年収を上げたい、もっと技術に向き合える環境に移りたい。そう考えて転職したエンジニアでも、入社してから「聞いていた条件と違う」と感じることがあります。

転職のリスクは運だけで決まるものではありません。公的統計と Offers に載る正社員求人のデータをもとに、エンジニアの転職で起こりやすいリスクと、それを入社前に見抜くための確認の仕方をまとめました。

エンジニアの転職リスクは年収・仕事内容・働き方の3つのずれ

エンジニアの転職リスクとは、転職後の年収・仕事内容・働き方が、入社前に想定していたものとずれることです。厚生労働省の統計では、雇用期間の定めのない働き方どうしの転職でも約3割は前職より賃金が下がり、転職者が今の勤め先に感じる満足度は賃金の項目が最も低くなっています。こうしたずれの多くは、求人票の読み方と面接での質問で事前に小さくできるものです。

雇用期間の定めのない一般労働者どうしの転職でも29.0%は賃金が下がった

厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」によると、2025年に雇用期間の定めのない一般労働者どうしで転職した人のうち、前職より賃金が増えた人は44.5%、減った人は29.0%でした。1割以上減った人は18.7%です。

前職と比べた賃金

割合

増加

44.5%

変わらない

25.0%

減少

29.0%

うち1割以上の減少

18.7%

出所: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」表7(一般労働者のうち雇用期間の定めなし→雇用期間の定めなし・2025年)。

転職で賃金が上がる人の方が多い一方で、下がる人も少なくありません。年収を上げるために動くなら、提示額が現職を下回ったときにどうするかを、応募の前に決めておく必要があります。

転職者の満足度は賃金の項目が最も低い

厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」によると、転職者の今の勤め先への満足度 D.I.(「満足」「やや満足」の割合から「不満」「やや不満」の割合を引いた値)は、職業生活全体で44.0ポイントでした。項目別では、仕事内容・職種が57.8ポイントと高い一方、賃金は22.2ポイントで、調べた項目の中で最も低い値です。

満足度の項目

満足度 D.I.

職業生活全体

44.0

仕事内容・職種

57.8

労働時間・休日・休暇

47.9

賃金

22.2

出所: 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」図4・表14(2025年10月1日時点)。

賃金に「不満」「やや不満」と答えた転職者は27.6%いました。転職後の不満は、仕事内容より賃金に出やすいと読めます。

前の会社を辞めた理由の上位は賃金・会社の将来・仕事内容

同じ転職者実態調査で、自己都合で前の勤め先を辞めた転職者の離職理由(3つまでの複数回答)は、「賃金が低かったから」が25.5%、「会社の将来に不安を感じたから」が25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」が24.7%の順でした。

転職先を選ぶときにこの3点を確かめておかないと、転職先でも同じ理由で不満を抱えることになりかねません。転職者が今の勤め先を選んだ理由では「仕事の内容・職種に満足がいくから」が40.2%で最も多い項目です。仕事内容で選ぶ人が多いからこそ、求人票と実際の業務の差を入社前に確かめる意味があります。

年収が下がるリスクは求人票の年収の幅と固定残業代で見積もる

年収が想定より下がるリスクは、求人票の年収の幅のどこで提示されそうかと、月給に固定残業代がどれだけ含まれるかを読むことで、応募前にある程度見積もることが可能です。Offers に載る正社員求人では、年収の上限と下限の差の中央値が400万円あり、報酬の説明を書いた求人の38.8%が固定残業代に触れています。

正社員求人の年収は上限と下限で中央値400万円の幅がある

Offers に載る正社員求人の年収は、下限の中央値が540万円、上限の中央値が970万円でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=3,267・2026年10月集計)。上限が下限の1.5倍以上ある求人は70.8%です。

提示される年収は、この幅の中で経験とスキルの評価によって決まります。上限の金額だけを見て応募すると、提示額が下限に近く、現職を下回ることがあります。カジュアル面談や一次面接で「この年収の幅の中で、どんな経験の人がどのあたりに入るか」を聞いておくと、提示額の見当がつくはずです。

固定残業代の時間を読み取れた求人の32.1%は45時間分以上

Offers に載る正社員求人のうち報酬の説明を書いた求人では、固定残業代(みなし残業)に触れている求人が38.8%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=1,792・2026年10月集計)。含む残業の時間を読み取れた求人では、45時間分以上が32.1%を占めます。

