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みなし残業はやめたほうがいいか|求人票の読み方

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執筆者: Offers Magazine 編集部・株式会社overflow
みなし残業はやめたほうがいいか|求人票の読み方

みなし残業(固定残業代)の求人をやめたほうがいいかどうかは、制度があるかどうかでは決まりません。分かれ目は、求人票に「固定残業代を除いた基本給」「何時間分でいくらか」「その時間を超えた分を追加で払うこと」の3点が書かれているかと、固定の時間が何時間かです。

3点がそろい、実際の残業が固定の時間を下回る職場なら、残業の少ない月も同じ額を受け取れるので、働く側が損をする仕組みにはなりません。3点が欠けている求人や、時間数が長い求人は、応募の前か面接で確かめてから判断すれば十分です。

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執筆者

株式会社overflow

Offers Magazine 編集部

Offers Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する転職サービス Offers の編集チームです。エンジニア・PdM・AI人材のキャリア・年収・転職活動に役立つ情報を届けています。

みなし残業の仕組みと、やめたほうがいいと言われる理由

みなし残業は、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ決めた時間分の残業代を毎月定額で払う仕組みで、求人票では「固定残業代」「みなし残業代」などの名前で書かれます。厚生労働省の職業安定法の改正(2018年1月1日施行)に関する資料も、「時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(いわゆる「固定残業代」)」と説明しています(厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」)。

やめたほうがいいと言われる4つの理由

「やめたほうがいい」と言われる理由は、制度そのものより、運用と見え方の問題が中心です。

  • 固定残業代を含めた額が月給として目に入るので、基本給が低くても見落としやすい
  • 固定の時間を超えて働いても、追加の残業代を払わない会社がある
  • 45時間分のように時間数が長いと、毎月それだけ残業させる職場だと受け取られやすい
  • 同じ月給なら、固定の時間が長いほど基本給と1時間あたりの賃金が下がる

このうち2つ目の未払いは、入社後に起きれば労働基準法に反する運用です。残りの3つは、求人票の数字を読み分ければ応募の前に見当がつきます。

固定残業代のある求人で働く側が得をする場面

固定残業代は、実際の残業が固定の時間より少ない月でも、決めた額が満額支払われます。厚生労働省の資料が「時間外労働の有無に関わらず」支給する手当と説明しているとおりで、残業を減らしても月の手取りが下がりにくい点は働く側の利点です。

仕事の進め方を工夫して残業を減らした人ほど、時間あたりの実質的な賃金が上がる仕組みともいえます。毎月の給与の額が残業の多い少ないで大きく動かないので、生活費の見通しも立てやすくなるでしょう。

みなし残業と裁量労働制・事業場外みなし労働時間制の違い

みなし残業(固定残業代)は残業代の払い方の仕組みで、労働時間そのものを「働いたものとみなす」制度とは別物です。名前が似ている「みなし労働時間制」には、労働基準法が定める次の3つがあります(労働基準法)。

制度

労働基準法

何をみなすか

事業場外みなし労働時間制

第38条の2

事業場の外で働き、労働時間を算定し難いときに、所定労働時間(または業務に通常必要な時間)働いたものとみなす

専門業務型裁量労働制

第38条の3

厚生労働省令で定める業務で、労使協定で定めた時間働いたものとみなす

企画業務型裁量労働制

第38条の4

事業の運営の企画・立案・調査・分析の業務で、労使委員会の決議で定めた時間働いたものとみなす

固定残業代の求人では、実際に働いた時間を会社が把握し、固定の時間を超えた分を追加で払います。裁量労働制の求人は、決めた時間を働いたものとみなす書き方になるので、求人票で「みなし」の語を見たら、残業代の払い方の話か、労働時間のみなしの話かを最初に見分けておくと読み違えません。

求人票で確かめる3点は基本給・時間数と金額・超えた分

固定残業代のある求人で確かめるのは、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代が何時間分でいくらか、その時間を超えた分の割増賃金を追加で払うかの3点です。厚生労働省は職業安定法の改正(2018年1月1日施行)の資料で、固定残業代を採用する求人に次のような記載が必要だと例を示しています(厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」)。

確かめる点

厚生労働省の資料の記載例

読み方

基本給

基本給 ××円(②の手当を除く額)

