SES(システムエンジニアリングサービス)で働くエンジニアの年収は、「SES の平均」という1つの数字では測りにくいものです。公的統計には SES という職種の区分が無く、客先で何を担っているかによって、比べるべき統計の区分が変わるためです。

この記事では、厚生労働省の最新の賃金構造基本統計調査を、SES のエンジニアが担う仕事に近い区分ごとに読みました。あわせて、公正取引委員会の実態調査からソフトウェア業の多重下請の構造を確かめ、Offers に掲載された正社員求人の提示年収と比べています。自分の年収が今どこにあり、何を変えれば上の水準に届くかを考える材料にしてください。

SESエンジニアの年収は担う仕事で3つの統計区分に分かれる

SES で働くエンジニアの年収を公的統計で確かめるときは、客先で担う仕事に近い職種区分を選んで比べます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を編集部が年収換算すると、設計や上流に近い「システムコンサルタント・設計者」が約889.0万円、開発を担う「ソフトウェア作成者」が約578.5万円、サーバー管理や通信ネットワークを担う「その他の情報処理・通信技術者」が約609.8万円でした(企業規模10人以上・男女計)。

区分

SES で近い仕事の例

平均年齢

年収換算

システムコンサルタント・設計者

要件定義・方式設計・プロジェクト管理

38.3歳

889.0万円

ソフトウェア作成者

詳細設計・実装・テスト

37.1歳

578.5万円

その他の情報処理・通信技術者

サーバー・ネットワークの構築と運用

42.2歳

609.8万円

出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」(企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。

年収換算は、毎月の給与(きまって支給する現金給与額)の12か月分に年間賞与などを足した概算で、原典の表に年収の欄はありません。賃金構造基本統計調査は事業所が労働者ごとに職種を記入する統計で、SES 企業に正社員として勤めるエンジニアも、担う仕事の中身でいずれかの職種に振り分けられ、職種の一覧に SES という区分は設けられていません。

統計の職種早見表が示す区分の分かれ方

厚生労働省「令和8年賃金構造基本統計調査 業種別主な職種早見表」は、情報サービスの職種のうち、エンジニアが担う技術職を主に3つの区分に振り分けています。早見表は令和8年調査の記入用に公表されたもので、区分の名称は本文で年収を引く令和7年調査の表の区分名と同じです。システムアナリスト、システムコンサルタント、情報処理プロジェクトマネージャーは「システムコンサルタント・設計者」の例に当たり、社内システムエンジニアとプログラマーは「ソフトウェア作成者」、サーバー管理者と情報セキュリティ技術者、通信ネットワーク技術者は「その他の情報処理・通信技術者」の例に挙がっています。

SES の現場では、同じ「SE(システムエンジニア)」という肩書きでも、客先の担当者と要件を詰める人もいれば、決まった設計書をもとに実装やテストを担う人もいるのが実情です。自分の年収をどの区分と比べるかは、肩書きよりも、直近の案件で一番長く時間を使った仕事で決めてください。

企業規模で見る3区分の年収換算

ソフトウェア作成者の年収換算は、1,000人以上の企業で約640.9万円、10〜99人の企業で約518.2万円で、差は122.7万円でした(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を編集部が換算)。システムコンサルタント・設計者は、1,000人以上の約1,010.4万円に対し、10〜99人では約585.1万円でした。

企業規模

システムコンサルタント・設計者

ソフトウェア作成者

その他の情報処理・通信技術者

企業規模計(10人以上)

889.0万円

578.5万円

609.8万円

1,000人以上

1,010.4万円

640.9万円

639.4万円

100〜999人

854.3万円

555.0万円

621.4万円

10〜99人

585.1万円

518.2万円

523.2万円

出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」(男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。

統計の企業規模は、勤め先の企業の常用労働者数で区切られています。SES 企業に勤める人は、客先の企業の規模ではなく、自分が雇用されている SES 企業の規模の行と比べるのが正しい読み方です。設計や上流に近い区分では、勤め先の規模による差がとりわけ大きく表れていました。

年齢で見る開発と設計の区分の差

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」を編集部が年収換算すると、ソフトウェア作成者は30〜34歳で約559.5万円、40〜44歳で約686.3万円でした。システムコンサルタント・設計者は30〜34歳で約866.1万円、40〜44歳で約1,189.0万円で、2つの区分の差は年齢が上がるにつれて広がっています。

年齢

システムコンサルタント・設計者

ソフトウェア作成者

25〜29歳

641.6万円

484.7万円

30〜34歳

866.1万円

559.5万円

35〜39歳

968.1万円

636.0万円

40〜44歳

1,189.0万円

686.3万円

出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」(企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。

