正社員の副業事情は?
終身雇用制がなくなりつつあることや、年金問題などによる将来への不安などから、正社員として本業を持っているにもかかわらず、副業している人は少なくありません。
実際のどの程度の割合の人が副業をしているのかなど、副業の傾向について解説します。
副業をしている割合は10%以上
2019年2月にリリースされたパーソル総合研究所の『副業の実態・意識調査』の調査結果によると、正社員で現在副業をしている人の割合は10.9%です。1週間あたりの副業にかける時間についても、平均時間は10.32時間というデータが出ています。
副業の意向は強い
同データの調査結果によると、「今は副業をしていないが、今後は副業をしたい」と回答した人は41%にのぼっています。性別・世代別に見ると、副業に関心を示しているのは若い世代に多く、特に20代女性に至っては、半数以上が副業を始めたいという意向を示しています。
この点からも、今後副業を始める人は増加していく可能性が高いと言えるでしょう。
副業を認める企業は増えている?
国によって副業の容認が推進されていますが、実際にはどの程度、副業が浸透しているのでしょうか。
実際に副業をしている人の割合は横ばい
『労働市場の構造変化の現状と課題について』のデータによれば、副業を希望する人の数は2002年から17年にかけて約90万人増えているのに対して、実際に副業をしている人の数は約10万人の増加に留まり、ほぼ横ばいと言ってよい数値です。
国による後押しや、本人の希望があっても、実際に副業を始めるまでに至る人は、まだあまり増えていません。
会社が副業を禁止している場合も多い
横ばいの理由についてはさまざま考えられますが、顕著な理由として『会社が副業を禁止している』ということが挙げられます。
パーソル総合研究所が2019年2月にリリースした『副業実態・意識調査結果【企業編】』によれば、会社が副業を禁止している割合は、50%にのぼるとのデータが出ているのです。
出典:パーソル総合研究所『副業実態・意識調査結果【企業編】』
副業を認めている会社の例
中には副業を全面的に認めている例もあります。
例えば、株式会社エンファクトリーは、『専業禁止』というスタンスを掲げています。副業によって社員のマネジメント能力やプロ意識を高め、他の業務で培った技術や考え方を会社に還元してもらうという期待からです。
他の例では、プロ野球チームを傘下に置く『株式会社ディー・エヌ・エー』は、2017年に副業に関して2つの制度を導入しました。一つは『クロスジョブ』と呼ばれる制度で、社内で最大3つの部署で仕事ができ、社内副業を認めているというものです。
二つ目は『副業制度』で、社外で副業ができる制度です。これらの企業のように、社員に副業を推進している例もあります。
副業容認が進まない理由
社員にメリットがあるにもかかわらず、副業容認が進まないのか、その理由を見ていきましょう。
労働時間管理が難しい
労働基準法によって労働時間の上限は1週間に40時間と定められ、それを越えた場合は時間外労働手当を払わなければなりません。
労働時間には、副業の時間も合算されることになります。そのため社員が外部で仕事をはじめると、労働時間の管理が複雑になり、時間外労働手当という余計な人件費が増える懸念もあるのです。
情報漏洩や、人材の流出
会社側にとって副業には、他にも懸念事項があります。副業先に自社の機密情報や個人情報が持ち出され、情報漏洩が発生していないかを考えなければなりません。
また副業先にスカウトされて、会社を辞めてしまうといった離職についての懸念もあるのです。
副業のメリット
最後に、副業を容認することで会社側・社員側の両方にどのようなメリットがあるかをご紹介します。
スキルアップにつながる
副業する最大のメリットは『スキルアップにつながること』だと言えるでしょう。副業を通して、本業では得られなかったスキルや知識、人脈を獲得することができます。
マネジメント力や、社内にないノウハウを身に付けることができて、キャリアアップにつなげられるでしょう。
会社にとっては、マルチスキルを持つ社員が増えて、会社が良い方向に変わっていくことは好ましいと言えます。社員のスキルアップは双方にメリットがあるため、推奨している会社も増えつつあるのです。
まとめ
日本で副業をしている会社員の割合は約10%です。副業を希望する人は年々増えているにもかかわらず、実際に副業をしている人が増えていないのは、会社があまり副業を容認していないという背景があります。
一方で、副業によって社員が新たなスキルやノウハウを獲得するといった理由から、副業を積極的に推進している会社もあります。副業を行う場合、まずは会社のルールの確認から始めましょう。