年収1,000万円は、エンジニアにとって「一部の人だけの額」なのか「狙える額」なのかが分かれる線です。平均年収の記事を読んでも、自分の職種・年齢・役割でどのくらい現実的なのかは見えにくいままです。
公的統計で平均が1,000万円を超える職業の区分と年齢、Offers に掲載された正社員求人で1,000万円が年収の幅のどこに置かれているかを並べました。開発を続けたい人、設計やチームのリードに役割を広げたい人、PdM やデザイナーとして年収帯を上げたい人が、次に狙う求人を決めるための材料です。
給与所得者全体で年収1,000万円を超える人は6.2%
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人のうち、年間給与が1,000万円を超える人は6.2%です(第16表の1,000万円超の4区分の構成割合を編集部が合計)。職種を問わない全体の値で、エンジニアだけを切り出した数字ではありません。
年間給与の階級 | 構成割合(令和6年分) |
|---|---|
800万円超 900万円以下 | 3.4% |
900万円超 1,000万円以下 | 2.4% |
1,000万円超 1,500万円以下 | 4.5% |
1,500万円超 2,000万円以下 | 1.1% |
2,000万円超 2,500万円以下 | 0.3% |
2,500万円超 | 0.3% |
出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第16表(1年を通じて勤務した給与所得者・男女計)。
給与所得者全体では、1,000万円を超える人は16人に1人ほどです。エンジニアの中でどの区分・年齢なら平均がこの額に届くのかは、次の賃金統計で確かめられます。
資本金10億円以上の株式会社では1,000万円超が16.4%
同じ「令和6年分 民間給与実態統計調査」の企業規模別の表では、資本金10億円以上の株式会社に勤める給与所得者のうち、年間給与が1,000万円を超える人は16.4%で、資本金2,000万円未満の株式会社の3.6%を大きく上回ります(第18表の1,000万円超の4区分の構成割合を編集部が合計・男女計)。資本金10億円以上の株式会社では、1,000万円超1,500万円以下の階級が12.9%で、給与の階級の中で最も多い層です。
企業規模(株式会社の資本金) | 1,000万円超の割合 |
|---|---|
2,000万円未満 | 3.6% |
1億円以上10億円未満 | 6.0% |
10億円以上 | 16.4% |
出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第18表(1年を通じて勤務した給与所得者・男女計)をもとに割合は編集部が算出。
職種を問わない値です。エンジニアの賃金統計でも、次の節で示すとおり、企業規模が大きいほど「システムコンサルタント・設計者」の平均が高くなります。
統計で平均1,000万円超は設計・統括の区分の40〜50代
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で「システムコンサルタント・設計者」の年収を換算すると、40〜44歳で1,189.0万円、45〜49歳で1,226.3万円となり、40〜50代の平均が1,000万円を超えます(企業規模10人以上・男女計。毎月きまって支給する給与の12か月分と年間賞与などの合計を編集部が算出)。開発を担う人が多く入る「ソフトウェア作成者」は、最も高い45〜49歳でも729.2万円です。
年齢 | システムコンサルタント・設計者 | ソフトウェア作成者 |
|---|---|---|
25〜29歳 | 641.6万円 | 484.7万円 |
30〜34歳 | 866.1万円 | 559.5万円 |
35〜39歳 | 968.1万円 | 636.0万円 |
40〜44歳 | 1,189.0万円 | 686.3万円 |
45〜49歳 | 1,226.3万円 | 729.2万円 |
50〜54歳 | 1,103.7万円 | 722.4万円 |
55〜59歳 | 1,163.8万円 | 719.5万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」をもとに年収換算は編集部が算出(企業規模計・男女計)。
2つの区分の差は、40〜44歳まで年齢とともに開きます。「システムコンサルタント・設計者」は40〜44歳の賞与などが年399.0万円で、毎月の給与だけでなく賞与の厚さが年収を押し上げています。年齢別の表は同じ人の年収の推移ではなく、年齢ごとに働いている人の平均を並べたものです。
2つの区分に入る職業の違い
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の職業分類対応表(2026年3月更新)では、「システムエンジニア(基盤システム)」「プロジェクトマネージャ(IT)」「ITコンサルタント」が「システムコンサルタント・設計者」に入ります。「システムエンジニア(Webサービス開発)」「システムエンジニア(受託開発)」「プログラマー」「ソフトウェア開発(スマホアプリ)」は「ソフトウェア作成者」です。
