中途の転職で内定が出たあと、他社の選考結果を待ちたいときや、提示された条件を確かめたいときは、内定の返事を待ってもらうよう企業に頼めます。保留したい理由と、何日までに返事をするかを一緒に伝えると、企業は待てるかどうかを判断しやすくなります。

保留のあいだに進めたいのが、複数の内定を同じ物差しで比べる準備です。求人票の年収は下限と上限の幅で書かれていることが多いので、比べる材料は、内定時に提示された年収の内訳と、役割・評価制度・働き方の4つです。

中途の転職でも内定の保留は頼める

中途採用の内定でも、企業が示した回答期限までは返事を保留して考えられ、期限より長く待ってほしいときは延長を頼めます。延長を認めるかどうかを決めるのは企業で、そのあいだ企業はほかの候補者への連絡や入社日の調整を待つことになるため、理由と返事をする日付がはっきりしているほど判断しやすくなります。

保留を頼む理由として伝えやすいのは、次の3つです。

  • 選考が進んでいる他社の結果を待ってから決めたい
  • 提示された年収の内訳や配属先を、書面で確かめてから決めたい
  • 勤務地や働き方が変わるため、家族と相談する時間がほしい

迷いが残ったまま承諾して後から辞退すると、企業はほかの候補者に見送りを伝えたあとで採用をやり直すことになるので、決めきれないうちは承諾を急がず、保留を頼むほうが企業の負担も小さく済みます。

回答期限は内定通知に書かれた日付で確かめる

内定の回答期限は企業が決めるもので、内定通知のメールや内定通知書(オファーレター)に書かれた日付が基準になります。日付が書かれていないときは、内定の連絡を受けたその場か当日のうちに、いつまでに返事をすればよいかを聞いて、日付で確かめておきましょう。

転職エージェントを通して応募した場合は、回答期限もエージェントから伝えられ、保留の相談もエージェントを通して行います。企業へ直接連絡すると、エージェントと企業のあいだで日程の話が食い違うおそれがあるためです。

欠員の補充や、入社日が先に決まっているポジションでは、待てる日数が短くなりがちです。期限が短く感じても、その場であきらめずに、延ばせる日付があるかを相談してみてください。

保留の期間は、返事ができる日付から逆算して決める

保留を頼む期間の目安は、比べたい他社の選考結果が出る日と、提示された条件を書面で確かめ終える日のうち遅いほうに、考える時間を1〜2日足した日までです。長さで頼むより、◯月◯日(◯)までにお返事します、と日付で伝えるほうが、企業は待てるかどうかをすぐに判断できます。

たとえば次の日程なら、頼む内容は表の最後の行のとおりです。

日

出来事

月曜

A社から内定の連絡。回答期限は金曜

火曜

A社に、提示年収の内訳と配属先を書面で確かめたいと伝える

木曜

B社の最終面接

翌週の火曜

B社の結果が出る見込み

頼む内容

A社に、回答期限を翌週の水曜まで延ばせないか相談する

延長を頼むのは、回答期限が来る前です。期限の当日や期限を過ぎてから頼むと、企業はすでに次の候補者へ連絡する準備を進めていることがあります。

延長を断られたときは3つの手から選ぶ

延長を断られたときに取れる手は、今の期限で決める、条件の確認だけを期限までに済ませてもらう、選考中の他社に結果を早めてもらえないか相談する、の3つです。どれを選ぶかは、2社のうちどちらを第一に考えているかで変わります。

  • 期限を延ばせない会社が第一志望なら、その期限で承諾し、選考中の他社には辞退を早めに伝える
  • 選考中の他社が第一志望なら、別の会社から内定が出て回答期限が迫っていることを伝え、結果を早めてもらえないか相談する(面接の日程を前倒しして応じてもらえることもある)
  • どちらとも決めきれないなら、期限を延ばせない会社に、提示年収の内訳や配属先の確認だけでも期限までに済ませてもらえないか頼み、手元の材料で決める

黙って待つより先に聞いておくほうが、どの手を選ぶにしても残り日数を使えます。

内定の保留は、お礼・理由・返事の日付の順に伝える

保留の頼み方の基本は、内定へのお礼、保留したい理由、返事をする日付の3つを、この順に短く伝えることです。採用担当者と電話でやり取りしてきたなら電話で、メールが中心だったならメールで伝え、電話で話した場合も同じ内容をメールで送って日付を残しておくと、行き違いを防げます。