固定残業代に含む時間

割合(n=586)

20時間以下

23.9%

21〜30時間

31.7%

31〜44時間

12.3%

45時間以上

32.1%

出所: Offers(株式会社overflow)調べ・報酬の説明欄に固定残業代の時間を書いた正社員求人・2026年10月集計。

厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」によると、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。固定残業代が45時間分あっても、毎月45時間の残業があるとは限りません。ただ、同じ月給でも、基本給がいくらで何時間分の残業代が含まれるかによって、時間あたりの賃金は変わる点に注意が必要です。

厚生労働省の求職者向けリーフレット「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」では、固定残業代を採用する求人の記載として、基本給の額、何時間分の手当がいくらか、その時間を超えた分の割増賃金を追加で支払うことの3点を挙げています。求人票とオファー面談でこの3点を確かめ、配属先の実際の残業時間もあわせて聞いておくのが確実です。

試用期間中の雇用形態と給与も確かめる

Offers に載る正社員求人のうち報酬の説明を書いた求人では、試用期間に触れている求人が54.9%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=1,792・2026年10月集計)。「試用期間中も条件の変更なし」と書く求人がある一方で、試用期間中は契約社員として雇う求人もあります。

前述の厚生労働省のリーフレットの記載例にも「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」とあり、試用期間の賃金を本採用後と分けて定めることがあります。試用期間の長さ、その間の雇用形態と給与は、内定の前に書面で確かめておくと安心です。

求人ごとの年収の幅や報酬の書き方は、実際の求人票を何件か並べると違いが見えてきます。Offers Jobs は、エンジニア・デザイナー・PdM の正社員求人を会員登録なしで検索できる求人検索です。

仕事内容と技術環境のずれは面接での質問で減らせる

入社後に「聞いていた仕事と違う」となるリスクは、求人票に書かれた業務と、配属先で実際に任される業務の差から生まれます。2024年4月から、企業は求人の段階で業務と就業場所の「変更の範囲」も示すことになり、面接やカジュアル面談ではその中身を具体的に質問できます。

求人票で業務と就業場所の「変更の範囲」を読む

厚生労働省の求職者向けリーフレットによると、2024年4月から求人企業が募集の段階で示す労働条件に加わったのが、従事すべき業務の変更の範囲と、就業場所の変更の範囲です。「変更の範囲」は、雇い入れた直後だけでなく、将来の配置転換などの見込みも含みます。

業務の変更の範囲が広く書かれている求人では、入社後に別の業務やプロジェクトへ移る可能性があります。リモートワークを前提に応募するなら、就業場所の変更の範囲に出社先の拠点が含まれていないかも確認が必要です。書かれた範囲が広いこと自体は悪いことではありませんが、どんな場合に変わるのかは面接で聞いて確かめておきます。

面接では配属先の業務と技術環境を質問する

技術環境のずれは、面接で「どの技術を使いますか」と聞くだけでは見えにくいものです。配属先のチームが今どんな課題を抱え、入社者に何を任せたいのかまで聞くと、実際の業務に近い姿がつかめます。

確かめること

質問の例

入社後に任される業務

入社後3か月で任せたい仕事は何ですか

技術スタックと技術的負債

主に触るコードの言語やフレームワークと、置き換えの予定はありますか

開発の進め方

要件は誰が決め、リリースはどれくらいの頻度ですか

配属先のチーム

チームの人数と役割、コードレビューの体制はどうなっていますか

業務の変更の範囲

どんな場合に担当の業務やプロジェクトが変わりますか

カジュアル面談のように選考の前に話を聞ける場は、こうした質問を面接より気軽に出せる機会です。質問の準備の仕方は「カジュアル面談の準備と当日の流れ・質問の仕方」にまとめています。

評価と役割のずれは入社前に期待をそろえて防ぐ

転職後に評価されない、任される範囲が想定より狭いといったリスクの原因は、企業が入社者に期待する役割と、自分が想定している役割の差です。オファー面談で入社後の期待と評価の基準を言葉にしてもらえば、このずれは入社前に見つけられます。

