってもらえたエンジニアに対してアトラクトして入社を決めてもらうことに注力するべきです。

そのためには技術広報を「エンジニア文化」に昇華させ、アウトプットが社内で自然発生する状態を作り上げるべきです。

まずはひとりでやってみる

2018年に敢行したセルフインタビュー 

先にも言いましたが、アウトプットをするには、社内で働くエンジニアの協力が必須です。とはいえ、いきなり協力してもらえるかという、なかなかそうはいかないケースが多いでしょう。

なぜならば社内のエンジニアにとっては「プロダクト開発」に注力したいからです。社外に向けてアウトプットすることの優先度や興味度は相対的に下がってしまいます。(アウトプットに興味のあるエンジニアがいればもちろん最初から協力してもらいましょう!)

社内エンジニアにいきなり「みんなブログ書いてね!」「イベント出てね!」「Twitterやってね!」と伝えても、それは文化ではなくルールになってしまいます。

重要なのは「アウトプットすることが文化になること」です自然発生する状態を目指さなければいけないです。

なのでまずはひとり(もしくは少人数の協力者)ではじめましょう。わたしの場合は、エンジニアとして業務を行う傍らで技術広報を行っていたため、自らアクションしました。

  • テックブログを立ち上げて記事投稿
  • connpassで開催されるイベントに参加しプレゼン
  • 自分で自分を紹介するセルフインタビュー
  • Twitter活動

これらすべてを、地道に続けました。

社内の仲間を増やす

地道な少しずつのアウトプット活動では、すぐ効果に直結はしません。それよりも得られる大きなことがあります。「アウトプットをするハードルは思ったより低い」ということです

ブログ記事を書いたりイベントに登壇することは、言葉だけを聞くと障壁が高く感じてしまいます。記事の執筆に時間がかかったり、プレゼン資料の準備に時間がかかったりすることはもちろんあります。

ただ、実施してみると案外そうでもないです。何を伝えたいか考えることとそれを言語化すること、そのスキルが身に付くわけです。その結果として次にできること、それが「社内の仲間を増やす」ということです。

社内エンジニアの業務をよく見わたしてみましょう。「ブログの記事にしたら面白そう」「この技術だったらイベントで喋れそう」という目線で、エンジニアの業務を見ることができるようになります。

そしてエンジニアへ「よかったらイベントで喋ってみない?」「ブログ書いてみない?」と誘導してみます。抵抗されるかもしれませんが、そこで素直に「技術広報の一環としてアウトプット文化を作りたい!」とお願いをします。

そうやって少しずつ、社内の仲間を増やしていき、いろんな人がアウトプットする状態を作り上げていきます。

一気に全体周知をしてしまうと、文化ではなくルールになってしまいます。なので個人個人にお願いをしていき、アウトプット文化が自然発生したように見せかけるのです。

ちょっとズルい手法かもしれませんが、戦略としてとても有用でした。

技術広報活動の積み重ねで得られた成果と失敗

社外からの認知度向上

これらのアクションを続けていくことで、アウトプットすることが文化になりました。その結果、エンジニアに対する認知度は上がりました。

とあるイベント運営から登壇の依頼が届いたり、メディアからのインタビュー依頼がきたり、面接に訪れる転職者から「ブログ読んでます」との声をもらったり。アウトプットしていることが社外に伝わっていることが実感できる成果を得ることができました。

転職者からの応募も、アウトプットしはじめてからは数値は増えました。

単発の取り組みで終わってしまい、徒労に終わることも

逆に、失敗したこともあります。

ブログ記事を増やしたい一新でエンジニア全員にお願いしたところ現場の負荷まで考えられておらず、思ったように記事数を増やすことができなかったり、イベント登壇の機会を増やすために自社イベントを開催してみたが、開催しただけで終わってしまいその後のアクションに繋げられなかったり。

やった取り組みが全部成功しませんでしたが、失敗あってこそ、とるべき次のアクションを見定めることができます。

さいごに

今回は、エンジニア採用のために必要不可欠な「技術広報」について、アスクルの事例を交えながらお話しました。

「技術広報」は一朝一夕で成果は出ません。地道に泥臭く長く続けていくことで必ず花が咲きます。

アクションは早ければ早いほど良いですし、今からでも決して遅くありません。

「アウトプットすることが文化になること」を目指して、技術広報をやっていきましょう。

We are hiring

さいごのさいごに。

わたしが所属しているアスクルでは、一緒に働く仲間を募集しています。ぜひこちらからエントリーくださいませ。

アスクル募集ページ

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