同じ年齢層で比べても、実装やテストを中心に担う働き方と、要件定義や設計を担う働き方とでは、年収換算の水準に大きな開きがありました。SES で経験年数を重ねても年収が伸びにくいと感じるときは、年数よりも、担っている工程が開発の区分にとどまっていないかを先に確かめると、原因が見えやすくなります。SE 全般の統計の読み方は「システムエンジニアの年収」も参照してください。

SESの年収には単価と多重下請の構造が関わる

SES のエンジニアの給与は、客先が SES 企業に払う契約の単価から、間に入る会社の取り分と自社の経費・利益を差し引いた残りから払われます。公正取引委員会の実態調査は、ソフトウェア業の多重下請構造で、下請代金の値下げや支払の遅れが上流から下流へ連鎖する「下流しわ寄せ型」の問題を指摘しました。

単価と給与の関係

SES の契約では、客先が支払うのはエンジニアの稼働に対する月ごとの単価で、エンジニアの給与はその単価をもとに SES 企業が決めます。単価が上がっても、間に入る会社が多ければ、エンジニアの所属する会社に届く金額は小さくなります。給与に回る割合は会社ごとに異なり、公的統計では確かめられません。

年収を上げる余地を確かめるには、自社が元請からいくつ下の階層で契約しているか、自分の単価がいくらで評価にどう反映されるかを、上長や営業担当に尋ねるのが近道です。単価や評価の仕組みを開示している会社もあり、勤め先を比べるときの材料になります。

公正取引委員会の調査が示す取引の階層

公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(令和4年6月29日公表)の法人向けアンケートでは、自社の取引上の位置付けを「元請」と答えた事業者が40.4%、「中間下請」が38.2%、「最終下請」が21.3%でした(資本金3億円以下の事業者)。同じアンケートで、商流に「中抜き」事業者が存在すると「感じたことがある」と答えたのは、「中間下請」の29.2%、「最終下請」の33.5%でした。

取引上の位置付け

事業者の割合

元請

40.4%

中間下請

38.2%

最終下請

21.3%

出所: 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(令和4年6月29日公表・法人向けアンケート)。

報告書は、法人向けアンケートの自由回答として「エンジニアの準委任契約(SES)では最大5社が中間に入るケースがあり」という声も紹介しています。報告書の定義では、「中抜き」事業者は商流上は形式的に関与するものの、実際には業務を行わずに利益を上げている者を指します。階層が深い案件ほど、同じ単価でもエンジニアの所属する会社に届く金額は小さくなりやすい点に注意してください。

担う工程が年収の区分を分ける

統計で設計や上流に近い区分の年収が高かったように、SES のエンジニアにとって年収の伸びしろを左右するのは、担う工程と案件の階層の2つです。元請に近い案件では、客先と要件を詰める工程に関わる機会を得やすく、その経験が次の単価や転職先での提示年収の根拠になります。

Offersの正社員求人の年収帯は上限の中央値970万円

Offers に2026年9月までに公開された IT職の正社員求人(募集を終えた求人を含む累計)の提示年収は、下限の中央値が540万円、上限の中央値が970万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=3,249・2026年10月集計)。上限が800万円以上の求人は78.1%、1,000万円以上の求人は47.7%です。

指標

IT職の正社員求人全体(n=3,249)

タイトルに役割を掲げる求人(n=924)

役割を掲げない求人(n=2,325)

下限の中央値

540万円

600万円

500万円

上限の中央値

970万円

1,000万円

900万円

上限が800万円以上

78.1%

89.8%

73.5%

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人のうち年収の下限と上限を記載した求人・2026年10月集計。

「タイトルに役割を掲げる求人」は、PM(プロジェクトマネージャー)・PL(プロジェクトリーダー)・マネージャー・リーダー・リード・アーキテクト・責任者などの語をタイトルに持つ求人です。役割を掲げる求人の上限の中央値は、役割を掲げない求人より100万円高い水準でした(Offers(株式会社overflow)調べ・役割あり n=924・役割なし n=2,325・2026年10月集計)。人材紹介会社などが他社の求人を代わりに載せる2つのアカウントの掲載を除くと、IT職全体の上限の中央値は900万円です(Offers(株式会社overflow)調べ・n=2,419・2026年10月集計)。

自分の経験で届く求人の年収帯は、実際の求人の下限と上限を見比べて確かめてください。Offers Jobs では、ログインせずに正社員求人の一覧から職種と提示年収を確かめられます。必須条件などの求人の詳細は、会員登録をしてから確かめてください。