統計の上では、システムの全体の設計やプロジェクトの統括、IT の企画を担う職業の区分で、平均が1,000万円に届きます。実装を中心に担う職業の区分の平均はどの年齢でも800万円を下回り、最も高い45〜49歳でも729.2万円です。ソフトウェア作成者の区分と SE(システムエンジニア)の求人の年収帯は「システムエンジニアの年収」で詳しく扱っています。
1,000人以上の企業では区分全体の平均が1,010.4万円
「令和7年賃金構造基本統計調査」の企業規模別の値で「システムコンサルタント・設計者」の年収を換算すると、従業員1,000人以上の企業で1,010.4万円、100〜999人で854.3万円、10〜99人で585.1万円です(全年齢・男女計・編集部算出)。「ソフトウェア作成者」は1,000人以上でも640.9万円でした。
企業規模 | システムコンサルタント・設計者 | ソフトウェア作成者 |
|---|---|---|
企業規模計(10人以上) | 889.0万円 | 578.5万円 |
1,000人以上 | 1,010.4万円 | 640.9万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」をもとに年収換算は編集部が算出(男女計)。
統計で平均が1,000万円に届くのは、設計・統括の区分で、40〜50代の年齢層か、従業員1,000人以上の企業に当たるところです。勤め先の規模と担う工程の両方が、統計の年収の水準を左右しています。
求人の上限1,000万円以上は49.6%、下限では2.4%
Offers に2026年9月までに掲載された正社員のエンジニア求人(年収の記載がある1,503件)のうち、提示年収の上限が1,000万円以上の求人は49.6%で、下限が1,000万円以上の求人は2.4%でした。下限の中央値は540万円、上限の中央値は980万円で、下限が800万円以上の求人は13.0%です(Offers(株式会社overflow)調べ・n=1,503・2026年10月7日集計)。
提示年収は、求人が示す年収の幅です。下限は求人の要件を満たす人に示す額の下端、上限は経験と役割が合う人に出せる額の上端を指します。1,000万円は、半数の求人で年収の幅の上側に入る額で、下限から1,000万円を約束する求人はごく一部です。
提示年収の上限 | 割合 |
|---|---|
800万円未満 | 23.4% |
800万〜1,000万円未満 | 26.9% |
1,000万〜1,200万円未満 | 22.2% |
1,200万〜1,500万円未満 | 17.8% |
1,500万円以上 | 9.6% |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人のうちエンジニアの職種名の求人(n=1,503・2026年10月7日集計)。
ほかの求人を代わりに載せる人材紹介会社のアカウントの掲載を除いた1,337件でも、上限1,000万円以上は48.0%、下限1,000万円以上は1.9%で、傾向は変わりません。求人の年収の幅の読み方は「モデル年収と求人の年収例の読み方」で詳しく扱いました。
上限1,000万円以上の求人がどの職種で多いかは、Offers Jobs の公開求人で職種を絞って確かめられます。求人一覧はログインなしで見られ、必須条件などの詳細は会員登録後に表示されます。
上限1,000万円以上が多いのはリード職・PdM・データ職
Offers の正社員求人を職種区分で分けると、上限が1,000万円以上の求人の割合は、テックリードやエンジニアリングマネージャーなどのリード職(245件)で77.1%、PdM(103件)で72.8%、データ職(116件)で69.0%でした。バックエンド・Web 開発(545件)は38.7%、インフラ・SRE(272件)は39.3%、デザイナー(135件)は30.4%です(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月7日集計)。
職種区分 | 年収記載のある求人 | 下限の中央値 | 上限の中央値 | 上限1,000万円以上 | 下限800万円以上 |
|---|---|---|---|---|---|
リード職(テックリード・EM・VPoE 等) | 245件 | 700万円 | 1,200万円 | 77.1% | 41.2% |
PdM | 103件 | 600万円 | 1,000万円 | 72.8% | 14.6% |
データ(データエンジニア・データサイエンティスト等) | 116件 | 600万円 | 1,000万円 | 69.0% | 7.8% |
フロントエンド・モバイル | 299件 | 500万円 | 925万円 | 47.2% | 6.4% |
インフラ・SRE | 272件 | 500万円 | 900万円 | 39.3% | 8.5% |
バックエンド・Web 開発 | 545件 | 500万円 | 900万円 | 38.7% | 7.3% |