月給から固定残業代を引いた額か

時間数と金額

□□手当(時間外労働の有無に関わらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)

何時間分でいくらか

超えた分

○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

追加で払うと書いてあるか

Offers に掲載された正社員求人のうち、報酬の説明欄で固定残業代に触れる求人を数えると、時間数を書く求人は86.6%、金額を書く求人は70.3%、超えた分の扱いを書く求人は66.7%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・報酬の説明欄で固定残業代に触れる正社員求人 n=700・2022年9月〜2026年10月公開)。

報酬の説明欄に書ききれない点は、求人の他の欄や面談、オファー面談で確かめられます。

Offers の求人詳細の給与・報酬の欄は、会員登録をすると読める仕組みです。IT プロダクト職の正社員求人を Offers で探し、固定残業代の書き方まで比べてから応募先を絞ると、入社後に条件の思い違いが起きにくくなります。

固定残業代の時間数は45時間分が最も多い

求人の固定残業代の時間数は、45時間分が最も多い設定です。Offers に掲載された正社員求人で報酬の説明欄に時間数を書く求人を数えると、45時間分が28.4%、30時間分が23.4%、20時間分が19.1%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・報酬の説明欄に固定残業代の時間数を書く正社員求人 n=606・2022年9月〜2026年10月公開)。

固定残業代の時間数

割合

20時間分以下

21.8%

21〜30時間分

33.2%

31〜44時間分

13.0%

45時間分

28.4%

46時間分以上

3.6%

45時間という数字は、労働基準法第36条第4項が定める時間外労働の限度時間(1か月45時間・1年360時間)と同じです(労働基準法)。厚生労働省の解説でも、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間で、月45時間を超えられるのは年6か月までとされています(厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。

年360時間を12か月で割ると月30時間なので、45時間分の固定残業代は、毎月45時間まで残業する前提というより、忙しい月の上限まで見込んだ設定と読めます。固定の時間と、配属先の実際の平均残業時間を並べて比べると、職場の働き方の見当がつくはずです。

46時間分以上の求人は、原則の上限を超える時間を毎月の賃金の前提に置いている形です。36協定(=会社と労働者の代表が結ぶ、残業の上限時間の取り決め)の特別条項の有無と、実際に45時間を超える月がどれくらいあるかを聞いておきましょう。

同じ月給でも時間数で基本給と1時間あたりの賃金が変わる

固定残業代を含む月給が同じでも、固定の時間が長いほど基本給と1時間あたりの賃金は下がります。月給50万円の求人で、固定の時間だけを変えて編集部が計算した例が次の表です。

固定残業代の時間数

基本給

固定残業代

月給に占める固定残業代

1時間あたりの基本給

超えた1時間の残業代

20時間分

432,432円

67,568円

13.5%

2,703円

3,378円

30時間分

405,063円

94,937円

19.0%

2,532円

3,165円

45時間分

369,942円

130,058円

26.0%

2,312円

2,890円

前提は、1か月の所定労働時間160時間、割増率25%、月給は基本給と固定残業代だけです。割増率は、労働基準法第37条第1項と同項に基づく政令が時間外労働に求める2割5分以上の下限を置きました(1か月60時間を超えた時間は5割以上)。

45時間分の固定残業代で月に50時間残業した場合、超えた5時間分として、表の1時間あたり2,890円で計算すると1万4,450円ほどが追加で支払われる計算です。追加の支払いが給与明細に載っているかは、入社後に毎月確かめておきたい点になります。

20時間分と45時間分では、同じ月給50万円でも基本給に6万円あまりの差が出ます。賞与を「基本給の◯か月分」で決める会社なら、この差は賞与にもそのまま響くはずです。

求人を比べるときは、固定残業代を除いた基本給どうしで並べるのが確実です。年収の幅の読み方は「モデル年収の読み方」でも扱っています。

年収の高い求人の固定残業代は少なめで時間数は長め

年収の高い求人ほど固定残業代に触れる割合は下がりますが、触れる求人では時間数が長めです。Offers に掲載された正社員求人を年収の下限で分けると、報酬の説明欄で固定残業代に触れる割合は、600万円未満で43.7%、600〜799万円で33.1%、800万円以上で29.2%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=1,801・2022年3月〜2026年10月公開)。