SESから年収を上げる3つの道筋

SES で働くエンジニアが年収を上げる道筋は、今の会社で上流の工程やリーダーの役割を担う、単価や評価の仕組みを開示する SES 企業へ移る、自社のプロダクトを持つ事業会社の正社員へ転職する、の3つです。どれを選ぶ場合も、担った工程と役割を言葉にしておくことが準備の中心になります。

今の会社で上流工程やリーダーを担う

今の会社にとどまって年収を上げるには、要件定義や方式設計に関わる案件、チームのリーダーを任される案件へのアサインを、評価の面談で具体的に希望するのが出発点です。統計では、設計や上流に近い区分の年収換算が開発の区分を大きく上回っていました。案件を選べる仕組みがあるかどうかは、会社ごとに確かめてください。

単価や評価の仕組みを開示するSES企業へ移る

同じ SES の働き方を続けるなら、元請や一次請けの案件が多いか、単価と給与の関係を開示しているか、評価の基準が明文化されているかを比べて勤め先を選びます。公正取引委員会の調査が下流ほど代金のしわ寄せを受けやすい構造を指摘したように、案件の階層は年収の上限に関わる条件だと捉えてください。

自社開発の事業会社の正社員へ転職する

自社のプロダクトを持つ事業会社へ転職すると、単価という仕組みから離れ、企業が求人ごとに示す年収の幅の中で提示額が決まります。Offers の正社員求人では、IT職全体の上限の中央値が970万円で、役割を掲げる求人では1,000万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=3,249・2026年10月集計)。SES を辞めて自社開発へ移るときの流れと準備は「SESから自社開発への転職準備」にまとめました。

年収800万円以上の求人に届く経験の示し方

SES のエンジニアが転職で年収800万円以上の求人に届くには、複数の案件を時系列に並べるだけでなく、案件ごとに担当した工程・規模・自分が決めたこと・率いた人数を職務経歴書で示すことが要になります。Offers の正社員求人では、タイトルに役割を掲げる求人の方が上限800万円以上の割合が高く、役割を担った経験を伝えられるかが届く求人の幅を広げます。

案件ごとの担当範囲を職務経歴書で示す

SES の職務経歴書は案件の数が多くなりがちなので、年収の判断に関わる案件を絞り、1つずつ深く書いてください。書く項目は、客先の業種とシステムの種類、チームの人数と自分の役割、担当した工程、技術の選定や設計で自分が判断したこととその理由、障害や遅延をどう立て直したかです。

客先の社名や機密に触れる内容は、業種と規模に置き換えて書きましょう。複数の案件で同じ工程を担った場合は、扱った規模や判断の範囲が案件を追うごとにどう広がったかを書くと、成長の筋道として読み取ってもらえます。リーダーや PM の役割を担った経験があるなら、求人の条件は「プロジェクトマネージャーの転職」で確かめられます。

担った範囲を言葉にできたら、その経験を求める求人の提示年収を見比べてください。Offers Jobs では、テックリードやアーキテクト、PM などの役割の正社員求人を一覧で探し、提示年収を確かめられます。

求人の年収の下限と上限を読み分ける

求人の年収の幅は、経験や担う範囲に応じて提示額が変わりうることを示すもので、上限が800万円以上の求人に応募すれば800万円以上で採用されるとは限りません。Offers の正社員求人でも、IT職全体の上限の中央値が970万円に対し、下限の中央値は540万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=3,249・2026年10月集計)。

提示年収のどこで採用されるかには、選考で示した経験と、企業がその求人で求める役割がどれだけ重なるかが影響します。年収例やモデル年収の見方は「モデル年収の読み方」を参照してください。応募の前に、自分の経験が求人の必須条件のどこまでを満たすかを書き出しておくと、提示額の交渉の根拠にもなります。

SESエンジニアの年収と構造の要点

SES のエンジニアの年収は、客先で担う仕事に近い統計の区分で比べると位置がつかめます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を編集部が年収換算すると、システムコンサルタント・設計者が約889.0万円、ソフトウェア作成者が約578.5万円、その他の情報処理・通信技術者が約609.8万円で、勤め先の企業規模と年齢でも差が開いていました。

公正取引委員会の実態調査では、資本金3億円以下のソフトウェア業の事業者のうち「中間下請」が38.2%、「最終下請」が21.3%で、「最終下請」の33.5%が「中抜き」事業者の存在を感じたことがあると答えました。年収を上げるには、担う工程を上流へ広げる、案件の階層が浅く評価の仕組みを開示する会社を選ぶ、自社開発の事業会社の正社員へ移る、のいずれかで、担った範囲を職務経歴書で具体的に示すことが共通の土台になります。