CTO(最高技術責任者)の年収は、どの数字を見るかで大きく印象が変わります。日本の公的統計には CTO という区分が無く、相場として出回る金額も、何を数えた値なのかが分かりにくいものもあるのが現状です。
同じ CTO でも、創業期のスタートアップで自らコードを書く人と、大きな会社で数百人規模の技術組織を率いる人とでは、年収の決まり方が違います。
厚生労働省の最新の賃金構造基本統計調査から、CTO に近い情報通信業の部長級の賃金を企業規模ごとに読みました。あわせて、Offers に掲載された CTO・CTO 候補の正社員求人の提示年収と、求人本文に出る語の件数を数えています。
今の自分の年収がどこにあり、転職で CTO に近いポジションへ進むには何を示せばよいかを考える材料にしてください。
CTOに近い統計区分の部長級は年収換算1,212.6万円
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、情報通信業の部長級(部門を分けずに集計した部長の値)の年収換算は約1,212.6万円です(企業規模10人以上・雇用期間の定め無し・男女計を編集部が年収換算)。
課長級の約959.2万円より253.4万円、役職の無い人(非役職)の約578.1万円より634.5万円高い水準でした。
役職 | 平均年齢 | 毎月の給与 | 年間賞与など | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|
部長級 | 51.1歳 | 72.93万円 | 337.47万円 | 1,212.6万円 |
課長級 | 48.4歳 | 59.20万円 | 248.82万円 | 959.2万円 |
非役職 | 35.7歳 | 39.15万円 | 108.33万円 | 578.1万円 |
出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職第1表(G 情報通信業)」(雇用期間の定め無し・企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。
年収換算は、毎月の給与(きまって支給する現金給与額)の12か月分に年間賞与などを足した概算です。
統計にCTOの区分は無く部長級を目安にする
賃金構造基本統計調査の役職の区分は部長級・課長級・係長級などで、CTO という区分はありません。役職第1表は役職と年齢階級で区分した表で、部長級の値は部門を分けずに集計した情報通信業の部長の値です。この記事では、組織を率いる役職という点で CTO に近い区分として、情報通信業の部長級を参考に置きました。
取締役を兼ねる CTO や、株式報酬を含めて報酬が決まる CTO の報酬は、この表の数字だけでは読み切れません。統計の部長級は、技術部門の部長に絞った値としてではなく、組織を率いる役職の年収の水準を知る物差しとして使うのが安全です。
企業規模で見る部長級の年収換算
同じ統計を企業規模別に編集部が年収換算すると、情報通信業の部長級は1,000人以上の企業で約1,641.5万円、100〜999人で約1,050.8万円、10〜99人で約868.0万円でした。
企業規模 | 毎月の給与 | 年間賞与など | 年収換算 |
|---|---|---|---|
1,000人以上 | 89.65万円 | 565.70万円 | 1,641.5万円 |
100〜999人 | 69.36万円 | 218.46万円 | 1,050.8万円 |
10〜99人 | 56.04万円 | 195.52万円 | 868.0万円 |
企業規模計(10人以上) | 72.93万円 | 337.47万円 | 1,212.6万円 |
出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職第1表(G 情報通信業)」(部長級・雇用期間の定め無し・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。
1,000人以上と10〜99人の差は773.5万円で、毎月の給与と年間賞与などの両方で差が開いています。CTO の年収も会社の規模で大きく変わると考えておくと、相場の数字を読み違えにくくなります。
CTOの正社員求人の年収は上限の中央値1,400万円