ところが、時間数を書く求人に絞ると、45時間分以上の割合は年収の下限600万円以上の求人のほうが高くなります。

時間数

年収の下限600万円未満

年収の下限600万円以上

20時間分以下

28.9%

9.8%

21〜30時間分

32.4%

34.2%

31〜44時間分

13.7%

12.0%

45時間分以上

25.0%

44.0%

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・報酬の説明欄に固定残業代の時間数を書く正社員求人(600万円未満 n=380・2022年9月〜2026年10月公開、600万円以上 n=225・2023年5月〜2026年10月公開)。

ハイクラスの求人では、年収の額が大きいぶん、固定残業代の比重が見えにくい点に注意が要ります。賞与を含まない年収800万円で45時間分の固定残業代を含むなら、計算例と同じ割合で、月給の4分の1ほどが固定残業代です。年収の総額に加えて、基本給の額と固定の時間数をそろえて比べておくと安心でしょう。

違法になる書き方と、入社後に違法になる運用

求人の段階で問題になるのは、時間数などを示さずに固定残業代を基本給に含めて表示する書き方です。厚生労働省は、2022年10月1日施行の改正職業安定法の資料で、求人情報の虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じる例として、「固定残業代を採用する場合に、基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示してはなりません」と示しています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。

たとえば「月給32万円(固定残業代を含む)」とだけあり、何時間分でいくらかが分からない求人は、この例に当たるおそれがあります。同じ資料は、基本給25万円と固定残業代7万円を分け、時間数と超えた分を追加で払う旨を添える書き方を正しい例に挙げています。

入社後に問題になるのは、固定の時間を超えて働いた分の割増賃金を払わない運用です。労働基準法第37条第1項と同項に基づく政令は、時間外労働に通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を払うよう定めています(労働基準法・政令「時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」)。固定残業代で払われるのは決めた時間分の割増賃金なので、その時間を超えた分は別に支払う必要があります。

入社後は、給与明細で固定残業代と、固定の時間を超えた分の時間外手当が別の行に分かれているかを見ると、超えた分が払われているかを確かめられます。勤怠の記録で毎月の残業時間を手元に控えておけば、固定の時間を超えた月と明細を突き合わせることも可能です。

すでに入社していて超えた分が払われていないときは、勤務の記録(タイムカード・PC のログ・メール)と給与明細を残したうえで、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談できます。

面接とオファー面談で確かめる質問

求人票で分からなかった点は、面接やオファー面談で数字を指定して聞くと、答えがあいまいになりません。

  • 提示額のうち、固定残業代を除いた基本給はいくらか
  • 固定残業代は何時間分で、いくらか
  • 固定の時間を超えた分は、何をもとにどう払われるか
  • 配属予定のチームの直近の平均残業時間と、多い月の時間はどれくらいか
  • 賞与や昇給は、基本給と月給のどちらを基準に決まるか

条件の話を切り出す順番に迷うなら、事業と役割を先に聞き、その役割に対する年収の内訳として固定残業代を尋ねると自然です。聞き方の流れは「カジュアル面談での年収の聞き方」にまとめています。

固定残業代の時間数や基本給の額は、同じ職種でも企業によって大きく違うのが実情です。Offers で気になる企業の正社員求人を集め、報酬の書き方を並べて比べてから面談に臨むと、聞くべき点が絞れます。

みなし残業の求人を受けてよいケースと確かめたいケース

みなし残業の求人は、3点が書かれ、実際の残業が固定の時間を下回る職場なら、安心して受けてよい求人です。判断の目安を表にまとめます。

受けてよいケース

確かめたいケース

基本給・時間数と金額・超えた分の支払いが書かれている

固定残業代を含む月給だけが書かれている

固定の時間が実際の平均残業時間より長い

平均残業時間が固定の時間に近い、または上回る

45時間分以下で、超える月の扱いを説明できる

46時間分以上で、特別条項の説明が無い

基本給どうしで比べても希望の水準に届く

基本給だけで見ると現職を下回る

「やめたほうがいい」と言われる理由の多くは、制度そのものではなく、書き方のあいまいさと運用の問題です。求人票の3点と時間数を読み、面談で実際の残業時間を確かめれば、固定残業代のある求人も条件の一つとして冷静に比べられます。年収が下がるリスクの見積もり方は「エンジニアの転職リスクと失敗を防ぐ確認ポイント」でも扱っています。

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