メールで保留を頼むときの例文

メールでは件名で用件が分かるようにし、本文には延長してほしい日付と、確かめたい条件を具体的に書きます。

件名:内定のお礼と、お返事の時期についてのご相談(氏名)

株式会社◯◯ 人事部 ◯◯様

お世話になっております。◯◯(氏名)です。 このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。

大変恐縮ですが、お返事の時期についてご相談させてください。 現在、もう1社の選考が最終段階にあり、◯月◯日に結果が出る予定です。 両社の条件を同じように確かめたうえで、責任をもってお返事したいと考えております。

つきましては、◯月◯日とご提示いただいたお返事の期限を、 ◯月◯日(◯)までお待ちいただくことは可能でしょうか。

あわせて、ご提示いただいた年収の内訳(基本給・賞与・固定残業代など)と、 配属予定のチーム、評価の仕組みについて、書面かお打ち合わせで お教えいただけますと幸いです。

ご無理を申し上げますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

(署名)

電話で保留を頼むときに話す順番

電話では、次の5つを順に話すと、短い通話でも用件が伝わります。

  1. 名乗りと、内定のお礼
  2. 返事の時期について相談したいこと
  3. 保留したい理由(他社の結果待ち、条件の確認など)を一言で
  4. 返事をする日付
  5. 了承をもらえたら、同じ内容をメールでも送ること

保留を頼むときに避けたいこと

保留の相談で企業の印象を下げやすいのは、日付があいまいなまま待ってもらうことで、次の4つは避けましょう。

  • 回答期限を過ぎてから連絡する
  • 日付を決めずに、考える時間がほしいとだけ伝える
  • 延ばしてもらった期限を、さらに延ばしてほしいと頼む
  • 条件の確認を理由にしながら、何を確かめたいかを伝えない

保留のあいだに、内定時の条件を書面で揃える

保留のあいだにやることは、内定が出た各社から内定時の条件を書面で受け取り、同じ項目で並べられる状態にすることです。労働基準法第15条は、使用者が労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を労働者に明示するよう定めています(e-Gov 法令検索「労働基準法」)。承諾を決める前にその内容を書面で受け取っておけば、各社を同じ項目で比べられます。

厚生労働省のパンフレットでは、書面を交付して明示する事項として、労働契約の期間、就業の場所と従事する業務、始業と終業の時刻・休憩・休日、賃金(昇給を除く)、退職などが挙げられています(厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」)。

賞与は、会社に定めがある場合に明示する事項として、書面の交付が必要な事項とは別に並んでいます。提示された年収に賞与が含まれているときは、賞与の算定方法と支給の条件、前年の支給実績を、書面か面談で確かめておくと安心です。年収の総額が同じでも、賞与の割合が大きい会社ほど、業績や評価によって受け取る額が動きます。

2024年4月からは、労働契約を結ぶときに、入社直後の就業場所と業務に加えて、その変更の範囲も明示することになりました(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」)。転勤や異動の可能性を比べたいときに見比べるのは、この欄です。

条件を確かめる場として、内定のあとにオファー面談(条件面談)を設ける企業もあります。保留を頼むときに面談の機会も一緒に相談すると、限られた期間で比べる材料を揃えやすくなります。

複数内定は、内定時に提示された年収で比べる

複数の内定を年収で比べるときに使うのは、内定時に提示された年収の額と内訳です。Offers のエンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人のうち、年収を下限と上限で示した求人を集計すると、72.0%は上限が下限の1.5倍以上ありました(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載したエンジニア・デザイナー・PdMの正社員求人 n=1,719・2022年3月〜2026年10月公開)。

求人票の年収だけでは、入社時の年収が幅のどこに決まるかまでは分かりません。

同じ集計で、下限の中央値は500万円、上限の中央値は900万円、1件ごとの幅(上限−下限)の中央値は360万円でした。上限が高い求人ほど幅は広がり、上限が1,000万円以上の求人に限ると、79.9%は下限が800万円未満です。

求人の年収の上限

幅(上限−下限)の中央値

上限÷下限の中央値

800万円未満

200万円

1.48倍

800万円以上1,000万円未満

343万円

1.60倍

1,000万円以上1,200万円未満

400万円

1.67倍

1,200万円以上

620万円

2.00倍

たとえば仮に、求人票の年収がどちらも600万〜1,200万円の2社から内定が出て、一方の提示額が800万円台、もう一方が1,100万円台だったとします。求人票では同じに見えた2社でも、提示額には大きな差が開くので、比べる材料になるのは内定時の提示額のほうです。提示の根拠になった等級(グレード)があれば、どの等級として提示されたのかも聞いておきましょう。入社後の昇給の見通しまで並べられるからです。