デザイナー | 135件 | 500万円 | 800万円 | 30.4% | 3.7% |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人(2026年9月までに公開・2026年10月7日集計)。
セキュリティの求人(26件)は100件未満のため割合を出さず、下限の中央値600万円・上限の中央値1,000万円だけを目安として示します。区分はタイトルの職種名を PdM・デザイナー・インフラ・SRE・セキュリティ・リード職の順に当てはめて振り分けたもので、テックリードやエンジニアリングマネージャーなどリード職の語があっても、先の区分の語が当たる求人はその区分に数えています。
開発・インフラ・デザインの区分は、上限1,000万円以上が3〜4割台で、上限の中央値は800万〜925万円です。統計で設計・統括の区分の平均が1,000万円を超えるのと同じく、求人でもチームや製品の方向を決める役割の区分で、1,000万円が年収の幅に入りやすくなります。PdM の年収と仕事内容は「プロダクトマネージャーの年収」、開発組織の責任者の役割は「VPoE の年収と役割」、データ職の年収帯は「データサイエンティストの年収」で扱っています。
リードの役割を書く求人は上限1,000万円以上が61.8%
リード職以外のエンジニアの正社員求人でも、求人本文にテックリード・チームリード・マネジメント経験・メンバーの育成などの語がある求人(249件)は、上限1,000万円以上が61.8%で、語が無い求人(1,009件)の39.9%を上回りました。上限の中央値は1,000万円と900万円です(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月7日集計)。
求人本文の語(リード職を除くエンジニアの求人) | 年収記載のある求人 | 上限の中央値 | 上限1,000万円以上 | 下限800万円以上 |
|---|---|---|---|---|
リードの役割の語がある | 249件 | 1,000万円 | 61.8% | 16.9% |
リードの役割の語が無い | 1,009件 | 900万円 | 39.9% | 5.3% |
LLM・生成AI の語がある | 131件 | 1,000万円 | 60.3% | - |
LLM・生成AI の語が無い | 1,127件 | 900万円 | 42.4% | - |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人のうちリード職を除くエンジニア5区分の求人(n=1,258・2026年10月7日集計)。
LLM(大規模言語モデル)や生成AI の語がある求人(131件)も、上限1,000万円以上が60.3%でした。この比較は語が出てくる求人と出てこない求人の提示年収の違いを見たもので、リードの経験や生成AI の知識があれば年収が上がるという因果を示すものではありません。語は募集する会社の事業や規模、開発体制と結びついていて、差にはそれらの違いも含まれる点に注意が必要です。
タイトルがエンジニアのままでも、設計やチームのリードを任せる求人では、1,000万円が年収の幅に入りやすくなります。肩書きを変える前に、いまの職場で担う範囲を広げてその経験を示せるようにしておくことは、上限の高い求人に応募するときの材料の一つです。
設計と技術選定を決めた経験を示す
リードの役割を求める求人では、機能の実装に加えて、システムの構成やデータの設計、技術の選定を誰が決めたかが問われます。職務経歴書には、自分が決めた設計とその理由、決めた後に変わったこと(障害の件数・リリースの頻度・レビューの時間)を、チームの成果と分けて書くのが基本です。
チームを率いた範囲を数で示す
コードレビューを担った人数や期間、新しく入ったメンバーの立ち上がりを支えた経験は、肩書きが無くてもリードの経験として書けます。スキル欄の書き方の例は「職務経歴書のスキル欄の書き方」にまとめました。
テックリードや PdM の正社員求人がどの経験にどの年収帯を示しているかは、Offers Jobs の公開求人で職種を絞って見比べられます。担ってきた範囲に近い求人を選ぶと、次に狙う年収帯が具体的になります。
統計の年収換算と求人の提示年収は、測っているものが違う
「令和7年賃金構造基本統計調査」の年収換算は、実際に働いている人に支払われた給与と賞与の平均です。Offers の提示年収は、転職者を迎える側が求人で示した年収の幅で、入社後に支払われた額ではありません。統計は「同じ区分で働く人の平均」、求人は「転職したときに示される年収の幅」を見るものとして使い分けます。
求人の上限1,000万円は、経験と役割が合う人への額で、応募すれば上限が示されるわけではありません。年収1,000万円を転職で狙うなら、下限が高い求人と上限が1,000万円を超える求人を分けて見て、自分の経験がどちらの条件に当たるかを確かめるのが近道です。統計の区分の平均も、年齢と勤め先の規模が近い行を物差しにしてください。