Offers に掲載された、題名に CTO を掲げる正社員求人22件の提示年収は、下限の中央値が900万円、上限の中央値が1,400万円でした。正社員求人全体の下限540万円・上限970万円と比べると、下限で360万円、上限で430万円高い水準です。
指標 | CTO の求人 | うち題名に「候補」を含む | VPoE の求人 | 正社員求人全体 |
|---|---|---|---|---|
年収を記載した求人 | 22件 | 17件 | 19件 | 3,294件 |
下限の中央値 | 900万円 | 800万円 | 800万円 | 540万円 |
上限の中央値 | 1,400万円 | 1,300万円 | 1,200万円 | 970万円 |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,294・2022年3月〜2026年10月公開。
CTO の求人を VPoE(Vice President of Engineering)の求人と比べると、下限で100万円、上限で200万円高い水準でした。
上限1,500万円以上の求人は22件中11件
CTO の求人22件のうち、上限が1,500万円以上の求人は11件、2,000万円以上の求人は6件でした。下限が1,000万円以上の求人も9件あり、上限の最大は3,000万円です。
題名に「候補」を含まない CTO の求人5件は、下限の中央値が1,000万円、上限の中央値が2,000万円でした。題名に「候補」を含む求人17件は、下限800万円・上限1,300万円で、VPoE の求人に近い水準です。
上限の中央値が1,400万円でも、提示額が下限と上限のどちらに寄るかは選考での評価で決まります。今の年収から確実に上がるかを判断するには、上限だけでなく下限と任される範囲を見比べることが欠かせません。
自分の経験で届く求人の年収帯を確かめるには、CTO の求人を並べて、下限と上限、任される範囲を見比べるのが早道です。Offers Jobs の CTO・顧問の求人一覧で、この職種で掲載中の求人を見られます。応募の前に、求人詳細で雇用形態と任される範囲を確かめてください。
CTOの求人本文に多く出る語は経営・立ち上げ・技術選定
Offers の CTO の求人22件の本文(業務の説明と応募の要件を合わせた文)では、「経営」の語が出る求人が14件、「立ち上げ・0→1」が13件、「技術選定・アーキテクチャ」が13件で、上位に並びました。上限1,500万円以上の11件と未満の11件に分けると、育成・技術戦略・組織づくりの語は上限の高い求人に多く出ています。
求人本文に出る語 | 22件中 | 上限1,500万円以上(11件) | 上限1,500万円未満(11件) |
|---|---|---|---|
経営(経営陣・事業計画・予算などを含む) | 14件 | 7件 | 7件 |
立ち上げ・0→1 | 13件 | 8件 | 5件 |
技術選定・アーキテクチャ | 13件 | 8件 | 5件 |
AI・LLM | 12件 | 8件 | 4件 |
育成 | 11件 | 8件 | 3件 |
技術戦略 | 10件 | 7件 | 3件 |
組織づくり | 10件 | 7件 | 3件 |
採用 | 10件 | 6件 | 4件 |
マネジメント経験 | 7件 | 3件 | 4件 |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した CTO の正社員求人 n=22・2022年12月〜2026年9月公開。
「経営」は上限の高低で件数が変わらず、CTO の求人では年収帯を問わず挙がる語でした。育成・技術戦略・組織づくりは上限1,500万円以上で7〜8件、未満で3件と差があります。
必須要件で目立つのはマネジメント経験
必須要件の欄に限ると、マネジメント経験を挙げる求人が22件中6件で、数えた語の中で最も多く必須に置かれていました。
CTO の求人は、技術の深さだけでなく、チームや組織を率いた経験を応募の条件に置く書き方が目立ちます。CTO 候補の求人に応募するなら、チームを率いた経験を職務経歴書の前のほうに置くのが近道です。
CTOの仕事は技術の方針を経営の判断につなぐこと
CTO(Chief Technology Officer・最高技術責任者)は、会社の技術の方針を決め、その方針を事業の計画と結び付けて経営の判断に届ける役職です。技術部門のトップとして、技術選定、開発組織の設計、採用と育成、技術のリスク管理までを受け持ちます。
