Ansible の経験を活かせる正社員求人は、「Ansibleエンジニア」という職種名ではほとんど出ていません。
求人票に Ansible が書かれる割合は SRE(Site Reliability Engineering・サービスの信頼性を担う職種)やインフラエンジニアの求人で高く、Terraform などと並ぶ IaC(Infrastructure as Code・インフラの構成をコードで管理する手法)の道具の一つとして挙げられる例が多く見られます。転職で問われるのは、Ansible を書けるかどうかより、どの環境のサーバーを、どんな仕組みで自動化してきたかです。
Offers に掲載された正社員求人を集計し、Ansible が出てくる求人の数と職種の偏り、Terraform との違い、SRE・インフラ系の求人の年収帯と一緒に求められる技術を確かめたうえで、経験を評価される形で示す方法と資格、求人の探し方をまとめました。
Ansibleはサーバーの設定を自動化する構成管理ツール
Ansible は、サーバーの OS(オペレーティングシステム)やソフトウェアの設定を自動化するオープンソースの構成管理ツールで、あるべき状態を YAML(人が読み書きしやすいデータの書式)で書いた playbook(プレイブック)に従って、対象のシステムをその状態にそろえます。
Ansible の公式ドキュメントは設計の原則として、管理対象に専用のソフトウェア(エージェント)を入れずに SSH(Secure Shell・暗号化した遠隔接続の仕組み)と既存の OS の認証情報で接続すること、playbook が示す状態にすでになっているシステムには何も変更を加えない冪等性(べきとうせい)を挙げています(Ansible Documentation「Introduction to Ansible」・2026年10月確認)。
対象は Linux などのサーバーに限らず、クラウドのサービスやネットワーク機器にも広がっており、システムの構成管理のほか、ソフトウェアのデプロイや、サービスを止めずに順に更新するローリングアップデートにも使われます。Ansible の仕組みと基本的な使い方は「Ansibleとは」で扱っています。
Ansible を扱う技術者を指す「Ansibleエンジニア」という職種の区分は、公的な統計の職種分類にはありません。Offers の正社員求人でも、タイトルに Ansible を入れた求人は0件で(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月集計)、実際の求人は SRE、インフラエンジニア、クラウドエンジニアといった職種名で出ています。Ansible はその仕事で使う道具の一つとして書かれる、と考えて求人を読むのが実態に近い見方です。
TerraformとAnsibleは併用されることが多いIaCの道具
Terraform はクラウドのサーバーやネットワーク、データベースといったリソースそのものを宣言して作成・変更するツールで、Ansible はサーバーの中の OS やソフトウェアの設定をそろえるツールです。扱う層が違うため、両方を同じ求人票に並べて書く求人が目立ちます。
Offers の正社員求人で Ansible が出てくる86件のうち48件には Terraform も出てきており、その多く(42件)は IaC や構成管理の項目、技術の一覧に Ansible と Terraform を並べる書き方でした。
管理できる対象には重なる部分もあるため、どこまでを Terraform で作り、どこからを Ansible で設定するかの線引きは会社ごとに違います。Terraform の経験が求められる求人の傾向は「Terraformの転職事情」で扱っています。
Ansible Towerはautomation controllerに名前が変わった
Red Hat が提供する企業向けの実行基盤「Ansible Tower」は、2021年の Red Hat Ansible Automation Platform 2 で「automation controller」に名前を改めました(Red Hat「What's new in Ansible Automation Platform 2: automation controller」・2021年10月5日)。
automation controller は、playbook をジョブとして Web の画面や API(Application Programming Interface・ほかのシステムから操作するための窓口)から実行し、利用者ごとの権限、認証情報、実行の履歴をまとめて管理する仕組みです(Red Hat「automation controller」・2026年10月確認)。
職務経歴書に Ansible Tower の運用経験を書くなら、今の名称の automation controller を併記すると、読み手が現行の製品と結びつけやすくなります。ただし Offers の正社員求人3,308件のうち、Ansible Automation Platform・Ansible Tower・automation controller などの名前を挙げる求人は1件でした。実行基盤の名前より、自動化した中身が問われると考えてよいでしょう。
Ansibleが出てくる求人はTerraformの約5分の1
2022年3月から2026年9月までに Offers に掲載された正社員求人3,308件のうち、求人票に Ansible が出てくる求人は86件(2.6%)で、Terraform が出てくる397件(12.0%)の約5分の1でした。このうち2026年10月2日時点で公開中の求人は23件です(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=3,308・2026年10月集計)。
