ITアーキテクトの年収は、どの会社のどの立場で働くかによって大きく変わります。公的統計にはITアーキテクトという職種区分が無く、求人でも、システム全体の構成を決める人を指す会社もあれば、クラウドの設計を担う人を指す会社もあるためです。
厚生労働省の最新の賃金構造基本統計調査から、ITアーキテクトが入る職種区分を年齢と企業規模ごとに読みました。
あわせて、Offers に掲載された題名にアーキテクトを掲げる正社員求人の提示年収を、金融機関・SIer・その他の求人企業で分けて比べ、必須要件に挙がる経験を数えています。
自分の年収がどこにあり、転職でどの経験を示せば上の水準に届くかを考える材料にしてください。
ITアーキテクトの求人の年収は上限の中央値1,100万円
Offers に掲載された題名にアーキテクトを掲げる正社員求人82件の提示年収は、下限の中央値が600万円、上限の中央値が1,100万円でした。正社員求人全体の下限540万円・上限970万円と比べると、下限で60万円、上限で130万円高い水準です。
指標 | アーキテクト系の求人 | 正社員求人全体 |
|---|---|---|
年収を記載した求人 | 82件 | 3,294件 |
下限の中央値 | 600万円 | 540万円 |
上限の中央値 | 1,100万円 | 970万円 |
上限1,000万円以上の求人 | 53件(64.6%) | 1,571件(47.7%) |
出所: Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,294・2022年3月〜2026年10月公開。
アーキテクト系の求人は、上限が1,000万円以上の求人が82件中53件(64.6%)を占めました。正社員求人全体では1,571件(47.7%)なので、年収1,000万円以上を提示する割合が高い職種です。
上限が1,500万円以上の求人は15件あり、上限の最大は2,300万円でした。下限が800万円以上の求人も15件あります。
求人企業の業態で分けると金融機関の上限の中央値は1,500万円
アーキテクト系の求人82件を題名に書かれた求人企業の業態で分けると、証券会社や銀行などの金融機関の求人10件は上限の中央値が1,500万円で、SIer の求人43件の900万円より高い値でした。
求人企業の業態 | 求人の件数 | 下限の中央値 | 上限の中央値 | 上限1,000万円以上 |
|---|---|---|---|---|
金融機関(証券会社・銀行) | 10件 | 650万円 | 1,500万円 | 10件 |
SIer | 43件 | 500万円 | 900万円 | 20件(46.5%) |
その他(事業会社など) | 29件 | 700万円 | 1,100万円 | 23件(79.3%) |
金融機関の求人は10件すべてが上限1,000万円以上で、うち9件は上限1,500万円以上でした。SIer の求人は下限の中央値が500万円で、上限の最大は1,300万円です。
その他の求人は、Web サービスや SaaS を運営する事業会社の求人を多く含み、下限の中央値は700万円と3つの中で最も高い水準でした。
同じアーキテクトの職名でも、Offers に掲載された求人では業態によって提示年収の上限に開きが見られました。業態は年収の上限を確かめるときの見方の1つになります。
自分の経験で届く求人の年収帯を確かめるには、アーキテクトの求人を並べて、下限と上限、任される範囲を見比べるのが早道です。Offers Jobs のアーキテクトの求人では、ソリューションアーキテクトやクラウドアーキテクトを含む正社員の求人を職種から探せます。求人一覧と、求人詳細の業務内容・必須スキル・歓迎スキル・選考フローはログインなしで見られます。
統計でITアーキテクトに近い職種の年収は889.0万円
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、ITアーキテクトが入る職種区分「システムコンサルタント・設計者」の年収換算は約889.0万円で、プログラマーなどが入る「ソフトウェア作成者」の約578.5万円を310.6万円上回ります(企業規模10人以上・男女計を編集部が年収換算)。
職種区分 | 平均年齢 | 毎月の給与 | 年間賞与など | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|
システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 54.21万円 | 238.52万円 | 889.0万円 |
ソフトウェア作成者 | 37.1歳 | 39.08万円 | 109.51万円 | 578.5万円 |
出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」(企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。
年収換算は、毎月の給与(きまって支給する現金給与額)の12か月分に年間賞与などを足した概算です。平均年齢はどちらも30代後半で、年齢の差はほとんどありません。賞与の差が大きく、システムコンサルタント・設計者の年間賞与などはソフトウェア作成者の2倍を超える水準です。
ITアーキテクトが入る職種区分の定義
厚生労働省「賃金構造基本統計調査 職種一覧と解説」の定義では、システムコンサルタント・設計者は、主として必要なシステム全体の構成を企画する仕事や、システム開発プロジェクトの責任者としてプロジェクト全体を管理する仕事に就く人の区分です。
ソフトウェア作成者は、ソフトウェアの仕様決定・設計・プログラミングに就く人の区分で、システム全体の構成を企画する仕事が中心の人はこちらから除かれます。システム全体の構成を決めるITアーキテクトの仕事は、システムコンサルタント・設計者の定義に重なる仕事です。
IPA(情報処理推進機構)の「システムアーキテクト試験」の対象者像も、システムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、開発を主導する者です。仕事の中身と必要なスキルは「ITアーキテクトとはどんな仕事か」で、資格は「システムアーキテクト試験の難易度」で扱っています。
年齢で見るシステムコンサルタント・設計者の年収換算
