SOHO物件と事務所の違い
賃貸契約において、『SOHO物件』と一般的な『事務所』では、知っておかないと大変なポイントがいくつかあります。その一つが『営業可能な業種』です。
SOHOでは、ネットとパソコンでできるような『ライター・プログラマー・デザイナー・Web制作』などは営業可能ですが、物販店や飲食店といった業種は営業できない場合が多く見られます。
SOHOは『住居契約』であるため、不特定多数の出入りがある業種や、騒音などで周辺住民の平穏な生活が乱される業務は、基本的に営業不可と定義されています。
住居契約か否か
SOHOの賃貸物件は『住居契約』であるため、『表札や看板の設置は不可能』です。ただし、個人名の併記によって可能な場合もあるため、契約前に貸主に聞いてみまましょう。
また、非課税の住居契約であるため、当然『法人登記』もできません。しかし、住所契約であるということは、事務所契約では不可能な寝泊まりや、個人の24時間の出入りなどが可能になります。
SOHO物件の特徴
『住所契約』をするSOHO賃貸物件のデメリットを補填した『SOHOマンション』という物件なら、住居兼事務所として借りることが可能です。
SOHOマンションは、事務所より保証金を安く抑えられたり、法人登記できたりする場合もあり、メリットは大きいといえます。
住居用の建物を事務所として借りることで発生する、共益費の有無などは、個々の貸主に寄って条件がかなり異なるため、事前の確認を怠らないようにしましょう。
初期費用が安い
『SOHO賃貸物件』や『SOHOマンション』のメリットは、なんといっても初期費用が安いことです。
東京で事務所を賃貸する場合、入居前に『家賃6~10カ月の保証金』を求められることが一般的です。
SOHOを『住居契約』で始める場合は、一般的な住居の引っ越しと変わらないため、『敷金礼金ゼロ』や、『敷金礼金は家賃の2~3カ月分』で済むことが多くあります。
そのため、SOHOなら事務所として契約するより、初期費用の負担を格段に軽くできます。
賃料に消費税がかからない
あまり知られていませんが、住居契約と事務所契約では『課税方式』が異なります。SOHOは『住居用賃貸』のため、家賃に税金がかかりませんが、『事務所用賃貸』は課税対象です。
仮に、賃料が月額10万円の物件で計算してみます。SOHO(住居契約)なら、支払額は額面通り『10万円』です。事務所契約では税率8%で『10万8000円』、2019年10月からは消費税が10%に上がるため『11万円』になります。
事務所契約なら10カ月で110万円の賃料ですが、SOHOなら11カ月間借りられる計算になるため、この差額は非常に大きいといえるでしょう。
登記はできない
SOHOで仕事を始めてから、のちのち法人化を検討する人も多いと思います。しかしSOHOは『住居契約』であり、課税対象ではないため、法人登記はできません。
仮に、貸主に「法人登記を認めてほしい」とお願いしても、認めてもらえる可能性はほぼゼロに近いでしょう。その理由は、もし法人登記を認めた場合、貸主も税務署に消費税を納税しなくてはならないためです。
SOHOで資金を貯めてから法人登記可能な物件へ転居するか、すでに法人登記されている事務所と合併するなど、法人化が必要になったときの対策も講じておきましょう。
賃貸SOHO物件の選び方
SOHO物件を賃貸には、当然費用や時間がかかります。そのコストや手間をかけてまで、物件を賃貸する理由はなんでしょうか?
一つ目は『信用』です。事務所を構えている=家賃を払えているということは、毎月の収入がある証拠であり、一定の審査を通過している信頼感をクライアントに与えられます。
また、賃貸物件なら来客に対応がしやすく、自分にとってもクライアントにとっても、自宅よりは事務所の方が『仕事の話をしやすい』というメリットがあります。
実際にSOHO物件を賃貸するときの、選び方をみていきましょう。
予算やエリアを決める
毎月支払う家賃の他に、最初に『保証金・共益費・仲介手数料・保証会社への保証料』がかかります。
毎月の支払いには『火災保険料・ネットや電話回線の使用料』もあり、設備費として机やパソコンなどの物品購入費が必要な場合があります。それぞれの費用を計算し、無理のない予算で組むことが大切です。
エリアや立地は、業態によって違いはありますが、顧客の立場に立って『駅チカか・ビルやテナントの1階か・大通りから目につく場所か』などを決めましょう。
レイアウトや設備をチェックする
レイアウトや広さによって、業務の進行に影響のある業種にとって、レイアウトは非常に重要なポイントです。入居前・物品購入前に、図面やCADなどでレイアウトシミュレーションをしておきましょう。
働く人数や、机やOA機器によって、内覧より部屋が狭く感じることは多々ありますが、一般的なスペース計算の方法は『6平米×働く人数』です。ミーティングスペースが必要な場合は、さらに面積を追加します。
事務所の設備内容で必須なのは、『電話やネット環境・空調・トイレ・水回り』です。業態によって異なる、駐車場や電気容量などの『必須ポイント』を事前に整理しておくと、物件探しがスムーズになります。
実際に部屋を確認する
賃貸の候補地を決めたら、あらかじめネットなどで情報収集をしておきましょう。
ただし、ネットの情報を鵜呑みにするのは危険なので、希望する立地の不動産屋に足を運んで「SOHOの賃貸物件を探しています」と尋ねるのが、もっとも効果的で近道の方法です。
不動産屋の担当者に、業種や人数と家賃の希望を伝え、物件の内覧を重ねれば、入居してから『想像と違っていた!』と慌てずに済みます。
まとめ
SOHO物件と一般的な事務所では、賃貸の契約方法がまったく異なります。費用やメリットデメリットを知って、実際に何度も内覧に足を運ぶことが大切です。
SOHO物件はあなたの新しい『城』です。物件探しに手間を惜しまず、働きたくなる物件、業績が向上しそうな物件を見つけましょう。