IaC・構成管理ツールの中でAnsibleはTerraformに次ぐ
求人票に IaC・構成管理ツールのどれかが出てくる Offers の正社員求人467件のうち、Ansible が出てくる求人は18.4%で、Terraform の85.0%に次ぎます。Chef・Itamae・Puppet はいずれも2%未満で、サーバーの中の設定を管理する構成管理ツールに絞ると、Ansible 以外のツールが出てくる求人は14件にとどまります。
ツール | 求人票に出てくる割合 |
|---|---|
Terraform | 85.0% |
Ansible | 18.4% |
AWS CloudFormation | 12.2% |
AWS CDK | 12.2% |
Pulumi | 2.6% |
Chef | 1.9% |
Itamae | 1.1% |
Puppet | 0.9% |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・求人票に IaC・構成管理ツールのどれかが出てくる正社員求人・2022年3月〜2026年9月掲載 n=467・2026年10月集計。
求人票に構成管理ツールとして書かれるのは大半が Ansible なので、Chef や Puppet の経験がある人も、その経験を Ansible でどう置き換えられるかまで説明できると、応募できる求人の幅が広がります。
必須条件にAnsibleを挙げる求人は別のIaCツールと並べて書く
必須条件に Ansible を挙げる求人は11件で、正社員求人全体の0.3%でした。必須条件に Terraform を挙げる求人(33件・1.0%)と比べても少なく、11件のうち7件は「Terraform、CloudFormation、Ansible等によるIaCの実務経験」のように、別の IaC・構成管理ツールと並べて挙げる書き方です。
Ansible の名前だけを応募の条件にする求人はまれで、求められているのはインフラをコードで管理した経験そのものです。Ansible の経験は、Terraform などと並べて書かれた「IaC の実務経験」の条件を満たす材料として示せます。
Ansibleが出てくる求人はSRE・インフラ系の職種に偏る
求人タイトルに書かれた職種名で分けると、SRE・インフラ・クラウド・DevOps・プラットフォームエンジニアなどのインフラ系の求人では14.6%に Ansible が出てくるのに対し、バックエンド・Web 開発、テックリード・エンジニアリングマネージャー、データ、フロントエンド・モバイルの求人ではいずれも2.2%以下でした(Offers(株式会社overflow)調べ・掲載された正社員求人 n=3,308・2026年10月集計)。
Terraform がインフラ系(28.4%)とテックリードなど(28.1%)でほぼ同じ割合で出てくるのとは対照的です。
職種(求人タイトルの職種名) | 求人の件数 | Ansible が出てくる割合 | Terraform が出てくる割合 |
|---|---|---|---|
SRE・インフラ・クラウド・DevOps・プラットフォームエンジニア | 268件 | 14.6% | 28.4% |
バックエンド・Web 開発 | 554件 | 2.2% | 14.6% |
テックリード・エンジニアリングマネージャー・開発責任者 | 249件 | 1.6% | 28.1% |
データエンジニア・データアナリスト等 | 115件 | 1.7% | 21.7% |
フロントエンド・モバイル | 306件 | 0.3% | 11.4% |
その他(PdM・PM・QA・デザイナー・職種名を特定しないタイトル等) | 1,791件 | 1.5% | 5.9% |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・2022年3月〜2026年9月掲載の正社員求人 n=3,308・2026年10月集計。
Terraform はデータやバックエンドの求人でも1〜2割に出てくるのに対し、Ansible がインフラ系以外の職種区分の求人に出てくる割合は低くとどまります。ただし件数で見ると、Ansible が出てくる86件のうち47件はインフラ系以外の職種名の求人で、求人の母数が大きいその他やバックエンドの区分に多く含まれます。
Ansible の経験を主な武器に転職するなら、SRE・インフラ系の求人が応募先の中心になります。SRE の役割は「SREとは」、サーバーの運用を軸にした転職は「Linuxエンジニアの転職事情」も参考にしてください。
SRE・インフラ系の求人の年収帯は上限の中央値900万円
Offers に掲載された、職種名が SRE・インフラ系の正社員求人のうち年収を記載した求人では、提示年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が900万円でした。上限が800万円以上の求人は76.7%、1,000万円以上の求人は40.2%です(Offers(株式会社overflow)調べ・年収記載のある正社員求人 n=266・2022年11月〜2026年9月掲載)。
指標 | 値 |
|---|---|
年収下限の中央値 | 500万円 |
年収上限の中央値 | 900万円 |
上限が800万円以上の求人 | 76.7% |
上限が1,000万円以上の求人 | 40.2% |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・職種名が SRE・インフラ系で年収の下限と上限を記載した正社員求人・2022年11月〜2026年9月掲載 n=266・2026年10月集計。
