基本情報技術者試験とは?
では最初に、基本情報技術者試験とは何かを解説します。
ITの基礎知識と技術を測る国家試験
この試験は、IPA(独立行政法人情報処理機構)が運営している試験の一つで、IT技術者として必要な知識や技術を備えているかを試す国家試験です。
IPAは、この試験の合格した人に、以下のようなレベルの業務に携わり、日本のIT界を支える人材となることを期待しています。
- 情報技術を活用した戦略立案にかかわる
- 上位者の指導の下で情報戦略に関する予測・分析・評価をする
- 上位者の指導の下でシステム設計・ソフトウェア設計に携わる
見ているとわかるかと思いますが、基本情報技術者試験の合格者は、あくまでもリーダーというよりは、リーダーを補佐する役割が求められているのです。
ITエンジニアへの登竜門として最適
IPAはこの試験を『ITエンジニアへの登竜門』と位置づけ、ITエンジニアが目指す最初の試験として推進しています。この試験に合格すれば、一定の知識や技術を持っているという証明となるので、活躍の幅も広がり、キャリアアップが期待できるでしょう。
またIPAの運営するIT試験には、今回紹介する情報技術者試験よりもさらに上位の試験もありますので、これに合格したら、さらにステップアップできる環境も用意されています。
試験の概要
情報技術者試験の位置づけがわかったところで、次は試験の日程や受験料など、受験するための基礎知識を解説します。
試験日程は年2回
試験は春期4月と秋期10月の第3日曜日に開催されています。試験時間は午前9時30分~12時、午後は13時~15時30分です。また出題形式は、午前は四肢択一形式の問題が80問、午後は多肢選択式の問題が11問(2020年春期から)出題されます。
申し込みから合格発表までの流れ
まず4月の受験を希望している人は、毎年1月中旬から2月中旬ぐらいが申し込み期間となっていますので、その間に申し込んでください。また10月受験予定の人は、7月中旬から8月中旬までが申し込み期間となっていますので、その時期にIPAから発表される試験概要をよく確認しましょう。
なお合格発表は、4月受験した人は5月中旬、10月受験した人は11月中旬を予定しています。発表はIPAのHP上で行われ、成績の照会もできるので、自分はどこが良くできて、どこが出来なかったのかをよく確認して次の機会に役立てましょう。
ネット上での合格発表の後は、合格証書が郵送されます。また申請をすれば、合格証明書の発行も可能です。なお証明書を希望する場合は、700円の手数料がかかるので注意しましょう。
受験料
気になる受験料ですが、5,700円となっています。この価格は全試験共通のものですので、覚えておくと便利です。
2020年4月の試験から内容が見直しに
この試験は、今まで毎年出題される内容に大きな変化はありませんでしたが、それも変わるかもしれません。IPAは、2019年1月に、基本情報技術者試験の試験内容を見直すと発表したからです。
見直しをするのは、出題数や配点、出題比率と言った基本的な試験の骨格から始まっていますが、何よりも大きいのは、今まで出題されていた言語である COBOL を廃止し、ディープラーニングなどで使われる言語 Python を追加することです。
これは時代の流れに合わせ、あまり使われなくなった COBOL よりも、 Python のほうが将来性がより高いとの判断からでしょう。
また試験概要のところで少し触れたように、午後の試験が今までの13問から11問になり、解答も5問に変更され、全体的にプログラミングを重要視した配点にするとのことです。また10月の秋期試験からは、さらに発展して数学に関する出題比率を高めると発表しています。
受験資格と免除制度
次は、情報技術者試験の受験資格と免除制度について解説します。
受験資格は不問
この試験は、ITエンジニア向けの試験ではありますが、基本的に誰でも受験できる試験です。ですので、学生でも受験出来ますし、自分の持っているIT知識を試したい、という人が受験することも可能です。
午前試験の一部免除対象
基本情報技術者試験には、午前の試験が免除される制度があります。これはIPA認定の講座を受ける必要がありますが、一度受講すれば、2年間の免除期間が与えられます。
免除を希望する場合には、まず講座を受ける申請をします。この時審査がありますが、この時審査手数料35,000円がかかるので注意しましょう。
ちなみに審査とは、講座内容が100の受講項目に対応しているかを見ることです。これに対応しきれていない場合には、教材を追加するなどの対応をする必要があります。
承認されれば、講座を受けられます。講座が終わると修了試験があり、認定されれば、午前試験が免除されます。
