CIO(Chief Information Officer・最高情報責任者)は、会社の経営戦略に合わせてIT戦略を決め、IT投資や社内システム、情報セキュリティを全社で束ねる経営層の役職です。肩書きとしてのCIOを置く日本企業はまだ少数で、多くの会社では「ITを担当する役員」や「情報システム部門の部長」がその役割を兼ねています。役割の中身、似た役職との違い、報酬の水準、そこへ至るキャリアの道筋を、公的な調査の数字とあわせて整理します。

CIO(最高情報責任者)の定義と役割

CIO(最高情報責任者)は、CEO(最高経営責任者)が描く経営戦略を実現するために、情報システムとデータとIT投資をどう使うかを決め、その実行に責任を持つ役員です。情報システム部門の長と同じ仕事に見えますが、CIOは「どのシステムをどう動かすか」より先に「経営のどの課題にIT予算を振り向けるか」を決める立場にあり、取締役会や経営会議でIT投資の判断を説明する役を負います。

CIOが担う5つの仕事

CIOの仕事は、IT戦略の策定から投資の配分、システムの統制、セキュリティ、組織づくりまでの5つに分けられます。

仕事

中身

IT戦略の策定

中期経営計画に合わせて、業務システムやデータ基盤をどう整えるかを決める

IT投資の配分と評価

予算を既存システムの保守と新しい取り組みにどう分けるかを決め、投資の前後で効果を測る

システム全体の統制

部門ごとにばらばらに導入されたシステムやSaaSを全社の方針でまとめる

情報セキュリティとリスク管理

情報漏えい・障害・法令対応の方針を決め、事故が起きたときの責任を持つ

IT組織と人材

社内のIT部門の体制を決め、外部のベンダーとの分担を設計する

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2026」では、専任のCIOがいる企業のうち74.6%が「中期経営計画にIT戦略が織り込まれており、ステークホルダーに開示済み」と答えており、CIOがいない企業の16.7%を大きく上回りました(2025年度調査・図表1-1-27)。比べている専任のCIOがいる企業は回答957社の7.0%(約67社)と小さい群ですが、CIOを置く会社ほどIT戦略を経営計画に組み込んで社外に示している傾向が読み取れます。

日本企業でCIOを置く会社の割合

東証上場企業などのIT部門長が答えたJUASの調査で、役職として定義されたCIO等(CIOに相当する役職を含む)がいる企業は2割に届きません。JUASの「企業IT動向調査報告書2026」(2025年度調査・東証上場企業などのIT部門長が回答・n=957)で、役職として定義されたCIO等がいる企業は専任7.0%・兼任10.2%の合計17.2%でした。

最も多いのは「IT部門・業務を担当する役員がそれにあたる」の38.5%で、「IT部門・業務を担当する部門長がそれにあたる」が22.5%、「CIO等はいない、あるいはCIO等に対する実質的な認識はない」が21.8%です。

年度

CIOがいる(専任)

CIOがいる(兼任)

IT担当役員が担う

IT部門長が担う

いない

2025年度(n=957)

7.0%

10.2%

38.5%

22.5%

21.8%

2024年度(n=977)

7.1%

11.1%

40.1%

16.3%

25.5%

2023年度(n=976)

5.7%

10.2%

42.1%

17.5%

24.4%

2022年度(n=1,025)

5.3%

10.0%

43.3%

15.8%

25.6%

2021年度(n=1,130)

4.8%

9.7%

42.9%

15.0%

27.6%

出所: 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2026」図表1-1-13(2026年4月公表)。

専任と兼任を合わせたCIOのいる企業の割合は、2021年度の14.5%から2025年度の17.2%へ緩やかに増えてきましたが、直近は2024年度の18.2%から2025年度の17.2%へ下がりました。売上高で分けると差は大きく、2025年度は売上高1兆円以上の企業で56.3%(専任25.0%・兼任31.3%・n=48)、1,000億〜1兆円未満で24.8%、100億〜1,000億円未満で11.9%、100億円未満で11.6%でした(同報告書 図表1-1-14・専任と兼任の合計は編集部の加算)。

肩書きのCIOは大企業に集中しており、中堅以下の企業ではIT担当の役員や部門長が同じ役割を担うのが一般的です。

CIOとCTO・CDO・CISO・情報システム部長の違い

CIOとCTOの違いは、ITを向ける先にあります。CIOは社内の業務と経営のためのIT(基幹システム・業務システム・データ・セキュリティ)を統括し、CTO(最高技術責任者)は顧客に届ける製品やサービスの技術を統括します。自社サービスを開発するIT企業ではCTOが中心になり、社内の業務システムの比重が大きい会社ではCIOが中心になりやすい、という分かれ方です。なお、製造業などではCTOを研究開発や製造技術を含む技術全般の責任者と定義する会社もあり、下の表はITを軸にした整理です。

役職

主に統括する範囲

向いている先

CIO(最高情報責任者)

IT戦略・IT投資・社内システム・データ・セキュリティ

社内の業務と経営

CTO(最高技術責任者)

製品やサービスの技術・開発組織・技術選定

顧客に届けるプロダクト

CDO(最高デジタル責任者)

デジタル技術を使った新規事業や事業の作り替え(DX)

事業のデジタル化

CISO(最高情報セキュリティ責任者)

情報セキュリティの方針・体制・事故対応

会社全体のリスク

情報システム部長

社内システムの企画・開発・運用と部門の運営

部門の業務の遂行

CDO(最高デジタル責任者)はCIOと重なる部分が大きく、JUASの同じ調査では、CDOを置いている企業は全体の16.1%(2025年度・n=957)で、その内訳は全体に対してCIOと兼務させる形が9.8%、CIOと並べて単独で置く形が5.2%、CIOを廃止してCDOを単独で置いた形が1.1%でした(図表1-1-16・合計は編集部の加算)。情報システム部長との違いは、経営会議でIT投資の判断を下す権限を持つかどうかで、部門長がCIOを兼ねる会社ではこの2つが同じ人になります。