評価の基準と昇給の決まり方を聞く

前職と評価の仕組みが大きく違うと、同じ働き方をしても評価が下がることがあります。年次や在籍期間を重く見る会社から、成果や役割の大きさで評価する会社に移る場合は、特に差が出やすい点です。

オファー面談では、評価の周期、何をもって評価されるか、昇給の幅がどう決まるかを聞きます。入社時の年収が希望に届かなくても、次の評価でどこまで上がる見込みがあるかが分かれば、提示額を受けるかどうかを判断しやすくなります。

入社後3か月の期待を具体的にしておく

入社後の立ち上がりで苦労するのは、何ができれば合格なのかが分からないまま働く場合です。入社前に「最初の3か月で何を任され、何ができていれば期待どおりか」を確かめておけば、入社後の優先順位を迷いません。

入社してからも、最初の1か月のうちに上長と期待を確かめ直す場を持つと、ずれが小さいうちに直せます。前職のやり方をそのまま持ち込む前に、新しいチームの開発の進め方とレビューの基準を先に把握しておくと、周囲との摩擦も起きにくいはずです。

辞めてから探すリスクと転職しないリスクも比べて決める

転職そのもののリスクだけでなく、現職を辞めてから活動するリスクと、転職しないで今の会社に残るリスクも比べると、判断が偏りにくくなります。活動は在職中に始め、内定が出てから退職の時期を決めるのが安全です。

在職中に活動して焦りによる妥協を避ける

現職を辞めてから動くと、収入が途切れる焦りから、条件の合わない求人で決めてしまうことがあります。選考にかかる期間は企業によって幅があり、いつ内定が出るかは事前に読みにくいものです。在職中に応募を始めれば、提示された条件が合わないときに断る余裕を持てます。活動期間の考え方と退職のタイミングは「エンジニアの転職活動期間と退職のタイミング」で詳しく扱っています。

今の会社に残るリスクも同じ基準で見積もる

転職のリスクばかりを調べていると、動かない方が安全という考えに傾きがちです。ただ、転職者実態調査で離職理由の上位だった賃金・会社の将来・仕事内容のいずれかに今の会社で不満があるなら、残ることにもリスクがあります。

転職先の候補と今の会社を、年収・仕事内容・評価・働き方の同じ項目で並べてみてください。内定が出たあとに迷いが強くなる場合の向き合い方は「内定ブルーとは|転職で内定後に迷う原因と対処法」が参考になります。

転職リスクを下げる確認は応募前・選考中・内定後の3段階で行う

エンジニアの転職リスクを下げる確認は、応募前に求人票で、選考中に面接で、内定後に書面で行う3段階に分けると漏れが減ります。段階ごとに見る資料が違うため、確かめる項目もそれぞれの段階に割り振っておくのが確実です。

段階

確かめること

見る資料・場

応募前

転職の目的と譲れない条件、年収の幅、固定残業代の時間、試用期間

求人票

選考中

任される業務と変更の範囲、技術環境、チーム、評価の基準

面接・カジュアル面談

内定後

提示年収の内訳、試用期間中の条件、入社後3か月の期待

労働条件の書面・オファー面談

応募前の段階で譲れない条件を2つか3つに絞っておくと、提示された条件を比べるときに迷いません。応募先の候補を広げるときは、Offers Jobs で正社員求人の年収や働き方の条件を見比べてから、確かめる項目を決めると効率的です。

書類選考や面接で落ち続けて先に進めない場合は、リスクより手前の、応募先と経験の伝え方の組み合わせに原因があるかもしれません。その場合は「エンジニア転職が難しい理由と成功までのステップ」を参考にしてください。

エンジニアの転職リスクは入社前の確認で小さくできる

エンジニアの転職リスクは、年収・仕事内容・働き方が入社前の想定とずれることです。公的統計では、雇用期間の定めのない働き方どうしの転職でも約3割は賃金が下がり、転職者の満足度は賃金の項目が最も低くなっています。

年収のずれは、求人票の年収の幅と固定残業代の時間、試用期間中の条件を読めば応募前にある程度見積もることができ、仕事内容と評価のずれは、業務の変更の範囲と入社後の期待を面接で具体的に聞くことで減らせます。応募前・選考中・内定後の3段階で確かめる項目を決めてから、転職活動を始めてください。