QA(Quality Assurance=品質保証)エンジニアが応募できる求人と提示される年収は、テストを実行する役割にとどまるか、テスト設計や自動化、品質の方針づくりまで担うかで変わります。公的統計にはQAエンジニア単独の区分がなく、プログラマーや社内システムエンジニアと同じ区分にまとめられているため、平均だけを見ても自分の位置は分かりません。この記事では、厚生労働省の最新の賃金統計と、Offers に載る正社員のQA・テスト職求人の提示年収を並べ、経験者が年収を上げる道筋を整理します。

QAエンジニアに近い公的統計の平均年収は578.5万円

QAエンジニアに近い公的統計の区分「ソフトウェア作成者」の平均年収は、約578.5万円です。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(企業規模10人以上・男女計・短時間労働者を除く一般労働者)で、毎月の給与(きまって支給する現金給与額)39.08万円の12か月分に、年間賞与など109.51万円を足した概算です。平均年齢は37.1歳でした。

勤め先の規模で分けると、年収換算は次のとおりです。

企業規模

毎月の給与

年間賞与など

年収換算

1,000人以上

41.86万円

138.59万円

640.9万円

100〜999人

38.33万円

95.03万円

555.0万円

10〜99人

36.06万円

85.51万円

518.2万円

企業規模計

39.08万円

109.51万円

578.5万円

出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」(2026年3月公表・職種「ソフトウェア作成者」)を Offers Magazine 編集部が年収換算。

1,000人以上の企業と10〜99人の企業の年収換算の差は約122.7万円で、このうち毎月の給与の差(12か月分)が69.6万円、年間賞与などの差が53.1万円です。同調査第1表では、年間賞与などが1,000人以上で138.59万円、10〜99人で85.51万円でした。

年齢別の年収は40代後半の約729万円が最も高い

ソフトウェア作成者の年収換算は、25〜29歳の約484.7万円から年齢とともに上がり、45〜49歳の約729.2万円が最も高い水準です。30代後半で600万円台に入り、50代前半も722.4万円とほぼ同じ水準を保ちます。

年齢

毎月の給与

年間賞与など

年収換算

25〜29歳

33.21万円

86.19万円

484.7万円

30〜34歳

38.45万円

98.12万円

559.5万円

35〜39歳

42.85万円

121.79万円

636.0万円

40〜44歳

45.03万円

145.93万円

686.3万円

45〜49歳

47.36万円

160.89万円

729.2万円

50〜54歳

47.44万円

153.13万円

722.4万円

出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」(2026年3月公表・職種「ソフトウェア作成者」・企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。

公的統計の区分はQAエンジニア単独の年収を示していない

賃金構造基本統計調査の職種区分には、QAエンジニアやテストエンジニアだけを集計した区分がありません。この記事で参照した「ソフトウェア作成者」には、プログラマーや社内システムエンジニアといった開発職が広く含まれ、QAエンジニアの年収そのものではない点に注意が必要です。

転職サービス各社が公表するQAエンジニアの平均年収も、登録者が申告した年収を集計したものと、求人の提示年収を集計したものが混在しており、値に100万円を超える開きが出ます。たとえば、Geekly「QAエンジニアの年収」は利用者の申告をもとに平均395万円(調査期間2025年6月〜2026年5月)、テックゴー「QAエンジニアの年収」は保有する求人データベースをもとに平均661.5万円と公表しています(いずれも2026年9月29日に各社サイトで確認)。

平均年収とあわせて同じ職種の求人が提示している年収の幅を見ると、自分の年収の位置がつかみやすくなります。次の節で、Offers に載る正社員求人の年収帯を示します。これは Offers に掲載された求人の分布で、市場全体の相場ではありません。

Offers の正社員QA求人は上限の中央値が875万円

Offers に載る正社員のQA・テスト職の求人では、提示年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が875万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=83・2023年8月〜2026年9月公開)。

指標

値

年収下限の中央値

500万円

年収上限の中央値

875万円

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載したQA・テスト職の正社員求人 n=83・2026年10月集計。