CTOの役割は「CTOの役割と求められるスキル」、開発組織の責任者であるVPoEは「VPoEの役割と年収」で詳しく扱っています。

CIOの年収は役員報酬の水準で見る

CIOだけの年収を集計した公的な統計はありません。CIOの役割は多くの企業でIT担当の役員が担っているため、役員の報酬の統計で水準を見るのが現実的です。人事院「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査」(従業員500人以上の企業・令和4年の賞与を含む年間報酬)では、専任の執行役員の平均年間報酬が2,368.9万円、専任の取締役が2,086.6万円、部長などを兼ねる役員が1,746.2万円、常務が2,480万円でした。

企業規模

常務

専任取締役

部長等兼任の役員

専任執行役員

3,000人以上

3,354.8万円

2,990.8万円

1,968.6万円

3,469万円

1,000人以上3,000人未満

2,464.2万円

2,100.3万円

1,743.3万円

2,156.9万円

500人以上1,000人未満

2,154.4万円

1,836.6万円

1,707.7万円

1,701.6万円

全規模

2,480万円

2,086.6万円

1,746.2万円

2,368.9万円

出所: 人事院「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査 第3表」(2024年2月公表・令和4年の年間報酬)。

この表はCIO以外の役員も含んだ平均で、CIOの報酬そのものではありません。それでも読み取れることは3つあります。1つ目に、この調査は常勤従業員500人以上の企業に限られ、その全規模の平均で見ると、CIOを役員として置く会社では年収2,000万円前後が一つの目安になります。

2つ目に、同じ役名でも従業員3,000人以上の企業では金額が大きく上がり、常務は3,354.8万円、専任取締役は2,990.8万円、専任執行役員は3,469万円と、3つの役名は2,990万〜3,469万円の帯に並びました。3つ目に、「IT部門・業務を担当する部門長がそれにあたる」会社(JUASの調査で22.5%)では、CIOの役割を担う人が役員ではないため役員報酬の表の対象外になり、報酬は部長級の水準にとどまると考えられます(部長級の報酬はこの表に含まれないため編集部の推測です)。

外資系企業やスタートアップのCIOは、基本給に株式報酬が加わるため、この表の範囲に収まらないことがあります。提示額を比べるときは、年間報酬のうち固定給・賞与・株式の内訳を分けて確かめてください。自分の経験で狙える役職と年収の帯を知りたい場合は、Offersで経験者向けの正社員求人を条件で絞り、提示されている年収帯を確かめると判断の材料になります。

CIOに求められるスキルと経験

CIOに求められるのは、ITの知識そのものより、IT投資を経営の言葉で説明し、全社の合意を取りつける力です。社内システムの全体像を理解していることは前提で、そのうえで問われる経験は次の4つです。

経験

中身

IT投資の判断

数億円規模のシステム刷新や基盤移行で、費用と効果を試算し、経営会議で承認を得た経験

全社横断の変革

部門ごとに異なる業務とシステムを1つの方針にまとめ、現場の抵抗を越えて進めた経験

セキュリティとガバナンス

監査・内部統制・個人情報保護への対応を、方針づくりから運用まで担った経験

組織とベンダーの設計

社内のIT人材と外部のベンダーの分担を決め、契約と体制を組み立てた経験

資格は経験の代わりにはならないものの、IT戦略の知識を体系立てて示す手段にはなります。国家試験ではIPA(情報処理推進機構)のITストラテジスト試験がIT戦略の策定を正面から扱っています。プロジェクトマネジメントのPMP(Project Management Professional)や、ITサービスマネジメントのITIL(Information Technology Infrastructure Library)も、CIOが見る範囲と重なる資格です。

エンジニア・PdMからCIOへのキャリアパス

CIOに至る道は、社内のIT部門で管理職を重ねる道と、別の立場で全社を見る経験を積んでから移る道の2つに大きく分かれます。どちらの道でも、分かれ目は途中で「経営会議にIT投資の案を出す立場」に就けるかどうかです。

出発点

CIOまでに積む経験

次に狙う役職の例

情報システム部門のエンジニア

基幹システムの刷新をリードし、部門長として予算と体制を持つ

情報システム部長 → IT担当役員

事業会社のWebエンジニア・EM

開発組織の運営に加え、社内システムやデータ基盤まで担当範囲を広げる

VPoE・CTO → CIO(兼任を含む)

PdM

事業部をまたぐプロダクトの投資判断と、業務の作り替えを担う

事業部のDX責任者 → CDO・CIO

ITコンサルタント・SIer

ユーザー企業のIT戦略や大規模刷新を上流から支援する

事業会社のIT企画部長 → CIO

JUASの調査では、売上高1兆円以上の企業の4社に1社(25.0%)が専任のCIOを置いていました(2025年度・n=48)。専任のCIOのポジションは大企業に多く、売上高1,000億円未満の企業ではIT担当の役員や部門長がCIOの役割を担う形が中心です(同報告書 図表1-1-14)。自社サービスの開発組織から入る場合は、CTOやVPoEとして社内システムまで範囲を広げる道が現実的で、報酬の目安は「CTOの年収相場」も参考になります。

役員クラスの報酬は個別に決まる幅が大きいため、転職では提示額を比べる材料を自分で持っておくことが大切です。条件の詰め方は「転職時の給与交渉のタイミングとプロセス」にまとめています。