インフラエンジニアの年収は、平均の数字を1つだけ見ると判断を誤りやすい職種です。公的統計では担う工程によって入る職業区分が変わり、求人では職種名と求人票に並ぶ技術によって提示される年収帯が変わるからです。
厚生労働省の最新の賃金統計と、Offers に掲載された正社員求人の提示年収を並べ、いまの経験がどの年収帯に当たり、職種名や技術ごとに帯がどう違うかを確かめました。運用・監視が中心の人、設計・構築を担ってきた人、SRE(Site Reliability Engineering・サイト信頼性エンジニアリング)やリードの役割に移りたい人のそれぞれが、自分の位置を確かめられるように数字を置きました。
公的統計の年収は設計側889.0万円・運用側609.8万円
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、インフラエンジニアが入る職業区分の年収を換算すると、設計・構築を担う職業が入る「システムコンサルタント・設計者」は889.0万円、IT の運用・管理や通信ネットワークの技術者が入る「その他の情報処理・通信技術者」は609.8万円です(企業規模10人以上・男女計。毎月きまって支給する給与の12か月分と年間賞与などの合計を編集部が算出)。差は279.2万円で、同じインフラの仕事でも、統計上はどの工程を担うかで水準が大きく違います。
どの職業がどちらの区分に入るかは、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の職業分類対応表(2026年3月更新)が示しています。基盤システムの設計・構築を担う「システムエンジニア(基盤システム)」は「システムコンサルタント・設計者」、「運用・管理(IT)」と通信ネットワーク技術者の「電気通信技術者」は「その他の情報処理・通信技術者」という対応です。
賃金構造基本統計調査の区分 | job tag で対応する主な職業 | 平均年齢 | 年収換算 |
|---|---|---|---|
システムコンサルタント・設計者 | システムエンジニア(基盤システム)、プロジェクトマネージャ(IT)、ITコンサルタント | 38.3歳 | 889.0万円 |
その他の情報処理・通信技術者 | 運用・管理(IT)、ヘルプデスク(IT)、電気通信技術者 | 42.2歳 | 609.8万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」と job tag 職業分類対応表(2026年3月更新)をもとに年収換算は編集部が算出。
「システムコンサルタント・設計者」には IT コンサルタントやプロジェクトマネージャも入るため、889.0万円はインフラの設計・構築だけを数えた平均ではありません。インフラエンジニアだけを切り出した区分は統計に無いので、自分の仕事が設計・構築と運用・管理のどちらに近いかで、2つの区分のどちらを物差しにするかを選びます。
年齢別では、設計側の区分が40代前半で1,000万円台に届く
同じ「令和7年賃金構造基本統計調査」の年齢階級別の表で年収を換算すると、「システムコンサルタント・設計者」は40〜44歳で1,189.0万円、「その他の情報処理・通信技術者」は同じ年齢で680.5万円です(企業規模10人以上・男女計・編集部算出)。2つの区分の差は25〜29歳の188.9万円から、40〜44歳の508.5万円へ広がります。
年齢 | システムコンサルタント・設計者 | その他の情報処理・通信技術者 |
|---|---|---|
25〜29歳 | 641.6万円 | 452.7万円 |
30〜34歳 | 866.1万円 | 548.9万円 |
35〜39歳 | 968.1万円 | 604.1万円 |
40〜44歳 | 1,189.0万円 | 680.5万円 |
45〜49歳 | 1,226.3万円 | 702.1万円 |
50〜54歳 | 1,103.7万円 | 724.5万円 |
55〜59歳 | 1,163.8万円 | 777.8万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第5表」をもとに年収換算は編集部が算出。
運用・管理側の区分は年齢とともに緩やかに上がり、設計側の区分は30代で大きく上がります。年齢別の表は同じ人の年収の推移ではなく、年齢ごとに働いている人の平均を並べたものです。
企業規模別では、設計側の区分の1,000人以上が1,010.4万円
「令和7年賃金構造基本統計調査」の企業規模別の値で換算すると、「システムコンサルタント・設計者」は従業員1,000人以上の企業で1,010.4万円、10〜99人の企業で585.1万円です(男女計・編集部算出)。「その他の情報処理・通信技術者」は1,000人以上で639.4万円、10〜99人で523.2万円でした。
企業規模 | システムコンサルタント・設計者 | その他の情報処理・通信技術者 |
|---|---|---|
1,000人以上 | 1,010.4万円 | 639.4万円 |
100〜999人 | 854.3万円 | 621.4万円 |
10〜99人 | 585.1万円 | 523.2万円 |
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種第1表」をもとに年収換算は編集部が算出。
設計側の区分でも、10〜99人の企業の585.1万円は運用・管理側の区分の全体の609.8万円を下回ります。担う工程と同じくらい、勤め先の規模も年収の水準を左右します。
インフラ・SRE 求人の提示年収は中央値で上限900万円