求人票の年収の読み方はモデル年収の記事を、提示額が想定より低かったときの進め方はエンジニアの転職の給与交渉の記事を参考にしてください。

Offers では、エンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人を年収の下限と上限とあわせて探せるので、いま比べている内定と同じ職種の求人を見ておくと、提示額が幅のどのあたりにあるかをつかめます。

Offers で求人を探す

複数内定は年収の内訳・役割・評価制度・働き方で比べる

複数の内定を同じ物差しで比べるには、年収の内訳、役割、評価制度、働き方の4項目を、各社に同じ聞き方で確かめて1つの表に並べます。年収の総額だけで選ぶと、賞与や固定残業代の割合、入社後に任される範囲、次に年収が上がる時期の違いが見えないまま決めることになるからです。

比べる項目

確かめること

並べ方

年収の内訳

基本給(月給×12か月)、賞与の算定方法と前年の支給実績、固定残業代の時間数と金額、株式報酬の有無

毎月必ず受け取る額と、業績や評価で動く額に分けて書く

役割

配属するチーム、担当するプロダクト、入社時の職位や等級、最初の半年に期待される成果

各社に同じ質問をして、答えを同じ粒度で書く

評価制度

評価の周期、誰が評価するか、昇給と昇格の決まり方、入社した年の評価の扱い

入社から1年後に年収が上がる道筋を、社ごとに1行で書く

働き方

出社の頻度、勤務時間の制度(固定時間制・フレックスタイム制・裁量労働制など)と始業・終業の時刻やコアタイム、就業場所と業務の変更の範囲

書面に書かれた条件で並べ、相談で決まる項目は日数を聞いてから書く

働き方は、求人票の段階では決まっていない項目があります。Offers の同じ求人の集計では、出社の頻度を「相談の上決定する」とした求人が36.7%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載したエンジニア・デザイナー・PdMの正社員求人 n=1,719・2022年3月〜2026年10月公開)。

勤務時間の制度も、求人票の選択の欄だけでは分からないことがあり、同じ求人のなかには、欄では固定時間制を選びながら、勤務時間の説明にはフレックスタイム制とコアタイムの時間帯を書いた求人もありました。始業・終業の時刻とコアタイムの有無は、説明の文と内定時の書面で確かめておきましょう。

相談で決まる項目は、内定時の書面か面談で具体的な日数や制度を確かめ、その答えで比べるのが確実です。

4項目を並べたら、次の順に絞り込みます。

  1. 4項目のうち、譲れない条件を1つ決める(年収の下限、出社の日数など)
  2. 譲れない条件を満たさない内定を外す
  3. 残った内定を、毎月必ず受け取る額で並べる
  4. 額の差が小さければ、役割と評価制度で入社1年後の姿を比べる

保留の期間は限られているので、書面で確かめられない項目は、保留を頼むときにまとめて質問しておくと、返事の期限までに表を埋められます。

保留した内定には、約束した日付より前に返事をする

保留してもらった内定には、約束した日付より前に、承諾か辞退かをはっきり伝えます。承諾するなら入社日とこの先の手続きを確かめ、辞退するなら決めた時点ですぐに、待ってもらったことへのお礼とあわせて伝えましょう。

保留のあとに承諾を伝える例文

承諾のメールは、待ってもらったことへのお礼と、承諾の意思、入社日と手続きの確認の3点で足ります。

件名:内定承諾のご連絡(氏名)

株式会社◯◯ 人事部 ◯◯様

お世話になっております。◯◯(氏名)です。 先日はお返事の時期についてご配慮いただき、ありがとうございました。

検討の結果、貴社からの内定をお受けしたく、ご連絡いたしました。 入社日と、今後の手続きについてお教えいただけますと幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

約束した日付までに決めきれないときは、その日を待たずに前日までに連絡し、何がまだ決まっていないのかを伝えます。2度目の延長は認められないこともあるため、最初に頼む日付は余裕を見て決めておくのが安全です。

承諾したあとで、この会社でよかったのかと迷いが出ることもあります。そのときの考え方は内定ブルーの記事を参考にしてください。

内定が1社だけで比べる相手がいないときも、同じ職種の求人の年収と働き方を見ておくと、提示された条件を測る物差しになります。

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