開発やデザインの経験を積んだあと、プロダクトマネージャー(PdM)やエンジニアリングマネージャー(EM)など別の職種へ移ることを考えたとき、気になるのが、職種を変えると年収が上がるのか、いったん下がるのかという点です。

答えを左右するのは、移る先の職種と、今の経験をどこまで持ち込めるかです。厚生労働省の最新の転職者調査と、Offers に掲載された正社員求人の提示年収を、移る前の職種と移る先の職種に分けて並べました。

キャリアチェンジ先の求人の年収帯は職種で変わる

IT 職どうしのキャリアチェンジでは、移る先が PdM・EM・テックリードのように役割の範囲が広がる職種なら、求人の提示年収は移る前より高い帯です。Offers の正社員求人では、バックエンドを掲げる求人の上限の中央値が900万円なのに対し、PdM は1,000万円、テックリード・アーキテクトは1,050万円、EM は1,200万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,249・2022年3月〜2026年9月公開)。

一方で、求人の年収は幅で示され、その幅のどこで決まるかは選考で評価された経験しだいです。提示される年収の位置を左右するのは、移る先の仕事を今の職場でどれだけ担ってきたかです。

情報通信業の転職者は55.4%が賃金増

厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」によると、直前の勤め先と比べて1か月あたりの賃金が増えた転職者は42.2%、減った人は36.0%でした。産業別に見ると情報通信業では、増えた人が55.4%、減った人が29.5%で、3割以上増えた人は16.7%にのぼります。

区分

増加した

変わらない

減少した

転職者全体

42.2%

20.9%

36.0%

情報通信業

55.4%

15.1%

29.5%

転職後の職種が専門的・技術的な仕事

40.5%

24.5%

33.8%

30〜34歳

43.9%

23.6%

31.6%

35〜39歳

49.5%

15.0%

33.8%

出所: 厚生労働省「令和7年転職者実態調査 個人票 第16表」(2025年10月1日現在)。

厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」の表5で、転職者を受け入れた事業所が転職者の賃金を決めるときに考えた要素を見ると、情報通信業では「これまでの経験・能力・知識」が81.3%、「前職の賃金」が50.7%でした。

職種を変える転職でも、前の職種で積んだ経験と前職の賃金は、賃金を決める材料として見られているということです。移る先に通じる経験を言葉にできるかどうかが、年収を落とさずに移れるかの分かれ目です。

職種を変えて転職した人は専門職の約2割

厚生労働省「令和7年転職者実態調査 個人票 第35表」によると、正社員として転職した人のうち、直前の勤め先で専門的・技術的な仕事をしていた人の79.7%は、転職後も専門的・技術的な仕事に就いていました。事務的な仕事へ移った人は9.6%、管理的な仕事へ移った人は2.9%です。

この統計の職種は、専門的・技術的な仕事や管理的な仕事といった大きな区分です。エンジニアから PdM へ、デザイナーから PdM へといった IT 職の中での移り方は、区分を分けて集計されていません。

そのため、IT 職どうしのキャリアチェンジで年収がどう変わるかは、移る前と移る先の職種ごとに、求人が示す年収帯を比べて見積もるのが現実的です。

IT職の職種別に見た正社員求人の提示年収

Offers の正社員求人をタイトルに掲げる職種名で分けると、開発職やデザイナーは上限の中央値が800万〜1,000万円、PdM・テックリード・EM は1,000万〜1,200万円でした。下限の中央値も、開発職とデザイナーの500万円に対し、PdM は600万円、EM は800万円です。

職種

求人の件数

下限の中央値

上限の中央値

バックエンド

250件

500万円

900万円

フロントエンド

149件

500万円

960万円

モバイル

130件

500万円

1,000万円

インフラ・SRE

209件

500万円

900万円

デザイナー

134件

500万円

800万円

データ

93件

600万円

1,000万円

PdM

102件

600万円

1,000万円

テックリード・アーキテクト

218件

650万円

1,050万円

EM

69件

800万円

1,200万円

掲載求人全体

3,249件

540万円

970万円

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,249・2022年3月〜2026年9月公開。

上限1,000万円以上の求人の割合も、バックエンドが42.4%、デザイナーが29.9%なのに対し、PdM は72.5%、テックリード・アーキテクトは65.6%でした。移る先の職種ほど、年収1,000万円の帯にかかる求人の割合が高くなります。

ただし、表の値は求人が示す幅の中央値で、実際に提示される年収は経験に応じてその幅の中で決まります。移る先の仕事の経験が浅いうちは、幅の下側から始まることも見込んでおきたいところです。

移り方ごとに見た年収の変わり方

移り方ごとに求人の年収帯を比べると、バックエンドと EM の差が最も大きく、デザイナーと PdM も上限の中央値で200万円の差です。一方、バックエンドと SRE(サイト信頼性エンジニアリング)・インフラの求人では、年収帯はほとんど変わりません(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,249・2022年3月〜2026年9月公開)。

求人の年収帯はPdMがバックエンドより上限100万円高い

バックエンドを掲げる求人と PdM を掲げる求人を比べると、上限の中央値は900万円に対して1,000万円、下限の中央値は500万円に対して600万円です。上限1,000万円以上の求人の割合は、42.4%に対して72.5%でした。