Offers に2026年9月までに掲載された正社員求人のうち、職種名がインフラ・SRE・クラウド・ネットワークなどの求人(年収の記載がある272件)は、提示年収の下限の中央値が500万円、上限の中央値が900万円です。上限が800万円以上の求人は75.7%、1,000万円以上の求人は39.3%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・n=272・2026年10月6日集計)。
提示年収は、求人が示す年収の幅です。下限は求人の要件を満たす人に示す額の下端、上限は経験と役割が合う人に出せる額の上限で、応募者全員に上限が出るわけではありません。求人の年収の幅の読み方は「モデル年収と求人の年収の読み方」で詳しく扱っています。
提示年収の上限 | 求人数 | 割合 |
|---|---|---|
600万円未満 | 14件 | 5.1% |
600万〜800万円未満 | 52件 | 19.1% |
800万〜1,000万円未満 | 99件 | 36.4% |
1,000万〜1,200万円未満 | 52件 | 19.1% |
1,200万円以上 | 55件 | 20.2% |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人のうちインフラ・SRE 系の職種名の求人(n=272・2026年10月6日集計)。
ほかの求人を代わりに載せる人材紹介会社のアカウントの掲載を除いた211件でも、下限の中央値は500万円、上限の中央値は869万円で、傾向は大きく変わりません。
インフラ・SRE 系の年収帯は、バックエンド開発と同じ水準
同じ Offers の正社員求人を職種名の区分ごとに並べると、インフラ・SRE 系(n=272)の上限の中央値900万円は、バックエンド・Web 開発(n=547)と同じ額です。上限の中央値が1,200万円と高いのはテックリード・EM(エンジニアリングマネージャー)などのリード職(n=246)でした(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月6日集計)。
職種名の区分 | 年収記載のある求人 | 下限の中央値 | 上限の中央値 |
|---|---|---|---|
インフラ・SRE 系 | 272件 | 500万円 | 900万円 |
バックエンド・Web 開発 | 547件 | 500万円 | 900万円 |
フロントエンド・モバイル | 300件 | 500万円 | 925万円 |
データ | 116件 | 600万円 | 1,000万円 |
テックリード・EM など | 246件 | 700万円 | 1,200万円 |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人(2026年9月までに公開・2026年10月6日集計)。
インフラの経験そのものが開発職より低く見られているわけではありません。求人の年収帯の高低と連動して見えるのは、次の2つの節で見る職種名と求人票の技術、そしてリードの役割を担うかどうかの違いです。
自分の経験で届く求人の年収帯は、Offers Jobs の公開求人で職種名や技術を指定して確かめられます。インフラ・SRE の正社員求人を年収の下限と上限で見比べると、上の分布のどこに自分が当たるかが分かります。
SRE を掲げる求人はインフラ名の求人より年収帯が高い
Offers の正社員求人で、タイトルに SRE の語があり「インフラ」の語が無い求人(44件)は、提示年収の下限の中央値が600万円、上限の中央値が1,049.5万円です。「インフラ」の語があり SRE の語が無い求人(131件)は下限500万円・上限819万円で、上限の中央値に約230万円の開きがあります(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月6日集計)。
タイトルの職種名 | 年収記載のある求人 | 下限の中央値 | 上限の中央値 |
|---|---|---|---|
SRE(「インフラ」の語なし) | 44件 | 600万円 | 1,049.5万円 |
インフラ(SRE の語なし) | 131件 | 500万円 | 819万円 |
クラウド | 65件 | 450万円 | 869万円 |
DevOps・プラットフォーム | 25件 | 600万円 | 1,000万円 |
ネットワーク | 22件 | 463万円 | 869万円 |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人のうちインフラ・SRE 系の職種名の求人(2026年10月6日集計・職種名の重複あり)。
SRE の求人は44件と少ないため、割合ではなく中央値を目安として見てください。SRE は、運用の作業をコードで自動化し、サービスの信頼性の目標を開発チームと決めて守る役割の名前です。
「インフラ」名の求人では、上限が1,000万円以上の求人は27.5%でした。インフラ・SRE 系全体の39.3%より低い割合です。
Terraform がある求人は上限の中央値が1,000万円
Offers のインフラ・SRE 系の正社員求人を求人票に出てくる技術で分けると、Terraform がある求人(74件)の上限の中央値は1,000万円、無い求人(198件)は900万円です。オンプレミスの語がある求人(66件)の上限の中央値は800万円で、無い求人(206件)の970万円を下回りました(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月6日集計)。
