AIエンジニアの仕事は3つの型に分かれる
AIエンジニアの仕事は、新しい手法を検証する研究寄りの仕事、機械学習のモデルを作って本番で運用する仕事、LLM(大規模言語モデル)などの既存のモデルをプロダクトに組み込む開発の3つに分かれます。同じ「AIエンジニア」の求人でも、どの型を任されるかで、求められる経験も「やめとけ」の理由の当てはまり方も変わってきます。
型 | 主な仕事 | 移りやすい経験 |
|---|
研究寄り(リサーチエンジニア) | 論文や先行研究の調査、手法の再現と検証、精度の比較 | 機械学習の研究、数理・統計の素養 |
モデルの開発と運用(機械学習エンジニア・MLOps) | 学習データの整備、モデルの学習と評価、本番環境へのデプロイと監視、再学習 | データ基盤の構築、インフラの運用、Python での開発 |
LLM を組み込む開発(生成AIエンジニア) | LLM の API を使った機能の実装、RAG(社内の文書などを検索して回答に使う仕組み)の構築、回答の品質の評価 | Web アプリケーションやバックエンドの開発、API の設計 |
(編集部の整理。会社によっては1人が複数の型を兼ねる)
LLM を組み込む開発の型は、Web アプリケーションの開発で積んだ経験をそのまま土台にできます。研究寄りの型だけを AIエンジニアだと思っていると、自分に合う求人を見落としやすくなります。
「やめとけ」と言われる4つの理由と、職場で変わる範囲
「やめとけ」と言われる理由は、学び続ける負担、PoC で終わる案件、データの準備の比重、成果の見えにくさの4つです。どれも仕事そのものに付いてくる面がある一方、任される型と開発の体制によって重さが変わるので、転職先を選ぶ段階で確かめられます。
技術の入れ替わりが速く、学び続ける負担が大きい
AI の分野では、モデルも開発の道具も短い間隔で入れ替わるため、学び続けることが仕事の前提です。数年前に身につけた手法が、新しいモデルの登場で使われなくなることもあります。
負担の大きさを左右するのは、学ぶ時間を業務の中に取れるかどうかです。新しいモデルの検証や勉強会への参加を業務として認める会社もあれば、業務の外での自己研鑽に任せる会社もあり、面接で聞いておけば入社後の負担を見積もれます。
PoC で終わり、作ったものが事業に残らない
PoC は、AI を使って課題を解けるかを小さく試す段階のことです。受託開発や新規事業の現場では、PoC を繰り返しても本番の導入まで進まない案件があり、作ったものが事業に残らないことが「やめとけ」と言われる理由の1つになっています。
その一方で、本番での運用を前提に募集する求人もあります。Offers に掲載された AIエンジニアの正社員求人には、モデルの実装や本番運用に関わった実務経験の年数について「PoCや社内向けサービスなどは含めずに」と添える求人がありました。
応募者が選べる要件の1つとして「機械学習や大規模言語モデル(LLM)を用いた機能を、PoC で終わらせず本番運用・改善まで担った経験がある」を挙げる求人もありました(Offers(株式会社overflow)調べ・題名か必須要件で機械学習・LLM の開発を担うと分かるエンジニアの正社員求人 n=82・2022年9月〜2026年10月公開)。
作ったモデルを本番で動かし続けたい人は、求人の業務内容に運用や改善の工程まで書かれているかを見ると、PoC で終わる職場かどうかの見当がつきます。
モデルづくりよりデータの準備に時間を取られる
機械学習のモデルの精度を大きく左右するのは、学習に使うデータの質です。そのため、データの収集や前処理、アノテーション(学習用のデータに正解のラベルを付ける作業)に多くの時間を使う現場があり、思っていた仕事と違うと感じる人もいます。
データの準備を誰が担うかは会社によって違います。Offers の AIエンジニアの求人にも、本文でデータの収集や前処理、アノテーションの工程に触れる求人がありました。データエンジニアやアノテーションの担当が別にいるか、自分がどこまで担うかは、面接で確かめておくと入社後のずれを減らせます。
精度への期待と、成果の見え方がずれやすい
AI を使えば何でもできるという期待を周囲が持っていると、精度が期待に届かないときに説明する役割を背負いやすくなります。モデルの改善は試行の積み重ねで、どれだけ時間をかければどこまで良くなるかを事前に約束しにくいのも、成果が見えにくいと言われる理由です。
成果の見え方を左右するのは、モデルの精度を事業の数字とどう結び付けて評価する会社かです。何を目標として評価されるか、精度の目標を誰と決めるかを入社前に聞いておくと、評価のずれを防げます。
AIエンジニアの求人が必須要件に挙げる経験
AIエンジニアの求人の必須要件で最も多いのは Python での開発の経験で、経験年数、機械学習の手法やフレームワークが続きます。Web や API(Application Programming Interface)などのアプリケーション開発と、LLM・生成AI の経験や知識も、それに近い数の求人が必須要件に挙げる経験です。論文の実績や修士・博士の学位を必須に挙げる求人は一部にとどまり、研究の実績より、作って動かした経験を問う求人のほうが多く見られます。
必須要件に挙がる経験 | 必須要件の書き方の例 |
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Python での開発 | 「Pythonによる機械学習モデルの実装経験」 |
経験年数(「◯年以上」) | 年数を書く求人では「3年以上」が最も多い |
機械学習の手法・フレームワーク | scikit-learn などを使った PoC やサービスのリリースの経験 |
Web・API などのアプリケーション開発 | 「Webアプリケーションの開発経験・運用経験」 |