公的統計の平均578.5万円と比べると、求人の下限の中央値500万円は78.5万円低く、上限の中央値875万円は296.5万円高い位置にあります。上限の中央値は、1,000人以上の企業のソフトウェア作成者の平均640.9万円も上回ります。求人の上限は「経験と役割が合えば出せる額」であり、応募者全員に提示される額ではありません。

上限が1,000万円以上の32件のうち15件は、タイトルにリード・マネージャー・シニア・スペシャリスト・品質戦略といった役割の広さを示す語を含みます。

上限1,000万円未満の51件では、同じ語を含むのは13件でした。

自分の経験で届く年収帯を確かめるには、実際の求人の下限と上限を見比べるのが早道です。Offers Jobs では、会員登録なしでQAエンジニアを含むIT職の公開求人を検索し、求人ごとの提示年収を確かめられます。

QAエンジニアの年収を分ける3つの要因

QAエンジニアの年収を左右する要因は、担当範囲の広さ、事業会社か検証会社かという評価の軸、勤め先の規模の3つです。勤め先の規模による差を示す値は、QAエンジニア単独の公的統計が無いため、開発職を広く含むソフトウェア作成者のものです。同じテストの経験年数でも、どこで何を任されるかで提示される年収帯が変わります。

担当範囲の広さで任される役割と応募できる求人が変わる

QAエンジニアの担当範囲は、決められたテストの実行から、テスト設計、テスト自動化、品質の方針づくりまで幅があり、どこまで担うかで任される役割と応募できる求人が変わります。テストケースを消化する役割より、どこをどの深さで確かめるかを決め、不具合を出さない開発の仕組みを作る役割のほうが、事業への影響を面接や年収交渉で説明しやすいのが違いです。

上流に近い仕事の例は、仕様の段階でのレビュー、リスクに応じたテスト計画、CI(継続的インテグレーション)とCD(継続的デリバリー)の仕組みへのテストの組み込み、品質指標の設計です。QAリードやQAマネージャーとしてチームの採用や育成まで担う役割は、メンバーとは別の求人として募集されることが多く、年収帯も別に設定されます。

事業会社のインハウスQAと第三者検証会社で評価の軸が違う

事業会社のインハウスQAは自社プロダクトの品質と開発の速さで評価され、第三者検証会社のQAは検証の品質と納期、担当できる案件の規模で評価されます。評価の軸が違えば、年収の上げ方も同じではありません。

インハウスでは、リリース後の不具合の減少や、自動テストの導入でリリースの頻度が上がったことを示せると、評価と年収に反映されやすくなります。検証会社では、テストの計画と管理まで任される立場へ進むことが年収を上げる主な道です。事業会社への転職を考えるなら、検証会社で担当した案件でも、テスト設計の考え方や改善の結果を説明できるように整理しておくと材料になります。

ソフトウェア作成者では企業規模で年収に約123万円の差がある

ソフトウェア作成者の公的統計では、勤め先の規模による年収の差は、年齢による差(25〜29歳と45〜49歳の年収換算で約244.5万円)より小さいものの、はっきり表れます。令和7年賃金構造基本統計調査では、ソフトウェア作成者の年収換算が1,000人以上の企業で640.9万円、10〜99人の企業で518.2万円で、差は約122.7万円でした。いずれも同調査第1表を編集部で年収換算した値です。

QAエンジニア単独の集計では、勤め先の規模と年収の関係は一様ではありません。Geekly が利用者の申告をもとに公表したQAエンジニアの年収(調査期間2025年6月〜2026年5月・2026年9月29日に同社サイトで確認)では、従業員数500〜999人の企業が最も高く、5,000人以上の企業が最も低い結果でした。同社は、大規模な組織ではテスト実行を中心に担う層の比率が高まり、平均が押し下げられやすいと説明しています。

また規模が小さい企業でも、資金調達を終えたスタートアップや急成長中のSaaS企業は、QAの立ち上げを任せる人材を大企業の平均を上回る年収帯で募集することがあります。企業規模の平均だけで判断せず、求人ごとの年収帯を見て比べてください。

