グラフィックデザイナーの仕事とは?
まずは、グラフィックデザイナーの仕事内容から確認していきましょう。
紙媒体のデザインがメイン
雑誌や新聞広告、企業の商品パッケージなどのデザインが、グラフィックデザイナーの中心となる仕事領域です。さまざまな紙媒体において、テキストや画像、イラストなどを配置して、見る者に商品やサービスのコンセプトやメッセージを伝えるのが仕事です。
紙媒体の場合、印刷あるいは印刷会社に入稿する状態までが、グラフィックデザイナーの担当となります。
グラフィックデザイナーが活躍できる場
グラフィックデザイナーが活躍している業界は、主に広告制作会社や広告代理店です。自社の商品やサービスを宣伝したい企業から依頼を受け、広告戦略を立てたり、実際に所属デザイナーが広告を制作したりします。通常、広告代理店はデザイナーやクリエイターのチームを持っており、広告のコンセプト決めから制作、リリースまで一貫して行います。
また、デザイナーによっては、広告会社から独立してデザイン事務所を開設している場合も少なくありません。その場合は、デザイナー自身が広告代理店から依頼を受けたり、クライアントから直接デザインの依頼を受けたりすることになります。
メディアに取り上げられるような有名なグラフィックデザイナーは、自分の事務所を持っていることが多く、フリーランスとして活躍している人も珍しくありません。
グラフィックデザイナーの仕事の流れ
それでは、グラフィックデザイナーの具体的な仕事の流れを説明します。全てのデザイナーが同じプロセスで仕事をしているわけではありませんが、ほとんどのデザイナーは顧客のニーズや要望をヒアリングするところから始めます。
顧客へのヒアリング
まずは、案件の依頼主にデザインの対象となる商品やサービスの概要と特徴、アピールしたいポイントなどをヒアリングします。クライアントの要望や狙いを聞き出し、デザインのコンセプトやターゲット層、ビジュアルイメージなどを決めていきます。
予算や納期などもしっかりとクライアントと合意しておかなければいけません。クライアントと認識に齟齬があると、トラブルになる可能性があります。ヒアリングの時点で決まったことは、なるべく口頭だけではなく文書化して確認を取っておくことが大事です。
ラフの作成
ヒアリングの内容を基にデザイン案を出していきます。まずはデザインの方向性や大まかなイメージをつかめるように、ラフを作成するグラフィックデザイナーが多いようです。
頭に浮かんだアイデアを描き出し、そこからコンセプトに合うものを選ぶため、細部まで細かく描く必要はありません。ラフの時点でディレクターに確認したり、クライアントに見せて感想や要望を聞いたりする場合もあります。
デザインの作成
デザインの方向性が決まったら、本格的にデザインの制作に入ります。ロゴの作成や商品・サービスを印象づけるためのキャッチコピーの制作、メインビジュアルとなる写真素材などを準備して、レイアウトしていきます。
キャッチコピーや写真素材は、ライターやフォトグラファーなどに依頼するケースが大半です。クライアントから、デザインに組み入れて欲しい素材を提供してもらうケースも珍しくありません。デザイン作業にはIllustratorやPhotoshop、あるいはInDesignなどを使うので、グラフィックデザイナーはこれらのツールを使いこなせる必要があります。
修正と納品
デザインが上がったら、ディレクターやクライアントにプレゼンテーションを行い、フィードバックをもらいます。修正点や要望などがあれば、それを反映して再度チェックを受けなければいけません。何度か修正が必要になる場合もあります。
クライアントからOKが出れば納品となり、グラフィックデザイナーの仕事は終了です。クライアントが入稿する場合もあれば、デザイナーサイドで懇意にしている印刷会社にデータを入稿して印刷してもらう場合もあります。
グラフィックデザイナーに求められる知識・スキル
次に、グラフィックデザイナーに求められる知識やスキルを確認していきましょう。デザインする媒体によって必要とされるスキルが変わってくる場合もありますが、グラフィックデザイナーとして活動していくためには、少なくとも以下のスキルが必要です。
基礎デザインスキル
グラフィックデザイナーに限らず、デザインの仕事をするためには、基礎となるレイアウトや色彩などに関する知識が求められます。
素材をどこに配置するべきか、色彩が見る者にどういった影響を与えるかなど、デザインの基礎となる知識があるかどうかで、成果物のクオリティが大きく変わってきます。素人がデザインしたものと、専門知識を有するプロがデザインしたものとでは、誰が見ても分かるほどのクオリティの差が出るものです。