同じ統計の年齢階級別の値を編集部が年収換算すると、システムコンサルタント・設計者は30〜34歳で約866.1万円、40〜44歳で約1,189.0万円、45〜49歳で約1,226.3万円でした。
年齢 | 年収換算 |
|---|---|
25〜29歳 | 641.6万円 |
30〜34歳 | 866.1万円 |
35〜39歳 | 968.1万円 |
40〜44歳 | 1,189.0万円 |
45〜49歳 | 1,226.3万円 |
50〜54歳 | 1,103.7万円 |
55〜59歳 | 1,163.8万円 |
出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」(企業規模計・男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。
年収換算は30代前半で800万円台、40代で1,000万円を超え、45〜49歳が表の年齢の中で最も高い水準です。30代のうちにシステム全体の構成を任される立場に移れるかが、40代の年収の水準を分けると編集部は考えます。
企業規模で見るシステムコンサルタント・設計者の年収換算
同じ第1表で企業規模ごとに年収換算すると、システムコンサルタント・設計者は1,000人以上の企業で約1,010.4万円、100〜999人で約854.3万円、10〜99人で約585.2万円でした。
企業規模 | 平均年齢 | 毎月の給与 | 年間賞与など | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|
1,000人以上 | 38.8歳 | 58.92万円 | 303.40万円 | 1,010.4万円 |
100〜999人 | 39.5歳 | 56.05万円 | 181.71万円 | 854.3万円 |
10〜99人 | 35.4歳 | 38.43万円 | 123.98万円 | 585.2万円 |
出所: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」(男女計)を Offers Magazine 編集部が年収換算。
1,000人以上と10〜99人の差は425.3万円で、毎月の給与と賞与の両方に表れた差です。同じ職種区分でも、勤める企業の規模が年収の水準を大きく左右すると読めます。
近い職種の年収の相場は「システムエンジニアの年収」でも扱っています。
ITアーキテクトの求人が必須要件に挙げる経験は設計とクラウド
Offers のアーキテクト系の求人82件の必須要件を数えると、設計に触れる求人が48件、AWS(Amazon Web Services)・Azure・Google Cloud のいずれかのクラウドを挙げる求人が36件、「3年以上」のように経験年数を書く求人が36件でした(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載したアーキテクト系の正社員求人 n=82・2023年10月〜2026年10月公開)。
必須要件に挙がる経験 | 求人の件数 |
|---|---|
設計 | 48件 |
クラウド(AWS・Azure・Google Cloud のいずれか) | 36件 |
経験年数(N年以上) | 36件 |
AWS | 35件 |
Azure | 21件 |
Google Cloud | 20件 |
要件定義 | 17件 |
アーキテクトの求人が最も多く求めるのは、設計の経験です。クラウドでは AWS を挙げる求人が35件と多く、Azure と Google Cloud がそれぞれ20件前後で続きました。
要件定義を必須要件に挙げる求人は17件でした。顧客や事業部門と話して要件を固める経験は、設計の経験とあわせて書くと、構成を決める立場の経験として伝わりやすくなります。
経験年数は3年以上と2年以上が多い
必須要件に経験年数を書く36件で、求める年数の最大を数えると、3年以上が16件、2年以上が11件、5年以上と7年以上が3件ずつ、1年以上が2件、10年以上が1件でした。
必須要件の経験年数 | 求人の件数 |
|---|---|
1年以上 | 2件 |
2年以上 | 11件 |
3年以上 | 16件 |
5年以上 | 3件 |
7年以上 | 3件 |
10年以上 | 1件 |
年数の記載なし | 46件 |
年数が何の経験を指すかは求人ごとに違い、開発経験の年数もあれば、設計やリーダーの経験の年数もあります。82件中46件は年数を書いていないため、年数より中身で判断する求人も多いと読めます。
ITアーキテクトが年収1,000万円以上の求人を狙う進め方
ITアーキテクトが転職で年収1,000万円以上の求人を狙うには、構成を決めた判断を理由ごと書く、クラウドの設計経験を具体的に書く、業態を広げて求人を見比べる、の3つが現実的です。
統計では全体の構成を決める仕事を含む区分ほど年収換算が高く、Offers の求人でも業態によって上限の中央値に600万円の開きがありました。
構成を決めた判断を理由ごと書く
職務経歴書でアーキテクトの経験を書くときは、使った技術名を並べるだけでなく、何と何を比べ、どの条件を重く見て構成を決めたかまで書きます。たとえば、モノリスをサービスに分割した、オンプレミスからクラウドへ移した、といった判断の経緯です。
選ばなかった構成とその理由まで書けると、全体の設計を任せられる人かどうかを求人側が見極めやすくなります。
クラウドの設計経験を具体的に書く
アーキテクト系の求人82件中36件が、必須要件にクラウドを挙げていました。どのサービスを使ったかに加えて、可用性やコスト、セキュリティの要件をどう満たしたかを書くと、設計の経験として読まれます。
構築や運用が中心の人は、設計の判断に関わった場面を切り出して書くと、アーキテクトの求人の必須要件に近づきます。
業態を広げて求人を見比べる
統計では1,000人以上の企業の年収換算が1,010.4万円と高く、Offers の求人でも金融機関の求人は上限の中央値が1,500万円でした。今の業態の求人に加えて他の業態の求人も見ておくと、年収の幅をつかむ手がかりになります。
年収1,000万円に届く条件を職種を広げて確かめたいときの材料は「エンジニアの年収1000万円」です。
条件に合う求人の年収帯と任される範囲は、Offers Jobs のアーキテクトの求人で見比べられます。今の年収との差を確かめてから、どの経験を職務経歴書の前に出すかを決めるのが、応募先を絞り込む確実な手順です。