求人票に出てくる技術 | 出てくる求人の割合 | ある求人の下限・上限の中央値 | 無い求人の下限・上限の中央値 |
|---|---|---|---|
Terraform | 27.7% | 550万円・1,000万円 | 500万円・900万円 |
Kubernetes(EKS・GKE・AKS を含む) | 18.6% | 500万円・1,000万円 | 500万円・900万円 |
オンプレミス | 24.1% | 474万円・800万円 | 500万円・970万円 |
仮想化(VMware・vSphere・Hyper-V など) | 24.8% | 440万円・809.5万円 | 500万円・955万円 |
AWS | 82.1% | 500万円・900万円 | 500万円・960万円 |
出所:Offers(株式会社overflow)正社員求人のうちインフラ・SRE 系の職種名の求人(出てくる求人の割合は n=274・中央値は年収記載のある n=272・2026年10月6日集計)。
AWS(Amazon Web Services)は8割を超える求人に出てくる技術で、上限の中央値はある求人が900万円、無い求人が960万円でした。上限の中央値がある求人の側で高いのは、構成をコードで管理する Terraform と、コンテナを動かす Kubernetes です。オンプレミス・仮想化・AWS は、無い求人の側で上限の中央値が高くなりました。求人票に Terraform を挙げる求人の条件は「Terraform の転職事情と必要なスキル」で、Ansible などの構成管理ツールの経験の示し方は「Ansible エンジニアの転職事情」で扱っています。
この比較は、技術の語が出てくる求人と出てこない求人の提示年収の違いを見たもので、Terraform を覚えれば年収が上がるという因果を示すものではありません。募集する会社の事業や規模、求める役割の違いも、年収帯の差に含まれています。
年収帯が高い側に並ぶ自動化とリードの経験
Offers の求人では Terraform を挙げる求人やリード職の求人で提示年収の上限の中央値が高い傾向があります。Offers の集計は求人票の職種名と技術の語で分けたものです。運用・監視が中心の経験から年収帯の高い求人を狙う場合は、手作業の構築や運用をコードに置き換えた経験を職務経歴書で具体的に示すのが選択肢の1つです。
構成をコードにした経験を職務経歴書に書く
Offers の求人では、Terraform がある求人の上限の中央値が1,000万円と、無い求人より100万円高い額でした。職務経歴書には、コードに置き換えた対象(ネットワーク・サーバー・監視の設定など)、置き換える前の作業のやり方、置き換えた後に変わったこと(構築の時間・ミスの件数・レビューの方法)を、自分の担当範囲と分けて書きます。スキル欄の書き方は「職務経歴書のスキル欄の書き方」で例を挙げています。
資格名がある求人の年収帯は、無い求人を上回らない
Offers のインフラ・SRE 系の正社員求人274件のうち、求人票に AWS 認定・CCNA(シスコ技術者認定)・LPIC(Linux 技術者認定)・情報処理技術者試験などの資格名が出てくる求人は57件でした。57件の提示年収は下限の中央値450万円・上限の中央値869万円で、資格名が出てこない求人(215件)の下限500万円・上限936万円を上回りません(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月6日集計)。
57件のうち21件は1社の求人、14件は人材紹介会社のアカウントの掲載で、偏りがあります。この1社と人材紹介会社のアカウントの掲載を除いた22件でも上限の中央値は790万円で、同じく除いた資格名の無い求人(168件)の900万円を下回ります。資格は知識の裏づけとして職務経歴書に添え、年収帯の交渉では担った工程と自動化の経験を主に示すのが得策です。
リード・EM の役割を担う
Offers の正社員求人では、テックリード・EM などのリード職(n=246)は下限の中央値700万円・上限の中央値1,200万円で、上限が1,000万円以上の求人は76.8%でした(Offers(株式会社overflow)調べ・2026年10月6日集計)。インフラのチームで構成の方針を決める、メンバーの作業をレビューする、開発チームと信頼性の目標を合意するといった経験は、リード職の求人で求められる経験そのものです。
SRE やプラットフォームエンジニアの正社員求人が、どの経験にどの年収帯を示しているかは、Offers Jobs の公開求人で見比べられます。担ってきた工程と使ってきた技術を条件にして探すと、次に狙う求人の年収帯が具体的になります。
統計の年収換算と求人の提示年収は、測っているものが違う
「令和7年賃金構造基本統計調査」の年収換算は、実際に働いている人に支払われた給与と賞与の平均です。Offers の提示年収は、転職者を迎える側が求人で示した年収の幅の中央値で、入社後に支払われた額ではありません。統計は「同じ区分で働く人の平均」、求人は「転職したときに示される年収の幅」を見るものとして使い分けます。
統計の区分には、インフラ以外の職業も入っています。「システムコンサルタント・設計者」には IT コンサルタントやプロジェクトマネージャが、「その他の情報処理・通信技術者」にはヘルプデスクなども入るため、区分の平均をそのまま自分の相場とせず、担ってきた工程が近い区分を物差しにしてください。求人の提示年収も、上限は経験と役割が合う人への額で、応募するだけで上限が示されるわけではありません。