デザインスキルは一朝一夕で身に付くものではありませんが、デザイナーとしてキャリアを積んでいくためには、素材の構成や色の配置、タイポグラフィなどのデザイン理論をしっかりと学び、デザインのトレンドもしっかりとチェックしておきましょう。
デザインツールの知識
IllustratorやPhotoshopなど、デザイン作業に使用するツールも問題なく使いこなせなければいけません。他にもカタログなどのレイアウトなどを行うならば、InDesignも使う必要があるでしょう。
いずれもAdobe社が提供しているデザイナーにとって欠かせないツールです。全ての機能を使いこなせる必要はありませんが、デザイン制作で頻繁に使用されるものは、確実に使えるようになっておきましょう。
プレゼンテーションスキル
グラフィックデザイナーは、制作したデザイン案をクライアントにプレゼンテーションして、制作意図やアピールポイントなどを説明しなければいけません。
意図を正しく理解してもらえなければ、何度も修正することになったり、デザイナーとしての力量を疑われる可能性があります。実際にデザインを説明する経験を積まなければ、プレゼンテーションスキルはなかなか身に付かないため、日頃からデザインを他者に説明する練習をしておくと良いでしょう。
安定した仕事ができるようにやるべきこと
グラフィックデザイナーとして安定して仕事ができるために、すべきことを紹介します。
ポートフォリオを作成しておく
ポートフォリオとは自分のスキルや実績をまとめたもので、デザイナーとして就職・転職をする際に必ず作成しておくべきものです。作成しておくと、副業の仕事をする際にもスムーズに案件を獲得できるようになります。
就職や転職などのサービスでは、作成したポートフォリオを登録できるので、内容が充実していれば企業側からスカウトが来る場合もあります。
先方がポートフォリオの内容を前もって確認できるようにしておくことで、仕事に関するミスマッチも事前に防ぎやすくなるので、必ず作成しておきましょう。
必要なスキルを伸ばす
デザイナーの収入はスキルレベルに依存するといっても過言ではありません。できるだけ単価の高い案件を請けられるように、必要なスキルを重点的に伸ばしておくことが大事です。
まったく新しい分野のスキルを伸ばすには時間がかかりますが、本業で従事している案件に近しい領域ならば、効率的にスキルを伸ばせるでしょう。案件を獲得する際にも、本業に近いものを選択することで実績を作りやすくなり、新たな領域にチャレンジするための土台が作れます。
グラフィックデザイナーの将来性
続いて、グラフィックデザイナーの市場ニーズや将来性について解説します。誰でも簡単に、それなりのデザインができるテンプレートやサービスが続々登場しているため、グラフィックデザイナーの将来を不安視する声もあるようですが、本当のところはどうなのでしょうか?
グラフィックデザイナーのニーズは?
近年、多くの人がパソコンやスマホなどを使って、インターネットにアクセスして情報を得るようになったため、雑誌や書籍など、これまでグラフィックデザイナーの仕事の中心だった紙媒体の発行部数が減少しています。
そのため、グラフィックデザイナーの活躍の場が減っているという意見もありますが、その分、インターネット上での視覚表現が求められる場合や、インターネット広告でグラフィックデザイナーが起用される機会が増えているのです。
さらに、たとえ発行部数が減少したとしても、紙媒体は必ず残り続けるため、常に一定の需要が見込めます。活躍の場がオフラインからオンラインにシフトする可能性はあるものの、グラフィックデザイナーのニーズは比較的安定していると言えるでしょう。
今後活躍できるデザイナーの特徴
今後はオンラインの広告媒体などで、グラフィックデザイナーが求められる機会が増えるでしょう。従って、紙媒体でのデザインにこだわらず、さまざまな場に対応できるデザイナーが活躍できる可能性が高いです。
事実、Web関連の仕事を依頼されるグラフィックデザイナーが増加しており、一部Webデザインの仕事をしている人も目立ちます。紙媒体のみならず、オンラインの媒体に対応できる知識やスキルを持っておくことが、今後デザイナーとして活躍するためのポイントとなるでしょう。
印刷物のデザインとWeb関連のデザインを両立できれば、双方を連動させたメディアミックスのプロモーション案件などで、特に活躍できる可能性があります。
グラフィックデザイナーへのキャリアパス
最後に、グラフィックデザイナーに転職する方法を解説します。決まったキャリアパスが存在するわけではありませんが、多くのデザイナーが専門学校などでスキルを身に付けて就職や転職をしています。
未経験からデザイナーになれる?