試験当日のスケジュールと教科
それではここからは、試験当日のスケジュールと出題される教科を、詳しく見ていきましょう。
午前
さきほども少しお話ししましたが、午前中は9時30分から開始され、出題される問題数は80問あります。なお試験は100点満点で、基準点は60点となっています。
4つの選択肢の中から正しい答えを見つける問題が出題されますが、出題される教科の範囲は非常に広く、幅広い知識が求められます。そこで以下に具体的な出題範囲をリストアップしました。
- 基礎理論:アルゴリズム
- コンピュータシステム:ハード・ソフトウェア、システム構成要素、コンピュータ構成要素
- 技術要素:ヒューマンインタフェース、ネットワーク、マルチメディア、セキュリティ、データベース
- 開発技術:システム開発、ソフトウェア開発管理技術
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム戦略
- 経営戦略
- 企業と法務
情報技術者試験に合格するには、ITエンジニアに必要な知識をまんべんなく有している必要があります。
午後
午後は、13時から開始されます。問題数は2019年度までの13問から変更され、11問となります。なお午後の試験も100点満点で、基準点は60点です。
こちらも午前のように選択肢から答えを選ぶ形式ですが、午前と違うのは、より実践的な問題が出題される、ということでしょう。
午前の問題というのは、言ってみればしっかり暗記してしまえば解ける問題ですが、午後は覚えた知識をいかに活用できるかが試されるのです。
なお2020年からは、新しく Python に関する問題が出題されるので注意しましょう。
必須科目と選択科目
午後の問題は11問出題される予定ですが、実際解答するのは5問です。どういうことかというと、午後の問題は、必ず解かなければならない必須科目と、得意な問題を選択して解く選択科目があります。つまり、出題されている問題をすべて解く必要はないということです。
問題数は11問ですが、そのうち必ず解くことになるのは、必須科目と選択科目を合わせて5問になる、ということなのです。
公式サイトから過去問を取得可能
IPAの公式サイトでは、過去に出題された問題を閲覧できるようになっています。どこまで遡れるかと言いますと、2019年3月現在の時点では、平成16年春期問題からです。
このサイトでは、問題、解答、解説なども掲載されているので、試験勉強に役立つでしょう。なおダウンロードして試験本番のように解いても問題ありません。
合格のメリット
基本情報技術者試験の概要はだいたいわかっていただけたと思いますが、この試験に合格すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
基本的なIT知識や技能の証明になる
この試験に合格しているとということは、ITに関する基本的な知識をまんべんなく持っている、という証明になります。
この試験は、運営しているのは独立行政法人ですが、れっきとした国家試験でもあるので、国内全体で評価が高い試験でもあります。この試験に合格できるほどの知識が身につけば、さらに高度な資格を狙うことも出来るようになるでしょう。
また基本情報技術者試験は、厚生労働省が指定した『若年者就職基礎能力支援事業"YES-プログラム"』に認定されているため、単位認定制度に利用している学校もあるのです。
未経験からIT業界への転職や副業にもプラス
この試験を受験するには、特に資格は必要ありません。つまり現役のITエンジニアではなくても、自信があれば受験できるので、IT業界未経験の人が、IT業界をめざすための試験として最適と言えます。
例え新卒の人であっても、この試験に合格していれば一目置かれる存在となれるでしょう。また転職や副業をするためのキャリアアップとしても、この試験は価値が高いものです。
ITに関する幅広い知識があることを証明できるものとして、これ以上のものは、なかなかないと言えるでしょう。
社内で評価を得られる場合もある
この試験は、IT業界を中心に評価が高い試験ですので、社員に受験を勧める企業も多くあります。
このような企業の場合は、合格すると一時金が支給されたり、給料が上がったり、受験料を負担してくれたりする場合も多く、企業のサポートを得ながら合格を目指せます。
ただこの試験は、あくまでも初めてIT系の試験を受ける時に適しているので、主に新入社員向けに勧めている企業も多くあります。
そのため、あまり連続して不合格になってしまうと、エンジニアとしての素養を問われてしまう可能性もあるので注意しましょう。
資格の難易度は?