公的統計と比べると、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」の年収換算は、ソフトウェア作成者が578.5万円、システムコンサルタント・設計者が889.0万円です(毎月の給与の12か月分と年間賞与などの合計を編集部が算出)。SRE・インフラ系の求人の下限の中央値500万円はソフトウェア作成者の水準を下回り、上限の中央値900万円はシステムコンサルタント・設計者の水準に近い額です。求人の上限は経験と役割が合えば出せる額で、応募者全員に提示される額ではない点に注意してください。
自分の経験で届く求人と年収帯を確かめるには、実際の求人票を見比べるのが早道です。Offers Jobs では、会員登録なしで IT 職の正社員の公開求人を検索し、求人ごとの必須条件と提示年収を確かめられます。
SRE・インフラ系の求人票に出てくる技術はAWSが最多
SRE・インフラ系の正社員求人の求人票には、AWS(Amazon Web Services)が81.7%、Google Cloud が44.8%、Azure が43.3%の割合で出てきます。サーバーの中を扱う技術では Linux が32.8%、VMware などの仮想化が23.9%、オンプレミス(自社で保有するサーバー)が22.8%で、Ansible は14.6%、Terraform は28.4%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=268・2026年10月集計)。
技術・語 | 求人票に出てくる割合 |
|---|---|
AWS | 81.7% |
Google Cloud | 44.8% |
Azure | 43.3% |
コンテナ(Docker 等) | 39.6% |
Linux(RHEL・CentOS・Ubuntu を含む) | 32.8% |
CI/CD(GitHub Actions・CircleCI・GitLab CI・Jenkins・Argo CD 等) | 32.5% |
Terraform | 28.4% |
仮想化(VMware・Hyper-V 等) | 23.9% |
Python | 23.5% |
オンプレミス | 22.8% |
Kubernetes(EKS・GKE・AKS を含む) | 19.0% |
Ansible | 14.6% |
Terraform 以外のプロビジョニングツール(CloudFormation・AWS CDK・Pulumi) | 13.8% |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・職種名が SRE・インフラ系の正社員求人・2022年11月〜2026年9月掲載 n=268・2026年10月集計。
クラウドの求人が中心である一方で、Linux・仮想化・オンプレミスの語もそれぞれ2〜3割の求人に出てきます。クラウドのマネージドサービスだけでなく、仮想サーバーや自社のサーバーの OS とソフトウェアを設定・運用する仕事を含む求人が、Ansible の経験を直接活かしやすい応募先です。コンテナの運用に軸足を移すなら「Kubernetesの転職事情」も参考にしてください。
必須条件はAnsibleの名前より実務経験と設計を問う
SRE・インフラ系の求人のうち、必須条件に「実務経験」「業務経験」「開発経験」「運用経験」「構築経験」のどれかの語がある求人は66.4%、AWS・Google Cloud・Azure・クラウドの語がある求人は51.1%、「設計」の語がある求人は48.9%でした。「3年以上」のような「N年以上」の年数の条件がある求人も47.8%あります。これに対し、必須条件に IaC・構成管理ツールの語がある求人は11.2%、Linux・Unix の語がある求人は17.5%です。
必須条件で見られるのは、Ansible を使った経験そのものより、クラウドやサーバーのインフラを設計し、実務で運用してきた経験です。Ansible の経験は、その実務の中でどの作業を自動化したかとして書くと、必須条件の言葉と結びつきます。
Ansibleの経験を転職で評価される形にする4つの方法
Ansible の経験を転職で評価される形にする方法は、自動化した対象と規模を書く、playbook とロールの設計の判断を示す、実行と変更の仕組みを示す、資格は実務の補強として使う、の4つです。SRE・インフラ系の求人の66.4%は必須条件に実務経験などの語を含むため(Offers(株式会社overflow)調べ・n=268・2026年10月集計)、見られるのは Ansible を書けるかどうかではなく、実務で何を自動化してきたかです。
自動化した対象と規模を書く
職務経歴書には「Ansible を使用」とだけ書くのではなく、どの OS の、何台のサーバーの、どの設定を Ansible で管理したかを書いてください。たとえば、本番と検証の2環境にある Linux サーバー数十台の OS 設定とミドルウェアの導入を playbook にまとめた、手順書を見ながら手作業で行っていた構築を playbook に置き換えて作業時間を短くした、のように書くと、採用担当者は応募先の環境との近さを判断できます。
ネットワーク機器や Windows サーバーの設定を Ansible で自動化した経験も、対象の種類として書いておくと、応募できる求人の幅が広がります。Red Hat の認定にも Windows の自動化とネットワークの自動化をそれぞれ扱う試験が用意されているほどで、どちらも Ansible の中で専門の領域です。