LLM・生成AI の経験や知識 | 「LLM APIを活用した機能の開発または業務自動化の経験」 |
本番環境での運用 | 「本番環境で稼働するシステムの開発と運用の実務経験」 |
(Offers(株式会社overflow)調べ・題名か必須要件で機械学習・LLM の開発を担うと分かるエンジニアの正社員求人 n=82・2022年9月〜2026年10月公開)
必須要件のうち、Web や API の開発と本番環境での運用は、Web やバックエンドのエンジニアが今の仕事の延長で示せる経験です。API の設計やクラウドでの運用、障害対応の経験は、LLM を組み込む開発やモデルの運用の型でそのまま問われるため、職務経歴書で AI の文脈に寄せて書けます。
AIエンジニアの求人が必須要件に何を書いているかは、Offers Jobs の AIエンジニアの求人一覧で、掲載中の求人の詳細を開いて必須スキル・経験を読み比べられます。応募の前に、求人の詳細で任される型と開発の体制を確かめてください。
自分の経験と求人の必須要件の差は、普段使う AI ツールからも確かめられます。Claude Code や Codex を使っているなら、無料のプラグイン Offers AI Harness がプロフィールをもとに合う求人を探し、合う点と足りない点を並べます。
AIエンジニアの求人の伸びと、IT職全体より高い提示年収
Offers に掲載された IT職の正社員求人のうち AIエンジニアの求人が占める割合は、2023年の1.3%から2026年の6.0%へ上がりました。提示年収も、上限の中央値が1,200万円と、IT職の正社員求人全体の970万円を上回っています。
公開年 | IT職の正社員求人に占める AIエンジニアの求人の割合 |
|---|
2023年 | 1.3% |
2024年 | 1.5% |
2025年 | 3.6% |
2026年(10月15日まで) | 6.0% |
(Offers(株式会社overflow)調べ・他社の求人をまとめて載せる2アカウントを除いたIT職の正社員求人 n=2,422・AIエンジニアの求人は題名か必須要件で判定・2023年2月〜2026年10月公開)
提示年収は、年収の下限と上限を記載した求人で比べると、AIエンジニアの求人の上限の中央値が IT職全体より230万円高い水準でした。上限の第1四分位(下から4分の1の位置)でも、AIエンジニアの求人は1,000万円で、IT職全体の800万円を上回ります。
指標 | AIエンジニアの求人 | IT職の正社員求人全体 |
|---|
下限の中央値 | 600万円 | 540万円 |
上限の中央値 | 1,200万円 | 970万円 |
上限の第1四分位 | 1,000万円 | 800万円 |
上限の第3四分位 | 1,500万円 | 1,200万円 |
(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載したAIエンジニアの正社員求人 n=80(2022年9月〜2026年10月公開)・IT職の正社員求人 n=3,283(2022年3月〜2026年10月公開))
下限の中央値の差は60万円で、上限ほどは開いていません。
公的統計と並べた年収の水準は「AIエンジニアの年収」、隣の職種は「機械学習エンジニアの年収」と「プロンプトエンジニアの年収」で扱っています。
AIエンジニアに向く人と、合いにくい人
AIエンジニアに向くのは、試しては直す作業を続けられる人、作ったものが使われるところまで見届けたい人、データや精度の限界を周りに言葉で説明できる人です。反対に、決まった手順で確実に仕上げる仕事を好む人や、AI の話題性だけで職種を選ぼうとしている人は、入社後にずれを感じやすくなります。
観点 | 向く人 | 合いにくい人 |
|---|
仕事の進め方 | 仮説を立てて試し、結果を見て直す繰り返しを楽しめる | 手順と完成の形が初めから決まった仕事を好む |
成果の置き方 | モデルや機能が使われ、改善されていくところまで見届けたい | 作って納めたところで区切りたい |
学び方 | 新しいモデルや道具を自分の業務で試して確かめる | 一度身につけた技術を長く使い続けたい |
周りとの関わり | 精度の限界やデータの課題を、事業側の言葉で説明できる | 技術の検討だけに集中したい |
(編集部の整理)
合いにくい側に当てはまっても、AI に関わる道が閉ざされるわけではありません。アプリケーションの開発者として LLM を組み込む機能を担う、データ基盤を支える立場から機械学習の運用に関わるといった形で、得意な進め方を保ったまま AI の仕事に近づく道もあります。
続けて伸ばせる職場を見分ける5つの点
AIエンジニアとして長く働くために転職先で確かめたいのは、任される型、本番運用までの距離、データの準備の分担、評価のされ方、学ぶ時間の扱いの5つです。「やめとけ」と言われる理由の多くは、この5つの答えで重さが変わります。
確かめる点 | 求人票で見る箇所 | 面接で聞くこと |
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任される型 | 題名・業務内容 | 研究寄り・モデルの開発と運用・LLM を組み込む開発のどれが中心か |
本番運用までの距離 | 業務内容・必須要件 | 作ったモデルや機能が本番で使われているか、PoC で止まる案件の割合はどうか |
データの準備の分担 | 業務内容・チームの体制 | データの収集や前処理、アノテーションを誰が担うか |
評価のされ方 | 募集の背景・ポジション | 精度の目標を誰と決め、事業のどの数字で評価されるか |
学ぶ時間の扱い | 社内制度 | 新しいモデルの検証や勉強会への参加が業務として認められるか |
(編集部の整理)
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