次は、情報技術者試験の難易度について、詳しく解説します。
合格率は20%程度
IPAが公開している統計を見ると、平成30年度の受験者数は春・秋合わせて29万2,312人で、このうち合格した人は7万1,915人となっています。これを基に合格者の割合を算出すると、だいたい24%です。
IPAのIT試験の中には、合格率が一桁のものもあるので、その中では決して難しい部類には入っていないことが解ります。
しかしながら、24%という数値は、決して高いとも言えない数値ですので、合格するにはそれ相応の努力が必要ということもわかるでしょう。
ちなみにIPAでは、試験の難易度を4段階に分けており、最も難しいものはレベル4に位置付けられています。その中で情報技術者試験は、レベル2に位置付けられており、IPA試験の中では中間ぐらいに位置しています。
初学者でも独学で合格可能
基本情報技術者試験は、独学で勉強して合格する人も多くいます。最近では書店でも試験対策問題などが売られているので、それを使いながら勉強すれば、合格も可能であるということです。
しかしこの試験は、ITに関する知識だけではなく、マネジメントや経営戦略なども出題されるので、独学ですとこのあたりの知識が手薄になってしまうことも多いのです。
そんな時はまず先に『ITパスポート試験』に合格してから受験するのも手です。なぜならITパスポート試験のほうが比較的易しいマネジメント系問題が試験範囲となっているからです。
ITパスポート試験は、基本情報技術者試験の予習としておすすめです。
また完全に独学だと、少し不安、という人は、資格の学校に通うのも良いでしょう。学校のメリットは、わからないことを直接先生に聞けたりすることです。
完全な独学ですと、解答を見ただけではどうしてもわからない、ということもあるかもしれませんが、学校ならば、そのようなことを無くせるでしょう。
デメリットはやはり授業料が高くつくということでしょう。しかし学校なら、時間も確保され、集中して勉強できるので、一人だと気が散りがちな人にはおすすめです。
学習スケジュールと対策
ここまでお読みいただければ、基本情報技術者試験に関するほとんどのことがわかるでしょう。そしてここからは、基本情報技術者試験に合格するための学習スケジュールと対策を解説します。
半年で合格を目指す
大手の資格講座では、午前対策試験のみのコースで2か月、午後対策のみでも2か月の期間を設けていますが、総合コースですと6か月の学習時間が設けらているので、独学で勉強するにしても、半年の時間は必要になるでしょう。
過去問を中心に学習しよう
試験は午前、午後と分かれていますが、特に午前の部は、過去問から多く出題される傾向があります。
例えば過去にITパスポートなどの別の試験で出題された問題がそのまま出題されるということも多いのが、基本情報技術者試験の特徴でもあるのです。
午前問題をパスするには過去問をしっかりとこなすことが近道になるので、過去問を中心に勉強しましょう。
またこの試験に合格するには、他の受験者の点数も重要になってきます。ですので、全体的に正答率の高い問題は絶対に落とさないように、誰でも解けるような初歩的な問題で平凡なミスをしないように心がけましょう。
またこの試験で大変なのは、午前ではなく、午後の試験です。午前は過去問を重点的にやれば大丈夫ですが、午後はどうすればいいのでしょうか?
午後もやはり午後に出題された過去問を解くことで、試験に慣れることがまず大切です。午後は午前以上に実践的な内容がでるので、だた覚えるのではなく、どうしてこのような答えになったのか、ということをしっかりを理解することが重要なことと言えます。
そして2020年より出題されるPythonに関する知識、プログラミングに関する知識が重要な位置づけになっているので、ここの分野の勉強をしっかりしましょう。
参考書の選び方
さきほどは過去問を重点的に、と説明しましたが、やはり参考書を読んで基本を押さえるのは重要です。
参考書は、できるだけ解説がわかりやすく、詳しく載っているものを選びましょう。また図解で解説されているものなどは、一目でわかるのでおすすめです。
また参考書と問題集が対になって発売されている書籍もあるので、それを使うと、参考書でインプットして、問題集でアウトプットをする、という風に計画的に勉強を進められるでしょう。
まとめ
今回は、基本情報技術者試験に関する情報をすべてをまとめました。基本情報技術者試験は、ITエンジニアが最初に受ける試験として有名であることもわかりました。
決して簡単とは言えない試験ですが、合格すれば、新しいキャリアの構築に一役買ってくれるでしょう。