部長級の年収換算が課長級を上回るのと同じく、CTO の年収も、任される範囲がチームから組織全体、さらに経営の判断へ広がるほど高くなる、というのが編集部の見立てです。
会社の成長段階で変わるCTOの役割
CTO に求められる役割は、会社の成長段階によって変わります。
段階 | CTO の主な役割 |
|---|---|
創業期(シード) | 自らコードを書き、最初のプロダクトと技術の土台をつくる。最初のエンジニアを集める |
拡大期(アーリー〜ミドル) | 事業の伸びに耐える設計へ作り直し、チームを増やして採用と育成の仕組みをつくる |
成熟期(レイター以降) | 技術部門の組織設計と技術投資の配分を決め、経営会議で技術の判断を説明する |
Offers の CTO の求人でも、「立ち上げ・0→1」の語が本文に出る求人は22件中13件ありました。
CTOとCEO・CIO・VPoEの違い
CTO は技術の方針に責任を持つ役職で、会社全体の経営を担う CEO(最高経営責任者)、社内の情報システムを担う CIO(最高情報責任者)、開発組織の運営を担う VPoE とは、責任を持つ範囲が異なる役職です。
役職 | 責任を持つ範囲 | CTO との違い |
|---|---|---|
CEO(最高経営責任者) | 会社全体の経営と最終的な意思決定 | CTO は技術の方針を受け持ち、経営の判断に技術の材料を届ける |
CIO(最高情報責任者) | 社内の情報システム・IT 基盤 | CTO は主に顧客に届けるプロダクトの技術を受け持つ |
VPoE | 開発組織の運営(採用・育成・評価・開発の進め方) | CTO は技術の方向と技術投資を決め、VPoE はそれを実行する組織を回す |
会社によっては CTO が VPoE の役割を兼ねることも、CTO を置かずに VPoE が技術組織を率いることもあります。求人を見るときは、役職名よりも業務内容の欄で、技術の方針と組織の運営のどちらを任されるのかを確かめると、年収との釣り合いを判断しやすいはずです。
VPoE とエンジニアリングマネージャーの年収は「VPoEの年収」と「エンジニアリングマネージャーの年収」で、CIO の役割は「CIOとは」で扱っています。
CTOの年収に近づく転職の進め方
テックリードやエンジニアリングマネージャー(EM)として働く人が転職で CTO に近い年収を狙うには、技術の判断を事業の言葉で説明する、チームや組織を率いた経験を数字で書く、立ち上げの経験を前に出す、の3つが現実的です。
統計では部長級ほど年収換算が高く、Offers の CTO の求人でも、必須要件の欄では、数えた語の中でマネジメント経験が最も多く挙がっていました。
技術の判断を事業の言葉で説明する
職務経歴書で技術の経験を書くときは、採用した技術や作ったシステムを並べるだけでなく、その判断が事業の何を変えたかまで書きます。たとえば、アーキテクチャを見直して新機能の開発期間を短くした、インフラの費用を下げて事業の計画に余力を生んだ、といった経験です。
CTO の求人22件中14件が本文で経営に触れていました。技術の判断を経営の言葉に置き換えて説明できることは、CTO の仕事の入り口にあたります。
チームや組織を率いた経験を数字で書く
率いたチームの人数、採用に関わった人数、育成したメンバーがどの役割に就いたかを、職務経歴書に数字で書きます。上限1,500万円以上の CTO の求人では、育成と組織づくりの語がそれぞれ11件中7〜8件に並んでいました。
人の評価や採用まで担った経験があれば、CTO 候補だけでなく VPoE の求人も視野に入れてよいでしょう。
立ち上げの経験を前に出す
「立ち上げ・0→1」は、CTO の求人22件中13件の本文に出る語です。新しいプロダクトや新規事業の立ち上げに技術の責任者として関わり、技術選定から最初のリリース、最初のチームづくりまでを回した経験があれば、職務経歴書の前のほうに置くのが得策です。
CTO への道筋を段階ごとに確かめたいときは「CTOになるには」も参考になります。
掲載中の求人の年収帯と任される範囲は、Offers Jobs の CTO・顧問の求人一覧で見比べられます。今の年収との差を確かめてから、どの経験を職務経歴書の前に出すかを決めるのが、応募先を絞り込む確実な手順です。