PdM は、何を作るかと優先順位を決め、事業の指標に責任を持つ職種です。エンジニアとして仕様の検討や見積もりに関わってきた経験は、開発チームと話の通じる PdM として評価されやすい材料になります。

一方で、顧客の課題の調べ方や、売上・継続率といった事業の指標を動かした経験は、エンジニアの仕事だけでは積みにくい部分です。今の職場で仕様決めや施策の振り返りに加わり、数字で語れる実績を作っておくと、年収の幅の上側で話を進めやすくなります。PdM の役割と進み方は「プロダクトマネージャーのキャリアパス」、プロダクトオーナーとの違いは「プロダクトオーナーとは|役割・PdMとの違い・年収」で整理済みです。

PdM の求人がどの年収帯で、どの経験を条件に挙げているかは、Offers Jobs のプロダクトマネージャーの求人で見比べられます。求人一覧の年収・勤務地と、求人詳細の業務内容・必須スキル・歓迎スキルは、会員登録なしで読める範囲です。

求人の年収帯はEMがバックエンドより300万円高い

EM を掲げる求人は、下限の中央値が800万円、上限の中央値が1,200万円で、表の職種の中で最も高い帯にあります。バックエンドの下限500万円・上限900万円と比べると、下限で300万円、上限で300万円の差です。

EM は、採用・評価・育成と開発の進め方の整備を担い、チームの成果に責任を持つ職種です。EM へ移るときは、開発の経験に加えて、チームを率いた経験を示せるかが問われます。

テックリードとしてメンバーのレビューや技術的な判断を任されてきた人、後輩の育成や採用面接に関わってきた人は、EM へ移る準備が進んでいる状態です。肩書きがなくても、何人のチームで何を任されていたかを具体的に書ければ、職務経歴書の材料になります。開発組織の役職の違いは「エンジニア役職一覧とその特徴」にまとめました。

EM の求人の年収帯と、求められるマネジメントの範囲は、Offers Jobs のエンジニアリングマネージャーの求人で確かめられます。

求人の年収帯はテックリード・アーキテクトが上限1,050万円

テックリード・アーキテクトを掲げる求人は、下限の中央値が650万円、上限の中央値が1,050万円で、上限1,000万円以上の求人は65.6%でした。開発の仕事を続けたまま、設計と技術の判断に責任を持つ方向へ移る道です。

この移り方は、職種名は変わっても開発の経験がそのまま評価の中心に残るため、年収を落とさずに移りやすい道でもあります。方式の選定や非機能要件の検討を担った経験、チームのコードの品質を保つ仕組みを作った経験が、提示年収の位置を決める材料です。システムエンジニアから進む場合の進路と年収帯は「システムエンジニアのキャリアパス」でも比べました。

バックエンドからSREへは横ばい・データへは100万円高い

バックエンドからインフラ・SRE へ移る場合、求人の下限の中央値はどちらも500万円、上限の中央値もどちらも900万円で、年収帯はほとんど変わりません。データの職種は下限600万円・上限1,000万円で、バックエンドより100万円ずつ高い帯です。

技術領域を移るキャリアチェンジでは、年収を上げることより、得意な領域を広げることが主な狙いです。クラウドの設計や運用の自動化、データ基盤の構築など、移る先の技術を今の職場の仕事で使った経験があると、年収を保ったまま移りやすくなります。

求人の年収帯はPdMがデザイナーより上限200万円高い

デザイナーを掲げる求人は、下限の中央値が500万円、上限の中央値が800万円、上限1,000万円以上の求人は29.9%でした。PdM の600万円・1,000万円・72.5%と比べると、上限の中央値で200万円の差があります。

ユーザーの調査や画面の設計を通じて、何を作るべきかを考えてきたデザイナーの経験は、PdM の仕事と重なる部分が多いものです。事業の指標を見て施策を決めた経験や、エンジニアと仕様を詰めた経験を加えて示せると、PdM の求人の条件に近づきます。

年収を下げずにキャリアチェンジする進め方

年収を下げずに職種を移るには、移る先の仕事を今の職場で先に担い、その経験を移る先の言葉で示すのが確実です。令和7年転職者実態調査でも、情報通信業で転職者を受け入れた事業所の81.3%が、転職者の賃金を決めるときにこれまでの経験・能力・知識を考えていました。

進め方は次の4つです。

  1. 移る先の職種の求人を10件ほど読み、条件に挙がる経験を書き出す。PdM なら事業の指標や顧客の調査、EM ならチームの育成や採用が書き出す候補です
  2. 今の職場で、書き出した経験に近い仕事を引き受ける。仕様決めへの参加、施策の振り返り、後輩のレビュー、採用面接などは、職種を変えなくても担えます
  3. 職務経歴書では、移る先の職種が使う言葉で実績を書く。「機能を実装した」ではなく「継続率を上げる施策の仕様を決め、実装まで担った」のように、役割と結果をセットで書く形です
  4. 提示年収の幅と、今の年収の位置を比べてから応募先を絞る。移る先の職種の下限が今の年収を下回る求人は、どの経験を評価されれば幅の上側に届くかを面談で確かめます

職種を変える転職は、移ってすぐに同じ職種の経験者と並ぶことは難しくても、前の職種の経験を持ち込めることが強みになります。開発やデザインの現場を知っていることは、PdM や EM としてチームと仕事を進めるうえでの土台です。