playbookとロールの設計の判断を示す
Ansible の設計の経験は、何を選んだかに加えて、なぜそう選んだかまで示すと具体的に伝わります。playbook をロール(役割ごとの部品)にどう分けたか、環境ごとの違いを変数とインベントリ(管理対象の一覧)でどう切り替えたか、パスワードなどの秘密情報を Ansible Vault でどう守ったか、何度実行しても同じ結果になることをどう確かめたかを、面接で1つ以上語れるようにしてください。
Red Hat の EX294 の試験も、インベントリ・変数・ロール・Ansible Content Collections(モジュールやロールをまとめた配布単位)・Ansible Vault を扱えることを求めています(Red Hat「EX294」・2026年10月確認)。どれも実務の設計で判断が分かれる部分なので、うまくいかなかった分け方とその直し方まで話せると、設計の経験として伝わりやすくなります。
実行と変更の仕組みを示す
playbook の変更を誰がどうレビューし、どの仕組みで本番に反映しているかを書くと、チームでの運用経験が伝わります。Git で playbook を管理して pull request でレビューする、CI(継続的インテグレーション)で構文の確認や検証環境への適用を自動で回す、automation controller でジョブの実行権限と履歴をまとめて管理する、といった経験です。
SRE・インフラ系の求人の32.5%に CI/CD が、28.4%に Terraform が出てくるため、Ansible の経験は CI/CD や Terraform の経験と組み合わせて書くのが基本です。Terraform と併用してきた人は、どこまでを Terraform で作り、どこからを Ansible で設定したかの線引きと、その理由を説明できるようにしておいてください。
資格は実務の補強として使う
Ansible の資格は Red Hat の認定が中心で、Red Hat は認定を5つの段階に分けています。
Ansible の分野では、RHCSA(EX200)と EX294 の2つの試験に合格すると「Red Hat Certified Engineer in Ansible」、さらに Ansible の専門の試験4つ(EX374・EX417・EX457・EX467)のうち3つ以上に合格すると「Red Hat Certified Architect in Ansible」の認定を得られます(Red Hat「Red Hat Certifications」・2026年10月確認)。
EX294 は、Red Hat Ansible Automation Platform で playbook を書いて実際のシステム管理の作業をこなす実技試験で、試験中はインターネットに接続できません。
一方で、Offers の正社員求人3,308件のうち、RHCE(Red Hat Certified Engineer)の語を含む求人は0件で、Red Hat の資格の名前を挙げる求人は4件でした。資格は知識を体系的に確かめる材料にはなりますが、求人票の必須条件が問うのは実務経験の中身です。資格は実務経験を補う位置づけで考え、職務経歴書の書き方は「エンジニアの職務経歴書の書き方」を参考にしてください。
Ansibleの求人は職種名ではなく技術で探す
Ansible の経験を活かせる求人は、「Ansibleエンジニア」という職種名で探すより、Ansible や使ってきた OS・クラウドの名前を条件にして探す方が見つけやすくなります。Offers に掲載された求人で Ansible が出てくる86件のうち、職種名が SRE・インフラ系の求人は39件で、残りはバックエンドエンジニアやテックリードなど別の職種名か、職種名を特定しないタイトルで募集されていました(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月集計)。
探すときは、次の順で求人を絞ると、自分の経験に近い募集が見つけやすくなります。
- Ansible と、使ってきた技術(Linux・AWS・Terraform など)で検索し、職種名を問わず候補を集める
- 求人票で、Ansible が必須か、歓迎か、開発環境の一覧に並ぶだけかを確かめる
- クラウドのマネージドサービスが中心か、仮想サーバーやオンプレミスの運用も含むかを確かめる
- 提示年収の下限と上限を見て、今の年収との差を確かめる
Offers Jobs では、技術や職種を条件に IT 職の正社員の公開求人を探し、求人票の必須条件・歓迎条件・提示年収を確かめられます。
Ansibleエンジニアの転職の要点
Offers に掲載された正社員求人のうち Ansible が出てくる求人は2.6%で、Terraform(12.0%)の約5分の1です。SRE・インフラ系の職種名の求人では14.6%に上がり、バックエンド・テックリード・データ・フロントエンドなど件数が100件以上あるほかの職種区分では2.2%以下にとどまります(Offers(株式会社overflow)調べ・掲載された正社員求人 n=3,308・2026年10月集計)。
SRE・インフラ系の求人の提示年収は、下限の中央値500万円、上限の中央値900万円です。
Ansible の経験を転職で活かすには、自動化した対象と規模、playbook とロールの設計の判断、実行と変更の仕組みを具体的に示すことです。まずは Ansible と使ってきた技術の名前で求人を探し、Ansible が必須か歓迎か開発環境の一覧かを見分けながら、必須条件と提示年収を今の経験と見比べるところから始めてください。