QAエンジニアのキャリアパスは3方向に分かれる

QAエンジニアのキャリアパスは、テスト自動化や品質の専門性を深める方向、QAチームを率いる方向、隣接する職種へ移る方向の3つに分かれます。どの方向でも、担当範囲を広げた経験が次の求人に応募するときの材料になる点は共通です。

シニアQAエンジニアやSETとして専門性を深める

専門性を深める道では、テスト自動化の基盤づくりや、性能・セキュリティといった専門領域のテストを任されるシニアQAエンジニアやSET(Software Engineer in Test)を目指します。コードを書いてテストの仕組みを作れる人材は開発職と同じ基準で評価されやすく、年収帯も開発職に近い水準になりやすいのが特徴です。

QAリード・QAマネージャーとしてチームを率いる

チームを率いる道では、QAリードやQAマネージャーとして、品質の方針づくり、テスト体制の設計、メンバーの採用と育成を担います。品質保証の役割が開発組織全体の仕組みづくりへ広がっている流れは、登壇レポート「ソフトウェアエンジニアと品質保証」でも語られた論点です。

SREやプロジェクトマネージャーへ移る

隣接職種へ移る道では、テストと障害の知見を活かせるSRE(サイトリライアビリティエンジニアリング)や、仕様と進行を束ねるプロジェクトマネージャーが候補になります。職種ごとの年収の水準は「SREの年収」と「プロジェクトマネージャーの年収」にまとめました。

QAエンジニアが年収を上げる3つの方法

経験者のQAエンジニアが年収を上げる方法は、テスト自動化とCI/CDの経験を積む、品質の成果を数字にする、提示年収の上限が高い求人と比べて交渉する、の3つです。今の職場で担当範囲を広げることと、上限の高い求人へ移ることは組み合わせられます。

テスト自動化とCI/CDの経験を積む

テスト自動化の経験は、SETやSDET、テスト自動化エンジニアといった職種の求人に応募するときの前提になるスキルです。E2E(画面操作を通した)テストの自動化ツールでテストを書くだけでなく、どのテストを自動化するかを決め、CI/CDのパイプラインに組み込んで開発者が日常的に使える状態にした経験があると、評価の幅が広がります。

体系的な知識を示したい場合は、JSTQB(ソフトウェアテスト技術者資格)などの資格も材料の1つです。資格の種類と選び方は「QAエンジニアの資格」で整理しています。

品質の成果を数字にして面接の材料にする

品質の成果を数字にしておけば、面接でも年収交渉でも根拠として使えます。担当したプロダクトごとに「課題・自分の役割・打った施策・前後の数字」をまとめ、リリース後の不具合件数、テストにかかる時間、リリースの頻度がどう変わったかを示すと、採用担当者は年収帯のどこに位置づけるかを判断しやすくなるはずです。

提示年収の上限が高い求人と比べて交渉する

年収を上げたいなら、提示年収の上限が高い求人を転職先の候補に入れてください。Offers の正社員QA・テスト職求人の全体では、上限の中央値が875万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=83)。

応募先を選ぶときは、提示年収の上限だけでなく下限も確認し、今の年収が下限を下回っていないかを見ると、交渉の余地が読めます。年収を伝えるタイミングと進め方は「転職時の給与交渉のタイミングとプロセス」を参考にしてください。

QAエンジニアの年収の要点

QAエンジニアに近い公的統計の区分「ソフトウェア作成者」の平均年収は、令和7年賃金構造基本統計調査の年収換算で約578.5万円です。ただしこの区分は開発職を広く含み、QAエンジニア単独の値ではありません。正社員のQA・テスト職に絞った Offers の求人では、提示年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が875万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=83)。

年収を上げる道は、テスト自動化と品質の方針づくりまで担当範囲を広げること、成果を数字で示すこと、提示年収の上限が高い求人へ移ることの3つです。まずは自分の経験に合う求人の年収帯を確かめ、今の年収との差を知るところから始めてください。