副業をしたい会社員は増加中
本業を持ちながら、別の仕事に従事して収入を得る『副業』が注目されています。副業を容易に認める企業は多くはないものの、副業の解禁をする大手企業も増えているのも事実です。副業を求める会社員が増える背景とメリットを考えてみましょう。
副業に興味がある人は80%以上
転職サイト・ビズリーチが会員にアンケートを行ったところ「副業・兼業に興味あるか」の質問に「ある」と答えた人は、全体の8割以上でした。実際に副業をしている人は限られるものの、多くの人が本業以外での収入獲得を望んでいることが分かります。副業する理由はさまざまですが、『現状への不満』や『将来的な不安』に加え『将来的なキャリアップ』などが挙げられます。
副業はキャリアアップにもつながる
これまでの日本では「キャリアを積む」というと、特定の業務で経験を積み、技術を磨き、プロフェッショナルになるという意味合いがありました。終身雇用・年功序列が実質的に破綻しつつある現代では、仕事の掛け持ちは本業に支障を与えるという考えが少しずつ見直され『自分のキャリアは自分で決める』という新たなキャリア形成が求められています。副業で得られる人脈、経験、知識は、自分自身を成長させるとともに、本業にとってもプラスの影響を与えることもあるでしょう。
副業採用は個人にも企業にもメリットがある
企業の中には、自社の業務を『副業』とする人材を積極的に採用するところも増えています。『副業採用(複業採用)』が企業と個人にもたらすメリットを考えてみましょう。
ワーカーは選択肢や経験が豊富になる
ワーカーは自分の意志で、行きたい業種や仕事を選ぶことができます。転職をしなくても、他社を経験できるチャンスが増え、経験が豊富になるというメリットがあるでしょう。もたらされるのは、知識や技術面でのスキルアップだけではありません。多くの人との新たな出会いにより『人間性』も磨かれていくでしょう。複数の仕事をこなすことで、生活にメリハリが生まれ、時間管理能力や生産能力が向上するといったケースもあります。
企業は優秀な人材確保や既存社員への刺激に
優秀な他社の社員を採用することは、既存社員にとっての大きな刺激になるでしょう。モチベーションアップに繋がると同時に、今までになかった新たなアイディアや多様性が生み出される可能性もあります。こうしたイノベーションの創出は、企業にとって新たなビジネスチャンスに繋がるでしょう。企業ブランディングにおいても「自由な働き方ができる企業」といったプラスのイメージが生まれ、優秀な人材の確保、人材不足の解消など、企業にとって多くのメリットをもたらします。
副業採用を行っている会社は?
全国に先駆けて副業採用を行っている会社を2つピックアップして紹介します。
イノベーション感度が高いサイボウズ
サイボウズは、東京に本社を置くソフトウェアの開発企業です。『100人いれば100人の働き方』という考え方を基に、2017年に『複業採用』をスタートさせています。
サイボウズでは、本業の有無にかかわらず、複数の仕事を持つという意味で、敢えて『複業』というワードを使っています。会社にフルコミットできるか否かにこだわらず、チームに貢献したいという気持ちを重要視している点にも注目すべきでしょう。イノベーションや多様な働き方への感度が高い会社で、複業の他に、『障がい者採用』や、29歳以下のさまざまなバックグラウンドを持った人を採用する『U-29採用』なども取り入れています。
東証一部上場を果たしたメルカリ
スマホアプリの運営会社として、東証一部上場を果たしたメルカリも社員の副業の自由を認めている企業です。
メルカリは、メンバーの集結力とプロフェショナル性を大事にするとともに、「Go Bold(大胆にやろう)」を行動指針の1つに掲げています。世界的なマーケットプレイスを作ることを目標にしているだけに、社内にとどまらず、広い視野で学びを得ることを重要視していることが分かります。また、メルカリでは、パパ社員の育児休暇取得率が90%以上を超えています。副業のみならず、あらゆる場面で社員の自主性を考慮しているといえるでしょう。
副業に向いている職種は?
「副業をはじめたい、他社で働いてみたい」と思っていても、本業の就業時間や形態によっては副業が難しいこともあります。空いた時間と自分のスキルを使い、無理なく仕事をすることが副業を成功させる鍵です。一般的に、どんな職種が副業に向いているのでしょうか。
エンジニア等の特化スキルがあると強い
副業に向いているのは、エンジニアなどの特化型のスキルを持っている人です。もちろん、特別なスキルがなくても、副業をはじめることはできますが、収入に差が生じることは否めません。エンジニア、プログラマー、会計、翻訳・通訳など、特定分野の知識や技術を持っている人は、企業に継続的に仕事を依頼されることも多いでしょう。また、これらの仕事は、ほぼ場所と時間を選ばずに行うことができるため、本業と両立しやすいともいえます。
副業にとどまらず、複業に取り組む人も
近年は働き方の多様化とともに『複業』という言葉も多く用いられるようになりました。副業と複業は共通点もありますが、似て非なるものです。2つの違いを知りながら、自分がどちらの働き方をしたいのかを考えてみましょう。
副業と複業の違い
『副業』は、主な収入源となる本業の傍ら、別の仕事を持つことを指します。そのため、副業はサブワークという意味合いが強く、本業で足りない収入を補う目的もあります。一方『複業』は、本業の区別なく複数の仕事を持つことを指します。全てが本業ともいうことができ、仕事の優先度や重要性は状況に応じて変わります。
複業は必ずしもお金のためではなく、自分の楽しみや能力を生かすこと、またはキャリアを築くこと目的とする場合もあります。こうした働き方は『パラレルキャリア』とよばれ、多様な働き方の選択肢の1つになりつつあります。複数の仕事から得られる経験や知識が高く評価されることも多く、海外では多くのパラレルワーカーが活躍しています。
複業をする人が増えているのはなぜか
日本において、複業をする人が増加しているのはなぜでしょうか。理由は人それぞれですが、ワーカーを取り巻く日本の社会背景とも密接な関係があります。
ライフスタイルの多様化
高度経済成長期に構築された経済社会システムが崩壊し、雇用が不安定になる中で、新たな価値観・働き方・ニーズが次々に生まれました。高齢化や人口減少、加速する情報化やグローバル化も、私達のライフスタイルに大きく影響を与えています。ライフスタイルの多様化により、単一の企業で生涯働き続ける、育児は女性が行わなければならないといった考え方は、時代にそぐわなくなってきているといえるでしょう。こうしたライフスタイルの変化が、複業を後押ししています。
金銭面や将来への不安
日本は今現在、超高齢化社会と少子化に直面しています。医療が発達し寿命が延びたぶん、長い老後に向けた十分な貯蓄が必要なのです。終身雇用や年功序列の崩れや、年金制度の信頼への揺らぎ、将来への金銭的不安が蔓延していることが、副業や複業の増加に繋がっているともいえるでしょう。また、パラレルワークを遂行するには、仕事の分量と時間の管理が必須です。お金が欲しいときに仕事を増やすなど、収入の増減が自分でコントロールできる点も注目されています。
まとめ
企業における副業や複業への取り組みは、日本ではまだはじまったばかりです。メリットも多いですが、デメリットが全くないというわけではありません。まずは、自分がどんな人生・生活を送りたいのかを明確にし、将来的なプランを立ててみることが大切です。