たとえ実務経験がなかったとしても、グラフィックデザイナーになれる可能性はあります。ただし、即戦力となれる知識とスキルを身に付けておかなければいけません。
デザイナーに限らず、技術職は現場ですぐ仕事ができる人材が求められるので、専門学校やオンライン講座などを利用して、必要な技能を身に付ける必要があります。相応の技能を身に付けた上で、自分のスキルをアピールするためのポートフォリオを作成し、就職あるいは転職の面接に臨みましょう。
フリーランスという選択肢も
デザイナーとして経験と実績を積めば、独立してフリーランスとして活躍する選択肢も視野に入ってきます。実際デザイナーの中でも、Webデザイナーと並んでフリーランスが多いのが、グラフィックデザイナーです。高単価の案件を獲得できるようになれば、企業に所属しているよりも、高い報酬を得られる可能性は十分あります。
ただし、個人で仕事を受けられるだけの能力が必要で、デザイン以外にクライアントを獲得するための営業スキルや、安定してビジネスを継続させるためのマネジメントスキルが求められます。人によって向き・不向きがありますが、独立志向の強い人にはおすすめの働き方です。
グラフィックデザイナーの副業事情
政府による働き方改革の推進や近年のコロナ禍の影響で、副業に従事する人が増えています。特に在宅で仕事をこなせるデザイナーが副業するケースは増えており、より柔軟な働き方で収入アップやキャリアアップを実現する人が目立ってきました。
では数あるデザイナー職の中でも、紙媒体・Web媒体を問わず広く活動できる、グラフィックデザイナーの副業事情はどうなっているでしょうか?
グラフィックデザイナーの副業が増えている?
結論からいえば、グラフィックデザイナーの中にも、収入アップやキャリアアップを目指して、副業を始める人が増加している状況です。
例えばGV社が実施した副業に関する調査によれば、ライターやデザインなど、クリエイティブ系の副業に従事した経験のある人は31.7%となっています。デザイン業務としてWebデザインやイラストを手がける人もいますが、Web媒体のグラフィックデザインをしている人もいるでしょう。
ほかの調査会社のデータを確認しても、グラフィックデザイナーを含むデザイン職の副業事例が増えている事実が確認できます。グラフィックデザイナーは、他のデザイン職に比べて広い範囲で活躍できるので、近年の副業ブームで案件が増えるに従って、今後さらに副業に従事する人も増えると考えられます。
※出典:【働き方改革・実態調査】副業している1000人に聞いた収入事情と満足度|株式会社GVのプレスリリース
副業やフリーランスが増えた背景
副業やフリーランスとして独立するグラフィックデザイナーが増えた背景としては、上記のように政府の働き方改革推進や、コロナ禍の影響が考えられます。
いずれも柔軟な働き方を実現するきっかけとなるもので、会社員の在宅勤務も増える中で、独立してフリーランスとして活動したいと考える人が増えた点が挙げられるでしょう。在宅で問題なく働けるならば、企業に所属せず、より自由に働いてもよいのではないかと考える人が増えたということです。
デザイナーとして十分な経験やスキルを持っていれば、企業に所属しているよりも収入アップが狙える点も、フリーランスが増えた背景といえるでしょう。事実、企業に所属していた頃の倍以上の収入を得ているデザイナーも珍しくありません。
まとめ
グラフィックデザイナーの仕事内容と必要なスキルを解説しました。
グラフィックデザイナーの仕事は、顧客へのヒアリングから始まり、ラフやデザイン案の作成、デザインの実制作、修正から納品という流れになることが多いです。
グラフィックデザインの市場は飽和しているという意見もありますが、デザインの案件自体はなくなることはありません。特に近年は、紙媒体以上にオンラインの案件が増えているので、Web媒体にも対応できるスキルを身に付けておけば、活躍の場を広げられます。それに加えて、トレンドや数字に強いなど、顧客にプラスαの価値を提供できる人は、多くの企業から信頼されるデザイナーになれるでしょう。